パメラ・ヘンフィルさんはトランプ大統領による恩赦を拒否すると公言する=AP
トランプ米大統領が就任初日、2021年1月の連邦議会議事堂占拠事件で罪に問われた人たちに恩赦や減刑を与え、極右団体指導者らが釈放された。
対象は1500人を超え、恩赦の乱用との批判は強い。「恩赦を拒否する」と公言する人もいる。
「恩赦を受けることは議会を守っている警察や法制度、私たちの国への侮辱になる。私が有罪を認めたのは、私が有罪だったからだ」。
西部アイダホ州ボイシのパメラ・ヘンフィルさん(71)は25日、日本経済新聞の電話取材に答えた。
ヘンフィルさんは議会占拠事件の暴徒の1人だった。議事堂内に押し入った群衆をスマホで撮影して歩いた。22年、議事堂内への侵入に関わる軽犯罪で有罪を認め、6カ月収監される実刑判決を受けた。
薬物依存症のカウンセラーだったヘンフィルさんはかつて「MAGAおばあちゃん」と呼ばれ、「米国を再び偉大に」の頭文字で総称されるトランプ支持者の代表のように扱われた。「あの頃の私は批判的思考力を失っていた」と振り返る。
トランプ氏が警察官に暴行を加えた者まで含めて恩赦したことについて、ヘンフィルさんは「とても腹が立った。
彼は正気なのか」と述べ、「彼らは歴史を書き換えようとしている。私はそれに加担するのは嫌だ」と語った。
今回の恩赦や減刑により、極右団体オース・キーパーズのリーダー、スチュワート・ローズ氏、極右団体プラウド・ボーイズの元指導者エンリケ・タリオ氏も釈放された。
タリオ氏は米メディアに「トランプ氏が約束を守ってうれしい」と語った。
武装した人々を集めて政権移行の妨害を扇動しようとした罪に問われ、ローズ氏は禁錮18年、タリオ氏は禁錮22年の実刑判決を受けていた。
政権発足前、バンス副大統領が「もし暴力行為をしていれば、明らかに恩赦されるべきではない」と語るなど、重罪を犯した人は恩赦の対象にならないとの見方が広がっていた。
民主主義の根幹である選挙結果を覆そうとした事件の責任がうやむやとなり、「ささいな事件」(トランプ氏)との主張によって風化、矮小(わいしょう)化が進みかねない。
当時の議会警備担当者らは恩赦や減刑を強く批判している。
(ワシントン支局長 大越匡洋)