晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・クーンツ 『何ものも恐れるな』

2024-10-09 | 海外作家 カ
10月です。関東南部はあっという間に涼しくなってしまいました。朝晩は肌寒いくらい。お鍋や煮物の美味しい季節ですね。オーブン料理もいいですね。暑い時期にはオーブンを加熱してるときに台所にいるのも嫌ですから料理好きには良い季節。梅雨とか夏場は食材が傷んだり腐ったりカビはえたりして管理も大変だし仕事に持っていくお弁当も気を使うし。夏が終わった途端に文句です。ま、冬が終わっても寒いことの文句をタラタラ言うんでしょうけど。

以上、一年中文句。

さて、ディーン・クーンツ。最後に読んだのはいつ以来だろうと当ブログを見てみたらなんと2013年。個人的に好きな海外作家として挙げているのに10年以上も読んでないとは放置プレイにもほどがあります。

ムーンライト・ベイという町に住む28歳のクリスという青年は、愛犬オーソンと寝ていたときに病院から電話で父親がガンで死亡したという知らせを受けます。じつは2年前に母親も事故で亡くなっています。夜中なのですが、クリスは外に出るのにサングラスをかけます。というのも、クリスは紫外線を長時間浴びると皮膚ガンになったり失明するという特異体質で、通常は短命なのですが、20年以上生きるのは(ごくまれ)なのだそう。

葬儀場の職員が来て、クリスは霊安室の外にいると、中から意味のわからない会話が。「この男はいったい誰だ?」「浮浪者だ」「こんなところで・・・」「頼むから始末をつけてくれないか」クリスは気になって中をそっと見たらベッドには父親ではないスキンヘッドの大男が。葬儀場に着いて「父親の顔を見せてください」と頼んでも「いやもう火葬の準備に入ってしまって・・・」というので、これはおかしいと思い、隙をみて遺体の布をめくるとスキンヘッドの大男。クリスは葬儀場から逃げ出します。家に戻ろうとすると怪しい車が自分を追っているのに気づきます。家に戻って留守番電話を聞くと、父の看護師のアンジェラから「話があるの、必ず来て」と伝言が。家の中にオーソンがいないので探すと庭を一心不乱に掘っていて、呼びかけても振り向きません。様子がおかしいと思いつつも出かける支度をしようとクリスの部屋に入るとベッドの上に父の銃が。なぜこんなところに?と不思議がるクリスでしたが銃をポケットに入れてアンジェラの家へ。

そこでアンジェラから夫が自殺した原因、謎の猿が家の中に入ってきて襲われそうになった、などという話を聞きますが、核心部分になると黙ります。ある書類を持ってくるとアンジェラが2階に行くと大きな音が。クリスは2階に行くと、そこには首を切られたアンジェラが・・・

犯人はまだ家の中にいるはずですがなんとか外に出て家に火を付けて逃げます。それからも、親友ボビーの家にも奇妙な猿が来ていたり、葬儀場の職員が教会の神父を殴っていたり、警察署長に呼び止められてピストルを向けられて「中にはいるんだ、クリス」と脅されて・・・

ムーンライト・ベイではなにが起こっているというのか。話を聞いていくと、どうやた母親が生前に研究していたことと米軍の基地になにか関係が。

久しぶりにクーンツを読みましたが、相変わらずなんともいえないB級ホラーのテイスト満載で面白かったです。翻訳は賛否の分かれる「超訳」ですが勢いがあってクーンツの「味」を損なってないように感じました。ただ、ちょっと気になったのが、ネタバレになりますがクリスが警察署長を銃で撃って、それを他の人に言うと「お前は保安官を撃った」と署長ではなく保安官と言い換えたのでクリスは「ああ、俺は保安官を撃った、保安官助手ではないからな、念のため」という会話の部分で、これはボブ・マーリーの曲でエリック・クラプトンのカバーで有名な「アイ・ショット・ザ・シェリフ」の歌詞なのですが、それについて触れてないので、あえて触れずに「分かる人には分かる」という意味なのですかね。
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レイチェル・カーソン 『沈黙の春』

2020-05-06 | 海外作家 カ
こんなご時世ということで、本を読む(読むことが出来る)というのは、時間的にも金銭的にも、そして精神的にもある程度の余裕がないと難しいんだなということが分かりました。

