はい。
この作品は「みをつくし料理帖」シリーズが終わって、次のシリーズもの、だそうです。髙田郁さんの作品を全部隅から隅まで読んだわけではないので作風分析など生意気ですが、あれですね、ひと昔前の大映ドラマ的な、最近ですと韓流ドラマですか、次から次へと主人公に困難が襲いかかりますね。
まあ、そういう系はキライではない方なので、楽しく読まさせてもらってます。
時代は江戸中期、享保年間からはじまります。摂津(現在の兵庫県)、武庫郡津門村というところにある私塾の先生の娘、幸(さち)は、勉強を教わりたいのですが、母親からは「おなごに学など要らん」などと怒られます。この学者のお父さん、商人をものすごく嫌っていて、「商(あきない)とは即ち詐(いつわり)」と厳しいです。
幸には兄と妹がいて、兄も学者で、賢い兄は幸にとって自慢の兄。ゆくゆくは、村の豪農の娘と夫婦になって塾も安泰・・・といくはずでしたが、二十歳になる前に病死します。さらに、後年(江戸の四代飢饉)のひとつに数えられる「享保の大飢饉」が起こります。西日本で風邪が流行り、幸の父があっけなく亡くなります。母は妹を連れて豪農の家に住み込みで住まわせてもらうことになり、幸は九歳になったので、大坂に奉公に出されることに。綿買い商人に連れられて、着いたのは、大坂の天満にある呉服商「五鈴屋」。
ところが、幸の他にも三人の女の子がいて、五鈴屋が欲しいのは一人だけ。「お家(え)さん」と呼ばれる店主の祖母、富久(ふく)は、半襟という、襦袢や着物を髪油で汚さないように襟の部分に縫い付けるものをお土産に渡すことに。他の女の子たちは高いのを取りますが、幸は一番安い黒い半襟を取ります。それを見ていた富久は背後の男に「治兵衛、何ぞたずねたいことはおますか」と問いかけ、治兵衛と呼ばれた男は幸に「なんでそない地味なのを選びはったんだすか」と訊ねます。幸は、黒の方が汚れが目立たない、母に使ってもらおうと、肌触りが良いものを選んだ、と答えると、幸だけを残して、他の三人は「ご苦労さん」といって帰されます。じつは、値札はどれも適当で、幸の選んだのがいちばん上等な生地で、高い値札の半襟は安物だったのです。
現代風にいえば会社の面接、入社テストみたいなことをやらされ、しかもあの女の子たちも飢饉で田舎から口減らしのために大坂に連れてこられた、幸と似たような境遇だろうに、そんな子らに人の心をもてあそぶような真似をしたことで、父親の「商は即ち詐」という言葉が浮かび、暗い気持ちになります。
五鈴屋は、今の当主が四代目の徳兵衛でまだ二十歳。(お家さん)の富久は二代目の嫁で、まだ若い四代目の後見人であり五鈴屋の女将。四代目徳兵衛は長男で、次男の惣次、三男の智蔵と三人兄弟。番頭は治兵衛。奉公人は九人で、女中はお竹とお梅、それと新入りの幸。
ある夜、幸は治兵衛が丁稚の小僧らに字を教えているのを目撃します。それを見かけた智蔵は「そういや幸の父親は学者だったな」と思い出します。智蔵は商売よりも読書が好きで、奉公人の手習いを食い入るように見ている幸に「商売往来」という書を渡します。
後日、智蔵は治兵衛に「幸にも勉強をさせてやってくれ」と頼み込んでいるのを見かけ、ふと、亡くなった兄が思い浮かびます。
また別の日。治兵衛が丁稚の小僧に墨を磨るのがなってないので練習しろ、と叱ります。とうとう泣き出す小僧。するとお竹が幸に「あんた、学者の子なら墨磨りできるやろ、教えてやりなはれ」と言い、幸は小僧に硯と墨の違いと相性で磨り方が変わることを丁寧に教えます。その様子をじっと見ている治兵衛。小僧は墨汁を治兵衛のところに持っていき「ええ墨だす」と褒められ、今度は嬉し泣きします。治兵衛は幸を呼び「夜、墨を磨る手伝いをしてくれ」というのです。
夜になって、幸は治兵衛に中座敷に案内され、ここで墨を磨るように、と言われます。その部屋からは、治兵衛が小僧たちに「商売往来」を教えているのがよく見えるのです。というのも、五鈴屋では(店)と(奥)、(主筋)と(奉公人)の区別がはっきりとしていて、女中の幸が店での勉強には参加できません。が、中座敷から「覗く」のであれば構わないだろう、という粋な計らい。
そのうち、幸は智蔵や治兵衛に商売に分からないことを質問しますが、その内容が九歳の女の子とは思えないほど。番頭の治兵衛は「五鈴屋はどうやらとんでもない拾い物をしたようだすな、お前はん、ひょっとしたら大化けするかも知れん」と笑います。
ところで、先述したように、この時代は享保年間。質素倹約を国家政策とした「享保の改革」は、呉服を扱う五鈴屋にとっては大打撃。ですが、四代目徳兵衛は店を弟の惣次と番頭の治兵衛に任せて本人は遊びまくり。富久は、四代目が嫁でも取れば変わってくれるだろうと思い・・・
「大映ドラマか韓流ドラマ」と例えましたが、あれですね、「昼ドラ」ですね。まあさすがに(たわしコロッケ)が出てきたりはしませんかね。もうすでに九巻まで買ってます。こりゃ一気読みしそうな。