船戸与一という作家は書店でよく目にしていたのですが、読んだのは
これがはじめてです。
冒険小説というと、なぜか主役は日本人なのに舞台は外国という設定が
多く、フォーサイスだったりクィネルだったり、そういった海外作家の
影響を受けているので、舞台を海外にしているのではないか、なんて思っ
たりするのですが、あとは、日本は単純に「平和」ということもあるの
でしょうけど。
『伝説なき地』の舞台は、南米のベネズエラとコロンビア。南米で日本人
と縁が深いといえば日系移民の多いブラジルが浮かびますが、ベネズエラ
とコロンビアも日本と結びつきがあるにはあるのですけど、ちょっとなじみ
の薄いこの2国で日本人が・・・という設定が気になるところ。
ロドリゴ・フェンテスという男が、墓の前で悲しみに打ちひしがれています。
墓の下に眠るのは、結婚前に無残にも殺された愛娘。
そこに、日本人が近づいてきます。彼はロドリゴに、娘を殺した犯人を知って
いる、と告げるのです。
その犯人はチェンという中国系で、ロドリゴが所長をしている刑務所に傷害事件
で入所するので、奴を第5雑居房から、第9雑居房に移せばどうか、と提案をし
てきます。
比較的罪の軽い囚人が入る第5雑居房から、チェンは第9雑居房に移されます。
その時にチェンは、自分に向けられた刑務所長の怒りと恨みにあふれた目を見て、
どういうことかと訝ります。しかも第9雑居房といえば周りから隔絶されている
房で、そこは原因不明で囚人がよく死亡するという悪名高いところ。
チェンは第9雑居房の”ボス”にさっそく目をつけられますが、なんと返り討ちに
し、房から逃げ出して自分をこんな目に遭わせた所長の部屋へ向かい、所長を射殺。
じつはこれは、ロドリゴに話をもちかけた日本人、鍛冶司郎の作戦で、チェンという
囚人は、丹波という日本人で、彼を救出するためだったのです。
鍛冶は、小さな街の小悪党4人に大金が手に入るとうまい話を持ちかけて仲間にし、
丹波を乗せた囚人護送車を途中で襲います。
丹波は前に2000万ドルという大金をベネズエラの「どこか」に隠し、それを鍛冶と
山分けするという約束があり、鍛冶は、ある目的のために大金が必要だったのです。
一方話は変わって、ベルトロメオ・エリゾンドという地方の成金一家が出てきます。
エリゾンドは自分の土地から石油が出て金持ちになりますが、やがて石油も枯渇し
ます。しかしそこから今度は燐酸イットリウムというレアアースが見つかり、商談に
勤しんでいます。
奥さんは病気で寝たきり、ふたりの息子のうち弟は出奔して絶縁、兄ラモンは父ベルト
ロメオの仕事の手伝いをしますがてんで役立たず、ベロニカという秘書兼愛人だけが頼り。
そんなある日、ラモンが弟のアルフレードを連れて帰ってきます。激怒する父。その夜に
ベロニカがじつはラモンとも関係を持っていたということが父にバレてしまい、ラモンは
父を殺してしまいます。さらにその一部始終を知っていた弟アルフレードとベロニカが
結託し、母とラモンも殺してしまうのです。
そんなアルフレードとベロニカにとって頭の痛い問題が。件のレアアースの眠っている
土地には、不法入国で流れてきたコロンビア人たちが「マグダレナのマリア」と名乗る
女性の神託で、勝手にコミュ二ティを作ってしまったのです。
マリアが近いうちに「祭りがある」と言っているのを知ったアルフレードは、「祭り」
の正体を知りたがります。
そのコミュ二ティには、エリゾンド家の女中の娘がいて、アルフレードはその娘を家に
招き、マリアの情報を聞き出し、あろうことか強姦して、娘は翌朝自殺。
女中は、この一連の不幸はすべてベロニカのせいだ、としてマリアのもとへ。
鍛冶と丹波と小悪党の話と、エリゾンド家の話は関係なさそうですが、実は鍛冶らが
目指していたのは、このエリゾンド家所有のレアアースの眠る土地だったのです。
移動の途中、コロンビアのゲリラといざこざがあって、ゲリラの幹部マルチネスに命
を狙われますが、なんだかんだで鍛冶、丹波、小悪党グループ4人、そしてマルチネス
の7人は土地へ向かいます。
鍛治が大金を必要としている理由とは、彼の前歴は。丹波は2000万ドルを埋めた場所
をおおまかにしか言いません。隠した場所とはどこか。
そしてマリアの神託「祭り」とは。そもそもマリアの出自は・・・
物語じたいは、構成もしっかりしていて人物や情景描写も良く、展開もわかりやすくて
読みやすかったのですが、いかんせん人が死にすぎ(殺されすぎ)だなあ、と。