書評ブログで私的な話で恐縮ですが、外出や移動の自粛・休業要請などありますが、一応、業種としては(エッセンシャルワーカー)の部類に入るのでしょう、仕事は減ることもなく、いやむしろ忙しくなっていまして、そんな中にあって読書は貴重な(息抜きタイム)としてありがたい存在ではあります。

そう、息抜きの為に読むはずだったのですが、まあエライ作品に手を出してしまいました・・・

この作品は1962年に発表されたもので、今回読んだのは新装版。旧国名や地名などに(現どこそこ)といったように入っています。

殺虫剤や除草剤、いわゆる農薬(化学薬品)を使って、環境にどのような影響が出たのか、世界中の具体例を挙げて、はたしてわれわれはこのままで良いのか?という警鐘、といったのがこの作品の全体像。
戦後まもなく、シラミやノミの駆除ということでGHQが日本の子どもに頭からDDTをぶっかけている白黒の記録映像がありますが、今にして考えるととても恐ろしいですね。

「害虫」や「害鳥」といったように、人間にとってなにかしら困る存在だからといって、それが地球全体にとっての「害」であるはずはありません。
例えばプレーリードッグ。北アメリカ大陸に生息するげっ歯目で、地面に穴を掘って生活をしています。そこに、ヨーロッパから入植者がやって来て、牛を飼いはじめたり、畑で野菜を作ろうとしますが、牧場のあちこちにあるプレーリードッグの掘った穴に牛が足を突っ込んで骨折するといった(事故)が起き、また畑を荒らしてしまうといった(被害)があって、怒った入植者たちはプレーリードッグを毒薬で殺しました。するとプレーリードッグが食べていた虫が繁殖して牧場の草を食べ、それまでプレーリードッグを捕まえていたキツネやワシなどは他の草食動物を襲いさらに虫が繁殖し、結果、アメリカの西部は不毛地帯になってしまいました。
シカを守ろうとオオカミを駆除したらシカの個体数が増えすぎて逆にシカが自然破壊の害獣になっちゃった、ビーバーがダムを作って家が浸水してしまったので駆除したら大洪水が起きて家の浸水どころじゃなくなっちゃった、なんて話はよくあること。

広大な土地で1種類の植物(麦やコメ、トウモロコシなど)を作ったりすると、それらを食べる虫が大量発生する。
よく考えたら「その通り」なんですよね。

殺虫剤である虫を駆除しようとしても、次か次の次の世代で(殺虫剤で死なない)という虫が出てきます。つまり環境に適応するものが生き残る「適者生存」でありまた「自然淘汰」でもあります。すると人間はさらに強力な殺虫剤を作ります。たしかにその世代の虫には効果的です。しかし、すると虫だけでなく魚や鳥、小動物といった他の生き物にも影響が出ます。そして最終的にはもちろん人間にも。

その昔。アフリカで、現地の部族が飼っている牛がライオンに襲われているのを部族はただ見ているだけだったのを、ヨーロッパ人は部族の長老に「なんでライオンを殺さないんだ」と聞いたそうです。すると長老が「そんなことをしたら他の草を食べる動物が減らなくなってこの周りの草が減ってうちらの飼っている牛が死んでしまうではないか」と答えたそうな。
なにを当たり前なことを、と思うでしょうが、人間は目先の利益や手っ取り早いラクな方法を取ってしまうものです。

読み終わって、結局、人間が地球にとっていちばんの「害獣」だよな、と思ってしまいました。
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ジョン・ル・カレ 『寒い国から帰ってきたスパイ』

2018-06-17 | 海外作家 カ
だいぶ前にジョン・ル・カレの他の作品を読んだのですが、
おのれの読解力の無さを棚に上げていうのですがものすごく
読みづらくて、この『寒い国から帰ってきたスパイ』を読み
たかったのですが、どうしても「苦い経験」がよみがえって
きて、なかなか手を出せませんでした。

ですが、さすがにもうそろそろ読解力もついてきただろうと
いうことで、読んでみることに。

主な舞台はドイツのベルリンなのですが、そういえば今の
10代、いや20代もそうですか、「東西ドイツ」という
のは、世界史で習うのでしょうか。

今の地図では東西ドイツの国境は書かれていないとは思い
ますが「ドイツ 国境」でネット検索すれば簡単に知るこ
とができるでしょう。そういえば「ベルリンの壁」とは、
東西ドイツの国境のことだと思っている人が割と多いよう
ですが、「ベルリン市の西ベルリンの国境」が正解。
ベルリンは旧東ドイツの領内にあって、そこに「西ベルリ
ン」というエリアが絶海の孤島のように地図上にポツンと
あったのです。ではそこにどうやって行くかというと西ベ
ルリンに空港があって、空からですね。

