海底ケーブル損傷を受け声明を発表したラトビアのシリニャ首相㊥(ラトビア政府提供)
【ブリュッセル=辻隆史】
スウェーデン、ラトビア両政府は26日、両国を結ぶ海底通信ケーブルが破損したと発表した。
北欧に面するバルト海でケーブル破損が確認された事案は2024年11月以降、4件目となる。両国は捜査を開始した。
ラトビア政府によると、同国企業が所有するケーブルは同国とスウェーデンのゴットランド島を結ぶ。複数の代替手段を用意しており、ラトビアの通信状況に大きな影響はないという。
両国がともに加盟する北大西洋条約機構(NATO)の協力のもと、近隣を航行した船舶の捜査を始めた。
北欧などのNATO加盟国は14日、相次ぐ海底ケーブルの破損を受け、人工知能(AI)を用いて不審船の情報を共有する仕組みを立ち上げると表明した。
24年11月にはスウェーデンとリトアニアを結ぶ通信ケーブルが切断されたほか、フィンランドからドイツをつなぐケーブルも破損した。
12月にはフィンランドとエストニアを結ぶ電力ケーブルが傷つけられた。フィンランド当局はロシア産原油を秘密裏に運ぶ同国の「影の船団」に属するとみられるタンカーを拿捕(だほ)したが、全容解明には至っていない。
バルト海を航行する船が故意にいかりを引きずり、海底のケーブルを切断するといった手法が多用されている可能性がある。NATOなどが警戒を強めても防ぎきれないことが対処の難しさを物語る。
ロシアがウクライナに侵略して以降、欧州では非軍事の手段を組み合わせた「ハイブリッド攻撃」の脅威が高まる。NATO高官は「被害国が明確な武力攻撃とみなして反撃するのが困難とみたロシアが隙を突いている」と分析する。
NATOは新たな被害を生まないための警備力の向上に加え、ロシアの行動を抑止するための方策を協議している。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長も26日、こうしたインフラの「レジリエンス(復元力)と安全は最優先事項だ」とX(旧ツイッター)で強調した。27日のEU外相会合で新たな対策を議論する。
25年1月には台湾周辺でも中国船が海底ケーブルを損傷した疑いが浮上する。日本は国際通信の99%を海底ケーブルに依存する。海底の重要インフラの保護は、世界で安全保障上の重要な課題となっている。
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記事にもあるように、犯人が明確に断定できないとはいえ、ロシアによるハイブリッド戦争の一環である可能性が極めて高い。
特に、バルト海といえば、ロシア第二の都市・サンクトペテルブルグも位置し、バルティック艦隊も所属した伝統的、戦略的に重要な海であるが、2004年のバルト三国に加え、一昨年フィンランド、昨年にはスウェーデンがNATOに加盟したことでまさしくNATOの海になってしまったことで、恣意行為と嫌がらせを繰り返している可能性がある。
その他、ロシアはGPS操作によるフライトの混乱、放火、偽情報の流布、選挙妨害、移民・難民の送り込みなど多くのハイブリッド戦争を展開している。国際的阻止が急務である。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動きなど、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
日経記事2025.1.27より引用