晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『日本橋本石町やさぐれ長屋』

2022-03-26 | 日本人作家 あ

我が家からちょっと離れたところに毎年春先にふきのとうが採れる空き地があるのですが、2年前でしたか、その空き地に隣接している長らく誰も住んでなかった家に新しい人が引っ越してきて、庭の植え込みや生け垣をキレイサッパリ伐採して大量の枝や幹をふきのとうが生えてくるあたりにドサドサ置いたので収穫ができず、かといって文句言うわけにもいかず、去年は収穫できませんでした。ですが、去年そこの家の人が引っ越したらしく枝や幹が片付けられていて、今年はどうかなと思いながら探したら少ないですが収穫できました。とりあえず天ぷらにしてあっという間に平らげました。もっといっぱいあればふき味噌でも作ろうかと。

春ですね。

さて、この作品は宇江佐真理さんが亡くなる少し前に出版されました。

「東京」の現代では日本銀行がある辺りの日本橋本石町。そこに「弥三郎店」という名の裏長屋があって、語呂合わせで「やさぐれ長屋」と言われてブチギレしたのが弥三郎店に住む大工の鉄五郎。ちなみに鉄五郎はひとり暮らし。つまり独身。

ある日の夕暮れ時、お寺の鐘の音が聞こえてきて、鉄五郎は立ち止まって聞き入っていますと、笑い声が。その笑い声は「旭屋」というたばこ屋の中から聞こえて、店を見るとまだ十七、八の若い娘。おかしいな、旭屋は四十代半ばの夫婦と年寄りの刻み職人だけしかいないはず。「時の鐘がそんなに好きなのか」と言われてカチンときた鉄五郎は「うるせえ」とやり返します。そんなことがあって井筒屋という行きつけの飲み屋に行ってその話をしたら他の客が「あの娘はよしといたほうがいい」というのですが・・・という「時の鐘」。

弥三郎店に住む(おすぎ)は母の(おまさ)とふたり暮らし。おすぎは夜に井筒屋で手伝いをしているのですが、同じ店子の喜助という左官職人がやって来ます。喜助も母親とふたり暮らしなのですが、「お互い大変ですね」とあくまで客と店員としての会話をしただけなのですが、何をどう勘違いしたのか、喜助はおすぎとそのうち一緒になって自分の母親も面倒を見てくれると近所の人に言っているようで・・・という「みそはぎ」。

弥三郎店に住む(おとき)は錺職人の亭主とふたりの子の四人暮らし。ところが最近、亭主が帰って来ません。忙しい時は親方の家に泊まって仕事をすることもあるのですが、それにしてもおかしいと親方の家に行くと「変だねえ、茂吉さん(おときの亭主)は毎日仕事が終わると帰ってるけど」というので、おときは女の勘で(よそに女がいる)と・・・という「青物茹でて、お魚焼いて」。

第一話「時の鐘」のネタバレですが、鉄五郎は旭屋にいた若い娘と結婚します。その後の話。鉄五郎の女房(おやす)は、家にねずみが出ると鉄五郎に相談します。じつはおやすはねずみが大の苦手。日常生活に支障をきたすレベル。石見銀山を買ってきても効果はなく、ノイローゼ気味になっていたとき、弥三郎店に新しい店子がやって来るという話が。若い夫婦で亭主は駕籠舁き。おやすはその若夫婦に相談をしていろいろ協力してくれます。が、他の住人から、あの若夫婦の旦那は元罪人だと聞いて・・・という「嫁が君」。

弥三郎店に住む(おすが)という独り暮らしの婆さんの家に若者が泊まっています。若者は芝居茶屋の主人の息子で、おすがはその茶屋に女中奉公していました。幸助というこの若者は今は魚市場で働いているというのですが、茶屋の跡取りがなぜ家を出て魚市場で働いているのか気になったおやすは芝居茶屋に行って幸助の父親に会って話を聞くのですが・・・という「葺屋町の旦那」。

弥三郎店にショッキングな話が。隣の町医者が弥三郎店の土地を買って診療所を拡大しようとしているという噂話が。ちょうどその時、差配人から話があるので店子全員集まってくれというので話を聞くと長屋がだいぶガタがきているので建て直しをするから二、三カ月の間は他で仮住まいをしてほしいというのですが、「とぼけるな!」と店子たちは色めき立ち・・・という「店立て騒動」。

「髪結い伊三次」シリーズは捕物帳なので中には「やりきれない」話もありますが、今まで読んだその他のたいていはハートウォーミングな話です。江戸時代は現代とは比べ物にならないほど不便で、だからこそ人と人との繋がりを大事にしなければ生きていけなかったのでしょう。現代はそりゃあ便利な世の中になったでしょうが、結局のところ人間そのものは変わってないので「人と人との繋がり」はおろそかにしてはいけませんね、と教えられたような気がします。

