晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

海堂尊 『ブレイズメス1990』

2013-01-31 | 日本人作家 か
この作品は「ブラックペアン1988」の続編にあたるのですが、なにせ
ブラックペアンを読んだのはだいぶ前、正直どんな話かほとんど覚えて
なかったので、当ブログで前に書いた感想を見て、ああ、と思い出し
でから読み始めました。

東城大学医学部総合外科学教室の垣谷という講師と、外科医になって
僅か3年の世良は、国際学会のシンポジウムのため、フランスのニース
に来ています。

本来は、垣谷よりも上のポジションの人が来るはずだったのですが、
英語がダメやらなんやらで垣谷の役目となりますが、世良はただの
”お供”ではなく、病院長の佐伯から、ある”密命”を仰せつかって
いたのです。

学会では垣谷の発表が終わり、いよいよ注目の「ダイレクト・アナスト
モーシス(直接吻合法)」という、聞いたことのない術式を発表する、
モンテカルロ・ハートセンターの天城雪彦という医師の講演がはじまる
ところですが、その天城はなんと、このシンポジウムをドタキャン。

しかし、なんとしても天城に会わなくてはならない世良は、ニースから
モナコへ移動。カジノにいる、と病院の人に教えてもらい、ようやく天城
に会うことができ、世良は佐伯病院長の手紙を渡します。

それを読んだ天城は表情が一変、その手紙の内容は、天城に東城大学付属
病院の新施設、心臓外科センターのセンター長になってほしい、ということ
だったのです。

この天城という医者は、ここモナコで治療をする際、患者に全財産の半分を
カジノで賭けさせて、当たれば手術、外せば手術はしない、という方針を
とっていて、さらに、天城は世良に、赤か黒かの一発勝負で勝ったら日本に
行く、と提案。これに垣谷は納得できません。が、世良は了承します。

結果は負けとも勝ちともつかず。しかし天城は、日本行きを承諾することに。

さて、いくら病院長が直々にセンター長に要請したとはいえ、当然もともと
総合外科にいた人達は面白いはずもなく、しかし天城はどこ吹く風で余裕。
世良は天城の”お守り役”に任命されて、総合外科の先輩たちから白い目で
見られます。
ここで、天城に食ってかかる急先鋒が、バチスタシリーズでは病院長の高階
(1990年の時点では講師)です。

世界で天城しかできないという心臓手術の「直接吻合法」を、まったく行う
こともせず、他人の手術を覗いたり、会議に茶々を入れたりの日が続きます
が、ある日、天城は唐突に、今度手術をする、と告げます。

ところがその手術というのが、東京で行われる学会の、なんとステージ上で
公開手術をする、と・・・

この作品でも、「医療」とは何か、という、根源的、本質的な問いを読者に
ぶつけてきます。といっても禅問答みたいなものですが。

文中に、桜宮が一億円で作った「黄金の地球儀」や、珍しい深海魚の話題が
出たり(「夢見る黄金地球儀」に出てきます)、”でんでん虫”こと、碧翠
院桜宮病院が出てきたり、スピンオフの中にさらにスピンオフが取り上げられ
ていて、今まで海堂尊の作品はほとんど読んできましたが、ここにきて桜宮を
取り巻くいろいろな話がこんがらがってきたので、一度「チームバチスタの栄光」
から読み直してみないとだめですね。

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サラ・パレツキー 『サマータイム・ブルース』

2013-01-29 | 海外作家 ハ
同じタイトルの有名な歌がありますね。ですが、内容はブルースとは
特に関係ありません。まあしいていえば第1章がそのものずばり「サマー
タイム」、真夏のシカゴは暑いよ、というのがよく伝わってきます。

V・I・ウォーショースキーは、シカゴのちょっとごみごみした
地域にオフィスを構えている、女性探偵。

Vはヴィクトリアの頭文字なのですが、本人はイニシャルで自己紹介、
あるいは「ヴィク」と呼んでもらいたがってます。

それはさておき、オフィスに依頼客が来ます。その男性は、シカゴ有数の
銀行の専務で、息子といっしょにどこかに消えたガールフレンドの行方を
探し出してほしい、という依頼。

とりあえず、息子ピーターの家を訪ねてみると、そこにはピーターの死体が。

ヴィクの父親はもう亡くなっていますが元刑事で、父の同僚だったマロリー
警部補に連絡。さて、これは何かおかしいと、依頼主の銀行を訪ねてみると、
昨晩来たジョン・セイヤーを名乗った男は、まったくの別人だったのです。

その後わかったことは、オフィスに来た依頼主は、裏でマフィアと繋がってる
と噂のある国際労組の委員長アンドリュー・マグローで、ピーターのガール
フレンドというのはマグローの娘アニタ。

なぜマグローは、セイヤーの名刺を勝手に使って彼になりすまし、アニタの
行方を調べさせようとしたのか。それよりも、すでにピーターが死んでいる
のを知っていたのか。ひょっとしてアニタがピーターを殺したのか・・・

