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反物質も重力で「落下」する 国際研究チームが発見

2023-09-28 22:08:10 | 宇宙・地球・航空宇宙ビジネス・星座神話・

パラブ・ゴーシュ、科学担当編集委員

 

Big Bang artwork

 

宇宙が始まったときに豊富に存在した謎の物質「反物質」が、物質と同じように重力に反応することが、国際研究チームによる最新研究で明らかになった。

反物質は、惑星などを形成する物質とは反対の性質を持つ。

宇宙の始まりであるビッグバンでは、物質と反物質は同じ量が生成された。物質はあるゆるところに存在する一方、反物質は現在では見つけるのが難しい。

物理学者らは長年、宇宙がどのように発生したかを説明するため、物質と反物質の相違点と類似点を発見しようと躍起になってきた。


もし反物質が重力への反応として、落下ではなく上昇するとなれば、我々が物理学について知っていることは吹き飛んでしまっていただろう。

しかし、科学誌「ネイチャー」に掲載された今回の研究で初めて、反物質の原子が沈むことが明らかになった。これは科学的な行き詰まりどころか、新たな実験や理論への扉を開くことになる。たとえば、反物質は同じ速度で落下するのだろうか?

ビッグバンの際、物質と反物質は結合して相殺され、光だけが残るはずだった。なぜそうならなかったのかは物理学の大きな謎の一つであり、両者の違いを明らかにすることが解決の鍵だ。


物質はどういうわけか、この宇宙創造の初期段階に反物質を抑えた。今回の研究のメンバーの一人、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)所属のダニエル・ホッジキンソン博士は、反物質の重力への反応が鍵を握っているかもしれないと指摘した。

「我々は、どのように宇宙が物質にあふれる形になったかを知らない。これが実験の動機となった」と、ホッジキンソン博士は述べた。

 

Helium being added
反物質を最低温度である絶対零度に近い摂氏マイナス270度に保つため、液体ヘリウムを
システムに加える技師たち

 

ほとんどの反物質は宇宙ではほんの一瞬、数秒しか存在しない。そのため、実験では反物質を安定して長持ちする形にする必要があった。

ジェフリー・ハングスト教授は30年をかけ、亜原子粒子から何千もの反物質の原子を丹念に作り、それを閉じ込めてから投下する施設を築いた。

「反物質は考えうる限り最もクールで謎に満ちた物質だ」と、ハングスト教授は語った。


「現在分かっている限りでは、私たちの宇宙と同じような、反物質だけでできた宇宙を作ることができる」

「まさに感動的なことだ。この物質が何であり、どのように振る舞うかについて、最も基本的な未解決の疑問の一つだ」


反物質とは?

まずは物質の説明から始めよう。この世界のあらゆるものは、原子と呼ばれる小さな粒子でできている。

最も簡単な形の原子は水素だ。太陽の大部分は水素でできている。水素原子では、プラスの電気を帯びた陽子が真ん中にあり、その周りをマイナスの電気を帯びた電子が回っている。

反物質では、これが逆になる。

CERNでの実験では、水素の反物質である「反水素」が使われた。マイナスの電気を帯びた反陽子が真ん中にあり、その周りをプラスの電気を帯びた陽電子が回っているものだ。


反陽子は、CERNの加速器で物質を衝突させて作られた。その後、光に近い速さでパイプを通り、反物質の研究室に送られる。だがこの時点では、速すぎて研究者には扱えない。

研究の第一段階は、反陽子を遅くすることだ。反陽子を円環に送ってエネルギーを消費させると、制御しやすい速さになる。

その後、反陽子と陽電子は巨大な磁石の中に入れられ、何千もの反水素を形成するように混ぜられる。

この磁石は磁場を作って反水素を閉じ込める。反物質は我々の世界と接触できないため、容器の壁に当たると壊れてしまうからだ。


この磁場を弱めると、反水素が解放される。その際、反水素が落下するのか上昇するのかをセンサーで検知した。


Antimatter explainer


一部の理論家は、反物質が上方に落下する可能性を予測していた。しかしほとんどの理論家、特に100年以上前のアルバート・アインシュタイン氏の『一般相対性理論』では、反物質は物質と同じように振る舞い、下方に落下するはずだと述べていた。

