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極右AfD「ドイツを再び強国に」 トランプ流に若者熱狂

2025-01-16 07:49:59 | 国際政治・財閥


AfDの党大会で演説するワイデル党首(11日、独東部リーザ)=ロイター

 

総選挙を2月23日に控えるドイツで、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持率を伸ばしている。

選挙戦では反移民を掲げ、第1党の獲得を意識した宣伝戦略を始めた。反ナチスを国是とするドイツでAfDはなぜ台頭するのか。党大会で支持者の熱狂に迫った。

 

旧東ドイツの古都ドレスデンから北西に約50キロ。夜には通りを歩く人もいない田舎町のリーザで、AfDが11日から2日間の党大会を開いた。

氷点下の早朝からAfDへの抗議デモが始まり、閑静な街は一転して緊迫した空気に包まれた。記者も催涙ガスとみられるものを浴びた。

 


「AfDの禁止を!」と呼びかけるデモ参加者(11日、リーザ)

 

警察の身分確認を4回終えて党大会の会場ホールにたどり着くと、真っ先に目に飛び込んできたのは壇上に並ぶ多数のドイツ国旗だ。

会場にはAfDの政党カラーである青色の服を身にまとった熱心な支持者らが詰めかけていた。

 

「ドイツを再び強国に!」。総選挙を戦う「党の顔」である首相候補に決まったワイデル党首が壇上から力強く呼びかけた。党員や議員は何度も立ち上がり、ドイツ国旗を振りながら喝采を送った。

トランプ次期米大統領が掲げてきたスローガン「MAGA(米国を再び偉大に)」と重なるのは言うまでもない。党大会に関連したイベントではトランプ氏のイラストを模したバッジを胸に付けた参加者も見かけた。

 

欧州連合(EU)の否定と単一通貨ユーロからの離脱、原子力発電やロシア産ガス購入の再開、難民支援の削減――。

 

AfDの選挙公約の資料には、景気低迷で疲弊する大衆に受けやすいポピュリズム的な内容がズラリと並ぶ。

一見するとそれぞれ脈絡のない主張だが、一つのイデオロギーが通底している。国民に向けた「強国への憧れ」だ。

 

世界最大の米国経済が好調を維持するのとは対照的に、ドイツは2024年も2年連続でマイナス成長になった。これまで東西ドイツ統一を果たした1990年以降で1度しかなかった異常事態だ。

「欧州の盟主」として君臨してきたはずが自信も余裕も失った。

 

党員のダニエルさん(40)は以前は政治活動に関心がなかったという。転機はシリア内戦などで100万人規模の難民や移民が押し寄せた2015年だった。

移民流入の制限を唱え、「家のドアを閉めるのと同じだ。冷蔵庫の中にみんなの分があるわけではない」と話す。

 

 


党大会でドイツ国旗を振るAfDの党関係者や支持者(壇上はワイデル党首)

 

党大会の熱狂ぶりは世論調査にも見て取れる。公共放送ARDが9日公表した最新の世論調査によると、政党別の支持率はAfDが2番手で1年ぶりに20%台に浮上した。

首位は国政最大野党で保守陣営のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が31%と死守するものの、AfDとの差は縮まりつつある。

 

選挙戦で第1党を意識した戦い方も、いまのAfDを象徴する変化だ。党大会でも批判の矛先はショルツ首相が率いる中道左派のドイツ社会民主党(SPD)ではなく、総選挙で第1党が有力視されるCDUに集中させた。

ショルツ政権は与党SPDの支持率が15%で、連立を組む環境政党「緑の党」も14%。いずれもAfDを下回る。支持率低迷から瓦解したショルツ政権はもはやAfDの眼中から消えつつある。

 

総選挙の焦点は、政権交代ではなく次期政権で中心となりうるCDUがどれだけAfDと差を広げて逃げ切れるか。そうした不穏な空気が漂い始めている。

 

 

 

次の総選挙でAfDが得票を伸ばしても、政権入りの可能性は現時点ではない。「魂を売る行為だ」と語るCDUのメルツ党首を筆頭に、主要政党はAfDとの連立を明確に否定しているためだ。「AfD抜き」で新しい連立政権の枠組みを探ることになる。

だが、政権入りしないからといって過小評価すべきではない。欧州債務危機をきっかけにした13年の結党から10年あまりで、AfDは国政選挙で主要政党と張りあうようになった。

 

15年の難民危機、22年のウクライナ侵略。危機のたびにAfDは既存政党への不満を吸い上げる形で支持を伸ばしてきた。

24年9月に実施した東部チューリンゲン州の州議会選挙では、極右政党として州議会レベルで第2次世界大戦後で初めて第1党になった。

 

ドイツ国内を見渡せば町長や市長の選挙でも勝利するなど、AfDが行政運営を担う地域は着実に増えている。

当初は反ユーロが旗印だったが、次第に反移民などの排外主義的な主張を強めている。

 

独情報機関の連邦憲法擁護庁は過激な極右組織との疑いから監視対象に指定する。実際、AfDの幹部や支持者はナチス時代のスローガンを唱える問題も繰り返してきた。

 

 


AfDに反対する抗議デモのために集まった参加者ら(11日午前6時、リーザ駅前)

 


ロシアによるウクライナ侵略や高関税政策を掲げるトランプ米政権の誕生で、欧州は結束が求められる局面にある。

それにもかかわらずAfDが反EUを主張するのは、他国に干渉されずに自国だけで政策決定の主導権を握りたいという反動だ。

 

経済合理性を欠く単一通貨ユーロからの離脱も、主眼は強い自国通貨への回帰という物語にある。

AfDの幹部や支持者によるナチスのスローガンや人種差別的な言動も、こうした文脈の中で出てくる。

 

いまのAfDを支えるのは若者を中心とした現役世代だ。党大会に駆けつけた党員のローランドさん(23)は「共感すべき政党に投票すべきだ」と力説する。

党員になったのはまだ1年前。2月の総選挙ではエネルギーの安定と不法移民の問題を重視する。

 

24年9月の東部ブランデンブルク州議選では若者票がAfDの躍進を支えた。

16〜24歳の若年層が支持したのはAfDで、70代以上の高齢者はSPDを応援した。AfDの支持層全体では30代前後が厚かった。CDUや環境政党の緑の党より若者の支持が高いという調査もある。

 

その支持層は着実に広がりつつある。独メディアによると党員数は5万人規模に達した。30万人を超える与党SPDの足元にも及ばないにも関わらず、20%という高い支持率は裾野の広がりを映す。

既存政党への不満から一般の有権者は消去法で票を投じようとしている。

(独東部リーザにて、南毅郎)

 

 

 

 

日経記事2025.1.1.16より引用

 

 



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