ピーターとアニタはともに大学生で、ピーターは「社会勉強」で、保険会社
で簡単な仕事の手伝いをしていて、ヴィクは、保険会社のラルフに話を聞いて
みますが、特に事件の足がかりになるようなことは分かりません。

オフィスに戻ると、ドアの前に見知らぬ男がいて、ヴィクに銃を突きつけます。
空手をやっているヴィクはその男を倒そうとしますが、別の男にやられて、どこ
かに連れて行かれます。たどり着いた場所には、シカゴマフィアの大物アールの
姿が。アールは、この一件から手を引け、と脅してきて・・・
自宅とオフィスは何者かに侵入されて足の踏み場もないほど荒らされていて、
犯人は、ヴィクが持っている”何か”を探したらしいのですが、その”何か”
がわかりません。そこで、ふたたびピーターの部屋へ行ってみると、ガスレンジ
の下に、伝票のような紙切れを見つけるのですが・・・

なぜピーターは殺されたのか。どうやら保険絡みということまでは推測できる
のですが、よくわかりません。そして、消えたアニタの行方は・・・

この作品は「女性探偵ウォーショースキー」シリーズ第1作で、「検屍官ケイ」
シリーズほどハマるかどうかはわかりませんが、とりあえず第2作をはやく読み
たいなあ、と。
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山本一力 『だいこん』

2013-01-26 | 日本人作家 や
たまに疑問に思うのですが、文庫本で、一冊が600ページを超える、
けっこう分厚いのがあるのに、両方が200ページちょっとしかない
上下巻というのもあったり、どちらにメリットがあるとも言い難い
ですが。

そんな、文庫にして600ページを越す長編作品の『だいこん』。しかし、
読み終わってみると、いやいや、さらに同じ量の下巻も出してくれ、と
思ってしまうこと請け合い。別に終わらせ方に不満があるわけではあり
ませんが、続きがすごく気になります。

江戸の中期、浅草の大工、安治と妻みのぶの間に、女の子が産まれます。
名前は「つばき」。つばきの下の子は、さくら、かえでと3人娘。

浅草で人気の一膳飯屋「だいこん」の女あるじ、さくらは、浅草の店を
たたんで、何の縁もない深川で、新しい飯屋をはじめようとします。
これにはあるいきさつがあるのですが、それはさておき、普請を見ていた
つばきの前に渡世人が来ます。なんでも深川を仕切る「閻魔堂の弐蔵」
の下っ端で、挨拶に来い、と連れて行かれます。
そこで弐蔵と顔を合わせるつばきでしたが「伸助おじさんでしょ?」と。
一方、弐蔵も「つばき坊か?」などと。このふたりの関係は・・・

安治は棟梁からの信頼も厚い、良い腕の大工なのですが、ひょんなこと
から博奕で借金を作ってしまい、働いても働いても借金の利息分で月の
稼ぎのほとんどが消えて、当然暮らしもきびしくなり、母みのぶは幼い
かえでとまだ赤ん坊のさくらを近所に預けて、蕎麦屋で働くことに。

このとき、かえでがみのぶの働く姿を見て、自分も将来は飲食関係で
働くのだ、と決意します。

借金取りの伸助は、雨続きで大工仕事が休みになると安治の稼ぎが無い
ので、仕事を斡旋に来たり、その他、何かとこの家族を心配します。
が、幼いかえでにとって、”おじさん”が家に来ると、たちまち父母の
機嫌が悪くなる(借金取りということをよく分かってない)ので、本能的
に「この人キライ」となるわけですが、ある日など、「お前なんかタコだ」
(両手の小指が無いので指が八本だから)と言って伸助をキレさせたり
します。

ある年の大火事で、江戸の一帯が甚大な被害に遭い、伸助の組は解散、これで
安治の借金は棒引きとなります。

水が引いて、男たちは後片付け、女たちは炊き出しをして、みのぶとかえで
は炊き出しに参加します。
そこで、かえでの炊いたご飯がとても美味しいと評判になり、火の見番の
食事を任されることに。

もともと腕の良い大工の安吉の稼ぎで、借金さえなければ家族が食べていくに
充分なので、火の見番の調理の給金は貯めることに。そして相当な額になると、
かえでは浅草に一膳飯屋を開くことに。店にする物件の裏庭は畑ができるくらい
広く、ここで大根を植えることに。漬物にもおかずにも最適な大根。ということ
で、お店の名前を「だいこん」にします。

酒は出さず、安価で食べ放題というシステム、そしてもちろん飯の味が好評で
売り上げはぐんぐん伸びていきます。
人手が欲しくなり、母みのぶはご近所さんにお願いしようとしますが、かえでは
断固反対します。その理由は、余計な感情が入ると人を使いにくい、ということ。
さらに「ひとってわからないから」と。まだ十代とは思えない怜悧なかえで。

ここからかえでは新しいビジネスに次々と着手していき、かえでの人柄もあって、
それらが成功。ですが、かくかくしかじかで繁盛していた浅草の店をたたんで、
深川に移ってくるのですが、どうなることやら・・・

