次期戦闘機の模型の前で取材に応じる中谷防衛相ら
(14日、英中部プレストン近郊のBAEシステムズ工場)=共同
英国を訪れている中谷元防衛相は15日、ヒーリー国防相と会談した。日本、英国、イタリアで共同開発する次期戦闘機を巡り協議した。
3カ国のこれまでの調整で日本が機体設計などを担うことが固まった。複合材に強みを持つ技術力を生かし、レーダーに映りにくいステルス性能の向上に寄与する。
次期戦闘機は航空自衛隊の「F2」戦闘機、英国とイタリア両軍が運用する「ユーロファイター・タイフーン」戦闘機の後継になる。3カ国は2035年の配備をめざし、25年度末にも試作機の製造に着手する。
3カ国での共同開発には政府だけでなく、企業も参加する。日英伊の中核3社が24年12月に機体の製造などを担う共同企業体(JV)の設立で合意した。3社で均等出資する。日本からは日本航空機産業振興(JAIEC、東京・新宿)が出す。
共同開発を管理する国際機関「GIGO(ジャイゴ)」とJVは25年にも開発契約を一括で締結する。3カ国が開発・生産で役割を分担する。
中谷氏は会談後、記者団に契約について「35年の初号機配備を実現するうえで極めて重要なマイルストーンになる」と述べた。中谷氏は15日、GIGOも視察した。
防衛省は次期戦闘機に求められる能力として
①ステルス性
②無人機連携をはじめとする高度ネットワーク戦闘
③高性能なレーダー・センサーなどの技術――を挙げる。
人工衛星などからの情報を総合的に得ながら、敵のステルス機を発見し、随伴する無人機を偵察や攻撃に活用するといったイメージだ。
日本はステルス性能の向上や軽量化に欠かせない機体デザインを担う。異なる材料を組み合わせる複合材の技術を生かす。
日本の複合材技術は防衛装備品や民間製品でも幅広く活用されている。例えば海上自衛隊の「もがみ」型護衛艦では軽量化などを念頭に複合材の一種である繊維強化プラスチック(FRP)を採用した。
日米で共同開発した空自の「F2」戦闘機でも複合材の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使う。CFRPで用いる炭素繊維は日本企業が高い世界シェアを持っており、F2開発の技術は後に米ボーイングの中型民間機「787」に応用された。
次期戦闘機の開発に関わる三菱重工業は16年に初飛行したステルス性能を持つ実証機「X2」で得られたノウハウを生かす。9割以上の部品を国産でまかなった。
電波を吸収する複合材で機体を覆うことで実現したステルス性能や空中で自由自在に動けるようにする技術を得た。これらの国産技術を次世代戦闘機に盛り込む狙いとみられる。
ステルス性能を追求すると、機体の構造が制限され、戦闘機に本来求められる攻撃力や機動性を損ねかねない。技術の総合力が必要で、英伊と補完し合う。
システム関連は英国とイタリアが担当する。英BAEシステムズは電磁波で敵の攻撃を防ぐ電子戦システムで高い技術力を持つ。
最新鋭戦闘機の米国の「F35」にも納入するなど、培ってきた知見を次期戦闘機に反映する。機体制御を担う伊レオナルドは、人工知能(AI)など最新のデジタル技術の導入に力を入れる。
中谷氏は14日、英中部プレストン近郊にあるBAEシステムズで戦闘機を開発する工場を見学した。次期戦闘機に採用する機体やエンジンを念頭に各種技術を試す実験機などを開発する工場で、防衛装備品の開発に関する最新設備を見たほか、次期戦闘機の開発計画について説明を受けた。
3カ国の企業がそれぞれ強みを持ち寄ることで、ステルス性能に加えて高い攻撃力や連携力を保有する機体になり得る。
中国やロシア、北朝鮮といった日本周辺の安全保障環境を悪化させる国々への抑止力として期待がかかる。
中国軍は24年12月、次期戦闘機と同じ第6世代とみられる戦闘機を飛ばした。ステルス性能が向上している可能性があり、次期戦闘機もこれに対抗する必要がある。
共同開発特有の難しさもある。次期戦闘機に関わる企業幹部は「日本が機体をデザインしたとしても、最終的には3カ国政府がそれぞれ承諾しないといけない」と話す。各国で求める性能が異なれば擦り合わせに難航するリスクを指摘する。
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