晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

スタンダール 『赤と黒』

2013-01-10 | 海外作家 サ
この年末年始、ほんとうはこの『赤と黒』を読む予定だったのですが、
上巻を読み終わって、下巻に読み進む意欲というか元気がなくて、他の
本を手にしてしまい、それが読み終わって、このままじゃいかん、と
半ば義務のように下巻を読み始めた次第。

文庫の上下巻にして約800ページ、まあ「長編」の部類には入りますが
今までもっと長い作品を読んだこともありますし、何が途中で読む気力
を萎えさせたか。

身も蓋もない言い方をすれば、800ページのうち、300ページ分くらいは
「別にいらない」ような描写とでもいいましょうか。この時代の小説って
多いですよね。

フランスの片田舎の、材木屋ソレルの家に生まれたジュリヤン。幼い頃から
本を読みふけり、ラテン語の詩を暗記しますが、体は細く色白で、親父から
は忌み嫌われています。
このジュリヤン、親の職業や片田舎での生活を憎み、いつか自分はものすごい
出世してやる、と燃えています。

そんなジュリヤンですが、村の有力者レーナル氏の子供の家庭教師になる
ことに。
はじめこそ、良き家庭教師ぶりで、レーナル氏も高く買っていたのですが、
はじめてレーナル婦人を見た日から一目惚れをしてしまい、その想いはつの
る一方、そして夫人のほうも、この美少年に次第に惹かれていって、とうと
うふたりは恋仲に。

しかしこんな秘密の関係がいつまでもバレないでいることはなく、やがて
知れ渡ってしまい、ジュリヤンを家庭教師に斡旋した神父は、彼をブザンソン
という都会にある神学校に入れます。

神学校に入ったジュリヤンですが、学生たちは自分と変わらない境遇で育って
きた若者ばかり、つまり「片田舎の百姓のせがれ」で、ジュリヤンは彼らを内心
蔑み、なまじ勉強ができるばっかりに、ジュリヤンも他の学生たちから嫌われま
すが、学校長は彼を、性格に難はあるものの高く評価し、ラテン語の教師に昇格
させ、徐々に学生たちからの尊敬を勝ち取っていきます。

ところが、このブザンソンにレーナル婦人が来ていることを知ってしまい、なん
とかして会いますが、あのことは後悔していると冷たい夫人。
いてもたってもいられなくなったジュリヤンは、故郷の田舎に戻って、夜中に
レーナル亭に侵入、夫人と”よりを戻そう”としますが・・・

故郷にもブザンソンにもいられなくなったジュリヤン。しかし学校長の計らいで、
パリのラ・モール侯爵の秘書になることに。
秘書といっても実質は召使で、粗末な服で夕食やサロンに出席します。
しかし、侯爵の息子とは折り合いが良くいっていますが、娘のマチルドが、侯爵
令嬢を鼻にかけた高慢ちきな女で、はじめこそジュリヤンのことをたんなる召使
としてしか思っていなかったのですが、彼の怜悧な部分や明晰さに段々と興味を
覚え、いつの日かジュリヤンを好きになってしまっていたのです。

急いては事を仕損じる、の教訓のとおり、ジュリヤンはマチルドに対して”焦らし
作戦”に出ます。
先述した「別にいらない描写」とは、まさにこの部分。ああでもないこうでもない
で読み進めるのがちょっと辛いほど。

それはさておき、とうとうマチルドはジュリヤンを”未来の夫”と決めて(といって
もジュリヤンのほうも彼女の美しい目にけっこうやられていたわけですが)、父の
侯爵の許す前になんとマチルドは妊娠。

娘は身分の高い夫人にさせたかった侯爵は激怒。しかし、娘の一本気な性格上、別れ
させるといったら何をしでかすかわからず、それになんといっても娘には弱い父親。
というわけで、パリから出て行かせるかわりに、田舎の材木屋の息子で貧乏神学生じゃ
体裁が悪いので、ジュリヤンに、ストラスブールの軍隊に行け、と。

