この年末年始、ほんとうはこの『赤と黒』を読む予定だったのですが、
上巻を読み終わって、下巻に読み進む意欲というか元気がなくて、他の
本を手にしてしまい、それが読み終わって、このままじゃいかん、と
半ば義務のように下巻を読み始めた次第。
文庫の上下巻にして約800ページ、まあ「長編」の部類には入りますが
今までもっと長い作品を読んだこともありますし、何が途中で読む気力
を萎えさせたか。
身も蓋もない言い方をすれば、800ページのうち、300ページ分くらいは
「別にいらない」ような描写とでもいいましょうか。この時代の小説って
多いですよね。
フランスの片田舎の、材木屋ソレルの家に生まれたジュリヤン。幼い頃から
本を読みふけり、ラテン語の詩を暗記しますが、体は細く色白で、親父から
は忌み嫌われています。
このジュリヤン、親の職業や片田舎での生活を憎み、いつか自分はものすごい
出世してやる、と燃えています。
そんなジュリヤンですが、村の有力者レーナル氏の子供の家庭教師になる
ことに。
はじめこそ、良き家庭教師ぶりで、レーナル氏も高く買っていたのですが、
はじめてレーナル婦人を見た日から一目惚れをしてしまい、その想いはつの
る一方、そして夫人のほうも、この美少年に次第に惹かれていって、とうと
うふたりは恋仲に。
しかしこんな秘密の関係がいつまでもバレないでいることはなく、やがて
知れ渡ってしまい、ジュリヤンを家庭教師に斡旋した神父は、彼をブザンソン
という都会にある神学校に入れます。
神学校に入ったジュリヤンですが、学生たちは自分と変わらない境遇で育って
きた若者ばかり、つまり「片田舎の百姓のせがれ」で、ジュリヤンは彼らを内心
蔑み、なまじ勉強ができるばっかりに、ジュリヤンも他の学生たちから嫌われま
すが、学校長は彼を、性格に難はあるものの高く評価し、ラテン語の教師に昇格
させ、徐々に学生たちからの尊敬を勝ち取っていきます。
ところが、このブザンソンにレーナル婦人が来ていることを知ってしまい、なん
とかして会いますが、あのことは後悔していると冷たい夫人。
いてもたってもいられなくなったジュリヤンは、故郷の田舎に戻って、夜中に
レーナル亭に侵入、夫人と”よりを戻そう”としますが・・・
故郷にもブザンソンにもいられなくなったジュリヤン。しかし学校長の計らいで、
パリのラ・モール侯爵の秘書になることに。
秘書といっても実質は召使で、粗末な服で夕食やサロンに出席します。
しかし、侯爵の息子とは折り合いが良くいっていますが、娘のマチルドが、侯爵
令嬢を鼻にかけた高慢ちきな女で、はじめこそジュリヤンのことをたんなる召使
としてしか思っていなかったのですが、彼の怜悧な部分や明晰さに段々と興味を
覚え、いつの日かジュリヤンを好きになってしまっていたのです。
急いては事を仕損じる、の教訓のとおり、ジュリヤンはマチルドに対して”焦らし
作戦”に出ます。
先述した「別にいらない描写」とは、まさにこの部分。ああでもないこうでもない
で読み進めるのがちょっと辛いほど。
それはさておき、とうとうマチルドはジュリヤンを”未来の夫”と決めて(といって
もジュリヤンのほうも彼女の美しい目にけっこうやられていたわけですが)、父の
侯爵の許す前になんとマチルドは妊娠。
娘は身分の高い夫人にさせたかった侯爵は激怒。しかし、娘の一本気な性格上、別れ
させるといったら何をしでかすかわからず、それになんといっても娘には弱い父親。
というわけで、パリから出て行かせるかわりに、田舎の材木屋の息子で貧乏神学生じゃ
体裁が悪いので、ジュリヤンに、ストラスブールの軍隊に行け、と。
ここでジュリヤンは、騎兵隊中尉に任命、ラ・ヴェルネー従男爵という地位に就きます。
ラ・モール侯爵の領地(別荘)で、愛する妻マチルドと、生まれてくる子と仲睦まじく
暮らして、と思っていた矢先、侯爵のもとにレーナル夫人からの手紙が・・・
時代は、フランス革命から恐怖政治、ナポレオンの登場から失脚、そして王政復古、
ちょうどこのあたりで、ジュリヤンはナポレオンの信望者ですが、土地の有力者、
神学校や神父、さらに爵位を持つ家の人たちの前ではおおっぴらに公言できません。
というのは、いわばナポレオンの時代は下克上といいますか、軍の砲兵が皇帝にまで
なっちゃったわけですから、再び”古き良き時代”の恩恵を受けている富裕層には、
ジュリヤンのような貧しい出から、また財産を奪われかねないので、ナポレオン信仰
は、つまり危険思想的なものだったわけですね。
ちなみに「赤と黒」とは、僧侶の服である黒と軍人の服である赤。まあ最終的に
ジュリヤンはどちらでも大成することはなかったわけですが、彼のブルジョア層
に対する恨み辛み、でも出世の糸口と見るやそこに溶け込もうと奮闘努力し、じつ
は憧れも抱いていたという心理も垣間見せたり、じっさい読み終わってみたら、
読み進めることが辛いと感じていたことが(自分の読解力の無さは棚に上げて)、