まあ、東西分断の象徴ということで国境=ベルリンの壁、
と思っていたとしてもそれは仕方ないかな、と。

さて、この作品は、イギリスの諜報部員リーマスが任務を
失敗してベルリンから帰国、諜報部をクビになり、その後
謎の人物がリーマスに近づいてきて、東側に情報提供をす
る、という逆スパイ的な話と思いきや、東ドイツの諜報部
副長官のムントを追いやるための作戦だった・・・?

と、まあ、これ以上書いてしまうとネタバレになってしま
うので「あとは読んでください」としかいえないのですが、
リーマスがフィードラーという(東の人)に尋問を受ける
シーンがありますが、ここからラストまではしっかりと読
んでいかないと(置いてけぼり)に遭ってしまいますから、
流し読みはイカンですね。

テレビでベルリンの旅番組をちらりと見て、壁が建ってい
た場所に地面にレンガが線状に埋められていて、それがか
つての国境になっているのですが、そのレンガをしばらく
辿っていくとその途中の真上にビルが建っていて、もはや
街の区割り自体が変わっていて、(残さない)というのも
ひとつの平和のかたちなのかなと思いました。

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ケン・フォレット 『自由の地を求めて』

2018-01-06 | 海外作家 カ
だいぶ遅ればせながらハッピーニューイヤー。
今年も拙い書評の当ブログですがよろしくお願いします。

さて、この『自由の地を求めて』は、去年の年末に読んだ
本でして、読み始めたのがたしか大掃除を本格的にやりは
じめた前日の28日の夜から、読み終わったのが31日。
じゃあとっととブログ更新せえやってなもんですが、元日
の夜から「鬼平犯科帳」を再読しはじめてしまい、まあ
ひらたくいえば、ブログの投稿を忘れてたわけですね。

ま、そんなわけで。

この小説の時代と舞台は、18世紀のイギリス、スコット
ランド、ロンドン、そしてアメリカ。

主人公はスコットランドの炭鉱夫、マック・マカッシュ。
ハイ・グレンという地で、劣悪で過酷な毎日。
マックはロンドンの急進派の弁護士に手紙を送り、返事を
もらって、その返事の内容を日曜礼拝で読み上げようとし
ています。
その内容とは、今の自分たちの奴隷的な搾取労働は憲法に
違反している、というもの。
この当時の法律では「炭鉱夫は炭鉱主の所有物」となって
いますが、子供まで働かされていて、ロンドンの弁護士に
よれば、子供は奴隷にはできない、さらに成人(21歳)
になったら、(所有物)ではなく(自由)になれるのです。

これに怒ったのが、領主のサー・ジョージ・ジェイミスン。
「ここでは領主が法律だ」と、弁護士からの手紙を破って
しまいます。

そこへ、マックを呼び止める美しい女性。リジ-・ハリム
というお嬢さま。リジ-は、サー・ジョージの長男ロバート
と近々結婚することになっています。
マックとは幼馴染みで「賃仕事をいただけてるだけでも幸せ
だと思いなさい」と。
するとマックは「坑道に入ったことも無いくせに、入ったら
俺たちが幸せだなんて口が裂けても言えないはずだ」とやり
返します。

さて、このリジー、こうと決めたら行動せずにはいられない
性格で、婚約中のロバートよりも、弟のジェイと仲良くして
います。ジェイに「炭鉱の中に行ってみたい」とお願いし、
連れてってもらうことに。
奥まで行くと、天然ガスに引火して坑内で爆発、マックに助
けれらます。

サー・ジョージはマックに罰として「わたしはジェイミスン家
の所有物です。」という鉄の首輪をはめさせられて、馬に乗せ
られて晒し者に。
これにリジーは怒り、罰を止めさせます。そしてマックが領地
を脱走する夜、リジーは脱走を手助けします。マックの荷物の
中に鉄の首輪を見つけます。村の鍛冶屋に叩き切ってもらった
のですが、リジーは「なぜこんなものを持ってるの?」と聞く
と、マックは「(屈辱と怒りを)忘れないためだ」と持って
行くことに。

