弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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最近の商標関連の記事2件から、専門家の存在意義をちょっと考える。

2013年05月23日 09時05分34秒 | 知財記事コメント
最近のトピックスについてぽちぽちとコメント。


(1)「おんせん県」登録断念 (たとえば この記事
 →おおむね予想通りの展開。
  結果的に耳目を集めた点では意義はあったものの、もうちょっとスマートな方法もあったかなぁと。
  商標権取得の要件と効果、そこから導き出される活用法を正しく理解していなかったことが
  報道で明らかになってしまった、ということかなぁと。
  “ちゃんと専門家に相談してね”という一言に尽きます。

  ちなみに、この3月に公募でロゴマークが決定しているようだけど、今日現在IPDLでは出願が確認できない。。。
  むしろ出願するならこっちでしょ!?
  

(2)「けん」v.s.「けんしろう」 (たとえば、体当たり取材? をしている この記事
 →株式会社エムグラントフードサービスは当該マークについて登録済(第5160679号)。
  商標の類否は通常外観・称呼・観念の3要素で対比しいずれか一において近似していれば原則類似…
  とかそんなことを持ち出すまでもなく、元フランチャイジーだったとか、そういう経緯を踏まえれば
  混同のおそれは明白なわけで、アウトだよなぁ。

  なんかほかでも似たような話を聞いたこともあるし、外食ってそのあたりのコンプライアンスの意識って
  希薄なのかしらん。 ※ちなみに「けんしろう」、例の世紀末救世主の絵も使用している模様。。。

  なお上記のケース、商標権を取得しているので話が早いけど、
  仮に商標権取得していなかった場合、単に似ているマークを後から使った、というだけで
  何か排除できるかというと、かなり厳しい。
  また実際に排除しようとすると、自分のマークが周知な商品等表示となるに至っていたことを
  立証したうえで、不正競争防止法に基づく差止等請求となる。
  「立証」というからには、権利を主張する側がその手間を負担することになる。

  「周知(有名であること)」の立証って、たぶん一般に考えられているよりも相当にコストも手間もかかる。
  その意味で、商標権を取得しておくことはそうしたコストと手間を省く意味合いもある。



なんだろう。
商標って特許と比べると身近でとっつきやすいから、
「専門家に相談しなくても自分でなんとかなるや」
と思っちゃうんだろうか?
それとも、
「相談したってだいたい予想通りの答えだし、なのに依頼すると高いからなぁ」
ということで自力でやろうとしちゃうんだろうか?


もちろん、商標法は、ほとんどの人にとって理解不能なほど難解な制度ではない。
制度は、ね。でもたとえば類否判断は素人判断がきわめて危険なのは、上記の(2)の例でも明らか。
日常生活の常識だけで対処できるものではなく、相応の知識の習得のための努力と研鑽が必要。
そのヒマは、本業に一生懸命な人にはないはず。

だから、そこに特化した人間が必要なわけで。
専門家の存在意義は
「クライアントが最大リターンを実現できる業務に集中できるよう、周辺のことをサポートする」
という点にあるのかと。依頼するにあたっては、時間をお金で買う、という感覚も、また大事かと。
コメント
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