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ガリガリ君が「救いの神」に がん患者のつらさを緩和

2024-10-20 08:36:48 | 医療・ヘルスケア・健康・食事・睡眠 及び産業





日経メディカル

こんにちは。永寿総合病院の広橋猛です。

緩和ケア医として日々患者と向き合う中で、時として思いがけないものが患者の救いとなるという体験をします。今回は、そんな「救いの神」となったある商品についてお話ししたいと思います。

その商品とは、皆さんもよくご存じの「ガリガリ君」です。夏の暑い日に召し上がることがあるのではないでしょうか。

 

※今回は「ガリガリ君」の話としていますが、似たような氷菓であれば同等の効果があると考えられます。ただ、本記事ではそれらも含め、便宜的に「ガリガリ君」と表記します。

 

 

終末期患者とガリガリ君


数年前のある日のこと。私は病棟で終末期の大腸がん患者を担当していました。

患者は脳梗塞も合併しており、嚥下(えんげ)機能が著しく低下していました。肺炎を繰り返して体はかなり弱り、ベッドの上で寝たきりの状態。

 

誤嚥(ごえん)の危険から食事を取ることができなかったのですが、患者本人は「何か食べたい」という強い願望を持っていました。

この状況に、患者の家族も何かしてあげたいという思いを示したので、私はガリガリ君を提案しました。すぐに家族は売店でガリガリ君のソーダ味を買ってきて、私も見守る中、その小さいかけらを患者の口に運びました。

 

すると驚いたことに、患者の表情が一瞬にして明るくなったのです。「おいしい」という言葉こそありませんでしたが、その満足げな表情は言葉以上に雄弁でした。

患者はもっと欲しそうな様子で、その後もゆっくりと味わっていました。最終的に、ガリガリ君を4分の1ほど召し上がりました。

 

この出来事をX(当時のTwitter)で共有したところ、予想以上の反響があり、医療者からは「素晴らしいケアですね」「私も勧めてみます」といったコメントが寄せられました。しかし、私が最も心を打たれたのは、患者の家族、さらには大切な人を亡くした遺族からの反応でした。

ある患者の家族は、「抗がん薬で食欲がないときも、ガリガリ君に救われています」と書いてくれました。遺族の方からは「祖父の最後の笑顔はガリガリ君を食べたときでした」という思い出も教えてもらいました。一方で、「知っていたら、もっと色々できたかもしれない」という後悔の声もありました。

 

これらの反応は、私たち医療者に「食べる楽しみ」の重要性、そして希望を持ち続けなければならないことを改めて認識させてくれました。

 

 

私が手術を受けたときの体験

実は私自身も、ガリガリ君に助けられた経験があります。私は昨年、甲状腺がんの手術を受けました。

術後の痛みについては、痛み止めを使って何とか乗り越えることができました。しかし、痛みが和らいだ後も、気管挿管の影響もあったのでしょうか、喉の火照りやヒリヒリ感が残り、どうにも不快でした。

 

そんなとき、ふと冷たいものが食べたくなり、ガリガリ君を口にしました。すると不思議なことに、喉の不快感が和らいだのです。

冷たさが心地よく感じられ、喉の乾燥も緩和されました。退院した後も、コンビニでいくつかの味を買い込みました。当時はだいぶ助けられたのです。

 

なぜガリガリ君が効果的なのでしょうか。ガリガリ君が終末期患者や術後患者に効果的な理由をいくつか考えてみました。

 

 

(1)分かりやすい味
はっきりとした味のため、味覚が低下している終末期患者でも味を感じやすい可能性があります
(2)冷たさによる効果
冷たさは局所的な炎症や不快感を和らげてくれます
(3)水分補給
主に氷からできているので、溶けて水分補給になります
4)少しずつ溶ける
少量ずつ溶かしながら飲み込むので、嚥下機能が低下していても水より安心して摂取できます
(5)心理的効果
多くの人にとってなじみのある味で、懐かしさや楽しみを感じられます
(6)口渇の緩和
シャリシャリとした食感が口腔(こうくう)内を刺激し、唾液分泌を促します
(7)安全性
氷菓子であるため、万が一誤嚥しても、乳製品を含むアイスクリームより肺へのダメージが小さいかもしれません

もちろんガリガリ君に限らず、患者の好みや状態に合わせて様々なアイスを試してみることをお勧めします。高貴な味わいやカロリーを求めるなら、高級アイスの代名詞ともいえるハーゲンダッツでもいいでしょう。大切なのは、個々の患者の好みや状態に合わせて選ぶことです。

 

 

ぜひガリガリ君を勧めてみてください

この経験から、食事が取りにくいような患者にはアイス、特にガリガリ君をよく勧めています。

緩和ケアにおいて、患者さんのQOL(生活の質)向上のためには、医学的なアプローチだけでなく、身近で具体的な工夫が大きな意味を持つこともあります。ガリガリ君のように誰でも手に入る商品が、患者に喜びや安らぎをもたらすことができるのです。

 

私たち医療者は、患者や家族の声に一つひとつ耳を傾け、柔軟な発想で対応することが求められます。

最後に、これをお読みのみなさんの臨床現場でも、ぜひガリガリ君や好みのアイスを試していただければと思います。笑顔に出会えるかもしれません。そして、皆さんならではの「救いの神」が見つかることを期待しています。

 

 

広橋猛(ひろはし・たけし)
永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長
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2005年東海大学医学部卒。三井記念病院内科などで研修後、09年緩和ケア医を志し、亀田総合病院疼痛・緩和ケア科、三井記念病院緩和ケア科に勤務。14年2月から現職。
 
また、病院勤務と並行して、医療法人社団博腎会野中医院にて訪問診療を行う二刀流の緩和ケア医。
 
日本緩和医療学会では理事として、緩和ケアの広報、普及啓発、専門医教育などの活動を行っている。
 
「がんばらないで生きる がんになった緩和ケア医が伝える『40歳からの健康の考え方』(KADOKAWA)」、「緩和ケア医師ががんになって分かった『生きる』ためのがんとの付き合い方(あさ出版)」など執筆多数。
 

[日経メディカルOnline 2024年8月13日の記事を再構成]

 

 

 
 
 
 
 
 
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日経記事2024.10.20より引用

 


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