弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

事務所開設13年目!
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【知財記事(著作権)】「フリー素材」は「フリー」じゃない!?

2023年12月01日 09時04分57秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
薄雲浮かぶ師走初日の空@湘南地方です。
昨夜あたりから空気もだいぶ冬らしくなってきました。

さて、今日はこんな記事。

(読売新聞より引用)
=================================
フリー素材と思い込み…市立中の「ほけんだより」でイラスト無断使用、著作権侵害で作者に賠償

大分県中津市は27日、市立本耶馬渓中が「ほけんだより」に使用し、学校のホームページ(HP)にも掲載した柔道のイラスト1点に著作権の侵害があり、大阪府在住の作者に損害賠償金25万3000円を支払う専決処分を行ったと発表した。処分は10月16日付。今月28日開会の市議会12月定例会で報告する。
(以下略)
=================================
(引用終わり)

いわゆる「フリー素材」。「フリー(free)=無料」とつい思ってしまいがちだが、それはちょっと早合点。
例えば「フリー素材」の代表ともいえる「いらすとや」にも利用規約がある。
前提として、著作権は放棄していないということ。
そして、商用利用にも基本的には寛容だが(20点までは無料で可)、それ以上の場合有償対応となること
が明記されている。

他のフリー素材サイトも程度の差こそあれ概ね同様だ。
素材について完全無料をうたっている場合、通常はそのサービスを使うにあたってサブスク契約を行うのが通常だ(Adobe Stockが代表的)。

…まあそもそも、
“有料になる場合もある”のに「フリー素材」と謳うことが認められている状況がよろしくはないんだよな、というのが個人的感想。
そしてユーザ側のあるべきスタンスとしても、
人が動いているのにタダなわけないじゃん!? ということ。
只より高い物はない、ということ。

いくら世の中が変化し、通信技術が発達し、情報化社会が進展しても、人間と人間とが行うのが商売であり、
人間自体はが悠久の歴史の中でさして進化していない以上、商売の基本は変わらないよね、と思っている。
取引の一当事者だけが一方的にトクするなんて状況は、基本ない。
…と思っているし、それは自分が今まで生きてきた中で自然と身につけた考え方だけど、
今の時代の方々にとっては普遍的なモノノミカタではないのかな。。

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【知財記事(商標)】G-SHOCK 2度目の挑戦で「立体商標」獲得

2023年10月31日 09時08分06秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
曇り空の@湘南地方です。

多少筋肉痛がマシになってきました。今日は普通に歩けそう。

さて、今日はこんな記事

(日経XTRENDより引用)※太字、着色は当職が行いました。
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カシオG-SHOCKの知財戦略 2度目の挑戦で「立体商標」獲得

2023年6月、カシオ計算機の「G-SHOCK」が、ロゴも文字もない形状だけの立体商標として特許庁に登録された。G-SHOCKは、1983年の発売から40年が経過した今も八角形のベゼルが特徴の初代のフォルムを採用し続けており、同社にとって代表的なデザイン。しかし立体商標の登録は2005年に1度却下され、今回、ようやく登録に至った。

(中略)
申請に当たっては、ロゴや文字ではなく形状自体が広く認知されていることを裏付ける必要があった。そのため、G-SHOCKの特徴的な形状に加え、同じ形状を長く使い続け、それが広く認知されていることを示す資料を用意した。

資料の一例が、これまで、雑誌や新聞といったメディアに取り上げられた掲載記事だ。中でも、「耐衝撃性を突き詰めた形」や「初号機にして完成形」など、形状について言及があった記事を多く集めた。他にも発売当時の資料や、様々なブランドとのコラボレーション実績、宣伝広告などの実績を収集した。

カシオ計算機 開発本部 知的財産統轄部知財渉外部部長の松村聖子氏は、「発売後からの資料をしっかりとそろえ、提出することが重要。それが、この形状の継続使用の証拠になる」と言う。
(以下略)

===================================
(引用終わり)

