循環経済実現に向けた関係閣僚会議で発言する岸田首相(30日、首相官邸)
政府は30日、首相官邸で「循環経済」に関する関係閣僚会議の初会合を開いた。
再生材を積極的に活用し、経済成長と環境への負荷の低減を同時に実現する国家戦略として位置づける。岸田文雄首相は使用済み太陽光パネルのリサイクル制度創設など幅広い産業での対応を盛り込む政策パッケージを年内にまとめるよう指示した。
サーキュラーエコノミー(循環経済)は資源の循環と経済成長の両立をはかる概念だ。生産や消費、廃棄といった全ての段階で資源の効率的な利用をめざす。
資源の海外依存を減らせるとの期待があり、経済安全保障の観点からも注目されている。
首相は循環経済の実現について「環境面の課題をはじめ、地方創生や経済安保といった社会課題の解決と経済成長を両立させる新しい資本主義を体現するものだ」と強調した。
「循環経済型社会システムへの転換のため政策を抜本強化することが必要だ」とも指摘した。
政府は6月にまとめた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に循環経済の実現を明記した。
太陽光パネルのリサイクル制度を確立するため、早ければ2025年の通常国会に関連法案を提出する。
ペットボトルなどのプラスチックや金属の再資源化に向けた技術開発や設備投資を後押しする。
関係閣僚会議は製造業だけでなく建設業や農業など裾野を広げて各分野ごとの今後の取り組み方針を政策パッケージとして示す。
産業界や全国の自治体と連携して人材育成を進める。8月から全国で車座対話を始めて若年層の意見を吸い上げる。
自動車メーカーといった製造業と廃棄・リサイクル業の連携を進めるほか、再生材の供給や利用拡大などに努める。資源循環のネットワーク拠点を構築して産業競争力の強化と経済安保の確保をはかる。
林芳正官房長官は26日の記者会見で「循環経済への移行に向けた取り組みを政府一体となって強力に推進する」と説明した。自民党の環境・温暖化対策調査会が4月に首相への提言書で設置を要望していた。
首相は19日、長野県軽井沢町を訪れ、国産木材を活用したり資材を再利用できるよう釘を使わなかったりする建築の取り組みを視察した。
23年には新幹線で使うアルミを高品質な部材にリサイクルして新幹線で再活用する現場などを訪れた。
経済産業省によると、国内の循環経済に関する市場規模は20年時点で50兆円という。30年に80兆円、50年に120兆円と広がる見通しだ。
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三菱UFJリサーチ&コンサルティング フェロー(サステナビリティ)
循環型経済は、GX政策の一環である。この記事の中にはGXの文言がない。
エネルギーだけでなく、素材、資材の価格が高騰しており、資源を輸入に頼る日本において、これまでのリサイクル中心ではないリユース、リデュースを中心とした経済とならなければ、再エネができてもモノづくり日本の産業構造の変化に対応できない。
欧州のグリーンディールリカバリー政策において、新サーキュラーエコノミーアクションプランで電子機器・ICT・バッテリー・車・包装・プラスチック・テキスタイル・建築・食分野で持続可能な製品やサービスを標準化。
特にバッテリーに関する規則は最初の取り組みである。GX政策として緊急性をもって取り組むべきだ。
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
循環経済を推進することは、資源に乏しい日本にとって必要不可欠である。
日本のペットボトルのリサイクル率はすでに高いが、資源節約や環境のためのみならず、新しい成長力確保のためにも、様々なルートで、様々な資源を回収することを、効率的に行う必要がある。
売った家電などについて、製造物責任法(PL法)によって責任者を特定するだけでなく、回収する権利を付与してはどうか。
使われたレアメタルやレアアースを日本の技術で純度高く回収するのである。
これまで、我々がゴミだと思ったものがゴミじゃなく、資源になる。
この仕組みをいち早く作ったもの勝ち、ではないか。
ルール作りに関する政府の本気を期待する。
SDGsは「Sustainable Development Goals」の頭文字をとった略語で、国連サミットで2015年9月、全会一致で採択された世界共通の行動目標。
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