ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

田部重治『わが山旅五十年』1996・平凡社ライブラリー-明治から昭和にかけての自伝的山歩きの記録です

2024年10月13日 | 随筆を読む

 2023年10月のブログです

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 田部重治さんの『わが山旅五十年』(1996・平凡社ライブラリー)を読む。

 もう何回も読んでいるが、読むたびに明治時代から大正、昭和の日本の山歩きを楽しめる本だ。

 田部さんは、ご存じの人も多いかもしれないが、漱石門下の英文学者で、大学で英文学を教え、ワーズワースさんの詩などを研究されたかた。 

 そのかたわら、山の仲間と秩父の山歩きから始めて、日本アルプスなどを踏破し、日本山岳会の草創期のメンバーのお一人だったかたでもある。

 秩父の山歩きや日本アルプスの山登りなどの記録を記した田部さんの『山と渓谷』(新編・1993・岩波文庫)は日本の山の古典として有名だ。

 本書は、その田部さんの、自伝を含めての山歩きの記録で、興味深い。

 田部さんの文章は、英文学者なので当然かもしれないが、単なる山登りの記録ではなく、山歩きの美しさに読者をいざなってくださるところがすばらしい。

 文章が快活で、しかし、潤いがあって美しく、読んでいて、こころが落ちつくような感じがする。

 50年にわたる山歩きは多岐にわたるので、どこを読んでも十二分に楽しめるが、じーじの個人的には、笛吹川の沢登りや薬師岳の高原での思い出が大好きだ。

 リュックサックやテントがまだなかった時代に、ござや油紙を体に巻いて寝たりするところにはびっくりする。

 そういう時代の山登りや山歩きの記録がとても貴重で、楽しい。

 そして、こころ休まる。

 たまには、こういう山歩きを追体験してみるのもいいかもしれない。       (2023.10 記)

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 同日の追記です

 岩波文庫の田部重治『山と渓谷』(新編・1993)の編者である近藤信行さんの解説を読んでいたら、田部さんの東大英文科の卒業論文がなんと、キーツさん、らしい。

 まったくの偶然だが、自然の美しさを謳い、人生を考える田部さんの文章に、キーツさんやワーズワースさんが影響を与えているのかもしれない。

 

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野田知佑『風になれ波になれ-野田知佑カヌー対談集』1991・山と渓谷社-野田さんの素敵な対談集です

2024年10月12日 | 随筆を読む

 2022年10月のブログです

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 本棚を眺めていたら、すみっこのほうに、野田知佑さんの『風になれ波になれ-野田知佑カヌー対談集』(1991・山と渓谷社)を見つける。

 かなり久しぶりで、中身は当然忘れている。

 1991年の本だから、なんと31年ぶり(野田さん、ごめんなさい)。

 雑誌『山と渓谷』に連載された野田さんの対談シリーズをまとめた本だが、対談相手がすごい。

 椎名誠さんと椎名さんの奥さんの渡辺一枝さんは当然としても(?)、立松和平さん、倉本聰さん、C・W・ニコルさん、遠藤ケイさんなどなど、そうそうたるメンバー。

 じーじの大好きな人たちばかりで、じーじはそれぞれの人たちの本を何冊ずつかは持っているが、野田さんとの対談は、椎名夫婦を除いては初めてで、すごく面白い。

 毎回、野田さんと対談相手のみなさんが、全国各地の川でカヌーをして、お話をしているので、必然的に日本の川や自然や暮らしについてのお話になっていて、一種の文明批評にもなっている。

 倉本聰さんやニコルさん、遠藤ケイさんなどは、その田舎暮らしの経験からそれぞれに鋭い発言をされていて、刺激的だ。

 野田さんもいつになく(?)、インタヴュアーに徹していて、おもしろい(野田さん、再びごめんなさい)。

 また、渡辺一枝さんのお話は、なにか一編の詩を読んでいるようで、なかなかいい。

 とても素敵な本で、読後感がよく、気持ちがよくなる。

 都会暮らしで疲れた時には、また読みたいと思う本だ。        (2022.10 記)

