ロシアの情報工作の一環とみられるニュースサイト「Truthgate」のトップページ
【ニューヨーク=朝田賢治】
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は2日、米国各地の大学で反イスラエル抗議活動が激化している背景に、中国やロシアの情報機関による世論分断工作があるとの分析記事を掲載した。
過激化するデモへの取り締まりを批判する投稿や動画をSNS(交流サイト)で拡散することで、大統領選を前に世論の対立を深める意図があるとしている。
同紙が複数の米国内の研究機関の分析結果として報じた。中国、ロシア、イランの国営メディアが過去2週間に、反イスラエル抗議活動に関する英文記事を400本作成し、X(エックス)やテレグラムなどのSNS上で自動プログラム(ボット)によって拡散しているという。
工作員による情報戦も活発化しているとした。「ドッペルゲンガー」との異名を持つロシアの工作員が、「トゥルースゲート」というニュースサイトを米国のメディアを装って設立し、バイデン政権のイスラエル支援政策を批判する記事などを掲載している。
中国の公安部との関わりが指摘されている「スパモフラージュ」という工作活動では、関連するXのアカウントを通じて学生デモを警察が取り締まる映像を、米政権を批判する文言とともに拡散していることが確認できたという。
中国の工作機関が運営するXアカウントで、親パレスチナ組織が大学のデモへの参加を呼びかけたメッセージを再投稿した例もあったという。
これまでのところ、こうした工作機関が暴動そのものを直接呼びかけるような動きは見つかっていない。
ニューヨーク・タイムズはこうした工作活動は「政権への批判を増幅させたり、米国の国際的なイメージをおとしめたりすることを狙っている」との見方を示した。
データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
日経記事2024.05.03より引用