ここでジュリヤンは、騎兵隊中尉に任命、ラ・ヴェルネー従男爵という地位に就きます。
ラ・モール侯爵の領地(別荘)で、愛する妻マチルドと、生まれてくる子と仲睦まじく
暮らして、と思っていた矢先、侯爵のもとにレーナル夫人からの手紙が・・・

時代は、フランス革命から恐怖政治、ナポレオンの登場から失脚、そして王政復古、
ちょうどこのあたりで、ジュリヤンはナポレオンの信望者ですが、土地の有力者、
神学校や神父、さらに爵位を持つ家の人たちの前ではおおっぴらに公言できません。
というのは、いわばナポレオンの時代は下克上といいますか、軍の砲兵が皇帝にまで
なっちゃったわけですから、再び”古き良き時代”の恩恵を受けている富裕層には、
ジュリヤンのような貧しい出から、また財産を奪われかねないので、ナポレオン信仰
は、つまり危険思想的なものだったわけですね。

ちなみに「赤と黒」とは、僧侶の服である黒と軍人の服である赤。まあ最終的に
ジュリヤンはどちらでも大成することはなかったわけですが、彼のブルジョア層
に対する恨み辛み、でも出世の糸口と見るやそこに溶け込もうと奮闘努力し、じつ
は憧れも抱いていたという心理も垣間見せたり、じっさい読み終わってみたら、
読み進めることが辛いと感じていたことが(自分の読解力の無さは棚に上げて)、
ジュリヤンの苦悩と重ねることによって、有意義だったと思うことに。
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アイリス・ジョハンセン 『女王の娘』

2012-02-15 | 海外作家 サ
たまに行く古本屋さんで、小説コーナーにダンボールの中に
無雑作に入れられた本が「3冊105円」で売られていまして、
選り好みさえしなければけっこう掘り出し物があったりします。

この『女王の娘』の裏表紙にあるあらすじを見てみると、ヨー
ロッパの歴史ミステリっぽい内容で、こりゃ面白そうだと買って
みて、作者を知らなかったものでネットで調べてみたら、なんと
ロマンス小説作家さんでした。

ということでロマンス小説なるものを初めて読むことに。
時代は十六世紀のイギリス。イングランドとスコットランドのふた
つの国に分かれていて、イングランドの国王にエリザベス女王が即位
したのですが、その経緯は複雑で、彼女のお父さんが再婚したいため
にカトリックから新しい宗派の「国教会」を作って、それで生まれた
のがエリザベス。しかし国内にはカトリック派の勢力も強く、暗殺だの
戦争だのが、頻繁に起こっていました。

物語は、そんなエリザベスの仇敵、スコットランド女王メアリの(隠し子)
として生まれたケイトが牧師の家に預けられ、そこでの暮らしからはじ
まります。

ケイトは「邪悪な性根を持った女の娘」と牧師から罵られ、時に折檻も
されるような酷い暮らしぶり。ある日、ケイトが大事にしていた老馬を
牧師が処分すると聞き、夜中に馬を連れて家出します。

一方、エリザベス女王の密偵が捕らえたスコットランドの小島の領主、
ロバート・マクダレンに女王が命じたのは、このケイトと1年間、結婚
させるというもの。

牧師の猛反対などがありつつもロバートはケイトを連れ出すことに。
しかし、いきなり現れた謎の男と結婚しろといわれてもケイトは戸惑い
ますが、どうやら牧師に虐待されるよりはましな生活ができそうという
ことで、彼の領地であるクレイドーに向かいます。

ところが、ケイトが女王メアリの隠し子であると、ロバートと敵対して
いるマルコムは、スコットランド王ジェームスに近づき、この娘を利用
しようとなにやら企んでいます。

はじめこそ愛のない契約結婚でしたが、しだいにふたりの間に愛情が
芽生えはじめます。ところがロバートの親友がマルコムの娘を連れ去って
しまい、人質としてケイトはマルコムのもとへ・・・

はじめは、ロマンスのシーンをフィーチャーしまくった話なんだろうな、
と思っていたのですが、風景人物の感情の描写がすばらしく、スリリング
な展開にぐいぐいと引き込まれます。

