外国人観光客らでにぎわう銀座三越前(2日、東京都中央区)
好調な訪日客が日本経済を支えている。2024年の消費額は8兆1395億円、客数は3686万9900人でともに過去最高となった。
円安効果も下支えし、国内のアパレル業界の市場規模並みの消費額となった。訪日客消費の拡大には1人あたり消費額の引き上げや地方への誘客とともに、観光資源の持続性への目配りが欠かせない。
観光庁が15日発表した24年10〜12月の訪日外国人消費額は2兆3108億円だった。24年4〜6月期の2兆1402億円を上回り、四半期として過去最高を更新した。
1人当たりの消費額は23.7万円で、19年同期の17万円から増えた。
年間でみると消費額、客数ともに過去最高を更新した。これまで最高だったのは消費額が23年の5兆3065億円、客数が19年の3188万人だった。
24年は消費額、客数ともに新型コロナウイルス禍前の状況を上回ったことになる。
国・地域別にみると、最も消費が多かったのは中国で1兆7335億円だった。景気低迷や、福島第1原子力発電所の処理水放出問題などの影響により、回復が遅れていたが戻りつつある。
2位は台湾で1兆936億円、3位の韓国は9632億円だった。
年間の訪日客数は前年から47%増えた。国・地域別に前年と比べた伸び率をみると中国がおよそ2.9倍、米国が33%増だった。
日本経済のけん引役としての存在感も高まっている。24年の消費額8.1兆円は国内小売りの一角をなすアパレル産業の市場規模に並ぶ額となった。矢野経済研究所によると23年のアパレルの小売市場規模は8兆3564億円だった。
財務省の24年1〜11月の貿易統計から主要品目の輸出額を年率換算したものと比べても、自動車の17.7兆円に次ぐ。6.1兆円の半導体等電子部品や4.4兆円の半導体等製造装置、鉄鋼などを上回った。
消費額の拡大は円安によるものも大きい。日銀によると外国為替市場で対ドルの円相場は24年平均で1ドル=151円だった。コロナ禍前の19年の1ドル=108円と比べ大きく下げたほか、23年の1ドル=140円と比べても円安水準にある。
各国のマクドナルドのビッグマックの値段を比べる英エコノミスト誌の「ビッグマック指数」によると、24年の日本はドル換算で1個3.19ドルだった。英国(5.90ドル)、米国(5.69ドル)、韓国(3.99ドル)、中国(3.53ドル)などよりも安い。
今後の課題は訪日消費の持続性だ。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「地政学や日本の天災といったリスクもあるが、今後も訪日客数は増加余地がある」というが、足元ではオーバーツーリズム(観光公害)や地域社会との共存が問われる局面に移りつつある。
みずほリサーチ&テクノロジーズの坂中弥生氏は「客数ありきではなく、1人当たりの消費額を引き上げる策が肝心だ」と指摘する。
24年の1人あたりの消費額は22.7万円だった。19年の15.9万円から大きく増加し、23年の21.3万円からも伸びた。1人あたりの消費額の引き上げでカギを握るのが消費額が100万円を超える「富裕層」の呼び込みで、企業も囲い込みに動き出した。
高島屋は24年12月から海外のVIP客が日本の店舗を訪れた際、外商サロンの利用や免税手続きを優先するなどのサービスを始めた。
シンガポール店の顧客約1500人に専用の会員証を発行し、12月の1カ月間で約70人の利用があったという。
JTBは24年11月、準富裕層の訪日客向けの旅行ブランドを立ち上げた。富士山と東京都内上空をヘリコプターで遊覧するツアーなど7ツアーを用意。
準富裕層はビジネスを兼ねて来日する人も多く、短時間で充実した旅程を楽しみたいとの需要を取り込む。
大丸心斎橋店の免税カウンター(大阪市)
オーバーツーリズムでも対策に動く自治体が出てきた。京都市は宿泊税を最大1万円まで引き上げる。現行では宿泊料金によって200〜1000円を段階的に課している。
最低税額は据え置きつつ、1人あたり1泊10万円以上の場合に1万円となる。
今回の増税によって宿泊税収は約126億円となる見通し。使い道は「観光振興」と「市民生活と観光の両立」の2つの柱で構成する。
文化財や歴史的な街並みの保全のほか、観光客の集中を防ぐ広域的な観光周遊ツアーの企画などに使う方針だ。
観光振興のほかにも、橋の耐震補強や洪水対策として河川改修といった市民にもメリットが大きい施策にも税収を充てる考え。
松井孝治市長は宿泊税の使途拡大によって「観光が市民生活の豊かさにつながっていると感じてもらうのが大事」と説明する。
JTBの推計によると25年の訪日客は初めて4000万人台になる見込みだ。
国連の世界観光機関によると、23年の観光収入は日本が386億ドルだったのに対して、米国が1891億ドル、スペインが920億ドル、フランスが712億ドルだった。
訪日客の活力を経済成長に取り込みながら、観光資源の保全などを両立させる総合戦略が重みを増しそうだ。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
家計の消費支出が実質賃金の伸び悩みもあり低迷する中、インバウンドの消費が国内消費を底支えしている。
一方、記事には、オーバーツーリズムへの京都市の対応が載っているが、観光税だけで解決しない問題も少なくない。
東京や大阪では、主に外国人をターゲットとしているホテルでは1室1泊10万円を超えているところも少なくなく、外国人と日本人でも超富裕層などを相手にしている。
そのあおりや外国人宿泊客の増加を受けて、日本人ビジネスマンがよく使うホテルの価格も一部では高騰しており、宿泊費の増加などで、企業経営、とくに中小企業経営にも少なからぬ影響が出ている。
インバウンドの恩恵を受けない企業のデメリットは大きい。
国策としての訪日外国人消費額の目標は2030年に15兆円(6000万人)と定められました。
これは法律ではないですが2016年3月末に「明日の日本を支える観光ビジョン」として閣議決定されました。
もし、この目標2030年に6000万人のお客様をお迎えし15兆円の外貨を稼ぐ!が達成されたとすると一般客1人あたり、1回の日本旅行での日本国内消費は1人あたり25万円となります。
記事中に「24年の1人あたりの消費額は22.7万円だった。19年の15.9万円から大きく増加し、23年の21.3万円からも伸びた。」とありますが、この1人当たり消費額が着実に伸び、目標達成および観光立国日本に着実に近づいています。
日経記事2025.1.15より引用