欧州連合(EU)への加盟プロセスでウクライナばかりが優遇され、20年近く前から加盟を希望してきた自国の交渉が後回しになっている――。西バルカン諸国の一部が不満を募らせている。
欧州議会で演説するウクライナのゼレンスキー大統領=ロイター
ウクライナは申請から1年もたたないうちに加盟候補国となり、来年にも加盟交渉開始の可能性がある。
一方、セルビアは2014年に交渉が開始されるまで、申請後4年余りも待たなければならなかった。
セルビアのブチッチ大統領はフィナンシャル・タイムズ(FT)に「(EUからのそれほど大きな政治的支援を)われわれは決して受けなかった」と語った。
セルビア、コソボ、モンテネグロ、アルバニア、北マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナという西バルカン6カ国に対して、EUは加盟交渉の加速を約束している。ミシェルEU大統領は一部の国は30年までに加盟が実現すると見込む。
しかし、アルバニアのラマ首相はこれに疑問を呈し、ウクライナのように戦争になれば加盟が早まると当てこすった。「早く加盟できるように、(西バルカンの)どの国からどの国へ攻撃したらよいだろうか」
一方、北マケドニアはウクライナを「競争相手」と見なしていない。オスマニ外相は「ウクライナが優遇されていると捉えるべきではない。自国のためだけでなく、(欧州)大陸の未来のために戦っている」と述べた。
1990年代の旧ユーゴスラビア崩壊から続く混乱は、西バルカン諸国のEUへの加盟を難しくしている。
ブチッチ氏は、加えてEUの新規加盟国受け入れ能力が低下していることも指摘した。「EUの予算の純拠出国は10カ国で、17カ国は資金を食いつぶしている。どちらも自国の経済的負担になる加盟国をこれ以上増やしたがらない」
ミシェル氏は、ロシアのウクライナ侵攻でバルカン地域へのEU拡大の機運が再び高まったと述べる。
しかし、政治学者のヤスミン・ムヤノビチ氏は「30年の加盟は現実的とは思わない」と主張する。「ウクライナ情勢という地政学的な後押しがあるとはいえ、大変難しい」
By Marton Dunai and Ian Johnston
(2023年9月17日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)
日経記事 2023.09.27より引用