弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

事務所開設12年目!
本ブログがKindle本に!「アマゾン 三色眼鏡」で検索!!

【弁理士の日記念ブログ2024】知財業界での教育

2024年07月01日 05時00分00秒 | 名作シリーズ(笑)
※本日は予約投稿!
 弁理士の日を記念してドクガクさんこと内田浩輔先生が毎年してくださっているこの企画

今年のテーマは、「知財業界での教育」。

まあおよそ教育論をぶてるほどの知見もない身ですので、
自分が受けてきた教育の話からします。

私が知財業界に足を踏み入れたのは2001年のことです…すげー昔だな。
それまで銀行員をやっており、全くカルチャーの違う業界にやってきて色々ギャップを感じたのは事実。

「営業」という概念があまりないこと。”今月の数字をどうやって作るか?”の話を他の所員の方にして目を白黒されたのは良い思い出。
また、チームワークで仕事を進める、という考え方があまりないことにびっくりした。なんて個人主義だ、と。

一方で、法定期限に対する厳格さには驚いた…いや、勿論前職にも期限の概念はあったんですけどね。
書き言葉に対するエグいレベルの厳密さ。

まあ、その業界ごとに流儀はあり、これにフィットする人は生きていけるしそうでない人は無理せず退出した方が良い。
それはどの業界でもそうなのだけれど。
たぶん「教育」って、ある程度その業界の「ワク」に嵌める、という意味合いも少なからずあると思う。
一旦「常識」を受けいれ、それを自分のものとし、発展改善させて他の人に伝授していく。
守破離 の考え方。

その意味で、この業界入って間もない頃に当時の師匠に
机の横で立ちんぼ2時間で自分の作成した書面に赤入れしてもらったのは、
今となってはありがたいことだと思っている。
当時30歳前後。まあ客観的には「大人」なわけで。
「大人」になって教育をしていただける機会と言うのはそんなにない(ものだと当時は思っていた)。
一個一個考え方を身につけていかなければこの業界で生きていけないんだよな、と
半ば命綱に縋るように必死で指導に耳を傾けていた。

「コンテンツ(=中身、知識)」を教える、ということと、「フレーム(=考え方、居構え)」を教える、ということ。
教育というとつい前者に目が行きがちだけれど、実際のところ業界で永らえていくのに必要なのは後者。
前者は、ある意味自分がどん欲に知識を追い求めていけば手に入るけど、
後者は、頭で判っていてもできないこともある。「○○道」のような、生き方に通じるところもある。
で、前者の教えを通じて後者を学ぶ、というのがたぶん一番しっくりくる。
生きていくために必要なのは「パン」ではなく「パンの作り方」だ。

また特に「文章の書き方」は「その人の生き方」とリンクするところがある。
知財業界は、その意味で因果な商売だなと思う。
生き様が、生業に顕れる。

上で「師匠」という言葉を遣ったのは当時勤めていた事務所のボスの一人だけど、
私の場合あれこれある選択肢の中から師事したわけではなく、言うならばご縁と成り行きだ。
でもそれはとても幸運なことだったし、微塵も後悔は無い。
結局、人のご縁は選べるようで選べなくて、でもずっと歩んできた道が何かしら出会いに作用しているんだろうな、としか思えない。

その師匠に繰り返し言われていたのは、
「お前は素直だねぇ。その素直さは大事にしなさい。」
という言葉。
自分の内心としては結構ヒネくれている方だと思っていただけに当時はとても意外だったが、
今となっては何となくわかる。というか、気が付けば言われたようになっている。
思えばあの言葉が、私にとっての一番の「教育」の賜物だったのかもしれない。
師匠も、戦前生まれの、どっしり筋が通っている方だった。

教わったことに自分なりのプラスアルファを付加して後世に伝える。
知財業界への貢献の仕方も色々あるけど、たぶんこれが一番大事なことなんじゃないかな、と思っている。
それは、世間や時代や環境やツールが変わっても多分変わらないこと。
まだもう少し先のことではあるけど、ちゃんとバトンを渡せるように生きて仕事をしていたい、と思う次第である。