ところで、弐蔵こと”伸助おじさん”は、かえでが新しい店を開く際に、みかじめ
料的なものを、と考えていたのですが、かえでの口からとんでもない大物の名前が
出てきて、参りました、と諦めます。逆に、何かトラブルがあったらいつでも助け
てやる、とまで。
その”大物”とは、山本一力作品にたびたび登場する、今戸の芳三郎。ここにも
出てきたか、というくらい頻繁に出てきますね。

女性が主人公で、少女期から大人に、つよくたくましく生きる、まるで朝ドラのよう。
いやじっさい朝ドラでやってほしいくらい。深川に移転した「だいこん」がこれから
どうなるのか。
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ケン・フォレット 『第三双生児』

2013-01-24 | 海外作家 ハ
ケン・フォレットは、今まで出された作品の全部を読みたいと思わせて
くれる、好きな作家のひとりで、とはいっても、相変らずダラダラと他の
作品に手を伸ばしてしまい、全部読むのは遠い未来。

舞台はアメリカのボルティモア、ジョーンズ・フォールズ大学。
ここで、体育館のボヤ騒ぎの中、大学職員が何者かに暴行されます。

大学助教授のジニーは、襲われたリサを発見、病院に連れて行きますが、
警察の取調べも、病院の医者も、被害者の心の傷をさらに深めるような
言葉で、ジニーは怒り心頭。

さて、ジニーは大学で遺伝の研究をしていて、「犯罪の遺伝」をテーマに、
別々に育てられた同じ遺伝子を持つ双子が、片方が犯罪者でもう片方が真っ
当に暮らしている、といったケースを調べます。

そこに呼ばれたのがスティーヴという青年。彼は現在ロースクールに通う、
「真っ当な暮らし」の好青年で、ジニーは、自分が開発したシステムにより
スティーヴがじつは双子で、どういった経緯か別々の家庭に養子に出され、
しかも、その双子の片方は、殺人で刑務所にいることを発見します。

そこに、ジニーを大学に紹介してくれたベリントン教授が研究室に入って来る
なり、驚愕の表情に。

なぜスティーヴを見て驚くのか、聞いてもあやふやな答えで、その場はまあ
いいか、とスティーヴは帰ろうとしたのですが、なんと警察が彼を取り囲み、
リサへの暴行容疑で捕まるのです。

全く身に覚えのないスティーヴ。しかし、リサが面通しをしたとき、間違いなく
あの男です、と・・・

ジニーは、スティーヴがリサを襲った犯人だとは信じられませんが、とりあえず
スティーヴの双子の片方に会いに刑務所へ。そこに現れたのは彼に瓜二つ。
狡猾で暴力的で、性格は真逆。しかし、これでジニーの研究していることが正しい
ということになれば、好青年のスティーヴも、生まれながらに犯罪者になる性質を
持っているのか・・・

スティーヴは無罪を証明しようと、DNA検査をしてほしいと訴えます。が、検査の
結果、リサから検出されたDNAは間違いなくスティーヴのもの。

ジニーはさらに調べを進めていくと、スティーブも双子の片方も、父親が軍関連の
仕事をしていて、同じ病院で生まれていたことがわかりますが、そこに、彼ら双子
と同じ遺伝子を持つ青年が別にもう1人いることが分かります。

その「三つ子」を探そうとしているところに、なんと新聞社がジニーの開発した
システムをプライバシーの侵害だと記事にして、これを重く見た大学側は彼女を
クビにしようと・・・

ベリントン教授と上院議員、それに「ジェネティコ」という会社の社長の3人は、
何かを企んでいるのですが、それはとんでもない陰謀で・・

例の「三つ子」に会いに行くジニー。彼もスティーヴと瓜二つで、真犯人はこいつ、
と思ったのですが完全なアリバイがあり、もうわけがわからなくなっているとき、
仮釈放中のスティーヴに襲われて・・・

途中「えっ」と、さらに「ええっ」となり、ラストには「えええっ」となる、
もう読み始めたら止まらない驚きの連続。

母親が痴呆で、もっと上等な施設に移してあげようにも、助教授の給料ではどうに
もならない、父親は泥棒で収監中、少女時代にパンクに走って鼻にピアスを開けて
テニスが上手くて大学はスポーツ奨学生で入学、ただ今29歳、というジニー。
複雑な謎解きの中に彼女のバックグラウンドも詳細に盛り込んで、ほかのキャラ設定
もお見事。
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山本一力 『背負い富士』

2013-01-20 | 日本人作家 や
山本一力の作品は、市井の人々が主人公が多いのですが、たまに実在の
歴史上の人物(紀伊国屋文左衛門とか田沼意次)も出たりします。が、
この『背負い富士』は、なんと清水次郎長が主人公。