正直「ロマンス小説」を侮ってました。ごめんなさい、すごく面白かったです。
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ベルンハルト・シュリンク 『朗読者』

2009-08-31 | 海外作家 サ
この本の帯に、各界著名人の絶賛コメントが載っていて、
しかもドイツやアメリカで大ベストセラー、さらに映画化まで
もがされるとなると、期待は膨らむのですが、まあ他人の
評価を絶対視してしまうのは危険なので、ここは冷静に読
みはじめたら、うーん、面白かった。号泣はしませんでした
けど。

舞台設定は、1960年代のドイツ。15歳の少年ミヒャエル
はある病気に罹ってしまい、街中で突然吐いてしまいます。
そんなミヒャエルを助けてくれた女性は、家まで運んでくれて
介抱してくれます。その女性の名はハンナ。
市内の鉄道会社に勤務する、ミヒャエルの21歳年上の36歳。
ミヒャエルは故意に落ちてしまい、ハンナのアパートに通うよ
うになり、ある日は働いてる彼女の姿を見るため、鉄道に乗り
ますが、彼女は目を合わせてくれません。
それどころか、会話の端々で怒ったり、黙ったり、その原因は
ミヒャエルには分かりません。

そして、またいつものように彼女のアパートに行くと、彼女は
いません。ミヒャエルに黙って引っ越してしまったのです。

ミヒャエルはやがて高校を卒業し、大学へ進学。ハンナ以外
の女性とも恋愛するようになります。
あれから数年が過ぎ、ミヒャエルはハンナを思いもよらぬ場所
で見ることになるのですが・・・

はじめは少年が年上の女性に恋する淡い恋愛物語だと思って
いたのですが、読み進めていくうちに、ドイツという国が持つ
忌まわしい過去、悲劇が絡んできて、そしてハンディキャップ
を持つ人間のそれを隠しながら生活する大変さ、知られたくな
いための苦悩などが描かれ、『朗読者』というタイトルの意味が
とても重く感じます。
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ダレン・シャン 『ダレン・シャン』

2009-05-01 | 海外作家 サ
よく行く某大手古本屋(ブックオフです)の、海外書籍の棚には、ハリー・ポッター
と並んで、この「ダレン・シャン」が置いてあるのですが、正直、市価の半値では
読む気にならなかったのが、この前行ったらシリーズ1~3巻セットで150円と超
お買い得価格で販売していたので、迷わず購入。

いちおうジャンルは、ファンタジーにホラーが合わさったようなもの。登場人物は
バンパイアに狼男といった、「怪物くん」状態。
主人公の少年ダレン・シャンは、クモ好きでホラー関連好き。ある日、学校の仲間
でホラー好きのスティーブから、町に来ているサーカスに誘われます。そのサーカス
は「異形のサーカス」というもので、ホラー好きの食指を動かす内容。
手で走る男、ひげを自由に伸ばせる女、クモを自在に操れる男、狼男、電球や皿など
食べる男などが登場。

ダレンは後日、サーカスのテントに忍び込み、バンパイアのクモを盗みだします。
家に連れ帰って、芸を仕込み、それをスティーブに見せようと家に招待しますが、
クモは芸の途中、スティーブに噛み付いてしまい、スティーブは倒れて意識不明。
直す方法を聞きにダレンはバンパイアのもとに行くと、バンパイアはダレンに、
バンパイアになり付き人として行動することを交換条件として、薬をあげると言うの
です。
友達の死をとるか、自分がバンパイアになるのか、ダレンは悩みますが・・・

結果、ダレンはバンパイアから血を分け与えられて半バンパイアとなり、旅に出る
ために一端死んだふりをして、あとで墓場から掘り出してもらい、付き人として暮ら
していくのです。

バンパイアとは複数いる存在で、固有名詞であるドラキュラとは違うらしく、さらに
ニンニクや十字架は大丈夫、日に当たると死んでしまうほどのことでもなく、杭を
心臓めがけて刺せば死ぬのは人間と同じで、それをいうなら車に轢かれても銃で
撃たれても死ぬし、溺れ死ぬこともあります。
人間の血を吸うのですが、致死量の血は吸わず、ほかの食事もします。