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【毎年恒例】流行語大賞で学ぶ商標2023(第4回)

2023年11月20日 04時00分00秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます…って、予約投稿な@湘南地方です。
現在外は真っ暗です。

さて、今年の本シリーズも今日で最後。
今日はこんなネタ。

====
(4)ジェンダーとかいろいろ賑やかな時代に…「頂き女子」

今回のリスト、例年3分の1くらいは判らないものだったりするのですが、
今年はある程度聴いたことがあるものだったり(意味が判らないものも含めて)したのだけど、
この「頂き女子」はほんとに聞いたことが無かった。
…そんな流行った言葉なん?
で、ググってみた

(以下記事引用)
====
「頂き女子りりちゃん」を名乗り、恋愛感情を利用して金をだまし取るための指南書を販売、自身も複数の男性から金を詐取したとされる女の公判が始まった。
一連の捜査では、言葉巧みに中高年を翻弄して計約2億円を得る一方でホストに金をつぎ込みナンバーワンに導くほど没入、負の連鎖の深みに陥る様子が浮き彫りになった。
====

すげー、マニュアルまであったんだ。で、2億円。んで、それをホストにつぎ込む。
なんというか現代の食物連鎖…?

まあ騙される方も悪いよな気がするんだけど。
それはさておき。

商標的に「○○女子」がどの程度あるのかちょっと調べてみた。
(代表的なものを抜粋)


上記以外にも
「餃子女子」「持ち家女子」「筋肉女子」「ものづくり系女子」「ヤキニク女子」「デジタル女子」などなど。
ギャップを狙った結合商標が多い感じかな。

ついでに「○○男子」も調べてみた。
(同じく抜粋)


上記以外にも
「化粧男子」「真珠男子」「豆乳男子」「サンリオ男子」「石けん男子」などなど。
やっぱり、ギャップを狙った組み合わせが目立つかな。

とはいいつつも、
「食パン」「肩こり」「腹筋」などは「○○男子」も「○○女子」も両方あり、商品毎に使い分ける感じかな。

こんなジェンダー騒がしい時代に「男子」だ「女子」だ殊更強調するのもマーケティングでは難しいような気もするけど、
まあターゲットを特定するという意味では有効なんだろうなぁ。
騙さずにストレートに、大事。

~~~~
というわけで今年もやってまいりました
「流行語大賞で学ぶ商標」、このあたりで終わりとさせていただきますm(__)m

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【毎年恒例】流行語大賞で学ぶ商標2023(第3回)

2023年11月12日 08時13分38秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます!
小雨模様…?な@成田です。
人生初LCC、まもなく搭乗です。

さて、掲題の件。今日取り扱うのは…

====
(3)偉い人の考えることはわからん(「twitter」→「X」)
 SNS「twitter」の名称が「X」に変わったのは今年7月24日のこと。
 もともとラジオと親和性の高いメディアだったtwitter、
 それ以降しばらく(今も…?)
 “さて、番組への投稿は、エックス、旧ツイッターでつぶやいて…いやポストしてください”
 というたどたどしい案内がされている。

 こういう状態を見聞きして、「元プリンス」を思い出してしまったのは自分だけ…?

 さてさて、商標法的な観点で言うと、アルファベット一文字からなる商標は原則的に登録にならない。
 条文的には3条1項5号。

~~~~
(商標登録の要件)
第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
(一~四、六は省略)
五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標

   ↓
商標審査基準 3条1項5号
3.「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」について
(1) 「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」に該当するものとは、例えば、次のものをいう。
 (ア) 数字について 数字は、原則として、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」に該当する。
 (イ) ローマ字について
   ① ローマ字の1字又は2字からなるもの
 (以下略)

~~~~

もちろん、「X」一文字であったとしても、顕著に装飾がされるなどで外観上特徴がある場合は上記規定にかかわらず登録になる。
この点、現状の日本での出願はというと…


(上記は出願の一部。入りきらなかったので…)

全部、一般的な書体。これだと、原則的には独占性なしで拒絶されることになる。

もっとも商標法には「使用による顕著性」という考え方がある。
原則的には上記のとおりでも、使用の結果何人かに係る商品/サービスである、と認識されている場合には
例外的に登録が認められる。