登録情報がこちら
履歴をみると、当然のように拒絶査定不服審判までは上がっている。
というのと、現状異議申立てがかかっている模様(詳細はオープンになっていない)。

商品の形状それ自体の立体商標の登録には、原則的に周知性の立証が不可欠。
記事中にも写真が載っているけど、周知性の立証は基本「キロ単位」ないし「箱単位」。
昔からの使用の証明がメインになるので、(提出形態は電子化されたものになるとしても)元データは紙媒体、ということが多い。

「商標登録を受ける」ということは、同時に「他人の自由を制限する」ということも意味する。
特に商標登録は一回権利が確立すれば、その後は更新手続きにより半永久的に権利保持が可能な制度設計になっている。
したがって、商品の形状それ自体についての登録を認めることについて、特許庁サイドはどうしたって慎重にならざるを得ない。

今回は約17年の時を経て2度目のトライだったとのこと。
期間の経過とともに実績は積み重ねられていくから登録にプラスな材料は増えていく。
その一方で第三者による類似形状の商品も世に出回ることになり、商品形態それ自体が普遍化していってしまう、というマイナスの側面もある。

商品の形状それ自体が出所表示としての機能を獲得する、そういうケースは市場で確かに存在する。
商品の取扱い主体としてはその状態を恒常化させたいから、登録を目指す。
同業他社としては、とりわけ商品の形状デザイン選択は制限されたくないから、権利化を阻止する方向で動く。
行政庁としては競争秩序の維持の観点、バランスの観点から登録の可否を判断する。

そうやって考えると、立体商標の登録というのは、「営業努力の積み重ね」と「他社の選択の自由」を天秤にかけた結果、
前者がより重たいと判断されて初めて成立する。その立証が「キロ単位」になるのはある意味必然でもあるわけだ。
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【知財記事(商標/著作権)】ひこにゃんが緩くなった。

2023年10月24日 08時56分25秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
今日も今日とて快晴な@湘南地方です。

だいぶ空気が涼しくなってきました。
気持ちの良い時期はあっという間に過ぎ去っていくものです。
今をしっかり味わっておきたいものです。

さて、今日はこんな記事、というかリリース

(彦根市Webサイトより引用)
===================================
9月22日プレスリリース:ひこにゃんの商標使用緩和と実写ポーズ追加について

ひこにゃんの商標使用拡大によるひこにゃんブランドの推進を図るため、令和5年3月の緩和に加えて、下記のとおり、商標使用に係る規制緩和を行います。
また、実写版のひこにゃん商標ポーズについては、すでに11ポーズ追加し、合計12ポーズとしておりますので、あらためてお知らせいたします。
===================================
(引用終わり)

「実写版」のひこにゃん、ってなんだ?? と思ったら、着ぐるみのやつだった。
著作権法的観点でいくと、
“ひこにゃん”という架空の人(?)格が著作物なのではなく、
ひこにゃんをモチーフにした一つ一つのイラストや写真が著作物。
なので、ポーズ追加ということは、利用可能な著作物の数が増えたということ。

気になってこのサイト見ていたら、「鳥人間コンテスト」とのコラボイラストもでてたのね。
あと、現在は無償化実証実験期間中。
そうねー。自治体のキャラクターであれば、“身内”から使用料として取るよりも
地域の産業振興に結び付けて税収増を図った方が得策かもねー。

てなわけで火曜日。今日も頑張っていきましょう。
夕方からはおでかけの用事あり。そこまでは全力ダッシュで。
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【知財記事(商標)】「ラーメン県そば王国」(山形)

2023年10月23日 09時14分12秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
快晴の@湘南地方です。
すっかり空気が秋っぽくなりました。
こうやってあっという間に冬がやってくるのだろうなぁ…。

プロ野球の方も、各球団で「戦力外通告」が出されています。
まだ活躍できるだろうになぁ・・と思う選手も多数。このシーズンオフはどんな“フルーツバスケット”が行われることか。

さてさて、今日はこんな記事

(河北新報より引用)
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山形は「ラーメン県そば王国」 県がキャッチフレーズを商標登録申請

山形県は18日、県の新たなキャッチフレーズとして「ラーメン県そば王国」を商標登録申請したと発表した。県内自治体がラーメンを活用した観光誘客に相次いで取り組んでいることを踏まえ、全県を挙げて知名度向上や消費拡大に取り組む。
申請は16日付で、2カ月程度で受理される見通し。今後は動画投稿サイト「ユーチューブ」やインスタグラムを活用した情報発信を強めるほか、県の観光ウェブサイトに特集ページを新設する。
(以下略)
===================================
(引用終わり)

