晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

池波正太郎 『上意討ち』

2017-06-28 | 日本人作家 あ
この作品は、短編集となっております。それぞれ
書かれた時期がけっこうバラバラで、テーマも
違っているので、(こういう一冊です)と説明は
できないのですが、いろいろな料理を味わえる
ビュッフェに来たような。

ある大名家の奥女中でのゴタゴタ、いや、話は
(毒殺計画)というのですからゴタゴタなんて
レベルではありません。
側室の娘の嫁ぎ先が正室の娘の嫁ぎ先よりも格上
ということで正室は側室の娘を毒殺する計画を
自分のお付きにさせようと・・・という「激情」。

十兵衛という侍は、田中源四郎という侍を探して
います。というのも、ふたりは同じ藩で、この藩
の殿さまが源四郎の婚約者を妾にしたいといって
きますが婚約者は自害。怒った源四郎は殿さまを
ぶん殴って、藩を逃走。
殿さまは藩内で剣の実力者の十兵衛に「源四郎を
探して討て!」と命令しますが・・・という表題作
の「上意討ち」。

奉公人、音松に手紙が。近所の娘(おその)からで、
「親の決めた縁談は嫌なので私を連れて一緒に逃げて」
というもの。ところがこれ、音松と同じ店で奉公してる
先輩のイタズラだったのです。
ですが、(おその)にずっと想いを抱いてきた音吉は、
なんと店の金を持って、手紙に書かれていた待ち合わせ
場所へ・・・という「恋文」。

こちらもイタズラの恋文ですが、とある藩士の娘(千代)
が恋文をもらいます。千代は大柄で剣の腕もあるという
ことで嫁に行きそびれています。で、千代はこの恋文を
本気にしますが、ウソと分かって、なんと自害し・・・
という「刃傷」。

東海道中の宿場でうどん屋をやっている彦太郎と源七。
ある男の客が来ますが、源七はこの客を(もしや・・・?)
と警戒。彦太郎と源七、かつては侠客で、その客を
自分たちの追っ手とにらんだのですが・・・という
「雨の杖つき坂」。

こちらは、戦国時代の剣豪、塚原卜伝の話「卜伝最後
の旅」。
常陸の国、鹿島神宮の祠官の家に生まれた塚原卜伝。
無敗の剣士として名を馳せ、室町将軍や諸大名などに
剣を教えます。
武田信玄の領国、甲斐に訪れた卜伝は七十三歳。
(川中島の戦い)にて、かの有名な、上杉謙信が単身
で信玄の本陣に突入し、馬上から斬りかかってきて、
信玄が軍配で刀を止めるというあのシーン、あそこに
卜伝がいて、卜伝のおかげで信玄が命拾いし・・・
他にも室町将軍、足利義輝との話もあります。

「剣友 渡辺昇」は、幕末の肥前(今の長崎、佐賀)
・大村藩士、渡辺昇の話。
江戸の剣道場(練兵館)に修行に来ていた渡辺は、
剣の腕こそ道場内で塾頭と互角の実力ですが、江戸
で(酒と女)をおぼえてしまい、堕落な日々。
この渡辺、牛込にある小さな道場に道場破り、他流
試合が来ると(助っ人)に駆けつけるのです。
この小さな道場、(近藤道場)といい、主は近藤勇。
時は幕末で、渡辺は帰郷し、そして京都へ。
近藤道場の人たちも幕府の(浪士隊募集)に入り
京都へ・・・
練兵館と長州はつながりがあり(前の塾頭は桂小五郎)、
渡辺は京に来ていた長州藩士や坂本龍馬らと交流。
そんな中、新選組に「肥前の渡辺昇を暗殺せよ」
との密命があり・・・

「色」は、新選組副長、土方歳三の話。
無口で真面目、隊内の規律を徹底する「鬼の副長」と
呼ばれたほどですが、ある日、刺客に襲われた土方は
これを返り討ちにします。ところが刺客にとどめを
刺そうとしたところ、女が割って入ってきます。
刺客を殺さず、その場を去る土方。
この女、(お房)という未亡人でしたが、土方はその
後も(お房)のことが気になり・・・