ジュリヤンの苦悩と重ねることによって、有意義だったと思うことに。
上巻を読み終わって、下巻に読み進む意欲というか元気がなくて、他の
本を手にしてしまい、それが読み終わって、このままじゃいかん、と
半ば義務のように下巻を読み始めた次第。
文庫の上下巻にして約800ページ、まあ「長編」の部類には入りますが
今までもっと長い作品を読んだこともありますし、何が途中で読む気力
を萎えさせたか。
身も蓋もない言い方をすれば、800ページのうち、300ページ分くらいは
「別にいらない」ような描写とでもいいましょうか。この時代の小説って
多いですよね。
フランスの片田舎の、材木屋ソレルの家に生まれたジュリヤン。幼い頃から
本を読みふけり、ラテン語の詩を暗記しますが、体は細く色白で、親父から
は忌み嫌われています。
このジュリヤン、親の職業や片田舎での生活を憎み、いつか自分はものすごい
出世してやる、と燃えています。
そんなジュリヤンですが、村の有力者レーナル氏の子供の家庭教師になる
ことに。
はじめこそ、良き家庭教師ぶりで、レーナル氏も高く買っていたのですが、
はじめてレーナル婦人を見た日から一目惚れをしてしまい、その想いはつの
る一方、そして夫人のほうも、この美少年に次第に惹かれていって、とうと
うふたりは恋仲に。
しかしこんな秘密の関係がいつまでもバレないでいることはなく、やがて
知れ渡ってしまい、ジュリヤンを家庭教師に斡旋した神父は、彼をブザンソン
という都会にある神学校に入れます。
神学校に入ったジュリヤンですが、学生たちは自分と変わらない境遇で育って
きた若者ばかり、つまり「片田舎の百姓のせがれ」で、ジュリヤンは彼らを内心
蔑み、なまじ勉強ができるばっかりに、ジュリヤンも他の学生たちから嫌われま
すが、学校長は彼を、性格に難はあるものの高く評価し、ラテン語の教師に昇格
させ、徐々に学生たちからの尊敬を勝ち取っていきます。
ところが、このブザンソンにレーナル婦人が来ていることを知ってしまい、なん
とかして会いますが、あのことは後悔していると冷たい夫人。
いてもたってもいられなくなったジュリヤンは、故郷の田舎に戻って、夜中に
レーナル亭に侵入、夫人と”よりを戻そう”としますが・・・
故郷にもブザンソンにもいられなくなったジュリヤン。しかし学校長の計らいで、
パリのラ・モール侯爵の秘書になることに。
秘書といっても実質は召使で、粗末な服で夕食やサロンに出席します。
しかし、侯爵の息子とは折り合いが良くいっていますが、娘のマチルドが、侯爵
令嬢を鼻にかけた高慢ちきな女で、はじめこそジュリヤンのことをたんなる召使
としてしか思っていなかったのですが、彼の怜悧な部分や明晰さに段々と興味を
覚え、いつの日かジュリヤンを好きになってしまっていたのです。
急いては事を仕損じる、の教訓のとおり、ジュリヤンはマチルドに対して”焦らし
作戦”に出ます。
先述した「別にいらない描写」とは、まさにこの部分。ああでもないこうでもない
で読み進めるのがちょっと辛いほど。
それはさておき、とうとうマチルドはジュリヤンを”未来の夫”と決めて(といって
もジュリヤンのほうも彼女の美しい目にけっこうやられていたわけですが)、父の
侯爵の許す前になんとマチルドは妊娠。
娘は身分の高い夫人にさせたかった侯爵は激怒。しかし、娘の一本気な性格上、別れ
させるといったら何をしでかすかわからず、それになんといっても娘には弱い父親。
というわけで、パリから出て行かせるかわりに、田舎の材木屋の息子で貧乏神学生じゃ
体裁が悪いので、ジュリヤンに、ストラスブールの軍隊に行け、と。
ここでジュリヤンは、騎兵隊中尉に任命、ラ・ヴェルネー従男爵という地位に就きます。
ラ・モール侯爵の領地(別荘)で、愛する妻マチルドと、生まれてくる子と仲睦まじく
暮らして、と思っていた矢先、侯爵のもとにレーナル夫人からの手紙が・・・
時代は、フランス革命から恐怖政治、ナポレオンの登場から失脚、そして王政復古、
ちょうどこのあたりで、ジュリヤンはナポレオンの信望者ですが、土地の有力者、
神学校や神父、さらに爵位を持つ家の人たちの前ではおおっぴらに公言できません。
というのは、いわばナポレオンの時代は下克上といいますか、軍の砲兵が皇帝にまで
なっちゃったわけですから、再び”古き良き時代”の恩恵を受けている富裕層には、
ジュリヤンのような貧しい出から、また財産を奪われかねないので、ナポレオン信仰
は、つまり危険思想的なものだったわけですね。
ちなみに「赤と黒」とは、僧侶の服である黒と軍人の服である赤。まあ最終的に
ジュリヤンはどちらでも大成することはなかったわけですが、彼のブルジョア層
に対する恨み辛み、でも出世の糸口と見るやそこに溶け込もうと奮闘努力し、じつ
は憧れも抱いていたという心理も垣間見せたり、じっさい読み終わってみたら、
読み進めることが辛いと感じていたことが(自分の読解力の無さは棚に上げて)、
ジュリヤンの苦悩と重ねることによって、有意義だったと思うことに。