CERNの研究者たちは今回、アインシュタイン氏が正しかったことを、前例がないほどの確かさで確認した。

しかし、反物質が上に落ちないからといって、物質とまったく同じ速度で下に落ちるわけではない。

研究の次の段階では、実験の精度を上げることで反物質の落下速度にわずかな違いがあるかどうかを見極めるという。

もし落下速度が変わるなら、宇宙がどのようにして誕生したのかという最大の疑問の一つに答えられるかもしれない。


(英語記事 Scientists closer to solving mystery of antimatter




日経記事  2023.09.28より引用

 

 

 

 


英国防相、ゼレンスキー大統領と会談 防空強化を協議

2023-09-28 21:55:14 | NATO・EU・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


 28日、ウクライナのゼレンスキー大統領㊧は英国のシャップス国防相と会談した=ロイター



ウクライナ大統領府は28日、英国のシャップス国防相がキーウ(キエフ)を訪問し、ゼレンスキー大統領と会談したと発表した。

冬場を控えてロシアによるウクライナのエネルギー施設への攻撃懸念が増す中、ウクライナの防空強化について協議した。

シャップス氏のキーウ訪問は就任後で初めて。ゼレンスキー氏は「軍事的、財政的、人道的な支援に感謝している」と英国の武器などの支援に謝意を示した。

英国はウクライナに空中発射型巡航ミサイル「ストームシャドー」を供与しており、ウクライナ軍の戦力増強につながっている。

同日にはストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長もキーウを訪問し、ゼレンスキー氏と会談した。ストルテンベルグ氏はウクライナ軍が進める反転攻勢について「徐々に前進している」との認識を示した。

一方、ロシア軍は27日、ウクライナ南部ヘルソン州を砲撃した。ウクライナメディアによると民間人1人が死亡、1人が負傷した。

ヘルソン州の州都ヘルソンはウクライナ軍が2022年11月にロシア軍から奪還した。9月27日はヘルソン市の北東地域にもロシア軍から7発の攻撃があったといい、死傷者などについて確認している。

 

 

日経記事  2023.09.28より引用

 

 

 


赤ちゃんポスト導入へ準備 東京の病院、内密出産も

2023-09-28 21:45:56 | 医療・病気・疫病・ヘルスケア・健康・食事・睡眠 及び産業

東京都墨田区の賛育会病院が、親が育てられない乳幼児を匿名でも受け入れる「赤ちゃんポスト」と、病院以外に身元を明かさず出産する「内密出産」の制度を、

2024年度中に導入する方向で準備を進めていることが28日、病院を運営する社会福祉法人「賛育会」への取材で分かった。


赤ちゃんポストは、熊本市の慈恵病院が07年に国内で初めて設置。内密出産は匿名での出産を望む女性を支援し、子の出自を知る権利を保障しようとする仕組みで、慈恵病院が19年に独自に導入した。

賛育会によると、予期しない妊娠や孤立出産の悩みを抱える女性が増え、乳児の遺棄事件などが相次いでいることを受け、数年前から検討を重ねてきた。

今後、計画の具体化を進める。同会は都内のほか、長野、静岡両県で医療機関や介護施設を運営。賛育会病院は病床数199で、産科・婦人科などがある。

赤ちゃんポストを巡っては、医療法人社団「モルゲンロート」(東京・江東)も、24年秋に区内で開業する産婦人科医院への併設を計画している。〔共同〕




絶滅防ぐ「ノアの箱舟」を月に 670万種の未来、人類が左右 テクノ新世 「神」の領域へ(4)

2023-09-28 21:21:25 | 科学技術・宇宙・量子・物理化学・生命・医学・生物学・脳科学・意識・人類史



人類の天敵を「絶滅」させる――。子孫が繁殖できないよう遺伝子改変した蚊を大量に放つ実験が米国で始まった。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF144V00U3A810C2000000/



