I. 新型コロナ感染症の現状(ピークは超えつつあるようだ)
2020年4月22日現在の世界の総感染者数は256万人、死亡者は17万7千人(感染者に占める死亡者の率6.9%)です。日本の感染者は昨日の時点で1.1万人、死亡者は277名(感染者に占める死亡者の率2.5%)です。日ごとの患者発生数の推移は図に示す様に世界的にピークは超えつつあり、それは日本も例外ではありません。これから日本もNYやイタリアの様に感染爆発が起こると言うのは根拠を示さない「単なるデマ」であり、客観的なデータはごまかす事はできません。
週毎の各国の集計では世界的に新規感染者数はピークを超えつつある
II. アジア諸国は重症化率、死亡率ともに欧米よりも低い
4月19日までの各国の罹患者死亡率 現在日本の死亡率はもう少し増加している(多分3月後半の欧州からの持込み=第二波による感染拡大のせいか)
これも当初から指摘されてきた事実ですが、感染者に占める死亡率が欧米よりも日本を含むアジア諸国が低い事も確かな様です。これについてはウイルスの型の違いが指摘されていた事(ドイツも中国から直接S型が入ったと言われる)も私は当初から指摘していました。また武漢における肺炎発生をDay0と考えると昨年の12月には日本でも新型コロナ感染が流行して、既に日本人の多くは抗体を獲得しているだろうと当初から私は指摘していましたが、京都大学からそれを裏付ける論文も出されました1)。またウイルスの型とは別に、新型コロナ感染を軽症にする宿主側の因子についての研究発表が増加しています。
III. 感染を軽症にする宿主側の因子とは
CoVid-19ウイルス感染の特徴として、(1)潜伏期間が長く、潜伏期間中も他への強い感染力を持ち、無性状で終わる感染者が多い。(2)咽頭から肺に感染が進むと急速に症状が悪化する。(3)HIVに類する遺伝子を持ち、T細胞に感染し、機能障害を起こさせる。(4)細胞への侵入、増殖には複数の経路がある、といった事が指摘されていて、いずれも新型コロナウイルスへの対応を困難にしている原因です。
(1) の特徴のために、世界中で都市のlockdown(封鎖)を行っているにも関わらず、犠牲が大きい割に効果は少なく、最終的にはlockdownはしない方がtotalのダメージは少ない結果が出ることは間違いありません。「都市封鎖が新型コロナ封じ込めに効果がある」という科学的根拠(論文やデータ)は全く出ていません。今からでも日本型の緩やかな外出自粛(スウエーデンの様な)に世界は移行するべきです。
(2) は治療を行っている医師達から良く聞く経過です。感染を軽症で済ませるか、中等症以上に悪化するかの重要な因子がこの段階にありそうです。アビガンなどの治療薬を呼吸器症状が出始めたら早期に使用する方が良いと言われるのもこの段階に進む事を抑止するために重要です。
(3) このT細胞への攻撃と宿主側の持つT細胞機能が「感染軽症化の鍵」となる最も重要な因子と思います。免疫には自然免疫と獲得免疫がありますが、ワクチンなどで得られる特定の細菌やウイルスに対する抗体を作る機能は獲得免疫に含まれます。新型コロナウイルスは変異を繰り返すために有効なワクチンを作りにくいという推測があります。また感染者が治癒してもウイルスに対する部分的な抗体は作っても感染力をなくす「中和抗体」(何が中和抗体として有望かは諸説)ができにくい人がいる事も報告されています3) 。この宿主側の違いこそが感染を軽微に終わらせる決定的な因子となりそうです。
T細胞が持つ機能の違いが、BCG接種の有無で別れる、という報告が増加しています4)。日本は強力なTokyo株をほぼ全世代で接種されているから重篤化しにくいという推測があります。前回のブログで泌尿器科医は膀胱癌治療にBCGを日常使用しているからその機能に詳しいという話をしましたが、米国からもMD Anderson cancer centerの(私も共著した事がある)Dr.Kamatが新型コロナにBCGが有効であることを発表し5)、メディアで取り上げられています。最近の研究では、BCGワクチンは結核菌に対する特異的な免疫機構だけでなく、ブドウ球菌などの細菌、カンジダなどの真菌(カビ)、黄熱病やインフルエンザといったウイルス疾患にも非特異的に免疫能を増加させる報告があります6,7)。
これは私の推測ですが、若い時に日本のTokyo株でBCGを接種して、十分効果が残っている人(ツベルクリン反応陽性の人)は、CoVid-19が感染しても無性状か軽症で済む様なT細胞(特にヘルパーT細胞2))の機能があり、高齢で既にツ反が陰性化した、或は糖尿病などの合併症で免疫能が落ちている人(図)は重症化する可能性があるという事ではないかと思います。
心疾患や糖尿病などがある場合の死亡率増を示す中国の報告