マックは、命からがらロンドンにたどり着きます。ある日のこ
と、懸賞金付きの殴り合いに参加したマックは、相手を簡単に
倒し、1ポンドを手にします。そして、次に賞金20ポンドの
大会に出ることに。
マックは負けますが、なんとそこにいたのは男装したリジー・
ハリムでした。
リジーはロバートとの婚約を解消し、ジェイと結婚することに
なり、サー・ジョージからロンドンに呼ばれていたのです。

マックは、港の荷役夫となりますが、ここでも搾取労働される
ことに怒り、マックは組合を結成しストライキをします。
これには貿易事業をしているサー・ジョージが怒り、ストの
首謀者はあのスコットランドで自分に盾ついてきた若者と知り、
ジェイにスト鎮圧を命じます。

マックは捕まり、マックを匿っていた娼婦のコーラと掏摸のペグ
も捕まります。コーラとペグはアメリカに流刑で済みそうですが、
マックは死刑の可能性も。そこで、マックがスコットランド時代
に手紙を出した弁護士ゴードンスンがマックの弁護に。ゴードン
スンはリジーに彼の弁護をお願いします。

そこに、スコットランドの教会の牧師が訪ねてきて、ハリム家の
炭鉱で事故があって大勢の人が亡くなったと言うのです。
リジーは、ハリム家の領地が勝手に炭鉱になっていたことに激怒
し、ジェイとの結婚を解消、マックの弁護に行こうとします。
しかし、この時リジーは妊娠していて、サー・ジョージとリジー
の母親が結託して、ジェイとリジーにジェイミスン家の所有する
アメリカ・ヴァージニアにあるタバコ農園を相続させて、離婚を
踏みとどまらせようとします。そして、ゴードンスンは、リジー
に証言台に立つのを止めさせて、代わりにジェイにマックの助命
歎願をさせようと・・・

この時代に起きた出来事としては、産業革命で仕事を奪われた人
たちがいっせいにロンドンに押し寄せます。そしてジョン・ウィ
ルクスが時の政権と国王を批判し、これをきっかけに民衆運動が
ひろがりを見せます。それから数年後に植民地アメリカで、かの
有名な「ボストン茶会事件」が起こります。

この小説の冒頭、20世紀末にアメリカの片田舎で、ある男が
(最寄りの町から80キロも離れた辺鄙な谷間)にある(ハイ・
グレン・ハウス)という名の廃屋を買い、庭を掘り起こしてい
たら腐った木箱が出てきて、その中に鉄の輪が出てきて、よく
研くと文字が掘られていて、そこにはこうありました・・・

「この者の所有者は、サー・ジョージ・ジェイミスン・オブ・
ファイフなり。紀元1767年」

ここから物語は始まるので、まあぶっちゃけマックは死刑を免
れてアメリカに渡ることになります。

ところで、有名な歌で「ロンドン橋落ちた」というのがありま
すが、じつは何度も崩落していて歌詞がいつの時代を指してい
るのか諸説あるそうですが、17、18世紀のロンドンは人口
が急増して、家賃や税金を払えない人たちはロンドン橋の上に
家を建てて住んでいたそうでして、橋の上に4階建てだか5階
建ての建物がひしめき合っている当時の絵があります。そりゃ
崩落しますね。
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ジョン・グリシャム 『自白』

2014-04-30 | 海外作家 カ
これは文庫で買ったのですが、背表紙に書いてある数字が上下巻29と30、
今まで出た作品は上下巻なので、新潮文庫から出ているのはこれで15作品
ということですね。

グリシャムは赤い背表紙になっていて、家の文庫用書棚は1段が30冊程度
なので、外国作家カ行のところにズラッと並ぶと、ずいぶん読んだなあと
実感。

カンザス州のトピーカという町の教会に、杖をついた男があらわれます。
「牧師に会いたい」と謎の男はいうのですが、キース・シュローダー牧師
は用があるため、妻のデイナがその男にいくつか質問をします。
名前はトラヴィス・ボイエット。
現在は、州矯正局の社会復帰訓練所に住んでいて、仮釈放の身だというの
です。

デイナはキースにボイエットのことを伝え、そして会うことに。

ボイエットは脳腫瘍で余命いくばくもないことを告白。さらに、死ぬ前に
どうしても言いたいことがある、と。
それは、ドンテ・ドラム事件の真犯人は自分だというのです・・・