今まで次郎長の作品は映画、小説、講談や浪曲など数知れず、でも大抵
は、一家を構えてからの武勇伝で、『背負い富士』は、誕生から少年時代
のあたりにフォーカスしていて、さらに、次郎長と無二の親友にして一家の
頭脳的存在だった音吉の回想という形式になっていて面白いですね。

江戸末期、今の静岡県、駿河国の清水湊に「雲不見の旦那」こと美濃輪屋
三右衛門の家に男の子が産まれます。名前を長五郎、この男の子が後の
街道一の大親分になるわけです。

「元日生まれは騒動を引き起こす、不吉な星」という言い伝えがあり、この
迷信によって、のちのち苦しめられることになるのですが、それはさておき、
同じ清水湊の美濃輪屋の近所の魚屋でも、元日に男の子が産まれます。
その子の名前は音吉。次郎長と運命をともにすることになります。

美濃輪屋の菩提寺、梅蔭寺の住職はこの地域のよろず相談といいますか、とても
頼りにされていて、次郎長も何かとお世話になって、「清水の次郎長」という
二つ名を命名してもらったのも、この住職ということになっています。
さらに、次郎長のお墓もこのお寺に。

住職は、長五郎をとても利発な子と見抜き、このまま親元で暮らせば家も本人も
潰れてしまう、と聞いた三右衛門は、長五郎を妻の弟、山本次郎八が営む米屋に
養子に出すことに。浪曲でお馴染み「本名、山本長五郎」となります。

で、この米屋「甲田屋」の隣が音吉の魚屋で、親交を深めることに。

長五郎は、甲田屋の仲仕、源次郎から相撲の稽古をつけてもらい、また、彼が
かつて働いていた江戸の話を聞いて、江戸への憧れを強く持ちます。

やがて元服し、大人になる長五郎ですが、この頃、義父の次郎八が米相場で
大儲けをし、それまで真面目だったのですが人が変わって遊び呆けるように
なります。
母もしじゅう不機嫌で、次男坊の長五郎は家にいてもやることがなく、江戸に
出る決意をします。
母と源次郎も、若旦那が家出すれば、遊んでばかりいる旦那にもいい薬になる
といって協力してくれて、父のお金、なんと四百五十二両という大金を”くすねて”
音吉とふたりで江戸へ。

江戸で見聞を広めて帰ってきた長五郎は、父親から勘当を言い渡されます。
その頃には次郎八も改心して真面目になっていたのですが、息子が親の金を
くすねて江戸に出て行ったとあれば、さすがに世間の目をごまかすことは
できず、建前上、ということで勘当することに。
しかし実際は、くすねた金の残り全額を渡し、浜松の米相場で金を増やして
耳をそろえて返せ、出来なければ本当に勘当する、ということだったのです。

というわけで音吉と長五郎は浜松へ。そこで、空見(天気を当てる)や、足の
早い男、乗馬の達人、狼煙の名人、籾殻の目利きなど7人の仲間を味方にして、
米相場で大儲けします。

さて、浜松へ向かう途中、森という小さな宿場で、ある少年が川に落ちた小さな
子を助けに飛び込みます。それを見ていた長五郎は助けを手伝います。その少年
の名前は石松、そう、「寿司を食いねえ、酒飲みねえ」でお馴染み、森の石松。

そして、清水に戻り、梅蔭寺の住職に「清水次郎長(次郎八の子供の長五郎)」
とい二つ名を命名してもらって、ここに清水次郎長一家の誕生となります。

家を立ち上げた当初は、次郎長親分に音吉、部屋住みの石松だけしかいなかった
のですが、やがて大政など十数人が子分にしてくれと集まります。

ここから先は、浪曲「清水次郎長外伝」の金比羅代参、三十石船、お蝶の焼香場、
都鳥一家、追分の仇討ち、などなど有名な話が出てきて、やがて時代は明治に。

これまでの話を、次郎長に先立たれて、今は清水港の時計台のゼンマイを毎日巻く
のが日課の音吉老人が、東京から訪ねてきたふたりの男に話して聞かせる、という
構成になっています。

読み終わったあとに、無性に二代目・広沢虎造の浪曲が聴きたくなります。


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大沢在昌 『灰夜』

2013-01-15 | 日本人作家 あ
「新宿鮫」シリーズも、ようやく7作目まで読み終えました。
今作では、舞台は新宿ではなく、舞台は九州の”某市”となって
います。文中でのざっとした説明で、まあだいたいあの県の県庁
所在地だなとは想像がつきます。

のっけから、鮫島はどこか山奥の檻の中に監禁されています。
警察手帳も財布もありません。一体何が起きたのか。

ところで、なぜ鮫島が九州に行ったのかというと、自殺した元同僚、
宮本の七回忌法要があるため。この宮本、鮫島が警視庁の”飼い殺し”
になった原因というか一因の、警察機構の根幹を揺るがすスキャンダル
が書かれた文書を鮫島に託した、過去の作品に名前だけはたびたび登場
していた、公安部のキャリア。