【「テクノ新世 神の領域へ」記事一覧】

(3)あすの天気は人工雨 「雲」争奪戦、新たな国家間の火種


年70万人超を殺す「蚊」は発生抑制

4月、乾燥した蚊の卵が入った白いバケツ大の容器が南部フロリダ州の民家に届いた。容器に水を注ぐと、数日後に蚊が1匹また1匹と飛び立っていった。



     遺伝子組み換え蚊の乾燥卵が入った容器を屋外に設置=オキシテック提供



この蚊が野生の蚊と交配すると、メスはふ化しても育たず、子孫を残せないオスだけが残る。世代を経るごとに蚊が減る仕組みだ。

蚊は世界で最も多く人間を殺している。マラリアなどの感染症による死者は年70万人を超える。地球温暖化で蚊の生息域は世界中に拡大し、2000年に約50万件だったデング熱の症例数は、19年に10倍以上の約520万件に増えた。







蚊を放ったのは英バイオ企業のオキシテックだ。米国に先駆けてブラジル政府は20年に一般販売を認可。「2世代で蚊の数が約9割減る効果が確認できた」と同社のネイサン・ローズ氏は説明する。

遺伝子改変した生物を放つことに懸念もあるが、対象のネッタイシマカは外来種だ。米環境保護局(EPA)は地元の生態系などに「不当な悪影響を引き起こさない」と評価した。


マンモスも復活

人間にとっての害虫を根絶しようとする一方で、絶滅した動物をよみがえらせる試みも進む。米コロッサル・バイオサイエンスのベン・ラム最高経営責任者(CEO)は「(氷河期に生きた)マンモスを28年までに復活させる」と宣言する。大航海時代に絶滅した大型鳥ドードーや、20世紀までオーストラリアに生息していたフクロオオカミの復活も狙う。

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    マンモス復活を狙う米コロッサル・バイオサイエンスのベン・ラム最高経営責任者(CEO)


生命の設計図であるDNAを自在に改変するゲノム編集技術が武器だ。シベリアの永久凍土で見つかったマンモスのDNAを人工合成し、ゾウの胚に導入して子を生ませる。恐竜が復活する映画「ジュラシック・パーク」さながらの世界だ。

「人間の過去の過ちを正すためにも絶滅種の復活は必要だ」とラム氏は強調する。「人類が悪影響を及ぼす前の状態まで自然を戻す責任がある」



北極圏の岩盤で貯蔵

東北大学の海保邦夫名誉教授の試算によると、温暖化の加速などで今世紀中に危機が訪れて地球上の4〜10%の動物種が絶滅し、核戦争が起きれば最大50%が姿を消す。大量絶滅リスクに備える動きも出てきた。

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旧約聖書で多くの動物を載せて大洪水から救った「ノアの箱舟」の現代版が、北緯約80度の北極海のノルウェー領スピッツベルゲン島にある。海抜120メートルで岩盤内に種を保管する「スバールバル世界種子貯蔵庫」だ。

3つの貯蔵室は頑丈なドアや警報装置に守られている。各国の遺伝子バンクなどが選んだ種を零下18度で保管する。08年の建設後、これまでに6千種以上、約126万点の種を集めた。日本からは岡山大学が味噌やビールの原料になるオオムギを送った。

「気候変動や紛争の増加は世界の食料供給を圧迫する」と保管に携わるアスムンド・アスダル氏。貯蔵庫は「未来の食料供給に不可欠だ」と訴える。


 気候変動や核戦争に備え、世界から集めた種子を北極圏で保管している=スバールバル世界種子貯蔵庫提供



旧約聖書で多くの動物を載せて大洪水から救った「ノアの箱舟」の現代版が、北緯約80度の北極海のノルウェー領スピッツベルゲン島にある。海抜120メートルで岩盤内に種を保管する「スバールバル世界種子貯蔵庫」だ。