~~~~
第三条
2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

~~~~

本件も、この制度を前提として出願しているものと思われる。
ただ、独占性の有無って「ゼロサム」というよりは「強弱」。
アルファベット一文字は、無いか限りなく弱いの部類だと思うし、、、どう判断されるかなぁ。。。


まずは上記の右側のロゴで権利確保すれば良いのじゃないかなぁ、と思うのだけど。


また、こちらの記事のとおり、USではXを先行して使用している権利者から侵害訴訟を提起されている。
USは日本とは商標の考え方がちょっと違うので日本でも同様のことが起きるというわけではないとは思うけど、
せっかく確立してきていたtwitterブランドを捨ててまで飛び込むところだったのかなぁ、というのが率直な印象。


とまあそんなところで次回へ続く。
次回が多分今年は最終回。
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【毎年恒例】流行語大賞で学ぶ商標2023(第2回)

2023年11月10日 08時53分21秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます!
雲が少し重ためな感じの@湘南地方です。
身体もなんだかちょと重ため。ま、運動不足ですわな。

さてさて、掲題の件、今日は第2回。

====
(2)無敵の笑顔で荒らすメディア♪ 「推しの子」

そうか、これ今年の話なんだ…と思ってしまう。
確かに、アニメ始まったのは今年の4月から。第1回が90分と超長く話題に。
OP主題歌「アイドル」の動画再生回数が1億回を超えて話題になったのが5月の話。
…なんだろ、とおおおおおい昔のことのように感じてしまうわー。

原作の連載自体は2020年に開始してて、まだ連載中、なのね。
当方単行本派(アニメも実は観てない)で、ストーリー的には相当佳境に入ってきていると思っていたので、意外。
個人的にはあかね推し。

さて、そんな「推しの子」、実は集英社ががっちり商標登録している。
保護の範囲(指定商品/指定役務)としては、第9,16,28,41類の審査基準どおりの記載をべったり。
いわゆるエンタメ系全般(ゲーム、書籍、おもちゃ、娯楽施設等)、といったところ。

まあこれだけブームになればグッズ展開も多いにあり得るところだしね…とおもったものの、
実際のところ各週刊漫画雑誌の出版社さんは連載漫画のタイトルを結構積極的に保護している。
[集英社]「遊戯王」「テニスの王子様」「るろうに剣心」「NARuTO\‐ナルト‐」他。
 タイトルによって保護している範囲に違いがあるのも面白い。「ナルト」では第8類(刃物関係が含まれる)も保護したりしている。
 タイトルの一部(例:「剣心」「鬼滅」)についての保護も積極的に行っている。模倣態様の可能性の一つとしてケアしているのだろう。
[小学館]「からくりサーカス」はあるけど、他あんまり見当たらないなぁ…と思ったら、キャラクタービジネス、映像化ビジネス関係は「株式会社小学館集英社プロダクション」というところでやっているのね。そっちでの登録が多数。
[講談社]「BLUELOCK\ブルーロック」「化物語」「東京卍リベンジャーズ」他

もとは一つの漫画作品だったものが、ノベライズされ、アニメになり、2.5次元になり、付随してグッズが展開され、PS5でゲームになり・・といったように
良質なコンテンツの持つ力はインフレ的にかつ加速度的に拡大していく。
そのスピードに合わせたタイミングでの保護を怠っていると模倣品が出てきて排除に時間とコストを要してしまう。
ほんと、そのあたりはセオリーもあるけど神経も遣う。

とまあそんな感じで、次回へ続く。
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【毎年恒例】流行語大賞で学ぶ商標2023(第1回)

2023年11月09日 08時50分30秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます!
薄雲広がる@湘南地方です。明日はお天気崩れるみたいで。

さて、気が付けば11月も半ばに差し掛かっており。
掲題のような話題も巷では取り上げられたりして。

「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞
今年は第40回の節目とのこと。

これまでの大賞ってどんなのだったかなー…なんて思ってググッてたら、
ちゃんとまとめてくれているサイトがあった。
そうか、「村神様」ってまだ去年の話なんだ。。。まさにTime fliesだなぁ。

