ジョー・ビッグス被告(右)とエンリケ・タリオ被告(2019年撮影)
アメリカで2021年1月にあった連邦議会襲撃事件をめぐる裁判で、極右団体「プラウド・ボーイズ」のリーダーのジョー・ビッグス被告(38)に8月31日、禁錮17年の刑が言い渡された。
首都ワシントンの連邦地裁で開かれた裁判で、検察側は陸軍退役軍人で陰謀論サイト「インフォウォーズ」の特派員だったビッグス被告について、議会襲撃の「扇動者」だったと主張した。
同被告は5月、扇動共謀罪などで有罪評決を受けていた。
法廷で同被告は、自身の行為を悔いていると述べ、寛大な量刑を求めた。
連邦地裁のティモシー・ケリー判事は、連邦の量刑ガイドラインと、検察の求めた禁錮33年の両方を下回る刑を言い渡した。
プラウド・ボーイズの別のメンバー、ザカリー・レール被告もこの日、同じく扇動共謀罪で禁錮15年の刑を言い渡された。
元海兵隊員でプラウド・ボーイズのフィラデルフィア支部のリーダーだった同被告は、襲撃時に議事堂の外で警官に化学刺激剤を噴射し、その姿が動画に撮影されていた。
「私はテロリストではない」
ビッグス被告は5月、扇動共謀罪のほかにも、公務執行妨害罪や、公務執行妨害を意図した共謀罪などで有罪判決を受けた。
検察は量刑言い渡しに際し、同被告について、「軍事経験を利用して自らの指揮下にあった多くの人々を指揮・統制」し、「政府への反乱」を率いたとする文書を提出した。
その中ではまた、「ビッグスは自身と自らの運動を第2次アメリカ革命だと考え、彼と他の『愛国者』らが力づくで政府を奪い返すとしていた」と主張した。
ビッグス被告は法廷で、自らの行為について涙ながらに謝罪。暴動当日は群衆に「そそのかされた」と訴えた。
そして、「ただ前に進んだだけだった。好奇心が上回ってしまった」、「私はテロリストではない。心の中に憎しみは抱いていない」、「罰を受けなくてはならないことは分かっているし、理解している」と述べた。
ケリー判事は量刑の言い渡しに際して、被告が「暴力を最小限に抑えようとはしなかった」と指摘。
一方で、議会襲撃事件は集団殺傷事件などと比べると程度が軽いとした。また、量刑を厳しくすれば、議会襲撃事件で有罪とされた他の関係者らとの間で量刑の格差を生む可能性があったと述べた。
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検察は厳罰を要求
ビッグス被告は、プラウド・ボーイズ元委員長のエンリケ・タリオ被告ら、メンバー4人とともに裁判にかけられた。タリオ被告の量刑言い渡しは、直前になって来週に延期された。検察は禁錮33年を求刑している。
プラウド・ボーイズの被告たちは、有罪評決を不服として控訴する方針。
連邦検察当局のジェイソン・マッカロー検事は法廷で、この犯罪は「非常に重大」だと強調。大統領選挙を来年に控え、厳しい量刑はメッセージを送ることになると述べた。
「選挙が近づく中、私たちが息を凝らすのには理由がある。(中略)被告らは憲法の危機の寸前まで事態を悪化させた」
検察は、プラウド・ボーイズが2020年大統領選の結果認定を共謀して妨害しようとしたことを示すために、テキストメッセージやソーシャルメディアへの投稿、動画などを使った。
今年8月6日の時点で、議会襲撃事件に絡む容疑で1100人超が逮捕され、630人超が有罪を認め、110人が有罪判決を受けた。
襲撃事件に加わった有名人で、極右団体「オース・キーパーズ」のスチュワート・ローズ創設者は、今年5月に禁錮18年の刑を言い渡された。