3つの貯蔵室は頑丈なドアや警報装置に守られている。各国の遺伝子バンクなどが選んだ種を零下18度で保管する。08年の建設後、これまでに6千種以上、約126万点の種を集めた。日本からは岡山大学が味噌やビールの原料になるオオムギを送った。

「気候変動や紛争の増加は世界の食料供給を圧迫する」と保管に携わるアスムンド・アスダル氏。貯蔵庫は「未来の食料供給に不可欠だ」と訴える。



    貯蔵室は頑丈なドアや警報装置に守られている=スバールバル世界種子貯蔵庫提供



米アリゾナ大学は地球滅亡に備え、月に貯蔵庫を置く計画を提唱する。巨大な地下空洞に太陽電池やエレベーターを備えた施設を作り、670万種の種子や精子・卵子を保管する構想だ。

ジェカン・タンガ准教授らは「地球環境が壊滅しても生物多様性が失われるリスクを減らせる」とみる。

遺伝子工学が誕生して半世紀。人類は種の存続を左右するほどの強大な力を手に入れた。それをどう行使するかが問われている。


【テクノ新世「岐路に立つ人類」まとめ読み】

 



村上芽のアバター
  村上芽
日本総合研究所創発戦略センター エクスパート

分析・考察

筆者は身の回りの虫のうち、蚊とムカデだけは見つけたら即退治、と考えてきましたが、それでも一連の遺伝子工学による「課題解決」には、何か怖いものを見ている気持ちがします。外来種かどうかが一つの争点のように見えますが、外来種ならばいくら退治してもよい、というのは単純なようで、本当にそうなのかすっきりしないものがあります。また、マンモスについては、絶滅が人類の狩猟のせいというのは可能性にすぎません。それだったら戦争によって滅んだ人間の「民族」の再生もよしとするのか。幅広い議論が必要だと考えます。




 
日経記事 2023.09.28より引用
 
 
 
 
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凄い時代やな。 しかし、天罰が下りそうな予感が。
 
 
 
 

Googleが新型AI、病気につながる遺伝子変異を予測

2023-09-28 18:09:47 | AI・IT・サイバーセキュリティ・メタバース・NFT・ゲーム、

アルファベット傘下のグーグル・ディープマインドは、ヒトの遺伝子の小さな変異が病気の原因になる可能性を予測する人工知能(AI)を開発した。DNA配列が1文字だけ変わる7100万の変異の影響を予測した。遺伝子変異が原因の病気の解明や治療法開発に役立つ可能性がある。

 

グーグル・ディープマインドは新型AI「アルファミスセンス」の研究成果を19日、米科学誌サイエンスに発表した。

前身の英ディープマインドが開発した、たんぱく質の立体構造を予測するAI「アルファフォールド」を応用し、遺伝子変異の影響を調べるAIを作った。

ヒトなどの生物の遺伝情報は細胞の中にあるDNAに記録されている。DNAは4種類の塩基と呼ぶ物質がペアになった「塩基対」が並んだものだ。ヒトの場合、約30億の塩基対が並ぶ。

塩基対の配列のうち、体の中で様々な働きをするたんぱく質の設計図になっている部分を遺伝子と呼ぶ。ヒトのDNAには約2万の遺伝子がある。

遺伝子の塩基配列が変わる変異が起こると、たんぱく質の機能の変化などで病気の原因になる場合がある。研究チームは今回、DNA配列が1文字だけ変化する「ミスセンス変異」に注目した。

例えば、血液中の赤血球の酸素を運ぶ能力が低下し、慢性的な貧血になる病気「鎌状赤血球症」も1つのミスセンス変異が原因で起こる。

1個〜数個の変異が遺伝性疾患やがんの原因になるだけでなく、多数の変異が組み合わさって糖尿病など様々な病気に影響すると考えられている。


一般的な人のDNAには数千のミスセンス変異がある。病気と関係ない変異も多いが、それぞれの変異の影響はほとんど分かっていない。これまで見つかった約400万の変異のうち、研究者が病原性の有無を分類したものは2%にとどまる。

