晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

半村良 『江戸打入り』

2021-03-27 | 日本人作家 は
今月はけっこう投稿しています。学校は現在は「履修期間外」ということで、まあ世間でいう春休みですか、その間にできるだけたくさん本を読んでしまおうというわけ。

といったわけで、半村良さん。

まずはこのタイトル、文庫の表紙は野武士集団のよう、とくれば「ははあ、これは盗賊ものか」なんて思ったのですが、全く違いました。

戦国時代も末期、三河の足助(現在の豊田市)に鈴木という家があり、なんでも古くは鎌倉時代、南北朝時代にまで遡る家系で、このころは家康の徳川家の分家の松平家の雑兵(足軽)。この家の唯一の男子、金七郎は、名前のとおり、七番目。上に六人の兄がいたのですが、みな戦死か病死。金七は炭焼きや柴刈りをして、金七の兄の未亡人たちは機織りや針仕事をしています。

そんな金七に、出兵の召集が。なんでも太閤殿下の秀吉が小田原の北条と戦をすることになったのです。家にいる女たちは「金七が最後の男だから、せめて危険の少ない夫丸(物資や食料を運ぶ人たち)か足軽で」といって、馬に乗って刀や槍を持つ戦闘員ではなく後方支援部隊として参戦します。

叔父の銀兵衛から「金七は普請組と作事組の小荷駄の護衛だ」と言われ、普請組や作事組とは何をするのかと聞けば、秀吉の使う仮設の茶室や館を作るというのです。

さて、東海道中の金谷に、鋳物の名人がいて、その家に火をつけようとしている者を金七らはやっつけます。翌朝、立派な恰好の騎馬武者がやって来て「昨日、鋳物師を襲った素破(忍者)をやっつけたのはお前らか」と褒められ、雑兵の中であいさつがきちんとできて字も書ける金七を認めて取り立てられます。

いつの間にか足軽の組頭になった金七は、富士川を渡るのに舟を並べてその上に竹簾を敷いた舟橋を造る作業を任されたりして、なんだかんだで小田原に到着。そこで金七が受け持ったのが、酒匂川の河口近く、つまり海寄りの辺り。しかしどうにも気になるのが、味方の陣地の配置が、まるで金七ら徳川軍を背後からいつでも攻撃してやるといった感じがしたのです。というのも、そもそも家康は北条と姻戚関係があるというのもあって、秀吉サイドからは完全には信用されていませんでした。

そんな疑念を金七は上役に告げると、金七に偵察をさせることに。しかしそんな不安は解消。相手方の大将つまり太閤秀吉が家康の陣に乗り込んで飲めや歌え。

そんなこんなで難攻不落の小田原城に立てこもっていた北条勢は負けを認めます。これで故郷に帰れると喜んでいた金七らに、なにやら国替えがあるとの噂が。そして金七は上役に呼ばれ、そこで江戸に国替えになることを知らされるのです。

金七の住む三河や隣国の尾張はもちろんそれより西の国の人たちにとっては駿河の東、箱根より向こう側は未知の世界・・・

ちょうどこのころ、秀吉は「検地、刀狩」を制令します。つまり、それまでの平時は農民で、戦になれば鍬や鎌から槍や刀に持ち替えて参戦するといったスタイルから、武士は武士、農民は農民といった「兵農分離」の政策を推し進めます。金七の家はまさにこの武士と農民の中間のようなポジションで、江戸へ行って義姉たちを江戸に呼び寄せることになるのですが彼女らの生活はどうなることやら。
文中の説明で、「兵農分離」のせいで生まれたのが「侠客」つまり(やくざ)だというのです。普通は戦に駆り出されるというのは嫌なものですが、中には喜んで参戦したのもいたそうで、「明日からお前らは農民だけやってろ」といわれても納得できず、彼らは刀や槍のかわりに匕首(短刀)を持ち、領地のかわりにシマ(縄張り)をめぐって争うようになります。

