おはようございます!
夜中のうちに結構雨が降ったらしく、出勤時には道路が濡れていました。
でももうすっかり晴れ上がり、道路も乾ききった湘南地方です(長いか…)。
さて、国民的アイドルグループの「解散」のニュースで始まったこの一週間も
気がつけば金曜日…はやいなー。
古くは「加勢大周」から最近では「能年玲奈」まで、
芸名にまつわるゴタゴタはしばしば事務所移籍などの際に生じるハナシ。
あのグループのメンバーが今後どのような身の振り方をしていくのか、
一般人の我々は見守る他ないわけですが、
今後芸能活動を続けていくにあたって「元○○」と名乗ることには
商標法上の問題はあるのでしょうか?
そこで「株式会社ジャニーズ事務所」の商標登録状況を調べてみました。
※
このページで「検索項目」を「出願人/書換申請者/権利者/名義人」とし、
「検索キーワード」の欄に「株式会社ジャニーズ事務所」と入力すれば
同じ結果を見ることができます。
さすが天下のジャニーズ、芸名の商標管理もきっちりしています。
「SMAP」の登録は6件。最も古いのは1988年=昭和63年!?の出願。
まだサービスマークが導入されてなかった頃です。
その後平成4年のサービスマーク導入を機に、
第41類「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」について
「光GENJI」「男闘呼組」「少年隊」「忍者」とともに「SMAP」も出願、登録されています。
ちなみに、1994年に「LOVE YOU ONLY」でデビューした「TOKIO」の41類の登録は
2011年と比較的最近。独占性?先行類似?障害があったことがうかがえます。
「嵐」「タッキー&翼」「関ジャニ∞」「KAT-TUN」などと同日に出願されています。
面白いところでは、「V6」は41類については登録を得られていません。
やはり欧文字1文字+数字1文字 だと独占性が認められなかった、ということでしょうか
出願自体されたのかはもはや確認できないので推測に過ぎないですが。
今出願すれば3条2項でもいけるんじゃないですかね。
また、今を時めく「Hey!Say!JUMP」も、各種商品関係は権利取得しているものの
第41類については権利取得していません。
…あ、だいぶ脱線してしまいました。
問題は、
第41類について“芸名”を事務所が権利取得している場合に、
所属タレントが移籍した後、そのタレントがその芸名を名乗ることは侵害に当たるのか?
という点です。
商標法の条文上、「芸名」の語は2つの条項で出てきます。
(1)一つ目は、登録要件を定める条文です。
第4条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは
著名な雅号、
芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
➡著名な芸名は登録しないよ、但し本人がOKと言っていれば(手続上は「承諾書」を提出すれば)よいけどね。ということです。
(2)もう一つは、商標権の効力の制限を定める条文です。
第26条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 自己の肖像又は
自己の氏名若しくは名称若しくは
著名な雅号、
芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは
著名な雅号、
芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。
➡自分の有名な芸名は、自分が商標権者でないとしても使用することができる、ということです。
そもそも芸能活動をする際に自らの名前を名乗ることが「商標の使用」にあたるのか?
という点も問題にはなりますが、この点は別途「あさかぜ便り」等で言及したいと思います。
ここでは「使用にあたる」という前提で進みます。
また、現実問題としてタレントと事務所との間では“移籍後は同名を名乗って活動しない”などの条項を含んだ契約を
当然交わしているとは思いますが、そこも捨象して進めます。
(そうした条項の有効性については、他の専門家の方のご見解もお聞きしてみたいと思いますが)
[ケース1]
例えば、
・タレント「○山△子」は、本名「○山△子」で芸能活動をしていた
・旧所属事務所が本名「○山△子」を第41類で商標登録していた
・その後事務所移籍して同じく本名で芸能活動を継続した
という場合、
(1)所属事務所は「○山△子」本人ではないですから、出願したとしても4条1項8号に該当しそのままでは登録を受けられなかったはずです。登録に至っている以上、タレント「○山△子」から承諾書を得ていると推測されます。
(2)その後当該タレントが移籍した場合、当該タレントは「自己の氏名」を「普通に表示」する限り、26条1項1号にあたり、例え旧事務所が商標権をもっているとしてもその効力が及ばない、ということになります。第2項では「不正競争の目的で」用いた場合は適用しない、と規定されていますが、これは例えば無関係な第三者があたかも当人を装って行う場合などが該当するに過ぎず、単に事務所移籍の結果旧事務所に不利益が生じる、というだけでは具備しないものと考えられますから、通常は該当しないでしょう。
ということで、「○山△子」さんは引き続き自分の本名で芸能活動をすることができる、といえそうです
(※もちろん、「普通に用いられる方法」の解釈などにより係争になってしまう場合もあり、評判が命の芸能人にとっては係争それ自体がマイナスなわけですが。。)
ではこんな場合はどうなのでしょう?
[ケース2]
・タレントBは、芸名「XYZ」で芸能活動をしていた
・旧所属事務所は、芸名「XYZ」を第41類で商標登録していた
・その後Bは独立、同じ芸名「XYZ」で芸能活動を継続した
[ケース3]
・芸能グループ「PQR」は、芸能事務所Cに所属し活動をしていた。
・芸能事務所Cは、グループ名「PQR」を第41類で商標登録していた
・その後「PQR」は解散、メンバーは事務所を移籍し、「元PQRの○○」として活動をしている。
…ちょっと長くなりすぎたので、続きは次回に。。