先人として後世へ何を残したいのか?
地位か、それとも金か、人か・・・・・・・・
作家っぽいと後輩にからかわれた昨夜、
「普通の人生を生きていない者が作家になっているじゃん」と何食わぬ顔で後輩は言った。
甘栗ときのこの入った濃厚なブレンドチーズのピザをほお張りながら、
私へ「要素あり」として判を押したらしい。
カプチーノを啜っている隙に、横目でちらちらと私を窺っている隙に。
後輩はまだ若いという私の勝手な理由で、私とは齢の離れた幼い友人であるため、
友人といえども私の過去や素性を明らかにはしていない。
一生というと少し大袈裟な感も否めないし、本音は告白するつもりはなかったものの、
難病を抱えていること、作家しか(『しか』とは失礼な表現お許しを)
選択肢のなくなった今を
私は久しぶりに会った若い後輩へ伝える隙をすべて封じ込められたような心境になり、
言うつもりはなかったと言いながら、
その隙がなくなると人間、隙間をつくりたくなるものだ。
すでに食事を済ませていたにもかかわらず、食べていないわ、と嘘をつき、
ご馳走をしたいと近所までわざわざ出向いてくれた気持ちに応えようと
なぜか躍起になっている。
細く細く切ったピザを食べ、食べている演出を。
なんて私はけなげなのだ?
その目前で後輩は、まだ私をからかい、自分の言葉にひとりでうけて大笑いをしている。
くそっ、なんて憎たらしいのだ。
そして、なんて、可愛いのだ、こいつ!!
変なの・・・・・・と、自分で自分を思った。
どこに踊りに行っているのかというクラブの話とか、
早くお父さんになりたいという20代の男の子(私にとっては男以前なのかな・・・)の
慎ましやかな人生設計を聞いていたら、
男ならもっと無茶をやれ!と、
またしてもひとり旅を推進するおばさんに私はなってしまった。
私の人生を私が後悔していないのであれば、それでいい。
普通に・・・・・と後輩は軽々しく言うものだから、
私にとっての普通は自分が基準となっていて、
普通という概念を出されてしまうと何が普通で、何が普通ではないのかと
私の頭はそこで躓き、混乱してしまう。
普通に見えない・・・・・と言われてしまうと、あっそう?としか言い様がないし、
そこにオーラが、作家っぽいね~と冗談でもいわれてしまうと、
返答の言葉を出す隙を奪われ、目指しているから・・・・・と
結局は告白せざるを得ない状況にくすくす笑った。
馬鹿みたい・・・・・私。
なんで10歳も下の男の子にからかわれたり、一生懸命になってしまうのだ?
だって、自分では実現すると信じていても、
それを言葉に置き換えると責任を感じてしまうわけだし、何といっても照れくさい。
今までそのご報告ができるまで私からの連絡を控えている先人との重い約束のように、
彼らの命、または私の命が期限となるような約束は、
その人数を増やしたくないというのが本音だからだ。
重圧やプレッシャーは時に心地よく、時に力を届け、時にその思いに泣けてくる媚薬のように
不思議な作用をもたらす重い重い約束なのだ。
久しぶりに外出した土曜日の夜、
見慣れているはずの景色なのに、今日は星の輝きもいつもにも増してきらきらと眩しい。
踊りに行きたい。
おしゃれをしてライブへでかけたい。
うずうずする。
そして、心はどきどきと鼓動が高まり、
重い約束を思い出すと、頻脈が胸を締め付けてくる体調を前に、諦めではなく時の延長を
自分に言い聞かせながら、二杯目のカプチーノを啜り、少年へ笑顔を振りまく。
してしまったか・・・・・
いや、させられたように思った。
少年と私の重い約束を・・・・・
美味しいお料理を餌に、デザートまでお土産として包んでもらい、
あと何年若ければ・・・・・などと思うとは、さて、若ければ恋の相手か?
星空のきれいな夜は、幸せの魔法にかかった気分。
どうか、このままで・・・・・