晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

パトリシア・コーンウェル 『黒蠅』

2013-09-26 | 海外作家 カ
シリーズの前作を読んだのがだいぶ前、ということでブログをさかのぼって
確認してみたら去年の10月。ほぼ一年ぶり。

そういえば、「主な登場人物」のところのケイ・スカーペッタの肩書きが
「法病理学者」となっていました。いつもは「バージニア州検屍局長」なのに
なあ、と。さらにピート・マリーノはなんと「元刑事」。

それでようやく、前作で州知事だか警察署長だかの陰謀に辟易してケイは
検屍局長を、マリーノは警部を辞めたんだったと思い出しました。

冒頭、ケイは国立法医学アカデミーというところで講義をおこなっています。
そこで、ルイジアナ州から来たニック・ロビヤードという女性刑事と出会い
ます。
ルイジアナでは、一年のあいだに10件もの殺人事件が発生していて、しかも
被害者は全員女性。ニックの警察署がある州都バトンルージュ北部のザカリー
という小さな町でも2件発生していますが、ニックは特別捜査班(タスクフォース)
には入っておらず、捜査の進捗状況はわかりません。

ニックはルイジアナ州の腐敗しきった政治を愚痴りますが、そんな中にあって
彼女が信頼するのは、ラニエという検屍官だけのようです。

さて、そのラニエのもとに手紙が届きます。差出人は、死刑囚のジャン・バプティスト・
シャンドン。フランス人の”狼男”で、前作で逮捕されて、現在はテキサス州の
死刑囚監房に入っています。
手紙の内容は、ルイジアナで起きた連続女性殺人事件の一件について書かれてあり、
被疑者の行方を知りたければピート・マリーノに相談したらどうか、とあります。

ラニエはさっそくインターネットで調べて、リッチモンドで起きた連続殺人事件のこと、
その陣頭指揮をとっていたのがマリーノだったことが分かります。
それよりも注目すべきは、ラニエの尊敬する法病理学者のケイとマリーノが知り合い
ということを知ることに。

ラニエはケイと電話で話しますが、”狼男”からの手紙については触れず、ルイジアナ
で起きた女性連続殺人事件についての考察をお願いします。

前作で捕まえることができなかった”狼男”の兄、ジェイ・タリーは、ルイジアナの
ミシシッピ川沿いにある小屋で女性と暮らしているのですが、そこにもうひとり女性
が縛られていて・・・

一方、マリーノはボストンへ「ある男」に会いに行くのですが、その男とは”狼男”
に殺されたはず・・・

さらに、ルーシーは男と二人でヨーロッパへ。目的はマリーノの息子で悪徳弁護士の
ロッコを探しに・・・

ちなみに、ここまでが『黒蠅』の全体の話の4分の1くらいで、これ以上書くと驚きの
ネタバレを書かなければいけないので、ここまで。

この前本屋に行った時にこのシリーズの最新作をちらっと読んで、なんでこの人が
出てくるんだろうと疑問に思ったのですが、これで納得しました。




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東川篤哉 『謎解きはディナーのあとで2』

2013-09-23 | 日本人作家 は
シリーズ1作目を読んだのは、半年以上前だったようなおぼえがあって、
ブログ記事を遡って確認してみたらちょうど1年前の9月でした。
たしか、読み終わってからすぐに2作目を買いに行ったので、つまり1年
放置していたというわけ。

さて、1作目と基本は同じで、東京の国立署の刑事、宝生麗子は、じつは
巨大財閥「宝生グループ」のお嬢様。
そんな麗子の執事をつとめるのが影山という男。

事件が起こり、捜査が難しそうになると、麗子は影山にヒントをもらおう
とするのですが、毎度お決まりのパターンで、
「お嬢様はアホでございますか」
「お嬢様の頭はからっぽでございますか」
などといった、およそ財閥ご令嬢の執事のセリフとは思えない言葉が飛び
出ます。

この2人のやりとり、さらに麗子の先輩刑事で「風祭モータース」の御曹司、
鼻持ちならないキザ男の風祭とのやりとりもコミカルで面白く、ですが肝心の
ミステリー部分はひとひねり、ふたひねりあって侮れません。