1999年にテキサス州で起きた、ハイスクールのチアリーダーの白人の
女の子二コルがフットボール部の黒人の生徒、ドンテ・ドラムに殺されたと
される事件で、裁判で死刑判決が出て、今週中に刑が執行される予定。

しかし、デイナが調べたところによると、ボイエットは過去に4件の婦女
暴行事件で有罪を受けていて、この話に信憑性があるのか疑わしいこと
この上ありません。
が、キースはどうにも気にかかり、訓練所まで出向いてボイエットの話を
聞きに行きます。

そのころ、テキサス州ではドンテ・ドラム裁判で被告側の弁護をした
弁護士のロビー・フラックが、あの手この手で死刑執行の延期手続きを
申請しますが、ことごとく却下されます。

キースはテキサス州のロビーに電話をかけ、あの事件の真犯人がうちの
教会に来たと告げますが、このたぐいの電話はひっきりなしにかかって
きていて、信用してくれません。

ボイエットの告白のとおりに、二コルを殺したのが自分でミズーリの山奥に
埋めたというのが真実なのか。

ドンテ・ドラムの死刑執行まであと3日、2日と迫り、街では黒人たちの
デモから暴動に発展。

そして、キースは、ボイエットをテキサスに連れて行くことを決意するの
ですが・・・

黒人の少年が無実なのであるならば、嘘の自白を強要したのか。もしこれが
冤罪だとするならば、警察、検察、裁判官、ドンテがやったと証言した元
チームメイトの男、そして州知事の立場は。

つい先日、日本でも死刑囚の無罪が確定になりましたけど、死刑の是非は
さておき、そもそもなぜ冤罪は生まれるのかをおざなりにしている限り
同様の不幸は起こり得るということです。









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パトリシア・コーンウェル 『神の手』

2014-04-08 | 海外作家 カ
この「検屍官スカーペッタ」シリーズも14作目。しかしまだまだ先はありまして、
去年アメリカで21作目が出たそうで、うーん。

ケイとマリーノはフロリダの法医学アカデミーで、地元警察の捜査協力として
働き、一方ベントンは、ボストンの精神病院で殺人犯の研究をしています。

マリーノは突然、医師のジョニー・スイフトの自殺の件を切り出してきます。
というのもマリーノの家に「ホッグ」と名乗る人物から電話があり、なぞの
メッセージを残したのです。

ベントンの研究対象である死刑囚は、フロリダで犯した殺人について話します。
時期的に、この死刑囚が語った現場のあたりで家族が行方不明になって、老婆
が殺害されるという事件があり、さらに、ベントンのいるボストンの公園で
女性の惨殺死体が・・・

マリーノはケイになぜかきつい態度で、ケイはケイでベントンに冷たい態度。
ここにも謎の人物の陰謀が・・・?

ところでルーシーはというと、こちらもなぜか自暴自棄になって酒場で仲良く
なった相手を部屋に連れ込んだりと。

さすがに14作までくると、敵というか犯人もだんだんパワーアップしてきます。
パワーアップというか、容易には捕まりそうにない設定ですね。

「人はなぜ人を殺すのか」というテーマもあり、脳の障害とか病気とかで片付けて
はいけないんでしょうけど、その「どうして」の一因といいますか、そういう部分
も掘り下げて描いていますので、単純な捜査ミステリーとは違う側面も。








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スティーヴン・キング 『デッド・ゾーン』

2013-12-06 | 海外作家 カ
未読品をかたっぱしから読んで、年内にはなくさないと。というわけで
12月はブログの更新ラッシュ(の予定)。

さて、キングです。キングの小説はいつも買うときに「面白いんだけど、
長いんだよなーどうしようかなー」と迷った挙句、結局買ってしまうの
ですが、そして読み終わって「あー面白かった。まだ読んでないのあった
ら買おう」の繰り返し。

ジョン・スミスという少年は、小さい頃に氷の地面に頭をぶつけて、その
ときは大事に至らなかったのですが、ほんの小さな”予感”が当たったり
(ラジオを聞いてて、次にかかる曲が分かる程度の)します。
やがてジョンは大きくなって学校の教師になります。同じ学校のローラと
いう女性の教師と、ある晩、カーニバルへ出かけることに。
そこで、屋台のルーレットでなんと500ドルを当てることに。気分が悪く
なったローラを家まで送り、ジョンはタクシーに乗って帰りますが、そこで
大事故に遭い、それから4年間も昏睡状態に。