何をもって“2カ月程度で受理される見通し”なのか不明だが(そもそも「受理」って…?)、
16日付け出願なのでまだデータベースに反映されておらず、指定商品/指定役務をどうしているかもわからないが、
うどん県」が登録になっているから「ラーメン県」も…ということなのかしらねぇ。

うどんだと、まあそこまで異論はでない(とはいえ秋田の稲庭うどんだって長崎の五島うどんだって有名だと思うけどね)が、
ラーメンだと全国各地ご当地ラーメンがあるしなぁ…昨日も「牛骨ラーメン」を食してきた(どこだか判る方は結構ラーメン通なのではないかな?)。
そばだってそうだ。

まあ、「ラーメン県そば王国」全体で不可分一帯なものとして捉える分には独占性を認めても良い、ということになるのだろうか。
商標登録を認める、ということには、「権利者以外の自由を制限する」という側面も含まれていますからね。
ともあれ、審査の帰趨を見守りたいと思います。


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【知財記事】IP BASE AWARD

2023年10月16日 11時25分48秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
やや曇り空の@札幌です。

バタバタと作業中、そんな中メモ的にブログ書き込み。

今日はこんな話。

ASCII STARTUPより引用)
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特許庁が知財戦略に優れたスタートアップを公募 第5回「IP BASE AWARD」
エントリー開始のお知らせ

特許庁は9月25日、第5回「IP BASE AWARD」のエントリーを開始した。エントリーの締切は2023年12月7日、受賞候補者の推薦の締切りは11月30日となっている。



スタートアップ部門、スタートアップ支援者の2部門から構成され、エントリーの中から選考委員会による審査を経て、グランプリ(スタートアップ部門:1者、スタートアップ支援者部門:最大2者)が選出される。2024年3月上旬にグランプリ発表と授賞式を実施する。
==================================
(引用終わり)

この手のビジネスプランに関するコンテストって、その目線で探してみると結構色々あるのね。
スタートアップにとってみれば色々な角度から自己のビジネスに対するアイデアを貰えたりして、悪くない環境なんじゃないかな。
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【知財記事(商標)】スマイルアップ

2023年10月06日 08時35分28秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
雲一つない快晴の@湘南地方です。

昨日久々10km走って、身体が少し軽い♪
やっぱり運動大事。

さて、今日はこんな記事

(まいどなニュースより引用)
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ジャニーズ新社名に「SMILE-UP.」→ロースハムとベーコンに同じ読みの商品 プリマハムの「スマイルUP!」ネット民ざわつく

性加害問題で揺れるジャニーズ事務所の新社名が「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に決まった。ネット上では、同じ読み方のロースハムとベーコンの商品・プリマハム「スマイルUP!」があると、ざわついている。
(以下略)
===================================
(引用終わり)

で、検索してみた。




見てのとおり、プリマハムに限らず、「スマイルアップ(SMILE UP)」は多数出願、登録されている。
smile up at - で「(-に)微笑みかける」という意味。商標としては採用しやすいポジティブな、イメージの良い言葉。
リストにもあるし記事中にも言及があるように、旧ジャニーズ事務所は「SMILEUP! PROJECT」なる事業をコロナ禍期に実施しており、
そこから持ってきた模様。
ただ現況にあって上記意味合いを持つ商標を社名として採択する、というのは…被害者感情的にはどうなんでしょうね。

まあ、当事者ではないので個別具体論には深入りしませんが、
・ポジティブな/イメージの良い言葉 というのは、商標でもバッティングしがち
・ポジティブな言葉が、他の影響力のある主体も採用することで“持ってかれてしまう”可能性は、商品/サービスの類否関係なくあり得る
・そんなことはネーミングの段階では全く予期できないことではあるが、
 「ありものの言葉」よりは「作りこんだ言葉」の方が、そうした交通事故的な事象には遭遇しづらい
とは言えそうです。
今回の件でプリマハムやその他の企業が殊更不利益を被ることはないとは思いますが。

名前選び、大事ですね。ではまた。

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【知財記事コメント】ふるさと納税と知財経営…?