全6話あって個人的に一番だったのが3話「殺意のパーティーにようこそ」。
麗子はあるパーティーに出かけるのですが、その会場の外で殺人未遂事件が。
カギとなるのは、被害者が見た赤いドレスと宝石。
このトリックと謎解きが面白いですね。





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奥田英朗 『真夜中のマーチ』

2013-09-17 | 日本人作家 あ
先日、奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読んで、ああやっぱりこの人の
書く本は面白いなあと再確認し、3日前に本屋に行って未読の作品を買ってき
ました。

で、一昨日に読み始めようと思ったのですが台風の雨風でゴーゴーうるさくて
まともに読めず。
昨夜は涼しかったので一気に読み終えました。

『真夜中のマーチ』はジャンル的にはクライムノベルということになりますが、
コメディ部分も満載で、ハラハラしたりニヤリとしたり、こういうの好きです。

高校時代からイベントやパーティーなどを主催して、大学生になっても勉強
そっちのけで金儲けと遊びに放け(大学は中退)、一等地にマンションを借りて
身につける服はブランド物のみ、ポルシェを乗り回す現在25歳、イベントプロ
デュース会社の社長をしている”自称”青年実業家の横山健司ことヨコケン。

「一流企業、国家公務員限定」の男性限定のお見合いパーティーで、ヨコケンは
いい”カモ”を見つけます。その男は、なんと三田グループの御曹司。
たしかに名刺には「三田物産 三田総一郎」とあります。

ヨコケンは三田総一郎に女をあてがい、それをネタにあとで大金を脅し取ろうと、
知り合いのヤクザ、國風会のフルテツに頼みに行きます。

後日、ヨコケンは三田に「この前のパーティーで(お持ち帰り)した女の子が
妊娠した」と嘘の電話をします。そして待ち合わせしたのですが、実は三田は
三田グループの御曹司でもなんでもなく、たまたま苗字が同じというだけだった
のです・・・

これにフルテツは激怒し、なんとヨコケンは愛車のポルシェを取り上げられて
しまいます。

数日後、フルテツはヨコケンに「青山の賃貸マンションを契約してこい」と命令。
ヨコケンは三田に不動産屋に行かせて契約させます。
それからしばらくすると、三田からヨコケンに電話が。三田の借りたマンションの
下の階から夜中にうるさいと苦情が入っているというのです。
あの部屋で何が行われてるというのか気になりヨコケンはマンションに行って、部屋
のドアの前で聞き耳を立ててみると、中からは、賭博の掛け声が・・・

フルテツに部屋の鍵を渡したとき、マスターキーと合鍵2つのうち、合鍵のひとつは
ヨコケンが持っていて、マンションから賭博に参加していたと思われる人たちが全員
帰ったあとに部屋に侵入してみることに。中には金庫が。

ところがその金庫は前に三田が一度開けていて、中には百万円しか入っていなかった
のです。絶対に現金はどこかにあるはずと探し出して、ついに大金の入ったバッグを
見つけます。が、そこに謎の女があらわれて、2人に催涙スプレーをかけます。

そういえばマンションのエントランスで女の人にすれ違ったのですが、なぜあの女が
2人に催涙スプレーをかけたのか。次の日になっても、フルテツから現金が奪われたと
いう連絡は来ません。すると謎の女は現金の横取りをしに来たわけではないのか・・・

ここから、話しはさらにでかくなり、なんと10億円もの大金が中国のマフィアまで絡んで
きての強奪戦になります。

感想を書いて気づいたのですが、けっこうなネタバレを出しましたが、それでも重要な部分は
かなり端折っています。それだけいろんな情報や出来事が詰め込まれているのですが、途中で
まったくつっかえずにすんなりと読めたのは、構成が上手いとあらためて感心。