「龍尾の剣」は、新選組の隊員、永倉新八の話。
もとは松前藩士の息子で、剣の修業に出て、なんだ
かんだで江戸の近藤道場に落ち着きます。そこで、
門人の藤堂平助と出会うのですが、どうもウマが
合わないといいますか、浪士隊募集で京都へ行き
新選組になりますが、そこで新八お気に入りの
女が藤堂に惚れていると知った新八は、(池田屋
事件)での斬り込みのさい、怪我を負った藤堂を
見て、助けに行こうとしますが、一瞬(こやつが
死ねば)と見殺しにしよう思った新八ですが・・・

北国の某藩の江戸留守居役、大原宋兵衛は、ここの
ところ毎朝、胃痛で目が覚めます。昨夜も何者かに
暗殺されかけます。宋兵衛の領国の(殿さま)は、
藩の財政など知ったことかと濫費にあけくれ、急死
します。厄介な問題として、跡継ぎがまだ四歳と若
く、幕府としては前領主の(素行の悪さ)を問題視
していて、これを機に「跡継ぎが若すぎるから藩は
取り潰し」と決定されかねず、宋兵衛は、幕府の役人
にお願いしたいのですが、こういうケースでの相場
は二百両ほど必要なのですが、藩の金庫はスッカラ
カン。さらに藩内では前の(ばか殿)の贔屓だった
家臣が相次いで殺されていて、宋兵衛の命も狙われて
いるのです・・・という「疼痛二百両」。

幕府の(御奏者番)、筒井土岐守は、内藤家の中屋敷
に招待されます。内藤家の中屋敷といえば現在の新宿
御苑で、この屋敷内には田畑があり百姓も住んでいた
そうです。で、土岐守は酔い覚ましに庭園を歩いてい
ると、百姓の女房が身体を洗っていて、それを見た
土岐守は女房に襲いかかってしまい、なんと、それを
止めようとした女房の亭主を斬ってしまいます。
この醜聞はあっという間に拡がって、将軍や老中の
耳にも入り、土岐守は東北の山国に国替えさせられ、
石高も減らされ・・・という「晩春の夕暮れに」。

どの話も途中までしか、4コマ漫画でいうところの
2コマ目ぐらいまでしかあらすじを書いてないので、
なんだか絶望的な話に思われてしまいますが、中には
ぶっちゃけ夢も希望も無いオチという話もありますが、
(めでたしめでたし)的なのもあります、一応。
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佐伯泰英 『吉原裏同心(三) 見番』

2017-06-23 | 日本人作家 さ
わりとはやいペースでシリーズ3巻目を読了。

さて、今作のテーマは「見番」。
見番とは、(検番)とも書くそうですが、例えば、
料亭でお客さんが芸者を呼びたいと注文があった
とき、料亭は見番に連絡します。見番は、芸者の
所属事務所というかプロダクション的な「置屋」
に「どこそこの料亭で芸者何人ご所望です」と
オファーを出す。つまり見番は複数の置屋を統括
しているということですね。

江戸と上方とではシステムが違ったりしたので
しょうが、基本的には、見番も置屋も唄や楽器、
踊りなどを披露するいわゆる(座持ち)の芸者
の取扱です。

というわけで、遊女と芸者とは違うのですが、
まあそこはあれでして、寄席に出てた女義太夫
などの一部も春をひさいでたりもあったそうな。

で、吉原内では(遊女)がいるわけですが、芸者
の中にもそういうことをするのが出てきまして、
これはいかんと大黒屋という妓楼が見番を創設し、
遊女は遊女、芸者は芸者と区分けしました。

お辰というお針(縫い子)が、吉原内の稲荷神社
で殺されていました。お辰は裏で金貸しをやって
いてだいぶ恨みも買っていたようです。
吉原裏同心、神守幹次郎はさっそくお辰殺しの
捜査に。