その後ダレンは付き人として、バンパイアの人間の血を吸う手助けをしたりします。
やがて友達ができたり、悲しい別れも経験し、恋をします。
そして話はバンパイア将軍やらバンパニーズやら出てきておもしろくなりそう。
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 『サークルオブマジック・邪悪の彫像/王様の劇場』

2009-03-15 | 海外作家 サ
だいぶ前に第一作『魔法の学校』を読んで、それから時間が空いて
しまったのですが、こういった冒険ファンタジー小説となると、どう
しても同国イギリスの「指輪物語」「ナルニア国ものがたり」、あと
「ハリー・ポッター」と比べてしまうのは抗えないものです。
しかし、第2作目の『邪悪の彫像/王様の劇場』を読むと、まあ似て
非なるというか、独自性が盛り込まれた作品となっております。

主人公のランドルは、魔法使いになるための修行として旅を続け、
その途中、かつて魔法学校時代に世話になった年上のニックと再会
します。ニックは優秀な魔法使いになれる素質はあったのですが、
自分から断念し、木工職人になります。
いっしょに旅を続ける仲間であるリースと、ニックの住む村に泊ま
ろうとしますが、ランドルの宿の部屋に、ある魔法使いがベッドに
横たわっています。
その魔法使いは、ランドルに、袋に入ったある物を差し出し、これ
をデイゴンという名の男に渡してほしいと伝えると、死んでしまい
ます。
その袋の中身は、象牙のような素材でできた老婆の彫像でした。
しかし、その彫像は、不思議な強い魔力を持っているのです。
デイゴンを見つけ、彫像を渡そうとすると、兵士に襲われます。
はたして彫像の正体とは・・・ 
今度は、ランドルとリースにニック、デイゴンと4人で旅をするの
ですが、目的地の街で一体何が・・・

で、話は変わって、リースの故郷へ向かいます。そこの宮殿でまた
いろいろな出来事に巻き込まれるわけですが、あいつがあいつに魔法
で変身して、本物だと思ったら偽者で・・・、とごちゃごちゃになり
ます。このごちゃごちゃ具合が、登場人物も混乱しますが、読むほう
も混乱して、面白い。

さて、第3作でこのシリーズはいちおう完結となるのですが、さらに
続編の第4作もあるそうなので、まあそんなに急がずに、また時間を
おいて読みます。
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エリック・ゼンシー 『パナマ』

2009-02-17 | 海外作家 サ
本をたくさん読んでいると、ブックレビュー等では好評を得ていても
自分にとってはちょっとどうかな、という小説にときたま出会ったり
することがあります。

しかし、全部が全部ダメというわけではなく、その本を読むことに費
やした金と時間の無駄とは思いたくないので、本の中にどこかしら、
光明はないものかと探すんですが、エリック・ゼンシー著『パナマ』
は、物語の設定、アイデアは素晴らしいと思うのです。

しかし、百歩譲っても、途中に出てくる19世紀末のパリの情景描写
はあまりリアルに伝わってこなく、また、主人公で実在の人物である
ヘンリー・アダムズの亡き妻との思い出も、複雑に入り組んだ政界の
スキャンダルと、それに関連した殺人事件に巻き込まれた展開の中に
ちょくちょく出てくるのですが、どうにもこれが、話の腰を折られる
ようで、読みにくくしている印象を持ってしまうのです。

話は、19世紀末、フランスがパナマ運河の工事をやっていたのですが
工事がはかどらず事故も多発、そこに絡んでくるフランス政界の汚職、
賄賂といったスキャンダル。アメリカ人歴史家であるアダムズは、フラ
ンスのモンサンミシェルで画家のアメリカ人女性と出会い、のちにパリで
再会する約束を果たすのですが、再会した後日にセーヌ川に溺死体とな
って現れるのです。しかし、それはモンサンミシェルで出会った女性で
はなかった!
しかもその死んでいる女性は、アダムズの名刺を持っていた・・・