2023年09月29日 09時05分21秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
曇りですが空は明るめな@湘南地方です。

実質月末。
やることやらねば…と思ってやっていたことの一つが
「ふるさと納税」。
…いや、今年の業績落着がどうなるかなんて、まだこの時期じゃ全然わからないんですけどね。
返礼率?が来月から大幅に下がるらしいので、どうせやるなら9月中にやっとこうかと思い、
「例年並」な感じでやってみた。
お気に入りのものもあるけど、どちらかというと普段お世話になっている地域への貢献を優先。

さて、今日はこんな記事

(MURCから抜粋)
===================================
ふるさと納税への返礼品の出品は、知財経営の入り口

例えば、事業者側が、自社製品を返礼品としてPRするために、写真や文章を市町村側に提供することが一般的だと思うが、市町村側の募集要項をみると、「事業者の責任において、当該権利の利用に関して必要な承諾を得ることとする」といった記載がある。

とはいえ、webを活用したネット販売の経験が豊富な事業者であれば対応も容易であると思われるが、著作権に関する知識を持っておらず、対応に苦慮する事業者もあるだろう。また、製品の名称やロゴなど、商標にかかわる権利関係も確認したことがない事業者も多いのではないか。
===================================
(引用終わり)

確かに、普段から知財上の問題に接している事業者ならばケアの勘所はわかるものだが、
初めてふるさと納税に出品しまーす、今までEC経験ありませーん
だと、何がOKで何がNGなのかの判断基準もないから知らずに色々やらかしてしまいかねないなぁ、とは思う。

それでまあ、上記記事では「知財総合支援窓口」を活用しよう! という話になっている。
それはそれでひとつの答えではあるけど、場当たり的ではない根本的な知財ケアの方法論を身につける必要はあるんじゃないかなぁ、
特に今後自社商品を積極的にプロモーションしていこうという場面では。

そういうときは、ぜひ近くの弁理士に声をかけてみてほしい、と思うのです。
先日「ルビーロマン」の話題も取り上げたけど、世間一般、
“わからないことをそのままにしがち”だなぁ、と思う。
一度専門家にお声掛けいただければ、何が必要で優先順位はどうか、という結構有益な情報がもらえる、と思うんですよね。

あとは、コストの話。
もともと想定していない費用だから掛けられない、というメンタルはわからなくはないのだけど、
実は「本来想定していなければいけなかった費用」なんだ、ということを理解した人から解決していくのをたくさん見ています。

“あなたのブランド、そのコストも掛けられないほど価値が低いものですか?”
という問いかけは、少し乱暴なんですかね。

でも、適切な保護を受けて事業を前に進めていくために
1)時間と手間と労力をかけて自分で勉強して解決する
2)餅は餅屋でプロに任せる
だと、自身も何らかのプロとして商売している人ほど「2)」を選択する。

知財は、コスト(費用)ではなく、インベストメント(投資)。
そう捉えられると、事業リスクはより低減しスピードは上がっていく、と思うのです。

そんなことを思いながら上記MURCのコラムを読んでいた次第。
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【知財記事(農水知財)】「ルビーロマン」

2023年09月28日 09時42分34秒 | 知財記事コメント
おはようございます!

快晴の@湘南地方です。
ここんとこピンボールのようにあちこち動き回っていて
自分がどこにいるのか、今日が何曜日なのかがわからない(笑)

でまあ、今日はホームポジションにいますが、この後またお出かけ予定。
暑そうだな…。

さてさて、標記の件。
記事はこちら

(読売新聞オンラインより引用)
===================================
石川県産高級ブドウ「ルビーロマン」、開発当初から商標登録できず…「県職員の理解不足」原因

石川県産の高級ブドウ「ルビーロマン」が、開発当初の2007年から日本国内で商標登録できず、名称を誰でも使える状態になっている。登録制度に関する県職員の理解不足などが原因。同様の問題は他品種でも起きており、国は農産物に関する制度の啓発に力を入れる考えだ。
(以下略)
===================================
(引用終わり)