この当時の江戸は現在の大都市・東京の様子とはだいぶ違って、現在の日比谷あたりは入江になっていて太田道灌が築いた当時の江戸城は海に面していました。ちなみに江戸城が海に面しているということはそれだけ敵に攻められやすいということなので、家康は天正十八年に江戸入りして早々に、名目上は「行徳の塩をスムーズに江戸城に運ぶため」といって江戸城から日本橋川へ(道三堀)という堀を通します。これの別の目的は日比谷入江を攻められたときに大川(現在の隅田川)に出て江戸湾に逃げるためといわれています。

金七らは入江の向こう側に行ってみて、現在の有楽町あたりの洲から新橋あたりの砂地の突端まで歩いて引き返します。文中では「おそらくこれが銀ブラの第一号だろう。だが、まだ東銀座の半分は海の中だ」という描写があって笑ってしまいました。

これも文中にあって「へえ」となったのが、東京の男の人が話す「それ俺のだわ」といったように語尾に「~わ」をつけるのは、もともと三河弁が発祥とのこと。
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ジェフリー・ディーヴァー 『ウォッチメイカー』

2021-03-20 | 日本人作家 た
緊急事態宣言の最中に「自粛疲れ」なる言葉を目にして、まあたしかにパーリーピーポーにとっては辛いのでしょうが、こちとら趣味は「読書と料理」で、休みの日はたいてい家で本を読んだり、自分でスコーンやパウンドケーキなど焼いて紅茶といっしょにいただきながらスポーツや園芸番組を観るといった英国文化圏のお年寄りのような生活をしているので、元来がインドア派(ステイホーム派って書いた方が時事ネタっぽいですかね)で、若い時はみんなで集まってワイワイとか人並みにしてましたが、だんだん年齢を重ねてくると一人でいたほうが気が楽でして、そう考えると読書という趣味はまさにうってつけ。

そんな話はさておき。

この本は10年くらい前に買ったもので、とりあえず本屋にあったリンカーン・ライムシリーズを買ってはみたもののじつはシリーズ7作目で、まだようやく3作か4作目を読み終えたばかりかそんな頃で、ちゃんと順番どおりに読もうとしてずっと読まずに置いてあったのですが、去年オンラインショップで買って、ちゃんと順番どおりに読んで、ようやく読めることに。
そういやこの前のブログでは「一気買いした」って書いたんですけど、これは別。まあどうでもいいですが。

ニューヨーク、ハドソン川の桟橋の突端に「何かがある」と管理人が見つけて近寄ってみると、そこには時計が。そして地面には血だまりが。桟橋の端にはひっかいた跡が。被害者は桟橋に必死にしがみついて力尽きて川に流されてしまったのか。そしてまだ別の現場から、口をテープでふさがれて仰向けにされ、金属の塊に喉を圧し潰されていた死体が発見されます。そして、そこにも時計が。時限爆弾などではなく、普通の時計。時計の下には、犯人のものと思われる手書きの紙が。

「冷たい月が満ちて地上の骸を照らし、誕生から始まる旅の終わりを告げている ウォッチメイカー」

リンカーン・ライムはこの事件の捜査をすることに。現場の鑑識はアメリア・サックスともうひとり、サックスの部下のロナルド・プラスキー。
サックスは別の事件の捜査をしていて、どちらかというとそちらの方に集中したい様子。その別件の捜査というのは、どうやら警官の汚職絡み。調べが進んでいくうちに、サックスの亡くなった父親が警官時代まで出来事まで話が遡り・・・

1件目の桟橋のほうは、遺体は見つからず、2件目の被害者の身元は判明、両方の現場にあった時計は、市内の時計屋で売られたもので、じつは同じ時計を10個売ったというのです。つまりこの後も殺人は続くということを意味しているのか。
とある工房にいた女性が耳慣れない音に気付きます。「チクタクチクタク・・・」時計?でもこんなところに時計なんて無いはず。忍び寄る犯人。ですがそこに警察が・・・

