rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

新規医療報酬改定は日本の医療を救うか

2010-03-11 08:11:13 | 医療
2月12日に中医協は新年度の新規医療報酬改定の答申を発表しました。新規改定についていろいろな意見が出されていますが、備忘録の意味で概要をまとめておきます。

まず全体の改定率(予算=ぱい)ですが、平成20年度(21年度は未定なので)の医療費36.5兆円から計算して0.19%増になりました。つまり同じ医療が行われたと仮定すると37.2兆円になる計算です。うち医科の改定率は+1.74%(入院+3.03%、外来+0.31%)、歯科は+2.09%、調剤+0.52%、薬価(材料含む)改定率は▲1.36%でマイナス査定となっています。つまり入院医療と歯科医療にやさしい改定と言えます。病院の9割が赤字で勤務医が次々退職、医療崩壊が叫ばれている現状からは姿勢としては当然と言えます。歯科については歯科医師会が民主党支持だから説もあります。

さて、医科の診療報酬改定の基本方針は(1)救急、産科、小児科、外科医療の再建。(2)病院勤務医の負担の軽減(医療補助者の増員支援)の2点です。これも視点としては極めて「まっとうなもの」と言えるでしょう。

ここまでは少し期待できる感じですが、その具体的な改定内容はというと、(1)の救急、産科、小児科、外科医療再建については、地域連携による救急医療、救急のハイリスク分娩を2-3割増しの点数(管理料として3万円が4万円になるなど)に、小児夜間休日診療を3,500円から4,000円にといった内容。(2)の勤務医の負担軽減については、入院基本料を若干増やし、栄養や呼吸器ケアチームなどの加算、事務作業補助加算、がん医療の充実化に向けて、化学療法、説明やカウンセリング、緩和ケア、癌リハビリの加算を増加(1000円ずつ位)しています。また患者サービスの視点から明細書発行の義務づけや医療安全を推進している場合の加算、薬剤指導加算などがそれぞれ1000円ずつ位増えています。また入院が長くならないように、在宅医療や地域連携がより評価されるようになり、DPC上入院期間分類が2種類から3種類になって長期入院が不利になる一方手術時の出来高計算(手術中に使用した薬剤や物品は別途請求が現在もできる)の範囲を増やすことも示されています。

開業医に対しては地域医療貢献加算という名目で夜間休日に患者からの問い合わせなどに対応する体制を取る事で診療に30円加算してもよいことになりました。病院の時間外外来(救急でなく)による勤務医の疲弊軽減に向けた対策ですが、昔は開業医は往診を含めて24時間対応が当たり前だったのですからドイツのように救急は入院が必要なもの以外全て開業医が診る(交代でやれば良いだけの話し)という原則を作っても良いくらいだと思いますね。

医薬品については今回厳しい内容になりましたが、薬価的に安い後発医薬品(ゾロ品)使用促進が1層進められて、後発医薬品加算が増加しています。

まとめとしては、病院に対しては「急性期医療の支援」「長期入院から在宅医療への誘導」、診療所に対しては「病院医療の補完、支援に対しては報酬増」、薬局に対しては「調剤よりも情報重視(後発品や服薬指導の充実)」という内容になりました。

これで日本の医療崩壊は止まるか?つまり勤務医が辞めなくなり、若い医師達が救急や外科を目指すようになるか、といえば大いに疑問ではありますが、「基本理念は正しい方向を向いていて、今できることはやった」と思いますので明日から良くなることは無理としても将来につながる改定であることは間違いないように評価します。
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