Wikileaksのジュリアン・アサンジ氏が米国政府との司法取引によって英国の刑務所から解放され、母国であるオーストラリアで自由の身になる事が大きな事件として世界では報道されています。2010年から投獄や自宅軟禁、2012年から英国のエクアドル大使館に亡命という名で事実上監禁状態になり、エクアドルが親米派の大統領になると、亡命を取り消されて英国刑務所に収監され、ほぼ独房生活を強いられたと言われます。今回オーストラリア元首相のケビン・ラッド氏らによる種々の政治的働きかけで司法取引が成立しましたが、米国に対するスパイ容疑は成立したことになり、「米国の戦争犯罪を告発すること」=「国家機密の暴露で法に触れ」て有罪という事実を作ることによって権力側と痛み分けをしたことになります。
I. WEF2024(今年の世界経済フォーラム)の最重要課題は情報統制
グローバリスト達の世界支配のための定例打ち合わせ会議である世界経済フォーラムの今年の課題の第一は経済問題でも気候変動でも戦争でもなく「フェイクニュースをいかに取り締まるか」でした。主要メディアがいくら偏向した情報操作を行っても、BRICSやグローバル・サウスの国々のメディアは異なる真実を報道し、日本を除く西側の市民達は、主要メディア以外のオルタナメディアにアクセスする事でメディアに対するリテラシーを確立しつつあります。今年行われる選挙では主要メディアが勧める政治体制とは異なる政治団体、多くは「権威主義極右ポピュリズム」と主要メディアがレッテルを貼る団体が勝利することになるでしょう。権威主義的極右ポピュリズム政党はそれぞれの国家や民族の生活や独自性を重視して、世界統一的な経済や政治的運営に反対します。単純に「反グローバリズムで多極主義的」という内容です。
WEF開催前に公表された(Global Risks Report)で直近2年間で最も憂慮される事はMisinformationとDisinformationと明記
II. Global Engagement Centerと検閲産業複合体
以前のブログで米国にはジョージ・オーウェルの小説「1984」で描かれた真理省に相当する役所Global Engagement Centerがオバマ政権の時代に創設されて、既に政府の方針と異なる情報を偽情報と断定するなどして情報統制を行う中心として活動していることを紹介しました。Twitter(現X)の検閲について暴いたマット・タイビ氏はこのGEC、FBI、DHS(国土安全保障省)などの政府機関とスタンフォード・インターネット・オブザーバトリーなどのNGO、ニュースメディアが運営するファクトチェック機関などを検閲産業複合体(Censorship Industrial Complex =CIC)と名付けて民主主義、特に米国憲法が保証する「言論の自由(修正第一条)」に対する大きな脅威であるとしました。連邦最高裁は政府を含むCICがソーシャルメディアを含むコンテンツを検閲し、規制する事が憲法違反であるとする訴訟に2024年6月には判決を下す予定と言われています。Facebook、Google、X、You tubeなどのソーシャルメディア運営業者は通信品位法230条で、訴訟に対する保護を受けているのですが、政府はこの保護を喪失させることをちらつかせて内容の検閲を迫っていると言われ、実際政府の決定に沿わない内容のコンテンツは削除されてきたことは周知の如くです。
検閲産業複合体についてのレポート 政府の予算を得るシンクタンク内に検閲組織が設けられる事も多いという(マークされた機関)。
中心となるGECのホームページ
III. 日本も検閲産業複合体創設へ
日本はあからさまな政府の検閲は行われていませんが、運営業者による忖度に基づく自主的検閲はあります。しかしそれでは手ぬるいということで、総務省は「インターネット上のフェイクニュースや偽情報への対応」を公的な検討項目としてネットプラットフォーム業者や有識者との会合を重ね、2023年3月に対策報告書を公開しました。それによると、プラットフォームに対しては、プロバイダー責任制限法を整備し、検閲機関については、ボストン・コンサルティング社に業務を投げた上で、2025年までにネット上の偽・誤情報対策技術の社会実装に向けた開発・実証事業を公募した上で具体的に採択する、つまり「検閲産業複合体を公募して創設」するとしています。
