大変面白い日本シリーズでした。
去年のDeNAとの日本シリーズも両チームの監督の緻密な駆け引きが面白かったのですが、今年の広島は怪我人多発で西武との戦いでボロボロになっていたソフトバンクを投打共に圧倒しているのでは無いかと思っていました。
実際表向きの戦力比較ではそうだったと思うのです。
特に打力では1勝3敗ではあったものの、
5戦目での出場選手の打率は広島が.263 ソフトバンクが .234
今シリーズ打撃好調のデスパイネと今宮が含まれた第4戦でも広島.271 ソフトバンク.223
得点も広島20点 ソフトバンク23点
僅か3点差でした。
こんなに拮抗しているのに
明らかに第5試合までは「本拠地に帰りさえすれば盛り返せる」レベルの試合を見せていたのに
何故か第6試合の広島からは集中力に欠けるシーンが散見され、諦めたような雰囲気さえ漂っていました。
特にあの田中広輔の盗塁がリクエストによって翻った瞬間に「届かない」と感じたのでは無いでしょうか。
実際、その前に盗塁では無く二番菊地に送りバントをさせて失敗しています。
この足封じはクライマックスシリーズで西武も散々走って散々刺されました。
私は自分のスタイルを崩さない姿勢は好きなのですが、実は本当に強いチームはどんなスタイルでも勝てる柔軟性があるのです。
今シーズン山賊打線で暴れまわって優勝した西武はポカポカ打つ前に足で揺さぶるスタイルで点を取りますが、とった点を守り抜く終盤のブルペンの戦力が極端に弱いのでソフトバンクに敗れました。
その西武は10年前に日本一になった時は弱い後ろに岸を回して日本シリーズを制しました。
あの時も重量打線が売りでしたが、中島が途中故障離脱しても片岡の足で稼いだ点を岸が守り抜いて勝利しました。
スタイルを幾らでも変えられる柔軟性は分厚い戦力と戦力を活用する選手の使い方が必要です。
この辺はソフトバンクのチームの土台の強固さによるもので、今回負けていたら戦犯にされてもおかしく無い打率の主力と控えを上手く回して勝ちを拾っての見事な日本一でした。
本当に知力と練習の質と量の差と、内川のバントの上手さを見てもどれほどの質と量の練習を積み重ねていたのかと考えると寒気すらします。
守備のスーパープレーも派手なものばかりで無く、内外野の連携だったり、バントを簡単にさせない投球だったり守備体系だったり、3試合目からの外野の守備シフトが完璧で急に間を抜く当たりが減ったり。
ほんの少しの差ですが、広島の方が選手の固定度が高いので選手任せになりがちだったかもと思いました。が、普通はそれもストロングポイントになるものなんですがね(^_^;)
盗塁を6度阻止した甲斐キャノンが目立ちすぎるくらい目立ちましたが、そこに至るまでのバッテリーの牽制のしつこさと集中力の持続が凄まじかったですね。
もう、一瞬一瞬が濃厚で楽しくてしょうがなかったんですが、広島の方が先にギブアップしてしまった感じが否めません。
日本シリーズは短期決戦ですが、意外と長いんですよ。
最長7試合(今回は引き分けで8試合)最短で4試合。
同一チームと4試合連戦ってあんまり無いでしょ?
この間に怪我人も出るし、好調だった選手も不調の波に飲まれることもあります。
反対に不調だった選手が蘇る事もあります。
今回工藤監督が見事だったのは打撃不振だった上林を一旦外してまた使うと見事に蘇った事と、3戦目で5失点してあわや逆転負けを喫する所だった加治屋を5戦目延長10回で(使わざるを得ない状況とは言え)登板させて先頭フォアボールは出したものの後続を断ち柳田のサヨナラホームランを呼んで見事に蘇らせた事。
短くて長い日本シリーズの中で選手を使ううちにシリーズそのものをコントロールして行くのは流石と唸りました。
広島はタナキクマルに変わる選手を使うことができず、柔軟性を欠いたのが敗因の1つでしょう。
工藤監督なら丸は外していたと思います。
と、同時にセリーグの限界を感じました。
広島の野球が正しい、広島を目指せとしてきたセリーグ
広島は非力な俊足打者は置かず、菊地のような選手も強いスイングで長打力もあるわけで、その野球の思想はセリーグでは先端と思われていたのです。
しかし、足で掻き回してもソフトバンクの様な成熟したチームには通用しないのです。
足でかき回すと言うのは心理戦でバッテリーを揺さぶって心理的に追い詰めて甘いボールを叩いて大量得点を稼ぐスタイル。
一、三塁で二盗して三塁ランナーがディレードスチールをまんまと決めさせてくれるチームはそもそも日本シリーズに、ましてやパリーグを勝ち上がってくるチームには通じないのです。
そして、広島野球以下の古いスタイルのバットを短く持ってゴロを打って足で稼いで相手の隙を突く野球。
これも守備が上手いチームには通じない訳で…
足で稼ぐのもいいけど、それは選択肢の1つで内川のバントの様に色んなスタイルを持つことが出来るのが真に分厚い戦力と言えるのだと痛感しました。
そして、その道のりは遠く果てしないのですが、世界に出遅れがちな日本野球の1つの理想の形をソフトバンクが見せてくれた気がします。
ただ、西武や広島の様に何度刺されてもチャレンジする帰りの燃料を持たない姿勢は嫌いではないです。
そう考えると阪神は育てるべき選手は矢張り中谷と江越…とキャンプリポートを見て思ったり思わなかったり
ソフトバンクへの道のりは遠く果てしない…