話しは変わって、グレグ・スティルソンという聖書のセールスマンが、とある
農家へ売り込みに。しかし家の人は留守。飼い犬がグレグにむかって吠えたて
ると、グレグはその犬を蹴り殺してしまいます。そして一言「おれは狂って
なんかいないぞ」と・・・

ジョンの父親ハーブは大工、母親のヴェラは”かなり”厳格なバプテスト。
ひとり息子の事故で、入院費は払い続けていかなければならず、ハーブは
苦しみます。しかし悩みのタネはもうひとつ、ヴェラが狂信的ともいえる、
宇宙船がどうのこうのという宗教にハマってしまいます。

ジョンが昏睡状態のあいだ、ローラは別の男性と結婚。4年間の長い眠り
から目覚めたジョンですが、奇妙なことが起こります。ジョンの担当の医師
に、ナチスのポーランド攻略の際に亡くなったはずのお母さんは生きていて、
アメリカの西海岸に住んでいる、と伝えるのです。

ただでさえ4年間の昏睡状態から目覚めただけでもニュースなのに、口さがない
看護婦によってジョンの”不思議な能力”は拡がり、やがてマスコミの知る
ところになってしまい・・・

ジョン・スミスの話とクロスして、グレグ・スティルソンの話が描かれていて、
この何やらやばい男とは。そしてジョンはグレグの”未来”が見えてしまう
のですが・・・

ところで、タイトルである(デッド・ゾーン)とは、ジョンは体に触れると
その人の未来や過去を”ある程度まで”は見えるのですが、それ以上見ようと
すると、黒い何かがあらわれること。

手紙や裁判の問答といった”無機質”な話の終わりと思いきや、最後の最後で
そうきたか、といった幕の引き方が、うまいなあと思わず唸ってしまいます。







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パトリシア・コーンウェル 『黒蠅』

2013-09-26 | 海外作家 カ
シリーズの前作を読んだのがだいぶ前、ということでブログをさかのぼって
確認してみたら去年の10月。ほぼ一年ぶり。

そういえば、「主な登場人物」のところのケイ・スカーペッタの肩書きが
「法病理学者」となっていました。いつもは「バージニア州検屍局長」なのに
なあ、と。さらにピート・マリーノはなんと「元刑事」。

それでようやく、前作で州知事だか警察署長だかの陰謀に辟易してケイは
検屍局長を、マリーノは警部を辞めたんだったと思い出しました。

冒頭、ケイは国立法医学アカデミーというところで講義をおこなっています。
そこで、ルイジアナ州から来たニック・ロビヤードという女性刑事と出会い
ます。
ルイジアナでは、一年のあいだに10件もの殺人事件が発生していて、しかも
被害者は全員女性。ニックの警察署がある州都バトンルージュ北部のザカリー
という小さな町でも2件発生していますが、ニックは特別捜査班(タスクフォース)
には入っておらず、捜査の進捗状況はわかりません。

ニックはルイジアナ州の腐敗しきった政治を愚痴りますが、そんな中にあって
彼女が信頼するのは、ラニエという検屍官だけのようです。

さて、そのラニエのもとに手紙が届きます。差出人は、死刑囚のジャン・バプティスト・
シャンドン。フランス人の”狼男”で、前作で逮捕されて、現在はテキサス州の
死刑囚監房に入っています。
手紙の内容は、ルイジアナで起きた連続女性殺人事件の一件について書かれてあり、
被疑者の行方を知りたければピート・マリーノに相談したらどうか、とあります。

ラニエはさっそくインターネットで調べて、リッチモンドで起きた連続殺人事件のこと、
その陣頭指揮をとっていたのがマリーノだったことが分かります。
それよりも注目すべきは、ラニエの尊敬する法病理学者のケイとマリーノが知り合い
ということを知ることに。

ラニエはケイと電話で話しますが、”狼男”からの手紙については触れず、ルイジアナ
で起きた女性連続殺人事件についての考察をお願いします。

前作で捕まえることができなかった”狼男”の兄、ジェイ・タリーは、ルイジアナの
ミシシッピ川沿いにある小屋で女性と暮らしているのですが、そこにもうひとり女性
が縛られていて・・・