検閲産業複合体を創設するにあたって、総務省は「概要」における目的に以下の様に記しています。
(引用)
2016年のアメリカ大統領選などを契機とし、新型コロナウイルス感染症、ウクライナ侵攻に関するものを含め、インターネット上のフェイクニュースや偽情報が問題となっています。
総務省では、2018年10月に立ち上げられた「プラットフォームサービスに関する研究会」の中で、「インターネット上のフェイクニュースや偽情報への対応」を検討項目の一つとして議論を行い、2020年2月に最終報告書(以下「2020年報告書」という。)を取りまとめました。
(引用終了)
総務省は手始めに2021年4月に「プロバイダー責任制限法」を公布、22年10月から施行することで、プラットフォーム事業者が情報の削除を行った場合、行わなかった場合の法的責任を明確にし、情報発信者の開示を請求できる権利などを明確にしました。まずは明らかな個人の権利侵害や公序良俗に反する内容について情報統制手段とする物ですが、25年以降実用化される「ネット上偽・誤情報対策」に援用されることを前提にしたものと思われます。日本は正に米国と同じ轍を踏もうとしている事が解ります。どこぞの命令で行っているのでしょうが、我々の税金を使って情報統制をすることが日本国民の利益につながるなどとお役人様が本気で考えているとは思えません。
総務省が手始めに2022年10月に施行された「プロバイダー責任制限法」についてまとめた図(ホームページから)
IV. 情報統制は末期を迎えたグローバリズム最後のあがきか?
明確に分類している評論は少ないですが、冷戦が終了して資本主義が世界で唯一の経済体制になると、「前期グローバリズム体制」として、中国を「労働を中心とする工場」、中東やオーストラリア、ロシアなどを「資源産出」、英米を「資本産出」で、欧州、日本などは「高度工業製品の工場」とする「国別グローバリズムの時代」が前期グローバリズムとして形作られました。
しかしこの時期に英米が輪転機を回すのみで資金を創出する不労所得で豊かになる国家となり、産業の空洞化が起こってしまいます。その後中国、ロシア、サウジアラビアなどの中東の国もユーラシアグループのイアン・ブレマーが2011年に明らかにした様に、「国家資本主義の政策」を取って資本を無から生み出す国の搾取を阻止して、国家内で資本、工業、資源を賄い、グローバル一極主義から多極化に向かい始めます。そしてグローバル資本は国家の枠を超えたGAFAMなどの寡頭資本に集約され、英米も富者と貧者の2極分化が進んでしまった。これが「後期グローバリズム」で今です。
解決策は巨大資本の分散化と多極化で空洞化した部分を国内に戻すしかないのですが、金と権力を持つWEFに集まるグローバリスト支配者が抵抗しているということでしょう。
国家の枠を超えたグローバリズムにとって、民族主義や国家主義による民衆支配はできません。可能なのは世界共通の知識である「科学の権威による民衆支配」(下図)しかありません。だから科学的真実ではないが、「科学的」とされる「地球温暖化」や「パンデミック対策」「遺伝子ワクチン」といった政策で民衆を従わせようとし、しかも「まっとうな科学的反論」を「偽・誤情報」として取り締まる必要があるのです。
科学は反証可能性が確保されて初めて真実に到達するきわめて厳しい世界です。グローバリストの我欲煩悩を満たすために利用され、その目的で情報統制などされては人類への害以外の何物でもありません。
科学的真実の確立(パラダイムの構築)には反証可能性が必須であり、疑問を検閲しては絶対にいけない(rakitarouによる大学の最終講義スライドから)
グローバル・エンゲージメント・センターは、米国国務省のグローバル・パブリック・アフェアーズ局内の機関です。2016年に設立されたその使命は、世界中の「米国、その同盟国、およびパートナー国の政策、安全保障、または安定を弱体化または影響を与えることを目的とした外国および非国家のプロパガンダおよび偽情報の取り組みを認識し、理解し、暴露し、対抗する」ための米国政府の取り組みを主導することです。
とあり、Wikipediaのアメリカ国務省の項目、
民間人安全保障・民主主義・人権担当国務次官(英語版) 民間人の安全に対する脅威を阻止し、脅威に対抗する国務省の取り組みを次官が行い、統治や民主主義、人権に関する問題について長官に助言する。
