先日、なにげなく手にとった宮本輝の「優駿」を読んで、こりゃ面白い
とハマッてしまい、ほかの作品もぜひ読みたいという衝動にかられて、
書店へダッシュ。
そうして、突然訪れた「宮本輝マイブーム」の第2作目は『海岸列車』
という作品です。
手塚かおりとその兄の夏彦は、子供のときに父を病気で亡くし、母は
男とできて出奔、よってふたりは伯父のもとで育てられます。
伯父は銀行を退職して、社交クラブというかサロンのような、お金持ち
の奥様たちの集まる「モス・クラブ」の代表を務め、かおりは学生時代
から伯父の秘書として鍛えられます。しかし夏彦は伯父との関係が良好
ではなく、いつもいがみ合い。
兄妹はたびたび、伯父から聞いていた、母の居場所へと向かうのです。
それは山陰の無人駅を下りた、しなびた漁村。
「鎧」という駅を出て、坂を降りようとするのですが、なぜか母を探そう
ともせず、そのまま引き返します。
伯父が亡くなり、かおりは母に報告しようと鎧へと旅立ちます。しかし、
駅を下りてしばらくベンチに佇んだだけで、帰路へ。
伯父と生前仲の良かった人に、かおりにモス・クラブの代表になるよう
勧められますが、まだ25歳のかおりにとって重荷以外のなにものでも
なく、かといって他人にまかせる気はなく、兄の夏彦に頼ろうとします
が、夏彦は年上の女性の「ヒモ」生活を満喫。
代表になろうか逡巡していると、そこに不思議な縁のある男と再会します。
それは、かおりが鎧へ向かう道中、電車内で出会った男で、名前は戸倉陸離、
国際弁護士だったのです・・・
なんだかんだで代表になったかおりですが、順風満帆というわけには当然
いかず、事あるごとに戸倉に相談します。
一方、兄の夏彦は、年上の未亡人との香港旅行である事件に遭遇、これを
きっかけに「真人間」に生まれ変わります。
なんとなく恋心に近い関係となるかおりと戸倉。しかしかおりには、歳上
の妻子持ちの男と関係を持つことは、19歳の時に経験済みで、これが
かおりのトラウマとなっているのです。
かおりと夏彦にとって、じっさいに母が住んでいるか確認はしていない
けれど、そこへと向かう、山陰の無人駅への電車旅。誰が言い出したか
それは「海岸列車」と呼ばれ、ふたりの依りどころであり、ふたりにま
つわる他の登場人物にもそれぞれ「依りどころ」があります。
依りどころのない人間とは、ブレーキペダルの欠損した車のようで、た
だ速く走るだけの刹那的であり享楽的。
はじめこそ、登場人物たちは道路交通法も車の基本構造も知らずに生き
ているような人たちなのですが、だんだんと知識も経験も増してきて、
そして安全運転で走るようになってゆくのです。
地に足のついた生活をしたいけれど、容易なことではありません。年齢、
社会経験、あるいは、そんな真面目を嘲笑う風潮・・・
しかし、なりたいなあと思い浮かべるだけと、決意を持つのでは、すでに
スタートラインが違います。
文中さまざまな場面で、日本への、あるいは日本人への警鐘が書かれてい
て、一応日本に住む日本人として耳が痛くなりつつも、それでもあまり説教
くさくなく物語に組み込まれていて、読み終わったあとに、カッコイイ大人
にいい話を聞いたなあ、という気持ちになりました。
とハマッてしまい、ほかの作品もぜひ読みたいという衝動にかられて、
書店へダッシュ。
そうして、突然訪れた「宮本輝マイブーム」の第2作目は『海岸列車』
という作品です。
手塚かおりとその兄の夏彦は、子供のときに父を病気で亡くし、母は
男とできて出奔、よってふたりは伯父のもとで育てられます。
伯父は銀行を退職して、社交クラブというかサロンのような、お金持ち
の奥様たちの集まる「モス・クラブ」の代表を務め、かおりは学生時代
から伯父の秘書として鍛えられます。しかし夏彦は伯父との関係が良好
ではなく、いつもいがみ合い。
兄妹はたびたび、伯父から聞いていた、母の居場所へと向かうのです。
それは山陰の無人駅を下りた、しなびた漁村。
「鎧」という駅を出て、坂を降りようとするのですが、なぜか母を探そう
ともせず、そのまま引き返します。
伯父が亡くなり、かおりは母に報告しようと鎧へと旅立ちます。しかし、
駅を下りてしばらくベンチに佇んだだけで、帰路へ。
伯父と生前仲の良かった人に、かおりにモス・クラブの代表になるよう
勧められますが、まだ25歳のかおりにとって重荷以外のなにものでも
なく、かといって他人にまかせる気はなく、兄の夏彦に頼ろうとします
が、夏彦は年上の女性の「ヒモ」生活を満喫。
代表になろうか逡巡していると、そこに不思議な縁のある男と再会します。
それは、かおりが鎧へ向かう道中、電車内で出会った男で、名前は戸倉陸離、
国際弁護士だったのです・・・
なんだかんだで代表になったかおりですが、順風満帆というわけには当然
いかず、事あるごとに戸倉に相談します。
一方、兄の夏彦は、年上の未亡人との香港旅行である事件に遭遇、これを
きっかけに「真人間」に生まれ変わります。
なんとなく恋心に近い関係となるかおりと戸倉。しかしかおりには、歳上
の妻子持ちの男と関係を持つことは、19歳の時に経験済みで、これが
かおりのトラウマとなっているのです。
かおりと夏彦にとって、じっさいに母が住んでいるか確認はしていない
けれど、そこへと向かう、山陰の無人駅への電車旅。誰が言い出したか
それは「海岸列車」と呼ばれ、ふたりの依りどころであり、ふたりにま
つわる他の登場人物にもそれぞれ「依りどころ」があります。
依りどころのない人間とは、ブレーキペダルの欠損した車のようで、た
だ速く走るだけの刹那的であり享楽的。
はじめこそ、登場人物たちは道路交通法も車の基本構造も知らずに生き
ているような人たちなのですが、だんだんと知識も経験も増してきて、
そして安全運転で走るようになってゆくのです。
地に足のついた生活をしたいけれど、容易なことではありません。年齢、
社会経験、あるいは、そんな真面目を嘲笑う風潮・・・
しかし、なりたいなあと思い浮かべるだけと、決意を持つのでは、すでに
スタートラインが違います。
文中さまざまな場面で、日本への、あるいは日本人への警鐘が書かれてい
て、一応日本に住む日本人として耳が痛くなりつつも、それでもあまり説教
くさくなく物語に組み込まれていて、読み終わったあとに、カッコイイ大人
にいい話を聞いたなあ、という気持ちになりました。