被害者たちの関連性はどうやら無さそうです。しかしこれらは計画性があって、場当たり的犯行ではありません。では犯人が次に狙うのは誰か。現場にある時計の意味とは。そして犯行の目的は。

今作も犯人が逮捕されたと思ったら別の展開が!そして思っていたことが違っていてさらに別の展開に!と、なかなか終わってくれません。もっとも、最初のビックリの段階で残りページがまだたっぷりあるので「ああこれはあれね、別の展開が待ち受けてるのね」と心の準備はできていましたが。

カリフォルニア州の捜査官で尋問のエキスパートというキャサリン・ダンスが初登場。あとがきによれば、彼女が主人公の作品もあるそうで、楽しみはまだまだ続きます。
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宇江佐真理 『糸車』

2021-03-16 | 日本人作家 あ
だいぶ遅咲きですが数年前にめでたく花粉症デビューし、去年なんかは目薬を一月で使い切ってしまうくらい酷かったのですが、今年はなぜかそこまで悪化はしていません。まああとは花粉の被害といえば我が家は三方が杉林に囲まれてまして、車のフロントガラスに中国の黄砂ばりに花粉が積もって大変。

はい。

ここ最近、宇江佐真理さんの作品ばっかり投稿しているような気もしますが、去年ですかね、オンラインショップで本を十冊ほど買ったときに、宇江佐真理さんの未読本をいっぱい買った記憶があるので、そのせいですね。

深川の長屋に住むお絹は、独り暮らし。蝦夷松前藩の家臣の妻でした。なぜ過去形なのかというと、夫は藩内のゴタゴタに巻き込まれて命を落とし、勇馬という息子がいたのですが、こちらは行方不明。お絹は息子を探すということで江戸へ出てきます。藩には身元引受になってもらったものの、さすがに長屋の店賃まで払ってもらうわけにもいかないので、お絹は小間物の行商をすることに。

行商の帰り、若い娘が男に絡まれているのを助け、話を聞くと娘は銚子の出で、結婚を約束してる同じ村出身の男が江戸で奉公していて、会いたい一心
で奉公先に行けば男は冷たい態度で、しかも話によれば後家の客といい仲だと・・・という「切り貼りの男」。

お絹はお得意先で山谷堀の船宿「初音屋」に行くと、お内儀が娘と喧嘩の最中。娘はぐれてしまって、実家から勘当されている男と付き合っています。息子の行方を捜してもらうよう頼んでいる町奉行の持田にこのことを相談しますが・・・という「青梅雨」。

行商で八丁堀の近くに来たお絹は、持田の家はこの近くにあるはずだとウロウロ。すると上品な武家の老婆が糸を買いたいと家にお邪魔することに。いろいろと話をしていると、息子は同心で、妻に先立たれて再婚せず、娘がふたりいてと、この家は持田の家で・・・という「釣忍」。

息子の行方がどうやら分かったようなのですが、いかがわしい商売をしていると聞き、お絹はショック。ある夜、お絹が寝ていると外から「母上・・・」と息子の声が。戸を開けると、そこには女装をした勇馬が・・・という「疑惑」。

藩から「息子の行方が分かったら必ず知らせるように」と言われていたのですが、口封じのために息子を取られてたまるかとお絹は応じず、なんと持田家の養子に。それとは別に、お絹の友達で茶屋で働くお君から相談があるというので聞くと、お君に縁談が・・・という「秋明菊」。

持田が勇馬を養子にしたのは、義父がお絹と再婚したいからだと知り複雑な心境。そんなときに松前藩が国替えとなり、勇馬に縁組の話が。なんと勇馬は持田の養子話を断って、新しい藩に行きたいというではありませんか。お絹はどうしていいかわからず、同じ長屋に住む占い師に見てもらうと・・・という表題作の「糸車」。

いちおう短編形式になってはいますが、同じ話です。あとがきによれば宇江佐真理さんは故郷、松前藩を題材にした作品をいくつか書かれているようで、それはまだ読んだことがありませんので、楽しみ。
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半村良 『獄門首』

