トーマス・グラバー 第四章 グラバー長崎での活躍 五代才助に会うhttps://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/d62ff770c858327957e8dcd970415eb7
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琉球王国の危うい歴史
グラバーはその手帳に掲載されている物品を一頁ずつ見ていった。 生糸、黒砂糖、樟脳、鉛、べっ甲、緞子(どんす)、毛織物、陶器などが色鮮やかに描かれている。グラバーは「商品の多くは清国やジャワの産物のようですね」。 「ええ、そうですよ。唐物も南蛮の産物も琉球を通じて簡単に手に入ります。 わが薩摩藩は七十二万石の大藩です。琉球はわが藩に朝貢しており、いくらでも商品を調達できます」。
ここで少しまた横道にそれる。五代はこの時「わが薩摩藩は琉球領内の琉球王国を持っているようなもの」と自藩の実力を誇大してみせた。 しかし、この時点ではあくまでも琉球は独立王国であった。 ただし、清国、薩摩藩の二つに仕える朝貢国であり、とても微妙な王国ではあった。
現在、中国は尖閣諸島はもともと中国のもの。 さらには沖縄列島ももとをただせば中国のものと、露骨に覇権主義をちらつかせ始めた。 筆者は日本人であり、尖閣諸島にせよ、沖縄列島にせよ、是非日本のりょうどにしておきたい。 しかし史実を客観的に調べていくと、尖閣、沖縄列島ともに中国(当時の清国)の所有する列島といわれても、これを頭から否定する論拠はない。
一七三二年~一八七九年までの約五百年間、琉球王国が最も親しく交流していたのが深刻である。そもそも「琉球」と名付けたのは中国人であり、小琉球(台湾)と区別するために「大琉球」と呼ばれたときもある。
十四世紀に入ると琉球本島を中心に小国家が乱立、群雄割拠して互いに覇を争った。その中、一四一六年、巴志(しょうはし)の登場により、ようやく統一国家、琉球王国が実現した。この琉球王巴志の時に中国、薩摩藩(徳川幕府)に朝貢したのである。
この頃、琉球は中国、日本、朝鮮、東南アジアの諸国と活発な外交、貿易を展開,偉大な治世を誇った。 しかし尚巴志の死去後、琉球は再び内乱が続発、尚真(在位一四七九~一五二六)の時代にようやく安定した。 ところが尚真が死ぬと再び乱れる。
その弱みにつけこんで薩摩藩は「かねてよりの無礼を正す」という名目で琉球出兵を徳川家康に願い出、家康は直ちにこれを許可した。 一六〇九年(慶長十四年)、薩摩藩主、島津家久は三千人もの大軍団を弱体化していた琉球へ出兵、これを占領下に置いた。薩摩藩はその時の琉球王、尚寧(しょうねい)を薩摩に連行、薩摩への忠誠を誓わせて帰国させた。
これ以降、琉球王国は薩摩藩の支配下に置かれた(「琉球征服」という)。 この間、琉球のもうひとつの朝貢国であった清国も弱体化していたため、薩摩藩は琉球の国王襲位、高位高官の任命権をも掌握、税金取得の権利さえも得た。 さらには対清国貿易の管理発言権も確保。、与論島、沖永良部島、徳之島、奄美大島、喜界島の五島を割譲させた。
薩摩藩がこういう教権が発動できたのも、清国、琉球王国が共に弱体化していたからできたことであった。 その後、一八六八年、日本は徳川幕府体制から明治新政府へと移行したが、この時、琉球王国をどうするかが議題にのぼった。 明治政府は王国体制を廃して「沖縄県」を設置しようとしたが、これには琉球王国が猛反対。
また、琉球と長年友好関係を維持してきた中国(清国)も激しく抗議してきたため、いったん中止した。 しかし明治十二年(一八七九)、日本政府は兵隊、警察官を動員して武力を背景に、琉球王国の廃止と沖縄県の設置を高らかに宣言した(琉球処分)。
こうして、琉球、清国ともに日本の武力にに屈し、琉球は日本の沖縄県となったのだ。この辺りの経緯は勿論中国政府も知っている。 だから尖閣諸島のみならず、沖縄本島をも中国へ返還させようと感がるのは、全く間違っているとは言えないであろう。
しかし、それは清国が余りにも脆弱な国家に成り下がっていたために起きたこと。
今さら百年以上も前の事を蒸し返されても、それでは日本政府が困ってしまう。
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この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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