寺には、宮本の両親、そして未亡人、さらに地元の友人とおぼしき2人
の男性が。古山は宮本の小学校からの友人で、木藤は高校時代の友人。
古山は鮫島に親しみを込めて話しかけてくるのですが、木藤はきつい
視線を送るだけ。どうやら、宮本を死に追いやった警視庁の回し者と
思われているよう。

その後、食事の席で(木藤は仕事で帰った)、古川に「鮫島さんに
ぜひとも会いたいといってる人がいる」と言われます。
”その人”が経営するバーに行ってみると、”その人”とは古山の妹。
古山はこの街で手広くビジネスをしていて、このバーも経営は妹の栞
がやっているのですが、資金は兄が出したもの。

栞は、宮本が上京する前に交際していた女性で、しかしおおっぴらには
できない事情があります。それは、古山は在日朝鮮人で、しかも北の出身
ということで、父、宮本は差別的な意識はまったく無かったのですが、
警視庁キャリアで公安部となると、北出身はむしろ監視対象で、交際して
いる、ましてや結婚ともなれば、間違いなくその後の警察人生を棒に振る
ことに。

そこで、いろいろと宮本に関する話などをして、そのあと古山(兄のほう)
と飲みに出かける、その前のことなのですが、宿泊するホテルのロビーで
鮫島はある男に話しかけられます。寺澤と名乗る男は福岡の麻薬取締官で、
鮫島が警察官と知ると、北朝鮮から麻薬を密輸している福岡のヤクザが古山
と会っていたことで、”麻取”は古山をマークしている、と教えてくれます。

何か怪しいことがあれば連絡してください、と寺澤は鮫島に連絡先を教えます。

さて、古山と飲みに行ったのですが、これといって怪しい様子もなく、数件
”はしご”をしているとき、上原という地元の警官と出くわします。
店ではかなり嫌われてる様子で、「つけ回し」という、自分は勘定を払わずに
他の誰かに払わせてタダ酒を飲んで、傍若無人な振る舞いをします。

そんな嫌なこともありつつホテルに帰って、寺澤に連絡を取ろうとしますが
留守電で、そのうちウトウトとした鮫島は、部屋のドアをノックして「寺澤
の使い」とい声を聞いてドアを開けた瞬間、襲われて・・・

どうして監禁などされているのか鮫島はまったく分かりません。しかもこの檻、
獣の臭いがしています。前にどうぶつが飼われていたのか。
すると、鉄砲を持った男がやって来て、檻を開けようとしますが途中でやめて
どこかに行ってしまいます。しかし途中まで開けたので、そこから鮫島はどう
にかこじ開けて、脱出します。

するとそこに栞が車でかけつけます。兄から電話があって、鮫島さんが監禁
されているので助けに行ってくれ、と頼まれたそうなのですが・・・

警視庁の公安が地元の警察に頼んで鮫島を監禁したのか、まさかそこまで
するとは考えられません。では、寺澤の話していた福岡のヤクザ・・・?
それも、この地元は別の組が強いので福岡の組は入ってきていない、と
聞いていたので、それも違う。では何者がどうして・・・

古山と連絡が取れて、何者かと折衝して鮫島を開放するように頼んだことが
分かります。しかし古山は「警察に話を持っていても無駄だ」と。
こんどは別の男から電話が。その男は鮫島に、はやく東京に帰れば、手帳や
財布は返す、と。

話を整理してみると、地元のヤクザ「鹿報会」が鮫島を監禁したらしいのです
が、それは福岡のヤクザ「十知会」の仕業にみせかけようとしたこと。
しかし、寺澤と接触したことが鹿報会にとって都合の悪いことなどなく、さらに
古山がいうには「間違えて」監禁してしまったようで、でも今はなぜかその古山
が鹿報会に囚われの身に。
そして、寺澤はどこに消えたのか・・・

この謎を解くため、鮫島は昨晩、古山と別れたあとの彼の行動を調べますが・・・

もう話がごっちゃごちゃに絡まってくんずほぐれつ、怒りや悲しみにふるえ、衝撃
のラスト。

ところで、鮫島は有給を”3日間”取っていて、1日は宮本の法要で九州に、残り
の2日は、恋人、晶と会おうとしていたのですが、今作では晶は全く登場しません。

宮本の文書の内容も気になるところですが、前作で鮫島と晶との関係がぎくしゃく
したままでその後どうなるのか。


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浅田次郎 『椿山課長の七日間』

2013-01-12 | 日本人作家 あ
このブログをはじめたのが4~5年前、それまでは本を読む習慣が
無く、年間にせいぜい1,2冊読めばいいほうだったのですが、その
頃、「あの小説が映画化」という情報を知ったりして、映画を観る前
に原作を読みたいなと思っても、書店に平積みされた本を手にすると
ミーハーみたいに思われるのがちょっとイヤだった(ただの被害妄想)
のですが、まあ最近はそんなことはどうでもいいので、手当たり次第に
まだ読んでない作品を読みふけっております。