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ジェフリー・ディーヴァー 『バーニング・ワイヤー』

2022-03-21 | 海外作家 タ

家から職場まで車で通勤してるのですが、その途中にスーパー銭湯がありまして、ずっと気になっていて機会があったらいつか行ってみたいとは思っていたのですが、この前とうとう行ってきました。6年前にオープンして去年リニューアルしたそうで、とてもキレイでした。いちおう天然温泉。まあ日本国内ならたいていどこ掘っても(地下1000メートルくらい)温泉が出るらしいですね。朝の8時半から営業してるので、今度は夜勤明けにひとっ風呂浴びてこようかと。

シングルライフをエンジョイしてます。

 

さて、ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズ。単行本で買ったのですが、帯に「リンカーン・ライム、絶体絶命。」とあり、まあでもそれをいったら毎作品どれも絶体絶命だったような。

リンカーン・ライムはニューヨーク市警察の科学捜査のエキスパートでしたが事故で首から下がほぼ動かなくなり寝たきり状態、女性刑事のアメリア・サックスが現場に赴きライムの「手足となって」捜査をする、といった話。

ニューヨークのアルゴンクイン・コンソリデーテッド電力会社の技術員は(ある異変)に気づきます。マンハッタンにある無人の変電所のブレーカーが外れて送電ルートが切り替わったのです。今度は他の変電所がオフラインに。このままだとある1か所の変電所に負荷がかかりすぎて爆発するおそれが。ひょっとしてこれはテロかと技術員は思い、上司に連絡します。

マンハッタンの西57丁目をバスが走っています。停留所に着いて運転手はなにげなく近くにある変電所の窓からケーブルが垂れ下がっているのを見つけて「危険はないのかな」と思っていると電力会社のトラックが停まり作業員が出てきたとき、焦げくさい臭いが。するといきなり強烈な光が閃き、バスは炎に包まれます。

リンカーン・ライムのもとに市警の警部補ロン・セリットーから「変電所が爆発して停電した、テロみたいだ」と電話が。市警とFBIが到着し、電力会社の変電所に何者かが侵入し、ケーブルを外に向けて垂らしておいて他の変電所が機能してない状態で57丁目の変電所に強烈な負荷がかかり、電流が外に放出されます。アークフラッシュと呼ばれる現象で落雷に似た状態で電気が爆発します。犯行声明は出ていないのでテロとは断定できませんがFBIはテロを疑っています。

さっそくアメリア・サックスと市警のロナルド・プラスキーは現場へ。変電所の近くのコーヒーショップに爆発が起きた時間帯にノートパソコンを持った男がいたという目撃証言がありますが、それが犯人なのか。

送電ルートの切り替えを会社のコンピュータシステムに設定変更したのは外部からのハッキングではなく内部からというので社員の犯行か、社内に協力者がいるのか。

コーヒーショップから採取した中に髪の毛があり、そこから化学療法を受けている証拠が検出され、調べてみると技術者のレイ・ゴールトという40歳の男性が白血病の治療中だとわかります。プラスキーは彼のアパートに行って証拠を探していると、アップタウンのハーレムの変電所でボヤ騒ぎが。サックスが急いで駆けつけ次の犯行現場はどこか探していると、近くのホテルで惨劇が・・・

プラスキーはアパートで「自分が白血病になったのは会社のせいだ」と書かれた文書を見つけます。そんな中、電力会社の本社に午後6時から1時間停電させろという脅迫文が・・・

はたしてゴールトは今どこにいるのか。彼の要求はなにか。

この事件と同時進行でいまだ逃亡中の(ウォッチメイカー)がメキシコにいるとの情報が入り彼を捕まえるために前に登場したカリフォルニア州の捜査官キャサリン・ダンスとメキシコの連邦警察と電話でやりとりをしながら逮捕の作戦を実行しています。

相変わらずこっちかと思ったら別ででもそれも違って、といった感じで長編でありながら途中でダレることなく「ええっ」「ああっ」「マジでかっ」と心のなかで叫びっぱなしな展開。この犯罪ミステリのメインストーリーとは別に、ライムは自分の体が元通りとまでいかなくともある程度回復できるかとリハビリは続けていて過去には手術を考えたりしましたが、今作でもかなり真剣に考えます。

単行本ですと1ページに上下2段の文章になっていて、調べたら「段組み」というらしいですが、まあつまり文章がコメダ珈琲のフードメニューばりにボリュームたっぷりというわけですね。小説を読み慣れていない人からすると読みにくい、あるいは見るからに量が多いのでゲンナリしてしまうそうですが、ふだん本を読み慣れてる人でもこのリンカーン・ライムシリーズは読み始める前にちょっとばかし気合を入れるのではないでしょうか。