2021-03-13 | 日本人作家 は
当ブログは「本好き素人の書評ブログ」ですので、あまりプライベートなことは書かないのですが、先日、差し歯が取れてしまいまして、それも上の前歯。鏡の前で「にっ」と笑うとそこには歯抜けジジイが。現在歯医者さんに通院治療中ですので、次の予約日までだいぶありますが、まあ特に痛くもありませんし。いやあ、マスクするのが当たり前の世の中で本当に良かったですよ。

さて、そんなこんなで。

半村良さんです。この作品は、完結していません。つまり未完。

街道のとある宿場町に夫婦がいて、そばいる男の子に「余助、おとなしくしてるんだぞ」と声を掛けます。この夫婦の子のよう。すると夫婦は山道で、なんと人を殺し、金を盗みます。
この親子三人は、名古屋に着き、この地域を取り仕切っている親分のもとに挨拶をし、空き家を探してもらって、春になるまで住むことに。余助という子が外に遊びに行って家に帰ってくると「近くの大店が見張られてるよ」というではありませんか。父親が確認すると、凶悪で有名な強盗団一味。とばっちりを受けてはまずいと夜逃げ同然で岡崎へ。
ところが、強盗団の残党が親子の隠れ家にあらわれ、「こいつを預かってくれ」と百両以上の大金を置いていきます。すると「これだけあれば盗賊稼業から足を洗って江戸で楽に暮らせる」と、もらってしまおうとするのです。
また名古屋に戻ると「おれの顔に見覚えはないか」と、あのとき大金を置いて行った男が目の前に・・・

両親は殺されますが、ネコババした二百五十両はどこかに隠した余助。助けてもらった寺の住職に「お坊さんになるか」と「正念」という名をもらい、寺の小僧に。そうして十二歳になった正念は、棒術の道場に移ります。そこで道場主から「利八」という名を与えられます。
この道場の師範代で藩の上役の息子の坂下という男が、道場主の一人娘を妻に迎えたいと強引に話を持ち出します。坂下が他の師範代と立ち合い稽古をしようとしますが、そこに利八が名乗りを上げ、なんとあっという間に坂下に勝利。

道場に迷惑がかかるといけないので利八は道場をお暇し、ふたたび寺へ。そこで、隠してあった二百五十両を取り出し、名前を「利八」から今度は「巳之助」に変えて、相模の藤沢へ・・・

藤沢で、巳之助はまた別のミッションに取り組んだりします。徳川幕府の転覆を目論む謎の新興宗教が出てきたり、盗賊一味に参加したり、ちなみにこの時点で名前は「徳次郎」に変わっています。南町奉行、北町奉行、火付盗賊改方の共同チームという厳戒態勢を相手に、次に忍び込むのは・・・

といったところで(未完)。

行く先々で名前が変わって、もちろんやることも変わって、さながらロールプレイングゲーム。まあ大筋の予想ですと(タイトルからして)最終的には主人公は捕まるのでしょう。
出版順でいうとひとつ前、おそらくほぼ同時期に執筆されていたであろう「すべて辛抱」という、田舎から出てきた少年が江戸で立派な商人になるまでを描いた作品があるのですが、「獄門首」は盗賊ですので違うといえば違いますが、根底にある部分は似ています。
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宇江佐真理 『我、言挙げす』

2021-03-07 | 日本人作家 あ
春ですね。

というにはまだちょっと早いですか。まあでも、我が家で春の訪れといえば、近所の空き地で菜の花のつぼみとふきのとうを摘んで、菜の花はお浸しや酢味噌和え、ふきのとうは天ぷらにふき味噌にして毎年いただいてます。
スーパーには新玉ねぎが並び始めましたね。スライスしてポン酢と鰹節、美味しいですね。

まあ、あとは、花粉症。重症化はしませんけどね。

さて「髪結い伊三次捕物余話」シリーズの八作目。いちおうざっとあらすじを説明しますと、フリーランスの髪結いの伊三次が主人公。この当時、フリーランスの髪結いはご法度でして、捕まりますが町奉行の不破という同心にお目こぼしをしてもらい、今は不破の手伝い(十手は預かってませんので岡っ引きではない)をしています。深川芸者のお文とは長いこと恋人でしたがとうとう結婚、ふたりの間には男の子が。