映像化される作品が多ければ良い小説家というのは根拠がありませんが、
逆に言うとつまらない作品は映像関係の人は見向きもしないので、なんでも
いいから小説を読んでみたいという人には、とりあえず映画・ドラマ化した
原作から読んでみる、そういう指標もアリですよね。

都内のデパートに勤務する椿山。肩書きは課長。高卒入社では比較的早い
出世ですが、今の上司は大卒入社のかつての後輩。
婦人服売り場の担当ということは、いわばデパートの花形で、椿山は、
恒例のバーゲン企画に奔走します。

バーゲン初日は売り上げ好調で、その夜、業者との食事に出かけた椿山は、
突然体調を崩し、そのまま意識が・・・

気がつくと、なにやら気持ちの良い場所を歩いています。しかし、自分を
含めて、みんな”どこかに向かって”います。
たどり着いた場所は、役所か学校みたいな建物。そこで椿山は、自分が死んだ
と悟るのです。

しかし、バーゲンの売り上げは?それよりも、自分がいなかったら婦人服売り場
はどうなる?あの部長じゃダメだ・・・
それよりも、妻と息子、それとボケて施設に入所している父は・・・

最近の「冥土」は、よほどのことがない限りは地獄行きは免れるそうで、椿山は
ストレートに極楽に行けると思いきや、講習を受けろと言われます。
その講習とは「生前、邪淫に溺れた人」が受けなければいけないのですが、彼には
まったく身に覚えがありません。

しかし、その講習で、椿山は、デパートの同期入社で佐伯知子という女性と、長い
間つかず離れず、いわば「都合のいい関係」で、それはお互い承知の上だったのに、
それが「邪淫」と判定されたと知るのですが、納得できず、椿山は講習を終えても、
悔い改めれば極楽に行ける”反省ボタン”を押そうとしません。

この役所では、「相応の理由」があれば、死んだ日から数えて七日間だけ生前の
世界に戻れるシステムがあり、椿山はお願いします。
自分の他にも、少年と、カタギには見えない中年。この3人が「生き返る」ことに
なるのですが、生前の自分とは真逆の人間という設定にさせられます。
しかしこれには厳しい条件が。復讐の禁止、正体を名乗るのも禁止、さらに、時間
厳守。「死んだ日から数えて七日間」ということで、ご臨終から葬式その他もろもろ
あって、残り時間は3日だけ。

椿山は、30代後半のすごい美人、フリーのスタイリストに。名前は仮名で「カズヤマ
ツバキ」にします。

自分がこの世にやり残したこと、バーゲンの最終売り上げを知ること、家族のこと、
それと、自分が「邪淫」の烙印を押された佐伯知子との真相を知ること。
しかし椿山は、知らなければよかったという”事実”を知ってしまい・・・

いっしょに生き返った中年の武田は、生前はヤクザで、薄れゆく意識の中でハッキリ
と覚えているのは、自分は人違いで殺されたということ。
「ひゃー、あかん、人違いや、まちがっていてもうた」
発泡した男は、関西弁で叫びます。武田は関西系のヤクザはおろか、誰からも恨まれる
ようなことはしておらず、殺される直前にいっしょに食事をしていた兄弟分の3人のう
ちの誰なのか、武田は調べることに。

それと、残してきた子分たちのその後も気になります。

もうひとり、生き返った少年は、なんの目的で「相応の理由」で戻ってきたのか・・・

読んでる途中からもう涙、涙です。ヤクザである武田の話は、浅田次郎の本領発揮
といったところでしょうか。

いろんなエピソードを織り交ぜて、それらが最終的にきちんとまとまった話になる、
この人の作品を読めば読むほど、プロデュース能力に感心します。
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スタンダール 『赤と黒』

2013-01-10 | 海外作家 サ
この年末年始、ほんとうはこの『赤と黒』を読む予定だったのですが、
上巻を読み終わって、下巻に読み進む意欲というか元気がなくて、他の
本を手にしてしまい、それが読み終わって、このままじゃいかん、と
半ば義務のように下巻を読み始めた次第。

文庫の上下巻にして約800ページ、まあ「長編」の部類には入りますが
今までもっと長い作品を読んだこともありますし、何が途中で読む気力
を萎えさせたか。

身も蓋もない言い方をすれば、800ページのうち、300ページ分くらいは
「別にいらない」ような描写とでもいいましょうか。この時代の小説って
多いですよね。

フランスの片田舎の、材木屋ソレルの家に生まれたジュリヤン。幼い頃から
本を読みふけり、ラテン語の詩を暗記しますが、体は細く色白で、親父から
は忌み嫌われています。
このジュリヤン、親の職業や片田舎での生活を憎み、いつか自分はものすごい
出世してやる、と燃えています。

そんなジュリヤンですが、村の有力者レーナル氏の子供の家庭教師になる
ことに。
はじめこそ、良き家庭教師ぶりで、レーナル氏も高く買っていたのですが、
はじめてレーナル婦人を見た日から一目惚れをしてしまい、その想いはつの
る一方、そして夫人のほうも、この美少年に次第に惹かれていって、とうと
うふたりは恋仲に。