ところで、幹次郎の妻(汀女)は吉原で俳句や書
を教えているのですが、ここ最近、生徒たちの
間で遊女たちと芸妓たちとが険悪ムードになって
いると感じていました。

吉原会所の四郎兵衛は「さすが汀女さま」と。
というのも、公儀(幕府)では、老中田沼意次の
失脚、新しく就任した松平定信は腐敗立て直し
で吉原を営業停止に。
これは、表向きは「風紀を正す」ということです
が、じつは吉原が(田沼派)と仲良くしていたの
で、その見せしめなのでは、と。
この裏で、見番を管理してる大黒屋が(反田沼派)
の黒幕、一橋治済とつながりがあるという情報を
四郎兵衛は掴み、これが吉原の営業停止と芸妓の
態度がデカくなっているのは大黒屋が吉原の実権
を握ろうとしているのではないかと・・・

この大黒屋の陰謀が、お辰殺しの一件とどう絡んで
くるのか。

シリーズ3巻まで読んでみて、とにかく「読みやすい」
ということです。疾走感がいいですね。
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五木寛之 『親鸞(激動篇)』

2017-06-18 | 日本人作家 あ
この作品は3部作になっていまして、(激動篇)
は2作目になります。
で、1作目を読んだのが、このブログで投稿した
のが、2015年の9月。
いつもですと「はやく続編あるいはシリーズ2作目
を読まなければ」などと威勢のいいことを書いて
おきながら2年も3年も間をあけるのに、今回はまあ
早い方ではあります。

で、1作目ですが、平安時代の終わり頃、下級貴族
の家に生まれた親鸞(当時は忠範という名前)は、
9歳で比叡山で修行をスタート。ですが20年修行を
しても納得が得られず、当時、法然上人の(念仏)
というのが巷で大ブームになってまして、法然の
門下に入ります。すぐに頭角を現し、秘蔵の書
「選択本願念仏集」の書写を任されるほどに。
しかし、この念仏の教えは、解釈によっては危険
思想と捉えられ、朝廷は念仏を禁止し、法然は
讃岐へ、そして親鸞は越後に流罪の刑に。

というところまで。ちなみに、名前は比叡入山
で範宴(はんねん)に、そして法然の弟子になる
と綽空(しゃくくう)と改め、その後、師匠から
善信(ぜんしん)という名前をもらい、流罪の
直前の頃に親鸞に名前を変えます。

そして、親鸞は、恵信(えしん)という女性と
結婚します。

さて、親鸞は恵信とともに越後にやって来ます。
流刑人ということで、この地域を統括している
郡司が(身元預かり)という状態。
そんなある日、親鸞は大人数の行列を目にしま
す。聞けば(外道院)と名乗る教祖さまと、その
教団のようなもの。
その一団が行進していて、近づくと周囲の見物人
はひれ伏しますが、親鸞は立ったまま。
しかし親鸞は、外道院を「ただ者ではない」と
思い、また、外道院も、行進のときに土下座を
せずに立っていた男のことが気になります。

その夜、外道院の使いが親鸞の住居に来て、
外道院さまが会いたいので来てくれというのです。

この当時、貧しいものや病人といった生活弱者は
前世の業のせいだという教えがあり、見捨てられた
存在であったのですが、外道院は率先して彼らを
助け、食べ物を与え、病気を治療していて、たし
かにそれは親鸞も素晴らしいとは思うのですが、
しかし外道院はいろいろな問題を加持祈祷によって
決断していて、これを親鸞は納得できず、外道院
のところに行くのを断りますが、次の日、気が変
わり会いに行くことにして、浜辺を歩いていると、
人だかりが。そこでは(人買い)が行われていて、
外道院のところに着いて人買いの話をすると「人
買いは許さない」とやめさせに向かいます。
そこに親鸞も付いていくと、人買いのボディー
ガードが外道院の使いを倒し、親鸞は何を思った
のか「次は私が相手だ」と言ってしまいます。
とりあえず両手を合せ、念仏をとなえると、
ボディーガードは口から血を吐き死んでしまった
のです。

しかし、この男は労咳病みだと親鸞は見抜いて、
たまたま念仏と男の発作が同時なだけだったのです
が、周囲は「念力だ!念仏で倒した!」と大騒ぎ。

この一件で地域の住民たちは「京から流刑されてき
たあのお坊さん、すごいらしいぞ」と評判に。
ところで、例の人買いは、この地域に新しく赴任
してきた「守護代」の仕業で、守護とは鎌倉幕府に
よってできた役職で、諸国を管理します。が、まだ
地方によっては奈良時代から続く公家支配の国司・
郡司がいて、二重行政のような状態だったそうです。