(4)についても(3)のT細胞の機能が大事と思いますが、一般的に宿主側の抗ウイルス機能を高める食生活として緑茶のエピガロカテキンなどが有用と紹介されています。これはお手軽でしかもエビデンスもあり良いと思います。詳しい分析はまだ途上であり、この因子を解決するのは容易ではなさそうです。結論としては、ワクチンや特効薬の見通しが全く付かない現在、宿主側の因子を解明してそれを有効にする事が「新型コロナ感染症を解決する最短の道」ではないかと私は思います。
参考文献
1)Kamikubo Y et al. Epidemiological tools that predict partial herd immunity to SARS coronavirus 2. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.25.20043679v1
2)Chen G et al. Clinical and immunological features of severe and moderate coronavirus disease 2019. J Clin Invest 2020.
3)Wu F et al. Neutralizing antibody responses to SARS-CoV-2 in a COVID-19 recoverd patient cohort and their implications.( https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.30.20047365v2)
4)Shet A et al. Differential COVID-19-attributable mortality and BCG vaccine use in countries.
5)Hegarthy PK, Kamat AM et al. Covid-19 and Bacillus Calmette-Guerin: What is the link? European Urology Oncology, https://doi.org/10.1016/j.euo.2020.04.001
6)Kleinnijenhuis J et al. BCG-induced immunity in NK cells: Role for non-specific protection to infection. Clin Immunol 2014,155:213-9
7)Leentjens J et al. BCG vaccination enhances the immunogenicity of subsecuent influenza vaccination in healthy volunteers: a randomized, placebo-controlled pilot study. J Infect Dis 2015,212,1930-8
代わりに引退した元看護師の彼女の母が現場に復帰してくれています。いま看護師ほかスタッフは全て過去に接種を受けている年代なのです。これをエビデンスにはできませんが。
院長も先生の記事に概ね賛同しています。
実際、小さな医院とはいえ、地域の患者様がどっと来院をされる状況下で、前回の投稿前後より10日以上を過ぎておりながら、誰も症状も陽性も出るスタッフがいません。
残念ながら搬送された患者様は亡くなられました。合掌。
しかし他に重症化した方は出ていません。
だからといって安心はできませんが。接する患者様は多数おられるます。なので我々スタッフに症状が出ず、体調をくずした(過労)者にも陽性が出ていない……。
あくまで現場の看護師としての私見ですが。院長を応援して下さるドクターも、先生の御意見には「敬弔に価すると思う」と仰るてますし。
政府や報道の見解とは異なる内容でしたが、このような
冷静な意見は大切と思えました。怖いですけれどね本音は。
我々も院長以下、地域医療の者として、頑張ります。
先生も大変でありましょうが、負けないで下さい。
そして、皆で乗り越えたいですね。
では、また。
都市部の開業医の方の診療所や医院では、閑古鳥で、逆に経営難になっているとの噂は本当なのでしょうか?
そうならば地域医療が別な意味で崩壊しないか心配です。
ほとんど農場と勤務先とのピストンで、それ以外に出る機会がなく、解らないのですが。
記事にも少し書きましたが、4月に入ってから流行しているコロナは3月後半に欧州などからの帰国者が持ち込んだ?毒性が強いタイプになっている様な印象があります。当院の患者さんも呼吸困難になってから重症化(人工呼吸器付ける)するスピードが明らかに速いです。階段で息切れがしたら要注意と思います。気をつけて下さい。