rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

鈴木文部科学副大臣に「唐突」と評された全国医学部長病院長会議の要望

2010-03-28 23:18:11 | 医療
医師不足というのは医師の絶対数が不足しているのではなく、「安い給料でリスクの高い医療を24時間行なう病院勤務医が不足している」のだと拙ブログでも開設以来何度も書いてきました。医学部の定員を増やし、医師数を増やしても医師自身のQuality Of Life(生活の質)が良い科や都市の開業医が増えるだけであれば何の解決にもならないことは明確であるのに、今できる根本問題の解決は行われません。

2月22日に全国医学部長病院長会議は3つの医学部新設を検討している民主党政権に対して、「医学部新設は医療崩壊を加速させる結果になるから止めるように」という要望書を提出しました。この3年間に既存の医科大学は1,221名の医学部定員増に対応してきました。これは定員100名の医学部を全国で12校新設したことと同じです。

医学部の維持には教育・診療・研究のため平均700名の勤務医が必要ですが、全国で大学を除く病院勤務医は人口100万人あたり958名なので新設医科大学を3つ作ることは人口220万人分の病院勤務医を大学教員として引き抜くことになるから地域医療における勤務医不足を酷くするだけであると説明しています。

アメリカの人口は3億を超えたと言われていますが、医学部の数は130校です。日本は1億2700万人なので人口割合でゆくと医学部の数は55校位で良いはずですが(要望書では49校となっていて計算が合わない)現在80校あります。これ以上多額の費用をかけて医学部を作っても20年位で医師数は飽和してしまいます。そもそも90年代に医師過剰を抑制するため全国の医学部の定員を軒並み減らしたのは政府だったではないか、という主張です。当時は人口10万人あたり医師数が200名を超えたから医師過剰であり医療費が国を滅ぼすという医療費亡国論によって定員削減となりました。しかし現在はOECD平均が10万人あたり300名だから医師不足であると言われるようになり、国民一人あたりの医療費もOECD平均より年間400$少ないことが判っています。

今回の診療報酬改定は病院医療を見直すという点では(私も)医学部長病院長会議も評価しているのですが、拙速に医師数を増やすという民主党の動きは現在の医療危機への対応としては方向性に誤りがあるのではないかという同会議の指摘は私も同感です。(民主党としては同会議は医学部造設に賛成してもらえると思っていたようです)

私は国立大学に勤めているのではありませんが、大学の独法化によって各種補助金が削減され、国立大学病院は独立採算を強いられて医業において収益を上げるよう教員達は強制されています。私立大学はなおさらです。(現在の診療報酬体系ではベッドが常にほぼ満床でないと黒字にならない設定になっています)現段階で国立大学(42大学法人)の医療についての借入金総額は1兆35億円と言われています。各大学300-600億の財務省からの借り入れを持ちながら独立採算で利益を出して増加した医学部定員に対応して医学生を育ててゆく(しかも下働きしてくれる研修医は残らない)というのがいかに大変か、大学教員である勤務医がどれだけきついか(本音では辞めて開業したい)というところを良く酌んでくれ、と言う結論です。
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