rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

第二回米朝会談とは何だったのか?

2019-03-08 23:27:32 | 政治

2019年2月27日から28日にかけてベトナムの首都ハノイで米国大統領トランプ氏と北朝鮮金正恩労働党委員長の2回目の会談が行われましたが、周知のように事実上の物別れに終わりました。会談前のにこやかな様子からも、基本的には合意できる前提で会合に臨んだはずですが、このような結果に終わったのはどちらに問題があったのか、現状では明確ではありません。約1週間が経過して少しずつ状況が判明してきましたが、今後より明らかになる事も見越して、現状でどのような分析ができるのか、備忘録的にまとめてみました。

 

予想された合意内容

 

米国としては、一括して即座にCVID「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」には至らなくても、期限が見える形でのCVIDの原則は約束させたかったはず。その見返りに部分的制裁解除をすることは「やぶさかでない」状況だったと思われます。前回のシンガポールでの会談以降、北朝鮮が取るべきCVIDの内容と米国の提供する相応の処置とは龍谷大学の李相哲教授によると以下になります。

北朝鮮の取るべき対応

1.出発点:北朝鮮の核・ミサイル実験の持続的な中断
2.核申告対象と範囲:核武器・ミサイル、核物質、生物化学兵器
3.査察と検証:すべての施設に対する米国専門家の査察と検証の許可
4.廃棄段階:核武器・ミサイル、核物質、生物化学兵器すべてを廃棄
5.最終段階:2003年、北朝鮮が脱退したNPT(核拡散防止条約)への再加入、IAEA(国際原子力機関)の査察の許可

それに対する米国の対応

1.経済:人道的支援、北朝鮮銀行に対する取引の緩和、輸出入制裁の緩和、投資許容
2.政治:旅行禁止措置の解除、連絡事務所、文化交流、金氏一家に対する制裁解除、テロ支援国家指定解除
3.安保:終戦宣言、米朝軍事協力、平和協定の締結および外交関係の樹立

この北朝鮮の取るべき対応を一度に全てではなくても良い(1と2に応ずる)という態度を米国が示したので今回の会談が設定可能となったと言われています。北朝鮮は寧辺にある核施設を廃棄することを示す事である程度の制裁緩和が得られると踏んでいた事は確かでしょう。寧辺は北朝鮮が国威をかけて作り上げた核実験施設群であり、これを破棄する決定は国内で軍を説得する上でかなり思い切った処置であった可能性があります。それはブンゲリの核実験場を爆破し、東倉里の長距離ミサイル発射台を解体したことなどで既に誠意を見せて来た北としてはかなり思い切った譲歩だったと思います。そして2016年から17年末までの間に国連が科した民政部門の制裁の解除を要求したと李容浩外相が会見をして発表しました(つまり全面解除の要求ではないと)。

 

どこが噛み合なかったか

米国は寧辺だけでなく、分江(プンガン)などにも地下濃縮ウラン工場があり、小規模な物を含めると寧辺以外で核兵器を年間2-3個は作る能力があると分析しています。米国としてはこれらも既に把握しており、核廃棄のスケジュールに載せてこなければ話にならない、としたのでしょう。しかし北はそれを認めれば本当の核廃棄になってしまう。今回ハノイに来るにあたって、首脳#1−3までを連れて国を空にして来ており、軍の虎の子を全て明け渡す約束を勝手にしたのでは寝首を掻かれる(クーデター)可能性さえあったかも知れません。だから正恩が「もう一歩を踏み出すことはない。」とトランプに指摘され、今回まとまらなくても国家として困る事がない米国は会談の席を蹴って退席したというのが実体ではないでしょうか。

かなり困った北朝鮮

2016年からの国連が科した経済制裁がかなり効いていた事は今回の北朝鮮の期待(メディア)、決裂してからの慌てぶりなどに現れています。また寧辺の核廃棄も国内の軍を説得するぎりぎりの線であった可能性もここに来て(3月8日)一度解体した東倉里のミサイル発射施設を復旧稼働させた事からも推察されます。某未来人の予言では2019年3月に北朝鮮がハワイに向けて核ミサイルを発射したことから第三次大戦が始まる、なんてことになってますが、あながち架空の話でもなくなってきたかも知れません。

 

上に対して復旧したとされる施設(下矢印)

 

これからどうなる?

金正恩の本音は核を廃棄して体制保証と制裁を解除してもらい、米国・中国の資本を導入、日本から資金援助をもらってベトナムのような繁栄を勝ち取りたい所でしょう。建国以来の国民への様々な非人道的処遇(強制収容所とか)も自分が国外にいた時点で先代の指導者や幹部達がやってきたことであり、自分に人道的な非はないことにしたいでしょう。行く末は国内において自分と利害を共にする同士達の協力をいかに得て、自分に反対する軍や政治幹部達に今までの非人道的政治の責任を負わせて粛正できるか、に掛かっています。逆に責任を負わされる立場の旧来の人達はいかに効果的に暴発して正恩を排除できるか(どこかで中国等と通じて)が正念場です。トランプとしては今回どちらに転んでもあまりマイナスにはならないので焦りはありません。あくまで北朝鮮にゆさぶりを掛けながら正恩氏が望む方向に持って行くのがディールの勝ちにつながると考えるでしょうが、反対派が暴発した時には、中国と連携してうまく収める(戦争にならないように)事を画策するでしょう。その中では韓国の文大統領はあまり役に立ちませんが、韓国軍の動きは掌握して在韓米軍といつでも行動を起こせるように準備だけはしておく必要がありそうです(基本的には米韓同盟の維持)。


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2 コメント

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Unknown (河太郎)
2019-03-14 17:21:34
rakitarou先生こんにちわ。春になりましたので変化いたしました。
記事を拝読しまして、金正恩が彼サイドで出来る範囲での妥協をしており、軍を掌握する為に譲れない線で破綻した事が良く理解できました。
確かに「国を空け」て会談に出向くのは、彼にしてみればクーデターのリスクはあるはずで、それだけ制裁が効いているのでしょうね。
そもそも核兵器がなければ最貧国に過ぎませんから、そう簡単には手放さないとは思ってましたが、彼自身の首が掛かっていると。
ただ…どう観ても人道の敵と言える統治をしてきた国ですが、まさか金正恩が責任を先代や幹部に擦り付けて無かった事にする…と考えておるとは思いませんでした。
しかし、確かに住民を金正日が戦車で踏み潰させた弾圧などは、彼が留学時代に起きている事です。やりようでは責任追及を逃れる方策はあるかも知れない。
但し、それは先代の業績を否定しなければならない部分も出てくるので、血統を根拠にするあの国の体制からして、かなりリスクのある論だとも思われますが。
何しろ彼は在日の息子でもあるし。それはあの国ではハンデになる事ですので。
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歴史は捏造するもの (rakitarou)
2019-03-15 07:51:32
河太郎さん
北朝鮮の内情は正直私も想像でしか解りません。しかし朝鮮や中国を見ていると、歴史は真実には関係なく、時の権力者に都合が良いように作文してそれを民衆(他国も含む)に信じさせれば良い、と考えているようです。中国ではルーズベルトと会談したのは毛沢東だと信じている人の方が圧倒的に多い。金日成が偽物であることは日本ではある程度知られていますが、北朝鮮ではもう忘れられているでしょう。韓国もしかりですね。
昨日はブログがアクセス1位に突然なって驚きましたが、タレントの麻薬騒ぎで拙ブログの麻薬の欄が参照されたようでした。当方としては悪い事ではなかったのですが、いろいろな事があるものだと思いました。
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