アメリカ人が子どもの時に覚える英語116フレーズ【178】
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ミケランジェロ 『アダムの創造』
旧約聖書で、初めに出てくるのが天地創造の物語です。
ところが、創世記をよく読むと、同じ天地創造というテーマで、内容の違う話が二度でてくることに気づきます。
最初の話は第一章から第二章四節までで、荘厳ではありますが具体的に欠け、あまり迫力がありません。
聖書学者によれば、この部分は旧約の冒頭におかれてるけれども、成立の年代はわりに新しく、紀元前500年頃だといいます。
P文書
学者は、旧約の様々な部分の文体や、使用語句などを詳細に調べた結果、ここはP文書に属すると判定しました。
P文書とは、紀元前500年に祭司たちが書いたもので、Pは祭司(Priest)の頭文字です。
旧約聖書は約千年の間に何回も書き加えられたり、書き改められたり、編集し直しているので、その資料の一部になったP文書は、この創世記の冒頭部分だけでなく、旧約聖書のいろいろな部分に織り込まれているといいます。
J文書
その次を読むと、同じ天地創造の物語がガラリと調子が変り、写実的な生き生きとした調子で展開されます。 荘厳さには欠けますが、素朴で親しみが持てる文章です。
学者によれば、こちらの方が時代的に古く、紀元前900年頃に成立したJ文書に属するとしています。
J文書はユダ王国で作られたもので、神をJahave(ヤハウェ)と呼んでいるため、その頭文字をとってJ文書と名付けています。
日本の古事記もそうですが、旧約聖書は複数の資料を混ぜてつくられたものだから、同じことについて内容の違う複数の記事がダブってでてくることがよくあります。
写実的で人間味あるJ文書
天地創造についていえば、昔から画家たちがテーマにしてきたのは、主に素朴で写実的な二章(J文書)の方です。
例えば、男女を創造するくだりについても、一章(P文書)の方は、「神はご自分にかたどって人を創造された。 神にかたどって創造された。神にかたどって男と女に創造された」と味も素っ気もありません。
それに対し、二章(J文書)では、神が土をこねて人(男)の形を造り、「その鼻に命の息を吹き入れ」て、土の塊を「生きる者」にする有様が具体的に述べられています。
古今東西を問わず,息は生命のしるしと考えられてきました。 「息を吹き返す」「息が絶える」などといいますね。 古事記にも息を吹き込んで新しい神様を生み出すくだりがあります。
女性の創造には描写がさらに詳しく、「神は言われた。『人が独りでいるのは良くない。 彼に合う助ける者をつくろう。』・・・ 神はそこで、人を深い眠りに落とされた。 人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り,その跡を肉でふさがれた。 そして、人から抜きとったあばら骨で女を造り上げ・・・彼女を人のところへ連れてこられた。」
これを読むと、神さまがニコニコして造りたての女の手をひき、驚き喜んでいる男に引き合わせる有様が、目に見えるようです。
ちなみに、ヨーロッパでは「男」を意味する言葉は、同時に「人」一般をも意味します。 英語やドイツ語のマン、フランス語のオム、イタリア語のウォーモなどもそうです。