一方、マリーノはボストンへ「ある男」に会いに行くのですが、その男とは”狼男”
に殺されたはず・・・

さらに、ルーシーは男と二人でヨーロッパへ。目的はマリーノの息子で悪徳弁護士の
ロッコを探しに・・・

ちなみに、ここまでが『黒蠅』の全体の話の4分の1くらいで、これ以上書くと驚きの
ネタバレを書かなければいけないので、ここまで。

この前本屋に行った時にこのシリーズの最新作をちらっと読んで、なんでこの人が
出てくるんだろうと疑問に思ったのですが、これで納得しました。




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トム・クランシー 『クレムリンの枢機卿』

2013-05-13 | 海外作家 カ
久しぶりに、本を読むのは「楽(らく)」することではなく「楽しい」もの
なのだ、と心から感じる作品に出会えた気がします。

5月に入ってから読み始めたのですが、読む時間がなかったという言い訳は
別にしても、何度か途中で読むのやめようかなと思うくらい先に進まず、
挙句、中断して別の本を読んでしまいました。

というのも、東西冷戦時のスパイ小説で、ソ連側の話のときは、当然ですが
登場人物はロシア人で、ロシアの小説を読んだ方ならお分かりかと思いますが、
とにかく名前が覚えられないのです。普通に苗字で統一してくれればいいの
ですが、「そうだろう、ミハイル・セミョーノヴィッチ」「だがしかし、ゲンナジー・
ウラジーミロヴィッチ」「私もそうだ、ジミトリー・チモフェーエヴィッチ」
なんて会話が繰り広げられたら、混乱して誰が誰だか。
ましてや、例えばミハイルだったら、仲の良い人は愛称の「ミーシャ」なんて
読んだりするから、混乱に拍車がかかります。

前に「罪と罰」を読んだときも、誰が誰だかわけがわからなくなって、自分で
相関図を作って、ああ、この人はこれか、というふうに読んだことを思い出しました。

さて、内容はというと、東西冷戦の終わり頃でしょうか、核の縮小会議が米ソ間で
行われて、ソ連書記長ナルモノフはアメリカ大統領と会談の予定で、政治体制も
変わろうとしています。

しかし、東西の話し合いはすれ違い、なかなか着地点にたどり着けません。
そんな中、ソ連の南、タジクの基地から、謎の光線が発射され、”何か”を
撃ち落とした、という衝撃のニュースがアメリカの軍、政府関係者を驚かせます。

じつはアメリカも、来るスターウォーズ時代のためレーザー光線の開発を急いで
いて、先にソ連の「輝く星プロジェクト」が成功を収めたよう。

さっそく、CIAはソ連側のスパイ「枢機卿」に、「輝く星」の詳細な報告を求め
ます。この「輝く星」プロジェクトは極秘で進められており、これを知る者は
軍の中でもわずか、トップクラスの将校しか知り得ないのですが、では「枢機卿」
とは軍のトップクラスなのか・・・

ところで、この『クレムリンの枢機卿』には、「レッドオクトーバーを追え」に
出てきた、ソ連の潜水艦の艦長ラミウスと、CIA分析官のライアンが登場します。
ライアンは、核縮小会議にも参加していて、そして「輝く星」に関する報告を
スパイする「枢機卿」とは、会議でちらりと会っていたのですが、その時はまさか
彼がスパイだとは知りませんでした。

さっそく、「枢機卿」はフィルムを作成して、2重、3重の用心で運ぼうとしますが、
なんと途中でKGBにバレてしまったのです。
KGB大佐のヴァトゥーチンは、スパイが軍の将校クラスだとつかみ、「枢機卿」は
逃げようとしますが・・・

「枢機卿」は、30年もスパイ活動を続けていて、KGBに捕まったことを知ったCIAは
アメリカ大統領に彼を助けたいので亡命させる許可をもらおうとしますが、核縮小会議に
影響が出ないかが気がかりになり、即決はできません。

一方、KGBもアメリカのレーザー光線プロジェクトの動向を見張っていて・・・

かなり序盤で「枢機卿」の正体はわかるのですが、これが物語の最初のビックリなので
ネタバレは避けます。

米ソのスパイ合戦、ソ連の政治の駆け引きなどが描かれる中、「射手」と呼ばれる
アフガニスタンのゲリラが登場します。
「射手」とは何者なのか。ソ連を憎むことになった理由は。そして彼は何を狙うのか。

文庫本の上巻を読み終わるのに、かなり時間がかかりましたが、下巻に入るとそれまで
ページをめくるのが苦痛だったのが、もう面白くて止まらなくなり、まさにむさぼるよう
に読み進めました。

