晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

津本陽 『深重の海』

2024-07-26 | 日本人作家 た
暑いですね。そういえば去年ですか、けっこう安いひんやり敷きパッドをオンラインショップで購入したのですが、それで寝てもあまりひんやりしないので使ってなかったのですが九月に入って涼しくなってきてその敷きパッドを使ったらものすごい快眠できたのです。今年もその敷きパッドはいちばん暑い時期には使用せず涼しくなったら使う予定です。なんか違うような気がしますがまあいいです。

以上、買い物失敗とは認めません。

さて、津本陽さん。宇江佐真理さんの「深尾くれない」だったと記憶してるのですが、あとがきでこの歴史上の人物を描くのにふさわしいのは津本陽さんかな、みたいなことが書いてあったような。機会があったら読んでみたいなと思いつつ、はじめて読みました。この作品は直木賞受賞作。

江戸時代が終わって明治という新しい元号になって十年ちょっと、紀伊半島の南東にある太地村はまさに「陸の孤島」で人口三千人が肩寄せ合ってくらす漁村。年間に収穫できる米はおよそ百石ほどで、村民の主な現金収入は鯨漁。かつては鯨が大漁で、今でいう漁協の代表である鯨方棟梁の和田家は井原西鶴の「日本永代蔵」に日本十大分限者(資産家)のひとりとして書かれたほどですが、ここ最近は不漁で鯨が獲れず、和田家は金策に走り回り、北海道に鯨がいっぱいいるよと聞いて休漁期に出稼ぎに北海道に行くための資金を調達しようと必死ですが貸してくれる相手はなかなか見つかりません。

まだこの当時の鯨漁は、そこまで大きくはない木造の小舟二十艘ほどで鯨の周囲に向かっていき、銛を何本も打って(そのうち、急所を狙う)血抜きをして陸まで引っ張って、といった命がけの漁。ダンプカーにママチャリで勝負を挑むようなもの。それでも1頭仕留めれば二〜三千円になるのでまさに一攫千金。今で言う大間の本マグロ漁みたいですね。この紀伊半島の南部の沖には黒潮が流れていて、沖まで出て海流に乗ってしまうと人力で解するのは難しく、そのまま駿河、伊豆方面に流されてしまいます。

しばらく鯨が獲れない期間が続いて、ようやく群れを見つけて、よっしゃーと沖に出て格闘の末に仕留めたのですが気がついたら黒潮に乗ってしまい、せっかく仕留めた鯨をリリースしてしまい何十人も亡くなるという海難事故が発生してしまいます。なんとか生き残って帰ってきた者もいたのですが、なんと伊豆諸島の神津島まで流されます。
一方、金策チームは東京へ出て大金持ちを紹介してもらうのですが、じつはここ近年の鯨の不漁は、欧米の捕鯨船が日本近海まで来てゴッソリ取っていく、ということを知って・・・

江戸から明治に時代が変わる大転換期で、それまでのスタイルが全く通用しなくなり、文明開化という言葉の下でいかに多くの「文化」が滅んでいったか。百年後の人間が「古い文化の滅亡はいわば必然でうんぬんかんぬん」といってもその真っ只中にいた人たちにとってはまさに生きるか死ぬかであって、なんといいますか、ひとつの文化の消滅は「滅びの美学」とはまたちょっと違うんですが、この物語の漁師たちの全力で死に向かって生きているそのパワーはビシビシ伝わってくるようでした。
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ケイト・モートン 『湖畔荘』

2024-07-14 | 海外作家 マ
先月の投稿が一冊だけで、あんまり本を読めてません。それに加えて関東南部ではまだ梅雨も終わってないというのに暑苦しい日が続いてくたばっております。「梅雨寒」とか「冷夏」なんて言葉はもう今後は無いのでしょうかね。まだ人生で一度も夏バテというのを経験したことがないのはラッキーというかありがたいですが、今後もならないとは言い切れませんからね。気をつけます。

以上、クーラーをつけましょう。

さて、ケイト・モートン。オーストラリア出身の作家さんでデビューから現在まで7作品、うち日本語訳されて日本で出版されたのが4作品。これで日本語訳された作品は全部読みました。原文でもいいんですが、さすがに原文を読む気力も知力もありません。

話は1933年、イギリスのコーンウォールからはじまります。湖畔荘と呼ばれる屋敷に、エダヴェイン家が住んでいて、父アンソニー、母エレナ、長女のデボラ、次女のアリス、三女のクレメンタイン、そして長男のセオ。もともとエレナの家系はコーンウォールの名士で、湖畔荘もエレナの家系の所有。

時代はだいぶ進んで2003年、ロンドン警視庁の刑事、セイディ・スパロウは休暇で祖父の住むコーンウォールにいます。じつはセイディは幼い女の子が行方不明になった事件で新聞記者に情報をリークしてしまい、上層部はリークした人物を探していますが、セイディの上司は気づいて「しばらくどこかに行ってろ」というわけで、祖父には休暇とウソをついてしばらくいることに。ある日、犬の散歩で森の中に入っていくと、湖沿いに長い間放置されてたと思われるお屋敷を見つけます。そのことを家に帰って祖父に告げるとエダヴェイン家の地所でローアンネス(コーンウォール方言で「湖の家」)だと教えてもらい、さらにあの家でだいぶ昔に赤ちゃんが行方不明になったという事件があったと聞かされます。
セイディは地元の図書館へ行くと、展示コーナーにミステリ作家アリス・エダヴェインの作品がずらりとあって「地元出身の作家、新作間近」と書かれたポスターを目にします。

話は変わって2003年のロンドン、ミステリ作家のアリス・エダヴェインの家に手紙が届きます。差出人はスパロウという名の警察官、じつはアリスのファンの中には現役の警官が多く、はじめはファンレターと思ったのですが、内容は1930年代のコーンウォールのお屋敷で起きた未解決事件に関するもの。
セイディは1930年代にローアンネスで起きた「事件」を調べます。それは、あの屋敷でパーティーがあった夜、家に戻るとまだ1歳になってない赤ん坊のセオがベッドからいなくなっていて、当時は警察も大々的に捜索をしたのですが見つからなかった、というのです。

その事件の捜索に加わった元警官がコーンウォールにまだ住んでいると聞いたセイディは連絡を取って家に行きます。セイディも幼い女の子が行方不明の未解決事件に深く関わっていたこともあってか、70年前の事件が気になっています。はたして70年前の事件の真相とは・・・

単行本(上下巻)で読んだのですが、上巻がなかなか読み進められなくて、ケイト・モートンの作品に共通する現在と過去がいったりきたりする展開が今回は途中で頭がこんがらがってしまって、じっさいかなり複雑な構成になってまして上巻を読み終わるまでだいぶ時間がかかってしまいましたが、下巻に入っていろいろな謎がわかってきてからはサーッと読み進めることができました。そして終盤になってきて、なんといいますか、あくまでこちらの勝手なイメージですが、なんかディケンズっぽいな、と思ってしまいました。もちろんいい意味で。
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