このサイトを見て改めて知ったのだけど、
かつては「新語」と「流行語」がわかれていたし、初期の頃の流行語は“確かに流行語だったよなー”と感じるものが多い。
いや、ノミネートされる語の中には”それって言葉として流行った??ただの商品名だったり、イデオロギーのおしつけじゃない????”
とおおきな「?」が頭に浮かぶものも少なくないが、
大賞には比較的納得いくところがある。

そもそも今でも「現代用語の基礎知識」って売ってるのかな…?と思ったら、ちゃんと売ってるのね(それもKindle版も)。

さてさて、今年は流行語からどんな商標的な学びがあるかな?
ということで行ってみます。

====
(1)日本シリーズも終わりましたね… 「A.R.E.」
 先週末、激闘が繰り広げられた日本シリーズ(阪神ーオリックス)も阪神の4勝3敗で幕を閉じ、NPBの公式日程は終了。
 いやぁ…しゃーない、今年は強かった。
 トップバッターと4番が揺るぎないチームはやっぱり強い。
 村上の覚醒、そしてルーキー森下がきっちり戦力になり。
 
 そんな阪神の2023シーズンスローガンが、「A.R.E.」。
 皆[アレ][アレ]言ってたけど、ほんとは[エーアールイー]らしい。
 Aim
 Respect
 Empower
 の頭文字で「A.R.E」。

 で、そんなスローガンやロゴをきっちり保護していた…かというと実はそうでもなく、
 現在出願係属中(商標はこちら)。
 出願日は2023年09月15日。
 その前日の9/14に阪神のセ・リーグ優勝が決定している
 35類の小売等役務を中心に幅広く5区分を保護。
 出願してもすぐに登録になるわけではなく、そこそこ期間はかかる。
 経過情報を見ても早期審査をした経緯もないので、ファーストアクションが来る頃にはとっくにキャンプインしている。
 
 まあ、出願はしておいて、何か模倣品とかでたら金銭的請求権(※)で西勇輝ばりの鋭いけん制をしよう、というところなのかな。

 ※「金銭的請求権」:
商標登録出願人が出願内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、出願商標を指定商品または役務について警告後設定登録前に使用した者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払いを請求できる、という制度(商標法第13条の2)。
 「警告をすること」「出願人が実際に出願商標を使用していること(そうでないと”業務上の損失”は生じない)」が条件。


 それにしても、スローガン自体は2022年12月の段階で決まっていたのだから、その段階で保護すべく動けばよかったのにね。
 リーグ優勝が決まってから出願するというのは、お財布のヒモが固いというかなんというか…

 
とまあ、そんなわけで次回に続く。
 

 

 
 
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【恒例】流行語大賞で学ぶ商標2022(第4回)

2022年11月30日 13時19分39秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます!
寒さも少し和らいだ今朝の@湘南地方です。

サムライジャパン、決勝トーナメント進出おめでとうございます。
にわかにすら満たない立ち位置なので何も語ることはありませんが、
影山優佳が世間に見つかった感があるこの予選リーグでした。

さて、そんなサッカーの盛り上がりをよそ目に、掲題の話。
記事はコチラ

(NHK NEWS WEB_熊本 NEWS WEBより引用)
================================
新語・流行語大賞の年間大賞に「村神様」が選ばれる

ことしの「新語・流行語大賞」が1日発表され、年間大賞には、プロ野球、ヤクルトの村上宗隆選手の活躍で広く使われるようになったことば「村神様」が選ばれました。
「新語・流行語大賞」は1年の間に話題になった出来事や発言、流行などの中からその年を代表することばを選ぶ賞で、ことしは30のことばがノミネートされました。
この中のトップテンが1日東京で発表され、年間大賞には、プロ野球で56本のホームランを打つなどの活躍をみせたヤクルトの村上宗隆選手に対し、SNSからニュースまで広く使われるようになった「村神様」が選ばれました。
(以下略)
================================
(引用終わり)

さすが地元。大々的に報じています。
好意的に報じていただいていてうれしく思います。

さてさて、世の中にはどんな神様が商標登録されているのか、ちょっと調べてみました。


