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村上春樹『村上春樹・雑文集』2015・新潮文庫-「普通」の中に「意味」を見つけること

2024年10月19日 | 村上春樹を読む

 2015年のブログです

     *  

 村上さんの『村上春樹・雑文集』の文庫本を読みました。

 単行本が出たのが2011年でしたので,久しぶりの再読です。

 文庫化に当たって,あとがきと各文章への短いコメントが追加されたので,楽しみが倍増しています

 単行本の時に読んで,今でも覚えていた文章もありましたし,まったく忘れていて(ごめんなさい,村上さん),あらあためて新鮮に読めた文章もありました。

 中でもじーじが一番好きな文章は,やはりエルサレム賞・受賞のあいさつ「壁と卵」。

 あまり政治的な発言はしない村上さんですが,ここでは,弱いものの側に立つ,という村上さんの文学者としての決意と覚悟を述べられていると思います。

 もうひとつ,今回,印象に残ったのは,村上さんの敬愛するジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクさんの言葉。

 あなたの弾く音はどうしてそんなに特別な響き方をするのか?と質問をされて,モンクさんはこういいます。

 新しい音なんてない,鍵盤をみなさい,すべての音はそこにすでに並んでいる,でも君がある音にしっかり意味をこめれば,それは違った響き方をする,君がやるべきことは,本当に意味をこめた音を拾い上げることだ,と。

 村上さんはこれをふまえて,こう書きます。

 新しい言葉なんてどこにもありはしない,ごく当たり前の普通の言葉に,新しい意味や,特別な響きを賦与するのが我々の仕事なんだ。

 どうです,意味深い文章でしょう。

 カウンセリングにも通じるような言葉です。

 いい本を再発見できました。      (2015 記)

     *   

 2018年夏の追記です

 「普通」の中に「意味」を見つけること、その大切さって、やはり重要なことのように思います。

 人生だって、そんなにいいことや楽しいことばかりが続くわけではありません。

 むしろ、「意味」の見いだせないような、一見、単純な、退屈な、同じようなことのくり返しが多いのかもしれません。

 しかし、そのような繰り返しの中に、ひょっとすると大切なこと、「意味」のあることが潜んでいるのかもしれません。

 それに気づけるか、それを見つけられるか、で人生の「意味」は違ってくるように思います。

 「普通」の中に「意味」を見つけられること、それが小さな幸せにつながりそうです。       (2018.8 記)

     *

 2019年春の追記です

 久しぶりに再読をしました。

 やはり印象的なのが、「壁と卵」とセロニアス・モンクさん。勇気をもらえます。

 今回の発見は、かきフライのお話(今ごろ気づくのもなんですが)。

 他の本でも少し出てきましたが、自己を語ることとかきフライを語ることの関係について村上さんが述べます。

 そして、この本では、理論だけでなく、村上さんのかきフライのお話が出てきて、これがとてもおいしそうですごいです。

 ごはん前にこれを読んじゃうと、かきフライしか食べれなくなりそうです。

 やはりすごい小説家です。       (2019.4 記)

     *

 2020年冬の追記です 

 東直己さんの『残光』を読んでいたら、モンクさんが出てきました。東さんもファンのようです。

 村上さんと東さん、共通点が見つかりました。        (2020.1 記)    

  


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