しかしこんな秘密の関係がいつまでもバレないでいることはなく、やがて
知れ渡ってしまい、ジュリヤンを家庭教師に斡旋した神父は、彼をブザンソン
という都会にある神学校に入れます。

神学校に入ったジュリヤンですが、学生たちは自分と変わらない境遇で育って
きた若者ばかり、つまり「片田舎の百姓のせがれ」で、ジュリヤンは彼らを内心
蔑み、なまじ勉強ができるばっかりに、ジュリヤンも他の学生たちから嫌われま
すが、学校長は彼を、性格に難はあるものの高く評価し、ラテン語の教師に昇格
させ、徐々に学生たちからの尊敬を勝ち取っていきます。

ところが、このブザンソンにレーナル婦人が来ていることを知ってしまい、なん
とかして会いますが、あのことは後悔していると冷たい夫人。
いてもたってもいられなくなったジュリヤンは、故郷の田舎に戻って、夜中に
レーナル亭に侵入、夫人と”よりを戻そう”としますが・・・

故郷にもブザンソンにもいられなくなったジュリヤン。しかし学校長の計らいで、
パリのラ・モール侯爵の秘書になることに。
秘書といっても実質は召使で、粗末な服で夕食やサロンに出席します。
しかし、侯爵の息子とは折り合いが良くいっていますが、娘のマチルドが、侯爵
令嬢を鼻にかけた高慢ちきな女で、はじめこそジュリヤンのことをたんなる召使
としてしか思っていなかったのですが、彼の怜悧な部分や明晰さに段々と興味を
覚え、いつの日かジュリヤンを好きになってしまっていたのです。

急いては事を仕損じる、の教訓のとおり、ジュリヤンはマチルドに対して”焦らし
作戦”に出ます。
先述した「別にいらない描写」とは、まさにこの部分。ああでもないこうでもない
で読み進めるのがちょっと辛いほど。

それはさておき、とうとうマチルドはジュリヤンを”未来の夫”と決めて(といって
もジュリヤンのほうも彼女の美しい目にけっこうやられていたわけですが)、父の
侯爵の許す前になんとマチルドは妊娠。

娘は身分の高い夫人にさせたかった侯爵は激怒。しかし、娘の一本気な性格上、別れ
させるといったら何をしでかすかわからず、それになんといっても娘には弱い父親。
というわけで、パリから出て行かせるかわりに、田舎の材木屋の息子で貧乏神学生じゃ
体裁が悪いので、ジュリヤンに、ストラスブールの軍隊に行け、と。

ここでジュリヤンは、騎兵隊中尉に任命、ラ・ヴェルネー従男爵という地位に就きます。
ラ・モール侯爵の領地(別荘)で、愛する妻マチルドと、生まれてくる子と仲睦まじく
暮らして、と思っていた矢先、侯爵のもとにレーナル夫人からの手紙が・・・

時代は、フランス革命から恐怖政治、ナポレオンの登場から失脚、そして王政復古、
ちょうどこのあたりで、ジュリヤンはナポレオンの信望者ですが、土地の有力者、
神学校や神父、さらに爵位を持つ家の人たちの前ではおおっぴらに公言できません。
というのは、いわばナポレオンの時代は下克上といいますか、軍の砲兵が皇帝にまで
なっちゃったわけですから、再び”古き良き時代”の恩恵を受けている富裕層には、
ジュリヤンのような貧しい出から、また財産を奪われかねないので、ナポレオン信仰
は、つまり危険思想的なものだったわけですね。

ちなみに「赤と黒」とは、僧侶の服である黒と軍人の服である赤。まあ最終的に
ジュリヤンはどちらでも大成することはなかったわけですが、彼のブルジョア層
に対する恨み辛み、でも出世の糸口と見るやそこに溶け込もうと奮闘努力し、じつ
は憧れも抱いていたという心理も垣間見せたり、じっさい読み終わってみたら、
読み進めることが辛いと感じていたことが(自分の読解力の無さは棚に上げて)、
ジュリヤンの苦悩と重ねることによって、有意義だったと思うことに。
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佐々木譲 『警官の血』

2013-01-05 | 日本人作家 さ
昨年は、こんな素人書評の駄文にお付き合いいただきまして、
ありがとうございました。

さて、年末年始にテレビを見ることがめっきり少なくなってきた
昨今、面白い本を読んで過ごしましょう、ということで、5年前
くらいでしょうか、かなり話題になった『警官の血』を、ようやく
読むことに。

話の舞台は、戦後間もない東京の下町からはじまります。安城清二
は、日雇いの仕事から疲れて家に帰ると、妻から「赤ちゃんができた
みたい」と告げられます。

安定した職に就きたいと思っていた清二は、警察官になると決めます。
さっそく地元の警察署に行って、面接と試験を受けて、合格。
警察練習所での訓練を経て、清二は上野警察署の外勤係に配属が決ま
ります。