エビだったり猫だったり…まあ色んな神様が登録になっています。
商標の登録要件との関係で行くと、「神様」の語自体は概ねほとんどの指定商品/役務との関係で品質表示にはあたらないことから、
先後願の問題さえなければ登録になるものと考えます。


ちなみに、「学問の神様」は太宰府天満宮がきっちり保護しています。

リストにはしてないですが、「ロマンスの神様」だったり「トイレの神様」といった楽曲のタイトルについても
出願・登録がされています(前者は1件出願中、後者は登録多数)。
楽曲のタイトル自体は著作物ではないですし、商標として採択しても通常は問題がないです。

その他、七福神=大黒天(だいこくてん)、毘沙門天(びしゃもんてん)、恵比寿天(えびすてん)、寿老人(じゅろうじん)、福禄寿(ふくろくじゅ)、弁財天(べんざいてん)、布袋尊(ほていそん)
についても検索してみたところ、やはり縁起が良いからなのかそれぞれに登録商標が多数…ただ、寿老人は現在活きている権利がない状況。
知名度がもう一つなんですかね。福禄寿、大黒天あたりが件数が多く人気でした。

さてさて、そんな感じで神様に多数囲まれ年末に向かってまっしぐら。
今年の「流行語大賞で学ぶ商標」もこの辺で。皆さまよいお年をお迎えください(まだ早い)
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【恒例】流行語大賞で学ぶ商標2022(第3回)

2022年11月10日 08時57分28秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます!
窓越しに見える空には雲一つない@湘南地方です。

さて、「流行語大賞で学ぶ商標2022」今日は第3回。
今日のお題はこちら。

(3)「知らんけど」 ~方言は意外と登録になりやすい…?~

確かに、本来的な意味での「流行語」というと、この「知らんけど」は2022年によく耳にした。
ああでも流行語、というよりは、一地域で当たり前に使われていた語が全国(というか首都圏?)に波及した、というのが正解か。

ノミネートの説明はこちら。
文末に付けて、断定を避け、責任も回避する言い方。関西の人のロぐせでもあり数年前から使われていたようだが、ここへきて関東でも目立つようになった。責任逃れというだけでなく、すべてをひっくり返すような面白さを若い世代が感じて話題になっているようだ。

使われてたの「数年前」よりは前じゃないかと思う。知らんけど。

さて、流行りに乗っかる出願が多い商標の世界。
実際こんな出願があったが、「独占性がないよ」ということで拒絶されている。
この出願には情報提供がされており、そちらを踏まえた拒絶理由の要旨は以下のとおり。
(「知らんけど」の語は)主に関西地方の方言で、「他の人は知らないけど」、「確証はないけど」といった意味合いで自分の発言の信憑性について責任を回避する際などに用
いられる語として広く認識、使用されているものであり、また、被服をはじめとした商品について地域への愛着を喚起させるデザインとして一般に使用されてい
る実情がうかがえるものです。
 そうしますと、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者は、上記ありふれたデザインと認識するにとどまり、自他商品の識
別標識としての機能を果たし得ないといえ、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と判断するのが相当です。


…むむむ、反論したら覆る余地があったんじゃないかなぁ、とも思わせるところもあるけど、ひとまず拒絶になっている。

ちなみに、こういう綴りにすると登録になっているし、権利者さんは実際に使用をしているようだ(各自でググってね)。

ちなみに、「知らんけど」に類したワンフレーズ関西弁、結構登録になっている。
第4691596号「なんでやねん」(日清食品ホールディングス㈱:第30類)
第6279844号「どないやねん」(㈱藤商事:第28類)
第2230453号「好きやねん」(ハウス食品グループ本社㈱:第9,28類)
ちなみに「もうかりまっか」は以前酒類で登録があったけど今は消滅、「ぼちぼちでんな」はヒットしない。

まあ方言に限った話ではないんだけど、
人口に膾炙する状態になったフレーズってなかなか登録になりにくい。
特に最近は3条1項6号(=その他識別力が認められないもの)の適用がゆるゆるハードルが低いと思われる審査プラクティスなので尚更。

ということで、週末金曜日。もうひと踏ん張りしていこうと思います。