 

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谷川俊太郎・徳永進『詩と死をむすぶもの-詩人と医師の往復書簡』2015・朝日新聞文庫

2024年10月08日 | 随筆を読む

 2015年のブログです

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 谷川さんと徳永さんの『詩と死をむすぶもの-詩人と医師の往復書簡』(2015・朝日新聞文庫)を読みました。

 お二人の往復書簡と対談の本です。

 感動しました。

 徳永さんはホスピスのお医者さんで,お二人のテーマは,死と詩。

 ただでさえ重いテーマですが,お二人の深い哀しみをふまえた真摯さと少しのユーモアで,生きているのもいいな,と思える本です。

 この時期,谷川さんの大親友である河合隼雄さんが脳梗塞で意識不明の時であり,大親友の容態を心配している谷川さんの発言は,読んでいても辛いものがありますが,しかし,大詩人の谷川さん,ある時には子どものように,ある時には老賢者のように,鋭い発言をされています。

 谷川さん自薦の詩もすてきなものばかり,久しぶりに谷川ワールドを堪能しました。        (2015.6 記)

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 2022年9月の追記です

 死というのは,、とても大きな、そして、難しい事実ですね。

 じーじも年をとって、周りには亡くなった人も多くなってきましたが、死を考えることはなかなか難しいです。

 しかし、死を恐れても仕方ないですし、まずは目の前の人生を精一杯、時には怠けながら、時には遊びながらも、生きていくことが大切なのかな、と思ったりしています。        (2022.9 記)

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 2024年1月の追記です

 河合隼雄さんと谷川俊太郎さんの対談『魂にメスはいらない-ユング心理学講義』(1993・講談社α文庫)を読むと、お二人の予断のない、真摯な対話の様子に感激します。

 すごい人たちは、分野を超えても、本当にすごいんだな、と感動します。      (2024.1 記)

 

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椎名誠『あるく魚とわらう風』2001・集英社文庫-シーナさんの映画『白い馬』上映奮闘記

2024年10月06日 | 随筆を読む

 2021年10月のブログです

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 本棚の上のほうにシーナさんの『あるく魚とわらう風』(2001・集英社文庫)を発見、読む。

 シーナさんの1995年から1996年にかけての日記で、集英社の『青春と読書』に「よれざれ旅日記」という題で連載されたもの。

 これがまあすごく忙しい本で、当時のシーナさんの超多忙ぶりにはびっくりさせられる。

 ちょうどシーナさんの映画『白い馬』が完成して、全国上映をしていた時期。

 新潟での上映会の時には、じーじも観にいって、シーナさんが映画の後にぼそぼそと挨拶をするのを聞いていたことを懐かしく思い出す。

 今から25年前、シーナさん52歳、じーじ42歳。若かったなあ!

 この頃、シーナさんは小説の執筆や文学賞の選考委員としても多忙で、その合間にあやしい探検隊としてのキャンプなどもこなしており、すごい!の一言につきる。

 登場人物も有名な作家さんたちが大勢出てきて楽しいが、中には意外な人、例えば、作家の北方謙三さんや檀太郎さん、脚本家の倉本聰さんなども出てきて、その交遊が楽しい。

 シーナさんファンでなくても、一作家の若き日の奮闘ぶりが楽しく読める貴重な一冊ではなかろうか。      (2021.10 記)

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 2022年9月の追記です

 『白い馬』の新潟での上映会の時は、じーじも県民会館まで観にいって、シーナさんを生で見てしまったんだよなぁ、と思い出す。

 シーナさんは新潟にはちょくちょく来られているし、東川にも行っているようだが、じーじはおっかけではないので(?)、どうもすれ違いだ。

 そういえば、村上春樹さんも生で見たことはないなぁ。

 そういうファンがいてもいいのかな、とも思うが…。      (2022.9 記)

  

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小林快次『恐竜まみれ-発掘現場は今日も命がけ』2022・新潮文庫ー恐竜発掘のおもしろいお話です

2024年10月03日 | 随筆を読む

 2023年9月のブログです

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 先日、テレビを見ていたら、モンゴルのゴビ砂漠で恐竜の化石を発掘する研究者たちのドキュメンタリーをやっていて、興味深く見た。

 おそらくはその研究者たちのメンバーのおひとりと思われる北海道大学の小林快次さんの『恐竜まみれ-発掘現場は今日も命がけ』(2022・新潮文庫)を読む。

 小林さんは恐竜で有名な(?)福井県の出身。

 子どもの頃からアンモナイトの発掘に熱中して、時にはアンモナイトを抱いて寝たこともあるという(すごいですね!)。

 アメリカの大学で恐竜の発掘を研究し、イギリスの学術雑誌『ネイチャー』に論文が載るほどの専門家でもある。

 2005年に北海道大学の先生になり、2014年に北海道むかわ町で「むかわ竜」を発掘した。

 そんな小林さんの恐竜発掘のお話であるが、これがとても面白い。

 発掘現場は命がけ、とは、恐竜の発掘現場が、アラスカ、ゴビ砂漠、カナダ、などなど、自然環境の厳しいところが多く、研究というよりは探検のような仕事になることをさしている。

 そんな探検のような発掘作業がユーモラスに記される。

 時には危険な目にも遭いながら、地道な発掘作業を続け、世界的な発見に繋がる様子は感動的だ。

 しかし、おそらく毎日の仕事は地味なのであろうし、食生活などもかなり地味だ。アラスカではくまさんとのかくれんぼもスリリングだ。

 じーじならとても耐えられないだろうし、学者さんも大変だなあと思うが、学問とはそんなものかもしれない。

 専門家になると、素人には見えない、わからない化石が見えてくる、というところは、なかなか示唆的だ。

 臨床でもそうかもしれないと思うし、他の分野でもそうかもしれないが、専門家というのは、素人では見えにくいものが見えると同時に、新しい発見にこころが開かれている存在なのかもしれない。

 いろいろなことを考えさせてくれるいい本だった。      (2023.9 記)

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 数日後の追記です

 今日、テレビを見ていたら、ゴビ砂漠での恐竜発掘のドキュメンタリーの再放送をやっていた。

 小林さんがメンバーのひとり、というより、小林さんを中心とした番組で、小林さんのすごさを再確認させられた。

 たくさんの恐竜の足跡を発見して、当時の恐竜たちの生活が見えます、とおっしゃる姿はプロだと思った。       (2023.9 記)

 

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北杜夫『どくとるマンボウ航海記』1965・角川文庫-シーナさんおすすめの楽しい航海記です

2024年10月02日 | 随筆を読む

 2021年10月のブログです

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 シーナさんの本を読んでいたら、北杜夫さんの『どくとるマンボウ航海記』(1965・角川文庫)をほめていたので、すごく久しぶりに読んでみる。

 じーじの持っている文庫本は1973年発行。

 定価140円。

 ちょうどじーじが大学に入った年だ。

 講義をきかずに、こんな本を一所懸命に読んでいた日々を思い出す。

 改めて読んでみると、この本、とても面白い。

 マンボウ先生のはちゃめちゃな行動が痛快。

 しかも、さすが、北杜夫さん、文章がうまい。

 やはりすごい小説家だ。

 シーナさんがほめるだけあって、冒険本としても一流だ。

 すっかり大航海の気分を味わう。

 それにしても、当時140円で買った文庫本を50年近く後でも楽しめるのは、本好きの醍醐味だろう。      (2021.10 記)

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 2022年9月の追記です

 今回で2回目のアップだと思うが、前回も今回も、いいね、をたくさんいただいて恐縮する。

 ただ、本書のブログを書いているかたが少なくてさみしい。

 いい航海記なのに、もっとたくさんの方々の感想を読んでみたいと思う。

 本書だけでなく、『マンボウ青春記』や『マンボウ医局記』なども傑作だ。

 ぜひ、これらの感想文を読ませてほしいな、と思う。      (2022.9 記)