理解不足、というよりは勉強不足、が正しいような。。
「あまおう」の事例なんか、もう20年近く前からあちこちで語られていたと思うんだけどなぁ。
※「あまおう」の品種登録名は「博多S6号」。
 品種としての保護と、マーケット上の名称保護とを分けて考えると正解はこうなる。
※ただし、「あまおう」も商標保護の戦略では少しだけ綻びもある=他社が「菓子及びパン」については登録をしている
 まだ今ほど有名ないちごになっていなかった頃のこと。加工品の展開可能性も見越して権利取得できればよかったのだろうが
 当時は予算措置的にも難しかったのだろう、と想像。

ともあれ、お仕事としてやるのならば「自分でめちゃくちゃ勉強する」か、「外部専門家に頼る」かは必須、だと思うんですけどね。
予算確保してないと頼めないんですかね。そんな硬直的にやっている結果生じる不利益の方が、住民の方にとっては遥かに受け入れがたいんじゃないかなと思います。
担当者さんのミス、というよりは組織の問題じゃないかと。

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【知財記事(商標)】「アディダス」vs「トムブラウン」

2023年09月19日 07時52分23秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
曇り空の@札幌です。
世間的には連休明け。頑張りましょう。

さて今日はこんな記事

(WWDより引用)
====================================
「アディダス」VS「トム ブラウン」のストライプ商標権侵害訴訟、第二ラウンドに突入

一審判決では「トム ブラウン(THOM BROWNE)」に軍配が上がった「アディダス」とのストライプ商標権侵害訴訟だが、「アディダス(ADIDAS)」が、ジェド・ラコフ(Jed Rakoff)判事が「(商品の)販売時点で(消費者が両ブランドの商品を)混同する可能性」に関して陪審員に不正確な説明を行ったと主張し、再審請求を行ったため、法定バトルは第二ラウンドに突入している。

「アディダス」はそのほかにも、判事が「アディダス」側が用意した専門家のうち、1名の証言を排除する決定を下したが、「トム ブラウン」の専門家にはアパレルへのストライプの使用に関する証言を認めたことを「不可解な決定」だと主張する。これに対して「トム ブラウン」側は8月、判事の説明はミスリーディングなものではなく、「トム ブラウン」が用意した専門家の証言は「『アディダス』を害するものではなかった」と反論し、再審請求を却下するよう求めている。
====================================
(引用終わり)


3本線と4本線じゃ、違うわよねー。。。と思っている。
一審の経緯はこちら
「アディダスはストライプを独占していない」との一言がすべてのように思うが…。


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【知財記事(商標)】「AFURI」

2023年08月31日 08時59分11秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
暑さの裏側に、ほんの少しばかり秋の気配が漂っているようにも感じる@湘南地方です。

さて、初見でチラッと調べた時になかなか厄介だったのでなんとなくスルーしていたのですが、
“解説して!”のリクエストをいただいたので本日取り扱う標記の件。
既にいろんなメディアが取り上げているけど、遅まきながらちょっとだけ掘り下げ。

※裁判所係属中の事件ですが、本記事は複雑な背景事情を少しでも整理することを意図したもので、
 その結果を予見するものでも一方当事者に加担するものでもありません。
※情報ソースは、各当事者のWebサイト、J-Platpat、及び審査基準・逐条解説・過去の審決/判決例です。


読み物として書くとあまりに冗長になるので、講義ノート的に。
ーーーーー
【事案の整理】
[当事者]
(原告)AFURI株式会社:ラーメンチェーン店
(被告)吉川酒造株式会社:酒造会社

[使用状況]
(原告)企業サイト
 ※サイトを見る限り、「飲食物の提供(=ラーメン屋)」の範疇にとどまる使用。ただし、以下記載あり。
「当社は、2017年からアメリカで日本酒を提供してまいりましたが、新事業の一環として、日本国内で日本酒事業への進出を図っており、現に国内外数店舗において、下記の「AFURI」ブランドの日本酒の提供を開始しています。
当社は、この日本酒事業の進出のために、2020年に日本酒に関する「AFURI」の商標登録(登録番号第6245408号)を取得致しました。新事業への進出に際して、その分野であらかじめ商標登録を取得する行為は、必要なことです。
しかしながら、期せずして新型コロナ感染拡大により、新事業である日本酒事業への進出を一時的に中止せざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。コロナ禍の状況がやわらぎ、新事業である日本酒事業を再開しようとした矢先に、酒蔵を保有している吉川醸造社が、大手不動産会社であるシマダグループ株式会社によって買収され、酒蔵の再生ビジネスとして、吉川醸造社が、日本酒に「AFURI」を使用して販売している事実が発覚しました。吉川醸造社は、「雨降山」を意味する「雨降」を商標登録しておりますが、「雨降」だけでなく、当社が日本酒に関しても登録している「AFURI」を使用していたのです。吉川醸造社が当社の商標権を侵害していることは、下記の写真を見れば明白です。」

