今までコーヒー党だったのですけど、ここ最近、というわけではありませんが、今年に入って梅昆布茶にハマっております。ちょっと前にホテルに泊まった時に部屋にあったアメニティっていうんですか、一杯用の梅昆布茶を飲んだら「あれ、こんなに美味しかったっけ」と感動しまして、それ以来、スーパーに行って梅昆布茶を買って飲んでおります。まあ普通にコーヒーも飲んでますけどね。
焼酎の梅昆布茶割り、ちょいと、その、うまいものだ。
さて宇江佐真理さん。この話はあとがきによれば子母澤寛の「ふところ手帖」の中に、幕末に男装してフランス語の通詞(通訳)をしていた女性がいたというのがあったそうですが、公式の記録には残っていません。しかし田島勝という女性はどうやら実在したそうでして、この話にも実在の歴史上の人物は登場しますが田島勝との関係性はフィクション。
幕末の江戸。オランダ人は将軍に謁見するために毎年春に長崎から江戸にやって来ます。ヨーロッパから持ってきた宝石を簪に加工してもらって長崎の馴染みの芸者へのお土産にするために江戸の錺職人にお願いするのですが、平兵衛という職人はとても腕がよくオランダ人から評判で、そのうちに平兵衛は通詞を介さずにオランダ語を理解できるようになります。それが幕府の役人の耳に入り、なんと通詞として幕府に召し抱えられることに。もともと語学の才能があったのか、出世して、とうとう「出島詰役」となり、妻のおたみと娘のお柳を連れて長崎に引っ越します。しかしこの時代、ヨーロッパではオランダは強豪国とはいえず、平兵衛は「これからはフランス語だ」と勉強し、お柳も父から教わります。
ある夜、家に帰ってきた平兵衛はおたみに「榎本の坊っちゃんが長崎に来る」と言います。榎本釜次郎は海軍伝習所の生徒として来るというのですが、おたみとお柳の記憶している釜次郎坊っちゃんはイタズラ好きで勉強嫌い。平兵衛は江戸にいた頃、近所の御家人の榎本円兵衛にたいへん世話になっていまして、その円兵衛から息子の釜次郎が長崎に行くのでよろしくと手紙をもらったのです。
しばらくして、お柳が家に帰ると「お柳ちゃんか、大きくなったなあ」と釜次郎が平兵衛と酒を飲んでいます。そしてお柳が英語やフランス語を勉強してることを聞いた釜次郎はそんなの覚えてどうするんだと訊くとお柳は「うち、通詞になりたかとよ」と答えます。釜次郎と平兵衛の会話の中で、土佐の漁師が漂流してアメリカで10年間暮らして帰国して土佐藩家臣から江戸の旗本になりペリーとの通訳をするまでになった中浜(ジョン)万次郎の話が出て、お柳は夢中になって聞き、釜次郎は「いつの日か身分も性別も関係なく立派になれる日が来るだろう」といい、お柳はそういう人になりたいと思います。
やがて釜次郎は江戸に戻りますが時代は上を下への大騒ぎで釜次郎はオランダへ留学。しかしその間に平兵衛が攘夷運動の浪人に斬り殺されます。平兵衛の知り合いを頼って江戸に戻りますが知り合いは江戸におらず途方に暮れたお柳は生計のため芸者になります。
釜次郎が帰国したとの知らせをお柳は耳にしますが、まさか会うわけないだろうと思っていたところ、幕府の軍艦奉行の勝安房守(海舟)といっしょになんと釜次郎が酒席に。見つからないようにしていましたがすぐバレてしまい、平兵衛が長崎で殺されたこと、母娘が江戸に帰ってきて仕事がなく芸者をやってると聞いて釜次郎は「横浜に行ってフランスから来てる軍事顧問の通詞をやってくれ」と頼みます。ただし、幕府の役人に女性は雇えないので男装してくれ、と・・・
ここまでで歴史好きで察しのいい方ならお分かりでしょうが、釜次郎はのちの榎本武揚。お柳はフランスの軍事顧問から「アラミス」というあだ名で呼ばれます。ある日のこと、ブリュネという教官がお柳の人物画を描きます。その絵には「初めてフランス語を話す日本人・アラミス」と書いてありました。アラミスとはデュマの小説「三銃士」の一人で、原作では中性的な人物として描かれていたのです。
しかし大政奉還、戊辰戦争となって釜次郎こと榎本武揚は「賊軍」となり・・・
あとは史実通りにいきますと榎本ら幕府軍は軍艦で箱館(函館)に行って新政府軍に負けて捕まりますが黒田清隆の助命嘆願で新政府の役人になります。じつは箱館にお柳も同行していたのですが、さてどうなったのでしょうか。
今まで幕末の動乱期の作品(映像でも小説でも)はけっこういろいろ見てきて、正直あまり好きではなかったのですが、この作品の「お柳目線の幕末」を読んで、なんだかちょっと考え方が変わりました。