そこで守護代は「地域を治めるのは俺らだ」といって
国司・郡司らと(陣取り)のようなことをしていて、
人買いの件も、郡司と結託していた外道院をわざと
怒らせて守護代に歯向かってきた者として潰そうと
していたのです。

その後も守護代の悪だくみで親鸞を困らせたりなど
ありましたが、それよりも深刻な問題が。まったく
雨が降らずにさらに冷夏で、このままでは凶作に。

そこで、この地域のお偉いさんたちは、親鸞に
雨乞い祈祷をしてもらうことに。
しかし念仏とは雨を降らせたりするものではない
ので断りますが、外道院の人買いの件もあってか、
この地域の人たちは親鸞をスーパーマンだと思って
いるようで、ことに(念仏)すれば大丈夫、みたい
な間違った解釈がはびこっていて、いっそ「念仏で
雨は降らせられないんだよ」と教えるためにも、
逆に雨乞いをやってやろうと決めるのですが・・・

一方、法然上人の刑期が終わったという知らせが
届きます。さらに、親鸞が比叡入山前に伯父の家に
引き取られていたときに仲の良かった犬丸とサヨ
の使用人夫婦が商人となって、恵信の妹の子を
預かっていると知り、恵信はこの子を引き取って
私が育てると京に向かいます。

そんなこんなで親鸞も刑期が終わり、京に戻れる
のですが、越後に留まります。しばらくして犬丸
(今は犬麻呂と改名)が越後に来て、親鸞の少年
時代に、京の河原で死人の供物を食べていた坊主
の(河原坊浄寛)が今では「香原崎浄寛」という
関東の武士になっていて、その浄寛が親鸞に関東
に来ないかと誘っているというのです。

そんな中、法然上人死去という知らせが・・・

ここから、親鸞の関東での念仏布教となります。
居を構えたというか与えられたのが、常陸の国。
ここでも(念仏)は知られるようになってはいま
すが、それでも(真の念仏)というか、何かが
違うような感じで、それは親鸞自身も教える確信
が揺らいだり。

そうして関東に移り二十年がたとうとして、親鸞
はいよいよ京に戻ることに・・・

終わりの方で、親鸞と行動を供にする(唯円)という
念仏僧が登場します。「歎異抄」の作者とされている
人ですね。
さて、残るは「完結編」ですか。
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池波正太郎 『夜明けの星』

2017-06-08 | 日本人作家 あ
また、池波さんのシリーズものではない作品を数冊
買ってきました。

これで当分は「池波ロス」にならずにすみそうです。

江戸、深川の煙管師、源助の仕事場に、ひとりの浪人
がやってきて、煙管を買ってくれと言います。
しかし、源助は職人であって故買ではないので、
「他へ行ってくれ」と断りますが、それでも「たのむ」
としつこく、そしてついに浪人は逆上して、源助を
斬ってしまうのです。

この浪人、堀辰蔵は、越後のある藩の足軽の息子で、
父を殺した相手を探している「敵討ち」の身なのです。
敵を探して十六年、まだ見つかりません。
職人を斬ってしまって自分でも「とんでもないことを
してしまった」と思い、逃げて、原っぱに横たわり、
疲れて眠ってしまいます。

すると、四人の男が辰蔵を囲み、小便をかけてくる
ではありませんか。怒る辰蔵ですが、四人の男の
ひとりで「先生」と呼ばれている袴をはいた男に
峰打ちを当てられて意識を失います。
ですが、この袴の浪人、辰蔵を自分たちの家に
運べと他の男らに命じるのです。
この袴の浪人、三井覚兵衛といい、辰蔵を助けた
のは「使える」と見込んだからなのですが・・・