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佐々木譲 『エトロフ発緊急電』

2013-09-04 | 日本人作家 さ
基本的に読書タイムは寝る前の1時間くらいでして、ベッドに横に
なりながら小さなライトを点けるのですが、この時期はそのライト
が熱くて本なんか読んでられなくなるので、ちょい涼しい夜でないと
読めません。じゃあ電球をLEDに替えればいいだろという話ですが、
LEDだと明かりが弱いんですよね。

以上、更新が遅れた言い訳でした。

さて、今年に入って「警官の血」を読んで、ようやく佐々木譲の面白さ
に気がつきました。この『エトロフ初緊急電』は初期の作品で、山本周五郎
賞、日本推理作家協会賞長篇部門、日本冒険小説協会大賞の3冠を獲得。

話は、1938年のスペインから始まります。36年から39年にかけて
スペイン内戦があって、ここで謎の東洋人という男が登場します。名前は
ケニー。

そして舞台は日本へ移ります。昭和16年1月。アメリカ・イギリスとの
戦争はもはや避けられないところまで追い込まれていた当時の日本、帝国
海軍連合艦隊司令長官、山本五十六は、対米戦にあたり、ひとつの答えを
出します。それは、ハワイに集結している米国海軍を先制攻撃する、という
もの。
それまでの予想は、まずフィリピン、グアムで米国海軍と戦い、主力部隊
を日本におびき寄せて、という艦隊決戦だったのですが、山本は、もう艦隊
決戦は時代遅れで、対米戦は航空母艦が主力になると予想していたのです。

この計画を軍令部の検討課題にしてもらおうと、部下の大貫中佐を呼び、
東京まで計画書を極秘で運んでもらうことに。

同じ月の北海道、函館。水産加工場で働いていた岡谷ゆきは、社長に呼ばれて、
不景気を理由にクビに。
ゆきは北海道の択捉島出身。ロシア人とのハーフで、岡谷家は「駅逓」といって、
公共交通機関が無く、馬が主要な交通手段の島内で、官馬を管理し、宿泊所も
やっていて、それなりに裕福で、しかも歳を重ねるごとに美しくなっていって
それが同年代の女子からは羨望と嫉妬の目で見られます。
やがてゆきは根室の高女に進学、そして19歳になって、駅逓に泊まりに来た
函館出身の写真家を追って択捉を出ます。

それから5年、写真家の愛人となるも捨てられて、水産加工の職も失い、どうし
ようかと思っているところに実家から手紙が・・・

択捉に戻ったゆき。伯父が亡くなり、ゆきは駅逓の後を継ぐことに。

ここで舞台はニューヨークへ。ケニーという謎の東洋人は、アメリカに戻り、
今では暗殺請負人のようなことをしているようです。ニューヨークで”ひと仕事”
を終えて、次はカリフォルニアへ。そしてまた”仕事”を終えて逃げようとした
とき、追っ手が。逃げるケニーの前に一台の車が。敵か味方かわかりませんが
とりあえず車に乗るケニー。
ところが、その車内にいたのは、米国海軍で、ケニーはサンディエゴにある基地
に連れて行かれることに・・・

ケニーことケンイチロウ・サイトウ、斉藤賢一郎は、アメリカ生まれで両親は
日系移民。そんなケニーに与えられた任務は、日本に潜入して情報収集、ようは
スパイ活動。

さっそく偽造パスポートで入国するケニー。そこで、案内人に連れられて向かった
先は、東京の教会。そこでスレンセンという宣教師と会います。
30歳くらいの北欧系のスレンセン。日本に来る前は中国に宣教に行っていたの
ですが・・・

ケニーは、スレンセンや案内人の金森の協力のもと、諜報活動をはじめます。
そして、海軍艦隊がこの年の11月に”ある場所”に集結することを突き止めます
が、憲兵に捕まりそうになり・・・

このブログ冒頭で「暑くて読む気にならない」と愚痴ってしまいましたが、じっさい
読み始めたら手に汗握る緊迫シーンの連続で、もう夢中になってあっという間に
ラストに。
スパイアクション的な面白さもあり、この時代の日本の暗黒的な空気感というのも
肌にチクチク刺さるように伝わってきます。
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