グーグル・ディープマインドはアルファミスセンスを使い、ヒトの約2万種類のたんぱく質の遺伝子で起こりうる全7100万のミスセンス変異の影響を網羅的に予測した。

変異の32%(2280万)は病気の原因になる「病原性」、57%は病気の原因にならない「良性」の可能性が高いと判定し、残り11%の影響は不明だった。


アルファミスセンスは2段階の学習で成り立っている。まず数百万のたんぱく質の配列を読み込み、「自然な配列」を予測できるように訓練した。

逆に「不自然な配列」になる変異は病気に関係するだろうという考え方だ。たんぱく質の配列から立体構造を予測するアルファフォールドの仕組みを応用し、微調整を加えたという。

もう一つの段階としてヒトやサル(霊長類)のデータから、ヒトやサルに多くみられる一般的な変異とほとんどない変異を学習した。

一般的な変異はおそらく良性で、ほとんど存在しない変異は病原性の可能性が高いとみる発想だ。


研究チームのジュン・チェン博士は「人間の言語とよく似ている」と説明する。「英語に精通した人であれば、英文の単語が置き換わって文章の意味が変わるかすぐに分かる」。

アルファミスセンスは「たんぱく質の言語」を理解することで、変異が「悪いものかどうか分かる」という。


変異が実際にどの病気にどのような仕組みで関係するかは個別の研究が必要だが、予測は変異と病気の未知の関係を探る手がかりになる。治療や診断の研究に役立つ可能性がある。

データは研究者が利用できるようになっており、研究チームのジガ・アブセック博士は「病気に関わる遺伝子を発見する手助けになるだろう」と期待する。

全身の筋肉が衰えるALS(筋萎縮性側索硬化症)などを研究する新潟大学の石原智彦特任准教授は「使い方次第で夢が広がるデータだ」と歓迎する。

「7100万の変異全ての予測はインパクトがあり、優先的に研究する変異を絞り込める。今後標準的な技術になるかもしれない」とみる。

 

 

グーグルは4月にAIの研究体制の再編を発表し、囲碁AI「アルファ碁」などで知られるディープマインドを統合してグーグル・ディープマインドを発足させた。

アルファフォールドは無償公開され、研究者に不可欠なツールになっている。がんの治療薬候補を見つけた企業も出てきた。

アルファミスセンスの開発で病気の解明や治療に向け、さらに一歩を踏み出す可能性がある。

遺伝子と病気の関係が明らかになるメリットは大きい半面、課題もある。

今回の技術は直接診断に使えるわけではないが、今後、個人の遺伝情報に基づいて、病気の可能性が分かるようになれば、個人情報の取り扱いの重要性が増す。漏洩などが起きれば、就職や保険などで不利な扱いを受ける恐れもあるためだ。

 

たんぱく質研究に革新 ノーベル賞級との評価も

グーグル・ディープマインドはAIを駆使して生物学の研究を大きく変えつつある。アルファミスセンスの土台になったアルファフォールドの開発成果はノーベル賞候補との呼び声も高い。

米ラスカー財団は、米国で最も権威ある医学賞である「ラスカー賞」の2023年の受賞者にアルファフォールドを生んだグーグル・ディープマインドのデミス・ハサビス、ジョン・ジャンパーの両氏を選んだ。

発表文ではアルファフォールド開発を「新時代の幕開け」と表現し、「影響は爆発的に広がるだろう」とたたえた。ハサビス、ジャンパー両氏は科学界のアカデミー賞といわれる米ブレークスルー賞やカナダのガードナー国際賞も受賞している。


過去にもたんぱく質の構造や遺伝子の機能を調べる研究・技術がノーベル賞の栄誉に輝いてきた。たんぱく質などの分析技術を開発した田中耕一氏ら(02年受賞)や、たんぱく質を高解像度で観察できる「クライオ電子顕微鏡」(17年受賞)が当てはまる。

AIを用いた技術が選ばれれば、歴史的な節目となる。23年のノーベル賞は10月2日から発表が始まる。


(越川智瑛、AI量子エディター 生川暁)

 
 
 
日経記事 2023.09.28より引用