(被告)オンラインショップ
  ラベルにて「雨降/AFURI」の態様で使用。
 ※そのほか、原告側サイトにて以下の使用態様を摘示されている。
  
  

[出願/登録状況]
以下、酒類に限定。
(原告)
第6245408号「AFURI
 ※追記:2023/8/16付けで無効審判請求されてますね。 またそれ以前に2023/5/12に判定請求されています。
  「無効審判」は、その登録を訴求的に消滅させるための手続き、「判定請求」は特定の使用行為が本件商標登録にかかる商標権の効力の範囲内かについて、特許庁の公権的見解を求める手続きです。いずれも被告サイドが請求したものと推測されます。

第6609896号「AFURI/阿夫利
第6609897号「図形+AFURI
第6646765号「阿夫利

他、これらの商標を出願中

(被告)
第6409633号「雨降」 ※無効審判係属中(無効2022-890068)

他、これらを出願中

【問題の所在】
1.両社サイトから垣間見える争点
(被告サイトより)
「また、当社は「雨降」の読み方としてローマ字のAFURIと記載していること、またそもそも「阿夫利」「あふり」は地域・歴史・文化に根差した名称であることから、当社商標の使用はAFURI社の商標権を侵害するものではないと考えております。AFURI社にご理解を求めてきましたが、訴訟に至ったことは誠に残念です。」

(原告サイトより)
上述の通り。
・日本酒事業実施の動きは過去にあった。
・コロナ禍でペンディングになっていた。
 ※約3年間というのがミソ=不使用取消の対象となる期間が経過

2.原告は、実際に「日本酒事業」を国内において実施しているのか?
 ※個人的には、ここが「?」と思っている。
  単に自己の飲食店での提供にとどまる(つまり、保護範囲とはズレた範囲での使用)ではないのか?この点事実確認が必要。
  ただし、
  :サイトの文書の限りでは、現状実施している(商標の使用をしている)
  :“一時的に中止”→不使用取消の可能性は不明(訴訟に及んでいる以上このリスクは消していると思うが)

3.地名「阿夫利」は、指定商品「日本酒」において独占対象となるのか?
 →地名は、原則的には独占対象にならない。
 
4.地名を欧文字表記した「AFURI」は、指定商品「日本酒」において独占対象となるのか?
 ここは、商標法3条1項3号の「普通に」の解釈の問題
(過去の審決例)
 ○「NANAO」が「七尾」のローマ字表記と理解される場合があるとしても、産地販売値表示とは言い得ないとした例(S58-24230)
 ○「Maiami」がフロリダの「Miami」の表音と同じだが綴り字が異なり造語と認められた例(2018-16297)
 ×「BISYU」「BISHU」が「尾州」のローマ字表記と認識され、産地販売値表示とされた例(2017-7221)
 ○「TORIDE」が「取手」の表音をローマ字表記したものだとしても「砦」のそれともいえるから「取手市」を常に想起させるとは言い難いとされた例(2009-1637)
  ↓
 「AFURI」が直ちに/一義的に「阿夫利」を想起させるといえるか?
 そうならば3条1項3号の要件を満たさず無効理由を有することになり、また現状も商標権の効力が及ばない(26条1項2号)。