前述したように、物語の設定、アイデアは素晴らしいです。
なぜ、アメリカ人歴史家がフランスの政界汚職に巻き込まれなければ
ならなかったのか、そこには、ある一枚の写真が絡んでくるのですが、
この当時、イギリスで、人間の指紋はどれひとつ同じものはないとい
う実験結果が発表されて、半信半疑ではありつつもフランス警察でも
その指紋捜査を導入しはじめたのです。
それがアダムズにとって思わぬ事態となって振りかかるわけですが・・・。

嗜好は指紋同様、人それぞれ違いますので、どなたかが『パナマ』を
読んで、面白かったと言えば、それはそれで敬意を表します。

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マイケル・M・スミス 『スペアーズ』

2009-02-12 | 海外作家 サ
裏表紙には、「スピルバーグのドリームワークスが映画化権を獲得した、
人類の壮絶な行く末を予感させるノワール・スリラー」と書いてあり、
面白そうだと思い、買って、読んでみたのですが、はじめの数十ページ
で、物語の内容が把握できない・・・ 
まるで、上下巻の下から先に読んでしまったような印象を受けたのです。
それくらい、文中には意味の分からない単語、登場人物のオンパレード。
まあ、その後に説明があるのですが、それが謎めいているというよりは
疑問を抱えつつ読み進めていくことのストレスが生じてきます。

かつて、街の機能をまるごと載せた超大型飛行機が不時着したのがそのまま
街となり、それはニュー・リッチモンドと呼ばれ、高層ビルには商店、娯楽
施設、住居があり、下層階は治安悪く、上にいくにしたがって富裕層が住む
といったような階級序列が構築され、マフィアが権力を持ち、警察は腐敗。

そこで、あるビジネスが誕生します。それはクローンを利用した医療。
病気になったり事故で体の部分を切断するときに、移植や接合させるには
拒否反応を避けなければならず、それにはクローンを用いれば拒否反応は
起こらないので、「農場」と呼ばれる施設に、金持ち階級は、自分や子供
のクローンをそこで生活させて、いざ事故だ病気だとなれば、そのクローン
の体の一部を移植するというもの。これが、文字通り「スペア」という存在。
いうなれば交換部品ってことですね。クローンは、教育も受けさせず、生活
環境も劣悪、ただ本家の体のために生きながらえさせておく存在にすぎません。

で、「農場」の管理人をしていた、かつてニュー・リッチモンドで警察官
だった男が、スペアの家畜以下の扱いに見かねて、教育を受けさせ、やがて
数人のスペアを引き連れて「農場」を脱走するのです。

・・・とまあ、ここからは、異空間だの戦争だのとストーリーがごちゃごちゃ
してきて、話が飛びまくり、読み終わるまでに頭の中で物語を整理させるのに
大変でした。

そんな中にあっても、心に残る文章やセリフを見つけたというのは、本を読む
うえでの至上の喜びです。

・「いくつになってもナルニア国を捜すことはできるが、そのころにはあまりに
年を取りすぎて、ナルニアのほうで来てもらいたくないと言いだすかもしれない」
・「人は倒れて闇の訪れを待ち、静かに人生に別れを告げて、死へと滑り落ちて
いくべきではない。走りつづけるべきなのだ。本当に恐いのはただ一つ、走るの
をやめること」
・「思い出とは読んでからなくしてしまった本程度のものでしかなく、その後の
人生を縛る聖書ではない」




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T・スコーシア、F・ロビンソン 『タワーリング・インフェルノ』

2009-01-10 | 海外作家 サ
この本を読むまで知らなかったのですが、もともと原題は
「The Glass Inferno(ガラスの地獄)」というもので、
他にほぼ同時期に出版された「The Tower(ザ・タワー)」
という作品があって、どちらも高層ビル火災の恐怖を扱ったもの。
映画会社のワーナー・ブラザーズと20世紀FOXがそれぞれ別々に
映画化をする予定だったものが、内容がだいたい同じようなもので、
制作費がバカ高くなりそうだったので、この2社は企画を合作にして
発表。このおかげで、ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーン
という、夢のような共演(もともと別々に出演する予定だった)が実現。