そこで、一家は谷中に引っ越すことに。

上野公園前派出所に勤務となった清二。公園には、戦争孤児や浮浪者
の吹き溜まりと化しています。そんな中、清二は数人の浮浪者と交流
を持つことになります。ひとりは、浮浪者の男娼グループに属してい
る「ミドリ」。
もうひとりは、中年の浮浪者で、かなり学があり、仲間から「先生」と
呼ばれている原田。

ある日、ミドリが死んでいるところを発見されます。数日前に清二が
見かけたときは顔にアザがあり、ちょっとしたトラブル程度と思って
いたのですが・・・

しかし、清二は浮浪者ひとりの事件にかかりきりというわけにはいかず、
この当時は、朝鮮戦争では北が優勢で、日本では血のメーデーが起こった
り、左翼運動が活発になるのでは、という警戒感が強かったのです。

さて、清二は、上野署に勤務しているときに、凶悪犯を逮捕した功績で、
谷中にある天王寺駐在所に異動を願い出ます。
子どもは2人いて、前から妻と「駐在所のお巡りさんがいい」などと話し
ていて、ようやくその希望がかないます。

近所でヒロポン中毒の男が暴れたり、少年の万引き犯を説教したり、
国鉄に勤めていた少年が死んだりと、何かと忙しい日々。

ある夜、駐在所の裏にある墓地のほうで火の手があがり、五重の塔が燃
えています。現場の野次馬整理に奔走する清二。するとそこに、ある男
の顔が清二の目にとまります。

男は現場を離れ、そのあとを付いていく清二でしたが・・・

ここで、第一部の終了。
清二は、火災現場から離れた場所で、死体になって発見されます。

さて、長男の民雄は、成績が優秀でしたが、父が事故死してしまい、
さらに、火災現場から離れたという理由で、特進にはならず、進学を
あきらめかけていたところ、父の警察練習所の同期たちが援助してく
れて高校に通います。そこでも優秀で、国立大も余裕だったのですが、
民雄は、高卒で警官になる、と告げます。

民雄は採用試験に受かり、警視庁警察学校に入学するのですが、そこで
なぜか公安部の警視の前で面接を受けさせられます。
なんと、民雄に身分は巡査のままで、警視庁のお金で大学に通わないか、
というのです・・・

しかしその実態は、当時日本じゅうの大学に巻き起こっていた学生運動
の、ようは”スパイ”となって、大学生となって潜伏しろ、ということ
だったのです。
かくして北海道大学の学生となった民雄。

大学内で、”赤軍派”やら”ブント”の活動を見張り、公安部に報告を
続ける民雄。
近いうちに、佐藤栄作首相の訪米阻止の大規模な過激運動が起こりそう
との情報を得て、さらに民雄は、ブントの学生に声をかけられ、参加を
求められます。
どこかの山荘で、日本中の学生が集まって、なにやら訓練をするらしく、
民雄はこれに同行することに。そして逐一報告も。

そして、民雄は、仲間の目をかいくぐり、どうにか詳細の書かれた紙を
見ず知らずの登山者に渡します。そのあと機動隊が突入し、一斉逮捕。
民雄は、これで過酷な任務から解かれると思っていたのですが、公安は、
まだもうしばらく続けて欲しい、と。
「僕は親父の様な駐在警官になるのが夢」と訴える民雄。

そのうち、公安のスパイを続けているうちに、心が潰れてしまいます。
治療を受け、これ以上は続けられないとドクターストップがかかり、
これでようやく制服警官になれると安堵する民雄。
その間に、病院の看護婦と仲良くなり、のちに結婚することに。

と、その頃、民雄は、父の同期だった窪田と病院でばったり再会します。
自然と父・清二の話になり、そこで窪田から、上野で起きたオカマさん殺し
、谷中の近所であった少年鉄道員殺し、このふたつの事件を清二はずっと
追っていた、と聞かされ・・・

はたしてふたつの事件の接点は、そして、それが父の死の原因なのか。
父と交流のあった「先生」を探したり、いろいろ調べたり聞いたりします
が、謎は深まるばかり。

民雄は、ふたたび谷中の地に戻ることに。かつて住んでいた、天王寺
派出所の駐在警官になります。
ところが、近所で立てこもり事件が発生、犯人は銃を持って、女の子を
人質に。部屋に突入する民雄でしたが・・・

と、ここで第二部の終了。次は民雄の息子、和也が第三部の主人公に。
和也にとっての祖父、清二の謎の死はなんだったのか。2代そろって殉職
(清二は殉職扱いにはならなかった)し、3代目も警官の道へ。
和也の体に受け継がれる、タイトルの「警官の血」という意味が、第三部に
なって「ええっ!?」という驚きとともに、分かることになります。

戦後の昭和史のおもな出来事を随所に散りばめられ、もちろん安城の三世代も
これらに深く関わっていて面白いですね。
久しぶりに読んだ、重厚な作品でした。
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