ある日、お文は芸者仲間から酒の席で刀を振り回す危なっかしい集団の話を聞き、それを伊三次に伝えます。どうやらその集団は「薩摩へこ組」というらしく、藩のほうでも持て余してるとかで、以前、尾張屋という商店が襲われたときに別グループの犯行と思っていたのですが、ひょっとして彼らなのでは・・・という「粉雪」。

不破の息子、龍之進も同心見習いを卒業し、若同心に。そこで、小早川という先輩同心について、探索や捕縛術などを教わることになったのですが、小早川には幕府の目付が監視しているというのです。そこで父に「小早川さんはなぜ目をつけられてるのですか」と聞くと、過去にある事件の容疑者の物的証拠を捏造したらしく・・・という「委細かまわず」。

酒の席に出たお文は、帰り道に易者に占ってもらうと「あなたには何不自由ない暮らしが送れた人生があったのに自分で棒に振った」と言われ、亭主(伊三次)の稼ぎが少ないばかりに幼子がいるのにまだ芸者を続けているお文はカチンときてその場を去りますが、家に着いたら転んで頭を打って意識不明に。気が付くと、そこはお文の実家の商店だったのです・・・という「明烏」。

西国の小大名の姫様を探すというミッションが若同心たちに与えられます。で、どうにかこうにかその姫の居場所が分かって、龍之進は向かって姫に会ったのですが…という「黒い振袖」。

独身時代のお文の手伝いをしていたおみつが久しぶりに訪ねてきます。お文は現在は弥八という男と結婚して子もいます。仲睦まじいと思いきや、おみつは「主人は居酒屋の女と浮気している」というではありませんか。弥八のことを知る伊三次も「あいつにそんな器量があるとは・・・」と思いますが、いちおうその居酒屋の女を調べてみると、弥八よりはるか年上で・・・という「雨後の月」。

龍之進と同じ若同心の古川喜六が結婚することになります。その結婚相手の父親で町奉行の同心、帯刀精右衛門はかつて上司の不正を訴えますが敗北し、奉行所の奥にある書庫で一日中書類の整理をするという閑職に追いやられます。龍之進の父がかかわった事件で、容疑者をどうにか死罪にさせない方法はないかと考え、龍之進に「帯刀さんに聞いてこい」と・・・という表題作「我、言挙げす」。

このシリーズは十六巻まであるそうですので、まだまだ楽しめます。
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アーサー・ヘイリー 『ニュースキャスター』

2021-03-02 | 海外作家 ハ
先月は1回しか投稿できませんでした・・・
といいますのも、今年度の学校の課題とレポートの提出期限が2月の半ばで、それまでにできるだけ提出しておこうとしてテキスト読んで課題やってと「勉強モード」で本など読んでるヒマが無く、ようやく提出期限が過ぎて「さあて、本読むぞー」とはりきって手にしたのが割と長編。なんとか先月中に読み終えたかったのですが、今度は仕事が忙しく、投稿は3月に突入。

で、その長編とやらはなんじゃらほいという話ですが、当ブログ記事のタイトルにある作品でございます。
アーサー・ヘイリーは個人的に好きな作家で、翻訳がジェフリー・アーチャーの訳でお馴染みの永井淳さんというのもあってでしょうか、わりと硬派なテーマでありながらけっこう読みやすく、エンターテインメントとはいかないまでもハラハラドキドキ感もあって、読む前から期待大。

ニューヨークのテレビ局「CBAネットワーク」が主な舞台となるのですが、作品中に「ライヴァル局のCBSでは〇〇、ABCでは〇〇、NBCでは〇〇~」とあり、アメリカの3大ネットワークといえばこの3局で、つまり架空。CBAの(ナショナル・イヴニング・ニュース)のニュースキャスター、クローフォード・スローンは、番組が終わって自動車で家まで帰りますが、その後方にスローンの車を追う青のフォードが・・・