 

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椎名誠『にっぽん・海風魚旅 怪し火さすらい編』2003・講談社文庫-シーナさんのフォトエッセイです

2024年10月01日 | 随筆を読む

 2021年9月のブログです

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 本棚を眺めていたら、読んで!読んで!と訴えられているような気がして、つい読んでしまいました。

 シーナさんの『にっぽん・海風魚旅 怪し火さすらい編』(2003・講談社文庫)。

 かなり久しぶりです。

 週刊現代に「海を見にいく」と題して連載されたシーナさんのフォトエッセイをまとめたもの。

 本の帯には、旨いモノ、そして原色の子供に出会った、とありますが、日本各地の子どもたちの生き生きとした表情がとても魅力的で、じーじはこれを見ているだけで、じわーんとしてきました。

 旅をした場所は、土佐、能登、西表、瀬戸内、五島列島、北陸、甑島、そして、野付半島、などなど。

 シーナさんがあとがきで、海を見にいく、じゃなくて、海を食いにいく、だった、と書いていますが、おいしいものをたくさん食べ、当然、おいしいビールもたくさん呑み、そして、きれいな景色とすてきな人々の写真をたくさん撮っています。

 もっとも、シーナさんのこと、今の日本の不必要な海岸工事や投げっぱなしの産業廃棄物、さらには、過剰な管理や注意書きには苦言を呈します。

 しかし、それ以上に、地方の人々の素朴さや子どもたちの礼儀正しさに感動をします。

 まだまだ地方にはきれいな景色や素朴な人情が残っているのだなと改めて感心させられます。

 そういう良さを旅では発見できるのかもしれないと思うことができます。

 また旅に出たくなってきました。

 本書は続編も出ていますので、そちらも楽しみです。       (2021.9 記)

  

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野田知佑『ユーコン漂流』2019・モンベルブックス-野田さんと愛犬ガクのアラスカ・ユーコン川漂流記です

2024年09月21日 | 随筆を読む

 2022年8月のブログです

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 野田知佑『ユーコン漂流』(2019・モンベルブックス)を読む。

 東川の道の駅にあるモンベルに、いい本はないかな?と(いい服は?でないところがじーじらしい!)入ってみたところ、ペーパーバック版の本書を発見。

 以前、文庫本で読んだことがあるが、そろそろ中身を忘れてきていたので(?)、購入。

 値段も手頃で、なかなか格好いい本なので、袋は断わって、手に持った。

 表紙のカヌーにのる野田さんとガクの写真がいい。

 本書は野田さんと愛犬ガクが30年ほど前にアラスカのユーコン川を3年に分けてカヌーで下った記録。

 カヌーによる川下りだけでなく、現地のインディアンやエスキモーとの交遊がとても楽しい。

 現地の人々とうまく付き合えないでいる欧米人とは対照的に、野田さんの表裏のない態度での現地の人たちとの付き合いが面白い。

 そして、アラスカといえば、クロクマ。

 クロクマとの付き合い方も面白い。

 野田さんは一応、ライフルを購入するが、結果的にはライフルは鈴の役目で終わる

 クロクマの居そうなところにテントを張る時には、鈴の代わりにライフルを数回撃ち、人が居ることを知らせて、遭遇を回避する。

 それでだいたいの危険は回避する。

 一度、ガクが森の中でクロクマと闘い、野田さんのテントに逃げてくると、野田さんはライフルでクロクマを威嚇し、追い払う。

 そして、ガクに、逃げる時には、あっちへ逃げろ、と怒ると、ガクが恐縮して小さくなった、という描写には思わず笑ってしまう。

 また、食べ物がなくなって困っている時には、ガクがサケの頭を見つけてきて、それを野田さんと半分ずつ分けるなど、野田さんはガクとも対等の付き合いをする。

 そういう野田さんの姿がすがすがしいのだと思う。

 社会のゴタゴタで嫌になった時に、読むといい本だと思う。      (2022.8 記)

 

