トーマス・グラバー 第四章 グラバー長崎での活躍 船舶を一隻受注https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/40288565c64b9
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横浜へ見学の旅
それにしても長崎に着任して、わずか数ケ月での大商談、「何という幸運、五代さんと言うエンゼルが飛んで長崎に着任して、わずか数ケ月での大商談、「何という幸運、五代さんと言うエンゼルが飛んで季てくれた」
翌、万延元年(一八六〇)の正月、ようやく横浜から長崎へ戻ってきたマッケンジーが「グラバー君、後学のため横浜へ一度行ってみないか」と誘った。 グラバーは五代の船舶購入の件で毎日頭がいっぱいだったが「少し頭を冷やしてくるのも、何か良い結果をもたらすかもしれない」そう思ったグラバーは、たまたま自国イギリスから長崎へ入港したラッセル商会の快速帆船へ乗り込んだ。
グラバーが横浜港へ入ったのは、長崎を出港してから七日目の朝だった。 途中、三浦半島を通過するとき、日本人の心のシンボルと言われる富士山を遠く眺めた。 「何と美しい神秘的な山だろう」食い入るようにずっと眺め続けた。 長崎は山の数こそ多いが千メートルを超える山は一つもない。
またグラバーの故郷スコットランドにも三千メートル級の高山はない。
グラバーは、今の勤務地長崎を離れ、将来は横浜勤務も悪くないな。 なんとなくそう考えながら、富士山をじっと見つめていた。
広々とした入り江の一角に横浜港は築かれていた。 現地を見渡すと、各国の国旗を掲げた帆船、蒸気船が多数碇泊しており、将来もっと繁栄するのは長崎よりも横浜の方だと確信した。
グラバーが降り立った時の横浜は何もかもが建設ラッシュの途中。 出迎えに来てくれたJM商会のロスが「今夜泊まる宿はあれだ」と指さした。住宅と言うより木造の掘立小屋だった。グラバーが夕食に招待された料亭は「岩亀楼(ガンキロー)」といい、当地ではとても評判が良く、外人達の利用客がもっとも多いという。 この料亭でJM商会の横浜支配人ウィリアム・ケズウィックと食事をしたが、彼の年齢は未だ二十五歳という。 しかも彼は横浜居留民の代表者に推され、神奈川の領事館、江戸の公使館へも出入りしているという。 その落ち着き払った彼の物腰にグラバーは思わず尊敬を覚えた。
夕食の席上、ケズウィックはつい先日、オランダ人二人が浪士に殺されたことを話し、「グラバー君、横浜は江戸から近い場所なので浪士がうろついている。 必ずピストルを忘れず身に着けておくように」。 と忠告された。 武士の身分を剥奪されたか、もしくは自ら武士の身分を返上(脱藩)したのが、いわゆる浪士と呼ばれている。正式な武士と言う身分だからこそ帯刀を許される。 しかし武士の身分を失くして浪人となっているのに帯刀を許されているのは、明らかにおかしい。
来日して間もないケズウィックは、武士の実権を掌握している徳川幕府の「法」は、いったいどうなっているのか、としきりに幕府の批判を繰り返していた。 翌朝、ケズウィックが「グラバー君、ちょっと馬で遠乗りでもしないか」と誘いに来た。 グラバーはスコットランド時代、父から乗馬を教わっていたので喜んで応じ、削ウィックに同行、川崎の宿場まで来て馬を下りた。 目の前には結構大きな川が流れている。この川は六郷川といい、これを渡れば品川も近い。 イギリスの公使館は品川宿にある寺に借りていた。
グラバーはその公使館まで足を伸ばしたいと思っていたが、この当時、通商条約は締結していたものの、外国人が勝手気ままに遠くへ出かけることは禁じられていた。 「二十五マイル四方」と決められていたのだ。 ケズウィックが「この近くに、とてもおいしい食事を出す料理屋があるので、そこで昼食をとろう」。 と川崎の方向へ馬首を向けた。
大きな二階建ての料理屋の二階へ上がり昼食をとったが、二人ともすっかり日本食に慣れていて魚の煮つけと刺身、野菜などを食べた。 ケズウィックが褒めていたようにとてもおいしい料理だった。
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この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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