書評「ノーベル平和賞の虚構」浜田和幸 著 宝島社2009年刊
09年のノーベル平和賞がオバマ大統領に決まってから、日本ではオバマ氏のカリスマ的な人気が大きく下ったように感じます。ノーベル平和賞自体うすうす政治色の濃い胡散臭いものだと皆感じていたと思いますが、今後は「この賞を受けること=恥ずかしいこと」として辞退する人も出てくるのではないかとさえ思われます。
本書はノーベル平和賞が創設された1901年以来の受賞者を踏まえて改めてその政治的意味について解説した良書と思います。そもそも平和賞だけが選考委員会がスエーデンでなくノルウエーであることも政治的な意味合いがあり、ノルウエーがかつての日本と韓国の関係のようにスエーデンの支配下にあったことに端を発しているというのも初めて知った事です。ノルウエーは自国の独立の維持に苦労したことからノーベル平和賞を自国の存立と世界における立場の強化のため、また最近では経済活動に最大限政治利用してきたことが解説されます。著者の表現を借りると「戦争こそ最大の平和ビジネス」として戦争をうまく活用して利権につなげる者を平和賞に選考すつつ新たなビジネスを開拓することがノーベル平和賞の実態である、ということが具体例をあげて判りやすく解説されています。
第1章では「オバマ氏がなぜ受賞したか」を選考委員のヤーグラン氏との古くからの関係や、何を期待されているか、に触れながら解説されています。
第2章はヒトラーまで平和賞にノミネートされた事実や、何度ノミネートされても受賞されないガンジーのことなど、歴史的にどのような意義を持って受賞者が選定されてきたかを考察します。
第3章以下は現代に視点を移してノーベル平和賞と国際投機マネーの関連、核廃棄にからむビジネス、地球温暖化と原発の再興、環境バブル、二酸化炭素排出権ビジネスなどいかにノーベル平和賞がこれらの利権にからんで利用されてきたかを解説します。
ある意味「目から鱗」、ある意味「さもありなん」と思わせる内容なのですが、日本人はこのような生き馬の目を抜くような「表面をきれい事で包んだ」国際競争にあまりにもナイーブすぎるのではないかと感じます。高校無償化に朝鮮学校を含めるかどうか、といった瑣末な話題に時間を割く無駄を廃して「世界の中で日本がもっと逞しく生き抜いてゆくにはどうするか」といった話題をメディアはもっと取り上げて欲しいものです。
本書の内容に関連して、地球温暖化問題でも、マグロの漁獲制限問題でも感ずることですが、西洋人はやはり「自然は人間がコントロールするもの」という傲慢な思想を持ち続けていますね。日本人は「自然といかに共存するか」をテーマに二千年の間生きてきたのでどうしても西洋人の強引な理屈にはついてゆけない所があります。人間も自然も神が作ったという一神教の思想から来るものだから自然が神であるという我々の思想とは相いれないのでしょうが、もっと我々の考え方について積極的に情報発信をしてゆくべきではないかと最近の世界情勢をみて強く感じます。
09年のノーベル平和賞がオバマ大統領に決まってから、日本ではオバマ氏のカリスマ的な人気が大きく下ったように感じます。ノーベル平和賞自体うすうす政治色の濃い胡散臭いものだと皆感じていたと思いますが、今後は「この賞を受けること=恥ずかしいこと」として辞退する人も出てくるのではないかとさえ思われます。
本書はノーベル平和賞が創設された1901年以来の受賞者を踏まえて改めてその政治的意味について解説した良書と思います。そもそも平和賞だけが選考委員会がスエーデンでなくノルウエーであることも政治的な意味合いがあり、ノルウエーがかつての日本と韓国の関係のようにスエーデンの支配下にあったことに端を発しているというのも初めて知った事です。ノルウエーは自国の独立の維持に苦労したことからノーベル平和賞を自国の存立と世界における立場の強化のため、また最近では経済活動に最大限政治利用してきたことが解説されます。著者の表現を借りると「戦争こそ最大の平和ビジネス」として戦争をうまく活用して利権につなげる者を平和賞に選考すつつ新たなビジネスを開拓することがノーベル平和賞の実態である、ということが具体例をあげて判りやすく解説されています。
第1章では「オバマ氏がなぜ受賞したか」を選考委員のヤーグラン氏との古くからの関係や、何を期待されているか、に触れながら解説されています。
第2章はヒトラーまで平和賞にノミネートされた事実や、何度ノミネートされても受賞されないガンジーのことなど、歴史的にどのような意義を持って受賞者が選定されてきたかを考察します。
第3章以下は現代に視点を移してノーベル平和賞と国際投機マネーの関連、核廃棄にからむビジネス、地球温暖化と原発の再興、環境バブル、二酸化炭素排出権ビジネスなどいかにノーベル平和賞がこれらの利権にからんで利用されてきたかを解説します。
ある意味「目から鱗」、ある意味「さもありなん」と思わせる内容なのですが、日本人はこのような生き馬の目を抜くような「表面をきれい事で包んだ」国際競争にあまりにもナイーブすぎるのではないかと感じます。高校無償化に朝鮮学校を含めるかどうか、といった瑣末な話題に時間を割く無駄を廃して「世界の中で日本がもっと逞しく生き抜いてゆくにはどうするか」といった話題をメディアはもっと取り上げて欲しいものです。
本書の内容に関連して、地球温暖化問題でも、マグロの漁獲制限問題でも感ずることですが、西洋人はやはり「自然は人間がコントロールするもの」という傲慢な思想を持ち続けていますね。日本人は「自然といかに共存するか」をテーマに二千年の間生きてきたのでどうしても西洋人の強引な理屈にはついてゆけない所があります。人間も自然も神が作ったという一神教の思想から来るものだから自然が神であるという我々の思想とは相いれないのでしょうが、もっと我々の考え方について積極的に情報発信をしてゆくべきではないかと最近の世界情勢をみて強く感じます。