さて、いきなり斬り殺された煙管師、源助には
(お道)というひとり娘がいます。
あれから、地元の御用聞きの佐吉が犯人探しを
してくれていますが見つからず、お道は、紹介
で下女奉公に出ます。
その奉公先は薬種問屋、伊勢屋の主人の妾宅。
ある雨の日、伊勢屋の主人が妾宅に来ていると、
いきなり戸が開き、男が入ってきて、伊勢屋の
主人と妾を斬りつけます。
この出来事にお道は気を失います。
男は倒れてる下女を見つけ、顔を見ると(ここに
いるとは・・・)と。

そう、この男とは、堀辰蔵だったのです。(犯人は
現場に戻る)という老刑事の格言ばりに、辰蔵は、
あれから何度か自分の殺した煙管師の家の近くに
行き、お道を見ていたのです。

不幸続きのお道は、佐吉親分の女房が女将をして
いる料理屋(万常)で女中として働いていると、
浅草にある小間物問屋の若松屋長兵衛の妻、お徳が
やって来て「あの子を若松屋で奉公させたい」と、
お道をヘッドハンティングに。
ですが、噂によれば若松屋はお徳が大変(厳しい)
人で、息子は三回も離婚していて、三度とも嫁が
お徳にいびられて出ていってしまった、と・・・
これには佐吉の女房も心配して、お道を若松屋に
出すのをためらいます。

ところで、あれから辰蔵は、(いっぱしの)殺し屋、
つまり「仕掛人」となっていて、伊勢屋の主人と妾の
殺害も三井覚兵衛の「依頼」を受けてのことで、
辰蔵はしばらく江戸を離れていて、久しぶりに江戸に
戻り、三井覚兵衛と会い、酒食と話し合いのために
ふたりが立ち寄ったのが(万常)だったのです。
そこで辰蔵は、数年前に自分が殺した煙管師の娘が
この料理屋の女中にいるのを見つけ・・・

お道は、なんだかんだで若松屋で女中奉公すること
になります。
一方、辰蔵は「仕掛人」としての実力を上げていき
ます。

このまったく境遇の違うふたりが、間接的に、または
直接に関わってくるのですが、まあ古今東西こういった
小説や芝居はあって、これを(ご都合主義)とか(物語的)
と一蹴するのはあまりに勿体ないのです。

読者は、虚構は虚構として楽しむ「スタンス」というのが
必要で、また作者の側はそれをいかに楽しませるか、この
勝負というか駆け引きが読書の醍醐味といえます。
この作品を読んでいて、まったく(ご都合的な)とは思い
ませんでした。お道の話から辰蔵の話に移動するとき
のジョイント部分といいますか、この切り替えが自然で、
別の話を(一話)に感じさせます。

辰蔵に「仕掛け」を依頼する三井覚兵衛ですが、さらに
その上にいるのが(暗黒界の大物)、羽沢の嘉兵衛。
この香具師の元締、鬼平にも藤枝梅安にも出てきます。
さらに「闇の狩人」にも出てきて、たしか「闇の狩人」
では、殺された、あるいは数年後に殺されるという設定
になっていた記憶があるのですが。

そういえば、辰蔵が売ろうとした煙管は(後藤何とやら)
の作、とありましたが、あれ、これは?と思い、「鬼平
犯科帳」を読み返して見たら、平蔵が愛用していた(父の
形見)と同じ、京都の名工、後藤兵左衛門作でしょうか。
平蔵の煙管は特注でお値段はなんと十五両というんですから、
今でいうと200~300万円ぐらいしたんでしょうかね。
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高田郁 『みをつくし料理帖 花散らしの雨』

2017-06-03 | 日本人作家 た
まだ読んでいない時代小説でシリーズもの
となると、読み始める、つまり(買う)基準
は、ミーハー的な基準ですと、作家が有名、
文学賞を受賞している、あるいは映像化され
てる、というもの。

で、高田郁さんというお名前は、不勉強なも
ので存じ上げませんでした。
映像化に関していうと、数年前に民放でやって、
さらにNHKで先週始まったばかりという
ナイスタイミング。