 

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納車アンド初乗り

2022-03-20 | 自転車

本日はお日柄も良く、昨日の夜はザーザー降り(関東)だったのが、朝起きたら雨は上がってました。ちなみに昨日の夕方から今朝までお仕事(当直)。で、夜勤明けではありましたが、家に帰ってきて遅めの朝食のあとに自転車屋さんに行ってきました。いろいろ説明を受けて、防犯登録もして。

車から降ろして。ルノーです。おフランスです。ボンジュール。もうドリンクボトル付けてる。ちゃんと県の防犯登録ステッカーも貼ってます。

フレームにRENAULTとトリコロール。そしてハンドル下にちゃんとルノーのエンブレム「ロザンジュ(菱形)」。

あ、そうそう。お出かけする前に、ヘルメット。

オレンジ色のヘルメットはPETZL(ぺツル)。こちらもおフランス。登山用です。自転車用のヘルメットでもよかったのですが、これだったら本来の使い方としての登山やトレッキングに行ったときはもちろん、それから地震などの災害時にも使えますよね。

ヘルメットの下に被るインナーキャップはルノー。気分はチームルノー。あとサングラスですね。

さっそく海までサイクリング。Googleマップで調べたら最短で10.6キロと出たので、まあその程度なら余裕っしょと思い、まずは川沿いの道をゆっくりと。

おお。マジでか。でもたぶんこれ「直線距離で」ってことですよね。

日頃から30分くらいウォーキングしているのでまったくの運動不足というわけでもないつもりでしたが、あと1キロ弱で海というところでヘロヘロ。そんなこんなで到着。

海。ヤシの木。ルノー。サーフィンやってる人とか砂浜を散歩の人とかけっこういました。

サビたら嫌なのでとっとと帰りましょう。

帰りの脇道にあった菜の花が群生してる原っぱでパシャリ。千葉ですねえ。

往復で20キロ前後。だいたい2時間ぐらい。ほぼ平坦。すでに足がヤバイです。ちょっと初日から頑張っちゃいました。でもあれですね、気持ちよかったです。2時間なんてけっこうあっという間でした。

あと、自分の今までの自転車歴としてはマウンテンバイクが長く、次いでママチャリタイプのやつで、クロスバイクは初めてでしたが、感想としては「軽くて速い」。で、10年どころじゃないな、20年かそれ以上自転車に乗ってなくて、止まってる状態から漕ぎ出すときにちょっとフラついてしまいました。

とりあえず、夜は乗りません。雨が降ったら乗りません。風が強く吹いても乗りません。

 

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納車前に買って(やって)おくこと

2022-03-18 | 自転車

ところで、注文していた自転車が届いて引き取る日、自動車だと「納車」ですよね。自転車も納車でいいんですかね。まあどちらも車(しゃ)なので自転車でも意味的にオーケーな気もしますが。

その「納車」される前に済ませておきたいこと。

車庫証明は必要ありません。

自転車保険。千葉県では令和4年7月1日から自転車保険が義務化になります。ですんで、「納車日の0時より加入」をすでに申し込みました。

基本的にお休みの日にプラプラとサイクリングするだけですので、本格的な装備とかは必要ないのですが、それでも出先で何が起きるかわかりませんので、最低限の用意はしておこうかと。

上段左から軍手。修理するとき用ですね。フェイスマスク。停車したときにノーマスクだとちょっとアレなので。サージカルマスクも携帯してお店に入るときなどは付け替えます。スクイーズボトル。カンタベリーのです。

中段左から携帯用空気入れ。ライトとUSB充電コード。レインジャケット。基本、雨の日は乗りませんが、急な雨に備えて。

下段左から六角レンチとチューブ。ファーストエイドキット。U字ロック。

ライトはバックライト(赤色灯)も注文してあります。

いちおうヘルメットも買ってありますが、それの紹介は後日。あ、そういえば自転車のヘルメットって義務?と思い調べたら、どうやら千葉県では高校生以下と高齢者(65歳以上)は「着用の助言に努める」らしいです。まあ被らないよりは絶対に被ったほうがいいですけどね。

 

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宇江佐真理 『夜鳴きめし屋』

2022-03-10 | 日本人作家 あ

孔子先生のいうところの「惑わず」世代なのに戸惑いっぱなしのまま「天命を知る」世代が近づきつつあり、もともと高血圧気味でして、それまで欲望の赴くままに飲み食いしていたのを改めまして、ところが、あまりに気にし過ぎてしまい体脂肪率もコレステロール値も標準より低くなり、逆に免疫力や抵抗力が弱くなってしまっているという状態ではありますが、それでも塩分を控えるようには心がけています。成人男性の1日の食塩摂取量は8mg以下が望ましいとされていますが(国連機関WHOでは1日5mg以下が理想らしいですが)日本食の「ザ・定番」の朝ごはんの白米、味噌汁、お漬物、納豆(醤油)、焼き魚(塩鮭か魚の干物)なんて食べたらそれだけで8mg超えちゃうんじゃないですかね。