これがはじめてです。
冒険小説というと、なぜか主役は日本人なのに舞台は外国という設定が
多く、フォーサイスだったりクィネルだったり、そういった海外作家の
影響を受けているので、舞台を海外にしているのではないか、なんて思っ
たりするのですが、あとは、日本は単純に「平和」ということもあるの
でしょうけど。
『伝説なき地』の舞台は、南米のベネズエラとコロンビア。南米で日本人
と縁が深いといえば日系移民の多いブラジルが浮かびますが、ベネズエラ
とコロンビアも日本と結びつきがあるにはあるのですけど、ちょっとなじみ
の薄いこの2国で日本人が・・・という設定が気になるところ。
ロドリゴ・フェンテスという男が、墓の前で悲しみに打ちひしがれています。
墓の下に眠るのは、結婚前に無残にも殺された愛娘。
そこに、日本人が近づいてきます。彼はロドリゴに、娘を殺した犯人を知って
いる、と告げるのです。
その犯人はチェンという中国系で、ロドリゴが所長をしている刑務所に傷害事件
で入所するので、奴を第5雑居房から、第9雑居房に移せばどうか、と提案をし
てきます。
比較的罪の軽い囚人が入る第5雑居房から、チェンは第9雑居房に移されます。
その時にチェンは、自分に向けられた刑務所長の怒りと恨みにあふれた目を見て、
どういうことかと訝ります。しかも第9雑居房といえば周りから隔絶されている
房で、そこは原因不明で囚人がよく死亡するという悪名高いところ。
チェンは第9雑居房の”ボス”にさっそく目をつけられますが、なんと返り討ちに
し、房から逃げ出して自分をこんな目に遭わせた所長の部屋へ向かい、所長を射殺。
じつはこれは、ロドリゴに話をもちかけた日本人、鍛冶司郎の作戦で、チェンという
囚人は、丹波という日本人で、彼を救出するためだったのです。
鍛冶は、小さな街の小悪党4人に大金が手に入るとうまい話を持ちかけて仲間にし、
丹波を乗せた囚人護送車を途中で襲います。
丹波は前に2000万ドルという大金をベネズエラの「どこか」に隠し、それを鍛冶と
山分けするという約束があり、鍛冶は、ある目的のために大金が必要だったのです。
一方話は変わって、ベルトロメオ・エリゾンドという地方の成金一家が出てきます。
エリゾンドは自分の土地から石油が出て金持ちになりますが、やがて石油も枯渇し
ます。しかしそこから今度は燐酸イットリウムというレアアースが見つかり、商談に
勤しんでいます。
奥さんは病気で寝たきり、ふたりの息子のうち弟は出奔して絶縁、兄ラモンは父ベルト
ロメオの仕事の手伝いをしますがてんで役立たず、ベロニカという秘書兼愛人だけが頼り。
そんなある日、ラモンが弟のアルフレードを連れて帰ってきます。激怒する父。その夜に
ベロニカがじつはラモンとも関係を持っていたということが父にバレてしまい、ラモンは
父を殺してしまいます。さらにその一部始終を知っていた弟アルフレードとベロニカが
結託し、母とラモンも殺してしまうのです。
そんなアルフレードとベロニカにとって頭の痛い問題が。件のレアアースの眠っている
土地には、不法入国で流れてきたコロンビア人たちが「マグダレナのマリア」と名乗る
女性の神託で、勝手にコミュ二ティを作ってしまったのです。
マリアが近いうちに「祭りがある」と言っているのを知ったアルフレードは、「祭り」
の正体を知りたがります。
そのコミュ二ティには、エリゾンド家の女中の娘がいて、アルフレードはその娘を家に
招き、マリアの情報を聞き出し、あろうことか強姦して、娘は翌朝自殺。
女中は、この一連の不幸はすべてベロニカのせいだ、としてマリアのもとへ。
鍛冶と丹波と小悪党の話と、エリゾンド家の話は関係なさそうですが、実は鍛冶らが
目指していたのは、このエリゾンド家所有のレアアースの眠る土地だったのです。
移動の途中、コロンビアのゲリラといざこざがあって、ゲリラの幹部マルチネスに命
を狙われますが、なんだかんだで鍛冶、丹波、小悪党グループ4人、そしてマルチネス
の7人は土地へ向かいます。
鍛治が大金を必要としている理由とは、彼の前歴は。丹波は2000万ドルを埋めた場所
をおおまかにしか言いません。隠した場所とはどこか。
そしてマリアの神託「祭り」とは。そもそもマリアの出自は・・・
物語じたいは、構成もしっかりしていて人物や情景描写も良く、展開もわかりやすくて
読みやすかったのですが、いかんせん人が死にすぎ(殺されすぎ)だなあ、と。