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【恒例】流行語大賞で学ぶ商標2022(第2回)

2022年11月09日 08時40分03秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます!
日に日に朝晩の風が少しずつ冷たくなるのを感じる@湘南地方です。

水曜日。粛々とお仕事を進めていきたいと思います。

さて、「流行語大賞で学ぶ商標2022」、今日は第2回。
今日取り上げるのはこちら。

(2)グッズ販売を視野に入れた保護の仕方(「きつねダンス」)
 直近のエスコンフィールドの設計不備?の件も含め色々と話題に事欠かなかった北海道日本ハムファイターズ。
 戦績は残念ながら最下位な中、野球ファンの垣根を乗り越えて話題を集めたのがこの「きつねダンス」ではなかろうか。

 こちらの記事によれば、球団関係者の方が楽曲を発見したのは2年前。球場演出一新に当たって取り入れた、とのこと。
 その後のフィーバーぶりは周知のとおり。挙句本家のノルウェーのデュオ「Ylvis」がファイターズガールとともにMステに出演するまでに。

 個人的には、こっちの300万回再生が強烈に記憶に残っている。

 とまあ、話題性でいえば今年のノミネートの中ではかなり上位ではないかと思う「きつねダンス」、
 グッズもよりどりみどり…かというとそうでもないな。でも「しっぽ」の発売が夏ごろに話題になった

 商標保護的にはどうなっているか。
 J-Platpatによればこんなかたちで出願されている。
 指定商品/指定役務としては以下のとおり。

ーーーーー
(511)(512) 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】 【類似群コード】
24
タオル,ハンドタオル,布製身の回り品,タペストリー(壁掛け),織物製壁掛け,織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,ろ過布,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製椅子カバー,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,織物製ラベル,布製ラベル,スリーピングバッグ
16A01 16A03 16B01 16C01 16C02 17B01 17C01 19A05 19A06 19B04 19B22 19B56 20C01 20F01 24B02 24C03 25B01
25
ウインドブレーカー,ティーシャツ,法被,よだれ掛け又は胸当て(紙製のものを除く。),野球用帽子,サンバイザー,被服,ユニフォーム及びストッキング,グランドコート,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,スポーツ用のウエットスーツ(潜水用のものを除く。),スカート
17A01 17A02 17A03 17A04 17A07 21A01 22A01 22A03 24A03 24C01 24C02 24C04
26
かばん金具,被服用はとめ,テープ,リボン,房類,腕留め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),腕章,頭飾品,入れ毛,髪留め,かんざし,こうがい,たぼ留め,たぼみの,つけかつら,手がら,ねがけ,ヘアネット,ヘアバンド,ヘアピン,まげ,丸ぐし,結びリボン,元結,カチューシャ,ボタン類,缶バッジ,衣服用缶バッジ,装飾用バッジ,金属製衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。)
13C01 16A02 16C03 21A01 21A02 21A03 21B01
41
スポーツの興行の企画・運営又は開催,プロ野球の興行の企画・運営又は開催,その他のスポーツの興行の企画・運営又は開催,野球その他のスポーツの興行に関する情報の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),写真の撮影,コンピュータデータベース又はインターネットからオンラインで供給されるスポーツの興行の企画・運営又は開催に関する情報の提供,スポーツに関する情報の提供,スポーツの開催情報の提供,スポーツの興行に関する情報の提供,スポーツに関するセミナーの企画・運営又は開催,スポーツに関する講演会及び研修会の企画・運営又は開催,映画の上映・演芸の上演・演劇の上演又は音楽の演奏に関する情報の提供,健康管理についての知識の教授及びスポーツの教授,スポーツの放送番組の制作に関する情報の提供,スポーツ指導員の育成のための教育・研修,運動施設に関する情報の提供,映画・演芸・演劇・コンサート又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,娯楽施設に関する情報の提供,野球の教授,インターネットを利用した知識の教授に関する情報の提供,インターネットを利用したセミナーの企画・運営又は開催,ダンス技術講習会の企画・運営又は開催,チアリーディング講習会の開催,キッズチアリーディング講習会の開催,ダンスの興行の企画又は運営,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の企画又は運営,ダンスの演出又は上演,ダンスの演出又は上演に関する情報の提供,ダンス競技会の企画・運営又は開催,インターネットを利用したダンス競技会の企画・運営又は開催に関する情報の提供,野球の興行の企画・運営又は開催及びその他のスポーツの興行の企画・運営又は開催,インターネットを利用した野球の興行の企画・運営又は開催に関する情報の提供,野球の競技結果に関する情報の提供
41A01 41A03 41C02 41E01 41E02 41E03 41E04 41E05 41E06 41F01 41F06 41J01 41K01 42E01

ーーーーー
 
「24」「25」「26」「41」というのが、「区分」と呼ばれるもの。
世の中の商品/サービスが全部で45の区分に分類されている。
この分類は国際的に統一されたもので、「ニース協定」に準拠している。

で、ポイントは、“同じ区分だからといって類似の商品/サービスではない”ということ。
審査ではどうやって商品の似てる/似てないを判断しているのか、というと、
個々の商品等に「類似群コード」というものが付されており、その一致/不一致で審査上判断されている。

各区分の末尾に記載されている「16A01 16A03 …」というのがそれ。
この表示では、どの商品とどのコードが紐づいているかが判らないけれど、審査基準を見るか、商品役務名検索すると判る。

ここまで見てきて、「じゃあ区分って何よ?」と思う向きもあると思う。
端的に言えば、「料金を決めるもの」というのが実務上の答えになる。
出願料金は、区分の数によって変わってくる(印紙代も、ほとんどの事務所の代理人費用も)。

今回の「きつねダンス」、今のところグッズとして目に見えて発売しているものは「カチューシャ」と「しっぽ」と「振り付けBOOK」(笑)
「カチューシャ」は第26類、「しっぽ」は仮装用グッズと思われるので第25類でよい、と思う。
「振り付けBOOK」は、「きつねダンス」が商標として機能するものではない(書籍の内容を表しているに過ぎない)ので、取得不要の判断かな。
これら以外も幅広めに抑えているのは、今後もグッズ展開拡大の可能性があることを見越してのことだと思われる。

とはいえ、扱うグッズのラインナップが増えるとその分多くの区分にまたがり、コストが嵩んでいく。
グッズビジネスをする際には、そのあたりも考慮に入れて行う必要がある。

あと裏技的ではあるけど、取り扱う商品の「小売等役務」を保護してしまって後願排除、という方法も考えられる。
真正面からの保護ではないので色々制約があるけれど、コスト面で厳しい場合には、第35類の1区分で暫定的なカバーはできるので、
事業計画によっては検討の余地はあり。
※詳細はお問い合わせを!
  
ということで第2回はここまで。明日は野球以外の話題をやろうかな。


きつねダンス(こうじゃない)
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【恒例】流行語大賞で学ぶ商標2022(第1回)

2022年11月08日 08時45分01秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます!
快晴の青空広がる@湘南地方です。

さて、もうこんな話題を取り上げる時期になりました。
そうだよね、昨日11/7は暦の上では「立冬」=冬のはじまりだもんね。
気が付けばこのブログで最初に取り上げたのは2012年ですから…11年目となりました。


「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞

ノミネート語をさらっと見ると、コロナの色濃かったここ2年と比べるとだいぶバラエティに富んでいる。
その中でも野球関係が少し多め、かな? =「大谷ルール」、「きつねダンス」、「青春って、すごく密なので」、「BIGBOSS」、「村神様」、「令和の怪物」

そんなわけで今日はこんな話題。

(1)「〇〇(の)怪物」:登録/拒絶の境界線①