(審決例を踏まえた考察)
 ・「ローマ字表記」でも、商標法に言う「普通に表示」に該当する、とされる例はある。
 ・問題は、当該表示(本件では「AFURI」のローマ字表記)が「産地販売地」と認識されるか?
 ・なお、「阿夫利山」は、神奈川県伊勢原市にある大山の“通称”。
  “通称”について商標法上の「産地販売地」と認定された例(かっぱ橋道具街(2005-5704)、アメ横(H06-9345))と認定されなかった例(はざま湖畔(S62-2354))両方ある。
  個人的な所感としては「阿夫利」自体が「かっぱ橋」や「アメ横」ほどの周知性を得ているとは言えず、まして「AFURI」のローマ字では尚のこと特定の地名を想起することは難しいのでは?という心証。

5.被告の登録商標が「雨降」であるのに対し使用商標が「雨降/AFURI」あるいは「AFURI」単体である点について
 いずれも、「登録商標の使用」ではない (※商標登録を受けて使用可能な商標は、「登録を受けた商標それ自体」であって類似の範囲には及ばない)
 “当社は「雨降」の読み方としてローマ字のAFURIと記載していること”は、抗弁として成り立つか?→成り立たない。

6.被告登録商標に対する無効審判の中身の推察
 おそらく、“[アフリ]の称呼を生じる→先行である原告登録商標と類似(4-1-11)”との主張か。
 →認められれば登録が消滅して被告にはダメージがある、認められなければ「AFURI」部分がフリガナであるとの主張自体が成り立たない。
  ※3条も主張しているかもしれない。

【所感】
(1)係争の形勢としては、原告の主張に妥当性があるように思われる
 (事業開始に先立って権利保護、少なくとも被告の使用態様は形式的には侵害であることは明らか)
 主観的な話だが、この形勢にあって原告代表者がSNSで吐露した心情は、理解できなくはない。ただ作戦としては良くない。
 法律上は「商標を使用した商品の廃棄請求」は可能だが、それを大々的に振りかざすことは一般感情を刺激する。

(2)被告の勝ち筋としては、
 :「AFURI」は地名「阿夫利」の普通表記なので独占性無し+26条(地名を普通に表示)
 :「雨降」は造語なので登録妥当。かつそこから生じる称呼は独占性を生じない部分、という主張?
  →その表記としての「AFURI」には効力及ばない
 ※当職所感としては既述のとおり上記主張はやや無理筋。「AFURI」が直接一義的に地名としての「阿夫利」には繋がらない。

(3)本質的に商標権侵害訴訟は、「利益を独占しようとする権利の亡者」と「自由を侵害される無謬な善人」の構図に映るもの。
  特に“一定程度公共財”としての性質を帯びている、と世間一般に考えられがちなもの(「ギコ猫」とか「ゆっくり茶番劇」とか)に関して独占を試みた時は特にそう。
  実際に制度上、商標登録で享受できる利益は「他人の自由の制限」の元に成り立っている利益。
  しかしそれは、一定の競争環境下において、「先願主義」をはじめとした法秩序として予め規定されていること。
  事業を恙なく進めるべく予め手を打っていた原告が世論的に不利な立場に立たされてしまう、というのは、
  今なお世間一般の知財リテラシーが十分な水準に至っていない、ということの証左といえるかもしれない。
  (って、これを書くと叩かれるのかなぁ…。でも大多数の同業者の率直な実感だと思う) 

  本件は、「地名そのものの独占」というよりは、「地名に由来する名称」「法上独占性を否定されないレベルの周知性しか得ていない通称」の独占の話、
  と理解すべきもの。
 
(4)一方で被告の落ち度は、「登録商標と使用商標が異なること」。結果、登録商標は現状の使用態様について保険になっていない。
  直近の出願でも、「先願主義」という観点で、原告に劣後している(原告の①②③の方が被告の①②よりも先願)。

  また(これは推測だが)出願時に商標の構成要素として「AFURI」を入れなかったのは意図的で(原告登録商標が先行していたから)、
  登録可能性を上げるための判断だったのではないか?

(5)もっとも、“地名にちなんだ名称を独占すること”までもがフェアではない、というのが、場当たり的な法解釈ではなく体系全般を踏まえた上で
  「社会的通念」に照らして一般的、ということであれば、今後検討の余地はあるのかもしれない。
  いずれにしても本件に関しては、専門家が双方就いた上で法的な見解が相違している以上、司法の場で争うよりほかない状況というのは理解できる。

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