の最後の最後、たった1行だけ
紛争・安定化司令局(英語版)
再建安定調整課(英語版)
反テロリズム局(英語版)
民主主義・人権・労働局(英語版)
国際麻薬・法執行局
人口・難民・移民局(英語版)
世界刑事司法課(英語版)
世界青年問題課
人身売買監視対策課(英語版)
グローバル・エンゲージメント・センター(英語版)
アメリカ国務省国務省所管のGECが何をしているのか謎だらけなのですが、
ピッタリの毎日新聞記事を見つけました。今週の本棚
内田麻理香・評 『エビデンスを嫌う人たち 科学否定論者は何を考え…』=リー・マッキンタイア著、西尾義人・訳
2024/6/22
◆『エビデンスを嫌う人たち 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?』
筋金入りの科学否定論者と向き合う
(国書刊行会・2640円)
2017年のトランプ米大統領誕生とともに、科学的な事実が政治的な利益のためにねじ曲げられる「ポスト真実」現象が注目を浴びた。科学の世界では決着がついているのにもかかわらず、トランプ氏をはじめとする気候変動否定論者はその事実を認めない。科学否定論はこの気候変動に限らず数多くある。
本の中身は、地球が平だとの集会に参加して彼らの非科学性をコテンパンにやっつけるとの子供騙しの内容で、
「科学の世界では決着が付いている」と言い切る不真面目の極み
アマゾン
エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか? 単行本 – 2024/5/26
リー・マッキンタイア (著), 西尾義人 (翻訳)
地球平面説、気候変動否定、コロナ否定、反ワクチン、反GMO、そして陰謀論――
彼らはなぜエビデンス(科学的証拠)から目を背け、荒唐無稽な物語を信じてしまうのか?
地球平面説を出汁に、、気候変動否定、コロナ否定、反ワクチン、反GMO(遺伝子操作作物)など正体不明の危険物の全部まとめて、疑うことが陰謀論――だと排斥するアクロバット
サブタイトルがウクライナと共闘意識、小見出しに「語られない逆殺」
ポーランドの北部グダニスクは・・1980年、後に大統領になるレフ・ワレサ氏が労働組合「連帯」結成され
市内にある第二次大戦博物館は2017年に開設された。印象的なのは、ソ連、ロシアに関する展示の多さだ。ソ連の指導者スターリンの肖像画が並ぶ展示室のパネルには、ソ連が自国を礼賛したプロパガンダ・・・その奥のモニターには、現実のソ連をとらえた映像が流され、対比させる。(★注、ここまでなら反露キャンペーンなのですが、途中から180度、誰にも分からない様にコペルニクス的に転換する)
その博物館の一角に、「ボルヒニの虐殺」に関する展示がある。1943年から1945年にかけ、ウクライナの国家主義グループUPI(ナチスドイツの友軍ステファン・バンデラのウクライナ蜂起軍)が、現在のウクライナ西部からポーランド東部一帯で、ポーランド人約10万人を殺害した事件だ。
虐殺は長年、ポーランドはほとんど語られなかった。・・・負の歴史を語ることはソ連ではタブーだった・89年まで検閲制度があり、言論の自由も制限された。…虐殺の記憶は主に家族のかなだ家で語り継がれてきまして。
宮川裕章欧州総局長はウクライナ・ステパン・バンデラUPAがポーランド人10万人を鉈や斧など農具で10万人も殺して、ポーランド側の報復でウクライナ人1万人を殺したボルヒニの虐殺を書いているが、「もしトラ」が目の前に迫っていて、大慌てで「軌道修正」している模様。
毎日新聞サンデーコラムでは、
ポーランドのウクライナ支援は、言語や文化が近い親近感云々に続き、「近年のポーランドの経済発展を支えてきたウクライナ人労働者など、多くの要因が考えられる」と書いているが少子高齢化は日本だけの問題ではない。
ポーランドの特殊出生率は2003年には1・22と今の日本と同じ数字まで低下、その後少しは改善しているが2021年の2・33と長期低落傾向が続いているのです。
今のようにウクライナで『殺さぬように。生かさぬように」とダラダラ続き、戦争が長期持久戦になればポーランドなど周辺国の利益になる
白人でキリスト教徒のウクライナ難民労働者の流入は、人口減少のヨーロッパ全体が大歓迎なのでしょう