家に着いたスローンを迎えたのは、妻のジェシカと息子のニッキー。ジェシカから「あなたのお父さんが明日の朝にこっちに来るわ」と聞いて、スローンは「この前来たばっかりじゃないか」とややうんざりしますがジェシカもニッキーも歓迎。ところがスローンの父親が来るのを歓迎しない人物が他にもいたのです。翌朝、スローン家の前でタクシーが止まって老人が降りてスローン家に入っていくのを監視していた人物は、リーダーに符牒で「何者か知らない老人がタクシーで来て家に入った」と報告します。

スローン家から離れた貸家の(作戦本部)にいたリーダーのミゲルは予定外だったスローンの父親が来たことで作戦に若干の変更があることを心配しますが、いずれにせよ実行することに。

数日後、仕事に行くスローンを見送った後、ジェシカとニッキー、そしてアンガスの3人はショッピングへ。そこに「ミセス・スローンですか?じつはご主人が事故で・・・」と話しかける謎の男が。ですがそれを聞いていた退役軍人のアンガスは、この男の言う病院は救急患者を受け入れていないことを知っていて、つまりこれは嘘だと見抜き「ジェシカ、ニッキー、逃げろ!」と叫びますが銃で頭を殴られたアンガスと車に引きずり込まれたジェシカとニッキーの3人は連れ去られます。

CBAのディレクターに、郊外で誘拐事件が発生したことが告げられ、さらに「ショッピングモールの駐車場でクローフォード・スローンの妻と息子と、クローフォードの父親が正体不明の犯人たちに車で連れ去られた」と詳細情報が。CBAはこの出来事を速報で流すことに。「やめてくれ!」と懇願するスローンですが、CBAが流さなくてもいずれ他局や通信社が取り上げるだろうし、ならば「一番乗り」で報道しよう、という局の決定にしぶしぶ納得。

その後、記者会見を開きますが、そこで、過去に出版されたスローンの本に「テロリストと決して取引するべきではない、人質には気の毒だが(消耗品)とみなすべきである」と書いてあったことに追及が・・・

さて、CBAの方針として「政府機関は信用できない」というのはスローンも同意で、ならば海外の調査報道に経験豊富な我々なら家族が連れ去られた先とその目的を突き止められるのではないか、ということでこの件のタスク・フォースを組織することに。その指揮官に、スローンは「ハリー・パートリッジを希望する」と言ったのです。

じつはスローンとジェシカが結婚する前、ジェシカはパートリッジの恋人で、価値観の違いで別れてしまったのですが、スローンにとってそのことが今もパートリッジに対してわだかまりがあるというか微妙な関係なのです。
ですがそれはそれとして、今は「優秀な同僚」に全権を預けることに。

パートリッジが結成したチームはわずかな手がかりを頼りに誘拐犯とスローンの家族の行方を捜しますが、彼らは飛行機でアメリカを脱出し・・・

今まで読んだアーサー・ヘイリーの作品は企業や政界など「組織」の人間模様を描いて、もちろんこの「ニュースキャスター」もテレビ局という組織を中心に描いてはいるのですが、後半はアクション色が強く、個人的には好きなジャンルですので楽しんで読みました。

この話と並行して、テレビ局の経営、テレビの未来、報道の倫理、使命、社会的役割、などなどが随所に描かれていて、作品中に「近い将来、テレビはアンテナから電話線を使った放送に取って代わる」とあり、この作品が発表されたのが1990年で、もうすでにインターネットはあったのですが、まだこの時点では商業的にも文化的にもインターネットが大きな影響力を持つまでにはなっていなかったと思います。

読み始めは「なんだか小難しいテーマだなあ」と思いながら、そのうちだんだんハマっていって最終的には(読書という楽しさはこれなんだよ)と堪能させていただき、以前にも書きましたが「読み終わった後に”おりこう”になったような気がする」のです。
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