「令和の怪物」は、プロ野球で28年ぶりに史上16人目の完全試合を達成した、ロッテ佐々木朗希投手(21)の異名。
完全試合がセンセーショナル過ぎて(ちなみに相手チームは今年日本一になったオリックス)、その後の活躍があまり目立たないな…なんて思っていたけど、
シーズン通算での被打率.177って、やっぱり怪物だわ。。

「令和の怪物」の前には「平成の怪物」がいたわけで。
言わずと知れた松坂大輔
横浜高校で公式戦44戦無敗。延長17回完封勝利。春の甲子園決勝でノーノー達成。
などなど、記録にも残る選手であることはもちろん、記憶にも残る選手。

まあ「怪物」というと、“モンスター、魔物”といったどちらかというとダークなイメージの方が強い語で、
規格外であることを表す語として用いられている。

そんなわけで、商標的にもあまり使いにくい語なのかな。検索を掛けてみたけど、
「〇〇怪物」「〇〇かいぶつ」「〇〇カイブツ」だとこんな感じ。



いた。「平成の怪物」。酒類関係でかつて登録されていた(現在は更新しておらず権利は消滅)。

商標法上、このような規定がある。

(商標登録を受けることができない商標)
第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)


他人の「芸名」やその「著名な略称」だと登録を受けることができない。
が、「平成の怪物」は松坂大輔の「芸名」ではなく周囲が勝手に付けた異名なのでこの条文には引っかからず、他の登録要件具備を条件に登録される。

だから、大のロッテファンな社長さんが自社の商品に「令和の怪物」というネーミングをしてこれを出願した場合も、登録をされる可能性は高い。
でも、大のKing&Princeファンな社長さんが自社の製品に「キンプリ」というネーミングをしてこれを出願すると、「他人の名称の著名な略称」に該当し拒絶される可能性が高い。

というわけで、流行語大賞で学ぶ商標、第1回はこの辺で。

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【恒例】流行語大賞で学ぶ商標2021(番外編)_個人的流行語大賞

2021年11月29日 09時54分10秒 | 名作シリーズ(笑)
おはようございます!
だいぶ空気が凛と冷えてきました、今朝の@湘南地方です。

ここんとこブログ更新が途切れ途切れになっております。
既に年末進行が始まっている、というのと、出張が立て込んでいた、というのと…
週末はまあ、色々とイベント盛りだくさんだった、というのと!

はい。ファンですらシーズン開幕当初は優勝を予想していなかったわけですが、
(中日の不調を読み違えた他は、順番としては全部合っているんですよねー…)
あれよあれよとリーグ優勝、そしてこの土曜日、ついに訪れた歓喜の時…!

もうね。生きている間に日本一を観られると思ってなかったから、感無量ですよ。

正直今年のセ・リーグは混沌とした状況でした。
その中で、わが軍が抜け出すきっかけとなった「ターニングポイント」があるとしたら2つ。

ひとつは9月13日のバンテリンドームでの中日戦、最終回の“疑惑の判定” →詳細はこちら
このとき、高津監督は15分の猛抗議の後、ベンチに戻るとパンパンパンッと手を叩き、自らにも言い聞かせるように切り替える仕草を見せた。
あそこで、選手のために抗議すべきところは抗議して、でも後には引きずらない。あの一件で、チームの結束力が完全に高まったように見える。

もうひとつが、そこから遡ること1週間前。
9月7日の甲子園での阪神戦前のミーティング。ここで高津監督から飛ばされた檄の言葉が
絶対大丈夫
(→ミーティングの様子がこちら

言葉の力を知っている人だなぁ、と思う。
「絶対大丈夫」。そう思うことで更なる力が湧き出てきた選手は数知れないだろう。

個人的には、今年の流行語大賞はこの言葉=「絶対大丈夫」なんですけどねー。

ちなみにこの「大丈夫」という言葉、本来的な意味としては
立派な男子”を表す語なのだそうで。
※広辞苑(第7版)でも一番目の意味としてはそのように書かれています。
 そこから派生して“しっかりしている、あぶなげのないさま”という意味が生じているものです。

なるほど確かに、若き4番、村上宗隆なんてみるからに「大丈夫」だよなー(笑)


そんなわけで、「大丈夫」の語は、色々な商品についてちらほらと登録されています。
商品の品質表示、とは一義的には捉えられない=独占性が認められる、ということですね。



さて、番外編含め計5回お送りしてきた「流行語大賞で学ぶ商標」、今年はこの辺で。


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