『花散らしの雨』は、シリーズ2作目。
前作までをざっと説明しますと、主人公は澪
(みお)という女性の料理人。
大坂で生まれ、洪水で孤児となったところを
料亭(天満一兆庵)の女将、芳に拾われ、
澪に料理の才能があると知った主人は料理人
にさせようとしますが、料亭は火事で消失。
助かった主人、芳、澪の3人は天満一兆庵の
江戸支店に来てみると店は潰れてて、支店長
は行方不明。
主人は亡くなり、芳も具合の悪い状態でどう
しようとしていたところ、神田のそば屋
(つる屋)の主、種市に「うちで働きな」
と誘われます。
はじめこそ、大坂風の味と江戸風の味の違い
に悩みますが、自分の持ち味は壊さずに江戸
の人の口に合う料理を開発して、たちまち
評判になります。
そんな中(つる屋)の評判が気に入らない
「登龍楼」という料理屋が嫌がらせを・・・

といった感じです。で、前作では(つる屋)が
不審火で燃えてしまい、屋台からスタートしよう
と奮闘する澪でしたが、九段坂下に移転します。
今度の店は2階に個室の部屋があり、お武家さん
なんかも多く来るようになります。

新しいお店は一階が入れ込みの座敷で二階もある
ので下足番が必要かもと話していたその後日、
種市が新しい女中さんを連れてきます。
名前を(ふき)といい、聞けば両親を早くに亡く
したということで澪や(つる屋)の人たちは、
はじめこそ同情で雇ってあげたのですが、とても
いい子でよく働きます。

(ふき)が来てしばらくして、お客さんから
「ここも登龍楼と同じ新作料理かい」と言われ
澪は驚きます。
というのも、江戸では(雑草扱い)だった雪ノ下
という野草を天ぷらにして種市に味見してもらった
ら気に入って、これを春の看板メニューにしようと
決めたばかりだったのです。
しかし、野草の天ぷらなど修行した料理人なら思い
つくので、ただの偶然よと澪は思いますが、なんと、
今度の新メニュー(三つ葉尽くし定食)もまた登龍楼
で出されていて・・・

それとは他に、行き倒れの青年を助けると、青年は
房州、流山の酒屋で(白味醂)という商品の売り込み
で江戸に出てきたものの、どこの店でも断られ、つい
に行き倒れになったのです。
しかし澪と芳は「これは上方なら絶対売れる」と助言
して・・・

あとは、澪と芳の住む長屋のご近所さんで(つる屋)
の手伝いもしてくれるおりょうさんの息子、太一が
麻疹にかかり、治ってきたと思ったら今度は母親の
おりょうも麻疹の症状が・・・

神田にあった(つる屋)のときから何かと澪と芳が
世話になっている源斉先生がまた九段坂下の店にも
来るようになります。が、源斉先生に片思いして
いる、ある大店のお嬢様が、澪と源斉がいい仲と
勘違いし・・・

2作目で、清右衛門という戯作者が登場します。
はじめこそ(いやな客)だったのですが、店で
下足番が必要だとなったきっかけも、登龍楼の
メニューパクリ事件も教えてくれたのは清右衛門
でした。
まあ、憎まれ口を叩きつつも(つる屋)には足繁く
通ってくるので、澪も憎まれ口を返すことも。
清右衛門は長屋の差配(大家さん)もしていて、
神田の長屋から九段坂下の(つる屋)まで通うのは
大変だろうと澪と芳に(つる屋)の近所の長屋を
紹介してくれたり、けっこういい人なのです。

前作に出た小松原という浪人なのかよくわからない
武士が、九段坂下の店にも顔を出します。
ですが、登龍楼の一件で、登龍楼の主が「あなたと
小野寺様とはどんな関係だ?」と聞かれますが、
もしかして小松原さまは小野寺様という本名?
そして、前作に出た、吉原の大見世の料理番という
又次も登場。

澪には(野江ちゃん)という幼馴染みがいたのですが
子どものころ大坂で洪水があって以来行方知れず。
ところが、又次のいる見世の花魁(あさひ太夫)は、
もしかして野江ちゃんなのでは・・・というところで
前作は終わっていたのですが、さてどうなんでしょう。

(白味醂)の話ですが、千葉県流山市はじっさいに
味醂の有名なところでして、「マンジョウ本みりん」
は流山の会社です(経営はキッコーマンだったかな?)。
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