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加藤周一『言葉と戦車を見すえて-加藤周一が考えつづけてきたこと』2009・ちくま学芸文庫

2024年08月12日 | 随筆を読む

 2022年8月のブログです

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 加藤周一さんの論文集『言葉と戦車を見すえて-加藤周一が考えつづけてきたこと』(2009・ちくま学芸文庫)を久しぶりに再読する。

 やはりすごいな、と思う。

 本書には、1946年の「天皇制を論ず」(「大学新聞」)という論文から、表題になった1968年の「言葉と戦車」(「世界」)、そして、2005年の「60年前東京の夜」(「朝日新聞」夕陽妄語)までの60年間の論文、27本を収録する。

 その間、論旨が一貫していて、少しもぶれていないところがすごい。

 天皇制、敗戦と終戦、憲法9条、民主化と圧政、官僚制、教科書検定、再軍備、などなど、ふだんはなかなか見えにくい政治の動きが、とてもクリアに見えるところが本当にすごいと思う。

 そして、それを書く勇気。かなり大変なことではないかと想像するが、その勇気もすごいと思う。

 1968年の論文「言葉と戦車」はソ連のチェコスロヴァキアへの軍事介入を論ず。

 現在、進行中のロシアのウクライナ侵略と似たような構図だが、いずれも大国の横暴が露わだ。

 同じ時期、アメリカはベトナム介入を続けており、加藤さんは東西の大国を分け隔てなく批判する。

 アメリカ、ソ連はその後もあちこちで介入や戦争を続けているが、両国政府の言い分とその国民感情への加藤さんの視線は鋭い。

 そして、それは、翻って、戦前、日本が朝鮮や中国、東南アジアの国々を侵略し、それを日本国民が支持し、知識人がきちんと抵抗できなかったことへの反省に繋がる。

 目の前の問題をきちんと見て、小さいうちに対処していくことの大切さ。

 官僚制、教科書検定、君が代・日の丸、などなど。

 権力は、一見、スマートな装いで、じわじわと国民の自由を奪う。

 戦前と同じことを繰り返してはいけないと思う。

 加藤さんの本は、問題をクリアに見ることを可能にしてくれると思う。     (2022.8 記)

 

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加藤周一『夕陽妄語1 1984-1991』2016・ちくま文庫-ベルリンの壁と湾岸戦争を視る

2024年07月14日 | 随筆を読む

 2019年のブログです

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 加藤周一『夕陽妄語1 1984-1991』(2016・ちくま文庫)を再読。

 「夕日妄語」は加藤さんが朝日新聞に月1回、連載をしていた社会時評で、当時、じーじはライヴで毎月、楽しみに読んでいた。

 加藤さんは『羊の歌』以来、冷静な社会分析が魅力的だが、「夕陽妄語」でも、その冷静さはすごい。

 いろんな事件が起こり、加藤さんの分析に学ぶところが多かったが、その加藤さんが、予想できなかった、少なくともこんなに早くは、と語らせたのが、ベルリンの壁の崩壊。

 そういうことを隠さずに正直に書く加藤さんもすごいと思う。

 湾岸戦争前夜の加藤さんの筆も冴える。

 戦争前、イラクとアメリカの軍事行動がエスカレートする中、それでも戦争までは、戦争だけは避けるのでは?という祈りに似た語りをよそに戦争に突入、加藤さんはアメリカを止められなかった国連のあり方を検証する。

 その流れに流されずに、とことん冷静に分析をする姿はやはりすごい。

 そして、アメリカ追従の日本を分析し、行く末を懸念し、さまざまなことがらに話が及ぶ姿は、考えることの大切さを伝えてくれる。

 読んでいて、勇気をくれる本である。      (2019.3 記)

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 2022年春の追記です

 ベトナムとイラク、アフガニスタンでの失敗が、今回のウクライナでのアメリカの慎重さにつながっているのかもしれない。 

 戦争に慎重なことはとてもいいことだと思う。

 民主的な国々と連帯をして頑張ってほしいとせつに願うところだ。       (2022.4 記)

 

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