ビルのオーナー、デザイン担当、ビル内入居会社の社員、警備、掃除婦、
警察、消防と、さまざまな人物の心境、境遇が描かれており、スリリング。

冷静に努めようとする者、我を押し通そうとする者のせめぎ合いが絶妙。
地元では「グラスタワー」と呼ばれる、高層ビルから火災が発生。
ビル内部の人物描写の合間に、火の進捗が説明されていくのですが、
まるでモンスターのように描写。発生した火を「幼い獣」と形容し、引火物を
その獣の食べ物と扱い、獣は食べ物を摂取し成長してゆく、といった
描写は、ただのビル火災にさらなる恐怖を感じさせます。

舞台となるビルは、総工費を抑えるために、結果手抜きとなってしまいます。
しっかりとした避難経路を確保して、フロア面積を少なくさせるか、
見栄えを優先して、安全面をおざなりにするのか。
原作が発表されてから30年以上経ちますが、こんな根本の問題すら、
いまだ解決できていないですね。

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アリス・シーボルド 『ラブリー・ボーン』

2008-12-23 | 海外作家 サ
アメリカの田舎で、10代の女の子が近所の男に強姦されて殺される、
というかなりヘビーなはじまりで、しかし、本の帯にはどこにも
サスペンス的なことは書いてなかったので、あれ?と思って読み続けてたら
天国に行った女の子が、天国からの視点で地上での家族や友人、自分を殺した
犯人を観察する、といった話。

1人の家族を突然失うかたちとなり、父母、祖母、妹弟は違和感な暮らし
となり、なんだかんだあって、母は家から出て行ってしまいます。

被害者家族には、メディアの表舞台ではあまり伝えない2次被害というもの
があって、近所や友人はよそよそしくなり、親はちょっとでも怪しい奴を
見れば犯人と思い疑心暗鬼になる。そして、いわれのない噂話が広まる。

読んでいくと、このような、ともすれば陰鬱になりがちなテーマを
「天国からの視点」を介してストーリーは進んでいくので、主観であり
(わたしという1人称)、客観である(家族や友人にとっての彼女)という
割り振りが、読んでいて嫌な気持ちにさせません。

サスペンスやミステリーではないので、犯人の背景や動機を細かく描写
しなくてもいいのですが、ただそれでも、この犯人(実は他にもいっぱい
女性を殺してる)の心のゆがみというか、殺人鬼になり果てた理由付けが
ちょっと弱かったかな。家庭環境が悪かったからといって必ず心が歪む
とは限らないですからね。

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カール・セーガン 『COSMOS』

2008-12-15 | 海外作家 サ
古本屋で、2冊(上下巻)で100円で売っているのは、ほとんど
シドニイ・シェルダンとかなんですが、たま~に掘り出し物があって、
それがこの『コスモス〈宇宙)』。

この作者、ボイジャー打ち上げの際に、「宇宙人への手紙」という、
かの有名な、男女の裸と地球の位置を書いた金属板と、数十カ国の
言語とクジラの音波のレコードを積み込むことを提案したという人。

この本は、いわば科学、とくに物理学、天文学、生物学の入門編。
文中にもそう書いてあったのですが、学校の勉強は忘却の彼方である
私にとって、読んでるうちに、なんだか頭痛が・・・

それでも、遠く何万光年の星に思いを馳せ、地球の神秘に驚き、
読み応えがあって、これは満足いたしました。

この本をもとにした作者監修のドキュメンタリー番組(アメリカ製作)
は、1980年に日本でも放映されたそうですが、残念ながら見た記憶
がございません。
それでも、これを見た人たち、とくに子供は食いついたでしょうねー。
子供の好奇心は恐るべきパワーで、舌を噛みそうな恐竜の名前をスラスラ
と言えて姿形や特徴までも知ってたりしますからね。

ほかにもいっぱい著書が出ているので、宇宙がマイブームになるねこりゃ。
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