交渉の緊迫感、スパイ行動のスリリングさはゾクゾクします。

終わりの方で、ある登場人物が死ぬのですが、その死の瞬間を、直接的な表現を使わずに
描写していることに、感動と言ったら語弊がありますが、なんというか「美しい」とすら
思ってしまいました。もう凄いとしかいいようがありません。
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マイクル・クライトン 『エアフレーム(機体)』

2013-04-17 | 海外作家 カ
この本を読み終わって、うしろにある、クライトンの作品一覧を見て
みたら、けっこう読んだなあ、と気づきました。
好きな作家ではあるのですが、コンプリートしたいと強く思うまででは
なく、それでも読んでるんですね。

さて、『エアフレーム(機体)』ですが、香港発デンヴァー行きの
トランスパシフィック航空チャーター機が、ロサンゼルス航空に
緊急着陸します。そのさい、パイロットは空港に救急車40台を要請
します。ロス空港の管制官は驚き、被害の状況を聞きますが、「よく
わからない」というパイロットの回答に首をかしげます。

さっそく、この飛行機を作ったノートン・エアクラフトという航空機
メーカーにも連絡が入ります。
死者3人、負傷者56人という事故は、猛烈な乱気流に入ってしまい、
客室がミキサーのようにかき混ぜられたような状態がしばらく続いた
ことが原因だ、とのこと。

しかし、近年の最新鋭機は気象レーダー、それから他の航空機から
「あそこに乱気流が発生してる」という連絡を受けたりするので、
小規模の揺れはあるものの、乗客が天井に打ち付けられて死ぬほどの
縦揺れが起こるような乱気流に突入するとはちょっと考えられず、
また、この飛行機の機長はジョン・チャンという優秀なパイロット
で、乱気流の回避ができなかった理由はなんなのか。

ノートンの品質保証部担当副部長、ケイシーは、この事故の原因究明
チームを任されます。
そして、上司から”補佐”として、ノートン創業者一族というボブと
いう若者をつけられますが、法学部卒で、前は自動車メーカーにいた
とかで、飛行機の知識をイチから教えなければならず、ケイシーは
困ってしまいます。

調査していくと、機長と客室乗務員の会話のテープが見つかって、
そこには、主翼のスラットが云々・・・というやりとりがあって、
じつは、この飛行機N22という機体は、過去にもスラットと
呼ばれる主翼前縁についている湾曲を大きくする装置のことで、
飛んでる最中に勝手にスラットが出てしまう「指示されざるスラット
展開」という状態が起きていたのです。

ということは、この事故はスラットが原因なのか。調査を続ける
ケイシーとボブですが、社員の一部はものすごく非協力的。いや
それどころか妨害までします。というのも、近いうちに中国が
ノートン機を大量に買うという契約があり、そのさい中国国内に
現地生産工場を作るという噂が広まっていて、これに組合サイドは
猛反対、”役員のひとり”でもあるケイシーは目の敵にされている
のです。

しかし、そんな中、調査は続きます。が、ケイシーの秘書から、
「補佐のボブは、どこか怪しい」という話を聞き・・・

この事故の責任をケイシーひとりにおっかぶせようと企んでる
”フシ”のありそうな上司のマーダーの真の狙いとは・・・

ところで、ケイシーは一人娘とふたり暮らしで、ちょうどこの
事故調査のときに前夫に娘を一週間預けることになっていて、
そんなプライベート問題も重なって疲労困憊。

そんな中、またもやノートン機の事故がアメリカで起きて・・・

「ニューズライン」という人気ニュース番組の若手ディレクターの
ジェニファーは、ノートン機についての取材をはじめることに。
このジェニファーという女性、アイヴィーリーグ卒で、大学生の
ときに制作したコーナーが大当たり、そのまま「ニューズライン」
に入り、鵜の目鷹の目で”おいしいネタ”を探しています。
そしてジェニファーが食いついたのが、ノートン機の事故。
彼女は「面白ければなんだっていいのよ」といわんばかりの考えで
取材を進めていくのですが・・・

航空機事故の話がメインかと思いきや、クライトンが伝えたかった
のはそこではなくて、ジェニファーに代表されるような、節操のない
マスコミにフォーカスが当てられています。

まるで「1粒で2度美味しい」クライトンの構成力にやられました。
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