インスタントラーメンをたまに買うんですが、いつも買う前にパッケージの成分表の(食塩相当量)を見て、なるべく4mgかそれ以下のを買うようにしてます。まあほとんど4mg以上ですけどですね。7mgだの8mgだというのもざらにあります。

以上、塩と私。

さて、この作品はいちおう「ひょうたん」という作品の続編となっております。なぜ(いちおう)なのかといいますと、「ひょうたん」は本所・五間堀に面した北森下町にある古道具屋の「鳳来堂」の主の音松とその妻のお鈴の話。

冒頭、音松が亡くなって、親戚の質屋に奉公に行ってた息子の長五郎が家に戻って跡を継ぎますが古道具屋と質屋では勝手が違いたちまち経営不振、長五郎の母のお鈴が料理上手ということで居酒見世として店名はそのままで再スタート。が、五年ほどしてお鈴が亡くなり、長五郎が仕込みから接客までひとりでやることに。今では日が沈むころに店を開けて夜明けごろに店じまいという深夜営業スタイルに。いつしか鳳来堂は(夜鳴き蕎麦屋)ならぬ(夜鳴きめし屋)と呼ばれるように。

鳳来堂の近くにある大名家の中屋敷の家臣が来ます。ずっとツケで飲み食いしていたこの家臣に今までのツケの清算をお願いしたら逆ギレされ仲間が連れ帰りますが、あとで仲間の侍が「迷惑をかけた」といって自分のお金で家臣のツケ代の一部を払います。浦田角右衛門と名乗るこの侍は長五郎とこの見世が気に入って「これからも来させてもらう」といって、長五郎も浦田を気に入ります。

そんなこんなでもう店仕舞いしようかとした時、芸者の駒奴が「酒おくれ」といって入ってきます。ふと「湊屋の隠居が亡くなったよ」と教えてくれます。湊屋の隠居は向島の小さな家に(みさ吉)という若い芸者といっしょに住んでいました。向島の家には隠居とみさ吉とみさ吉が産んだ男の子が住んでいたそうですが、じつはその男の子は隠居とみさ吉との子ではないと判明し、みさ吉と息子は追い出され、みさ吉はふたたび芸者に。この話を聞いていた長五郎はひどく動揺します。ふたりは幼馴染みでお互い惹かれ合っていたのですが、十年ほど前のこと、芸者のみさ吉に身請け話が。奉公人だった長五郎に将来の約束などできません。結局みさ吉は身請けされることに。その前夜、ふたりは・・・という表題作の「夜鳴きめし屋」。

料理屋「かまくら」の主、友吉は長五郎と子どもの頃からの友人で鳳来堂の常連客。ですがここ最近「かまくら」についていい噂を聞きません。なんでも新しく来た板前が原因なのですが、友吉は板前に強く言えない事情があるようです。そんなこともありつつ、ある日、少年が飯食べさせてほしいと来ます。長松というこの少年は駒奴の仲良しの芸者の息子でいつも夕飯は外で食べているそうで、酒を出すので子どもにふさわしい場所ではありませんが、長五郎は店開きのすぐあとならいいよと請け合います。翌日、長松は友人を連れてやってきますがその惣助という友人はみさ吉の息子で・・・という「五間堀の雨」。

丈助という若い鳶の男が見世によく顔を出します。丈助は深川に住んでいて近所ではないのですが、工事の仕事でしばらく親類の家に厄介になっていて、夕飯(と酒)は鳳来堂で、ということ。この丈助、尋常じゃないほどの地元愛で、口を開けば深川最高ビバ深川。そんな丈助にも恋人がいてひと悶着・・・という「深川贔屓」。

鳳来堂によく顔を出す魚の棒手振りが「鰯を大量に仕入れたはいいが余ってしまったので買い取ってくれ」と泣き疲れて大量の鰯を買う羽目に。煮つけにしてもまだまだあって、練り物の作り方を教わって、何度か失敗して試行錯誤の末、それなりの出来に。それはそうと、長松は幇間の修行に出ることが決まりますが、惣助はなんと長五郎が奉公に行っていた質屋に奉公に。これはたんなる偶然なのか、それともみさ吉が長五郎に対して何かあるのか・・・という「鰯三昧」。

鳳来堂の常連の侍、浦田によくない噂が。なんでも吉原通いをしていて、小見世の遊女を身請けしようかどうか悩んでいるという話らしいのです。長五郎は以前、浦田から国許にいる妻の話を聞いていて、浦田は奥さんに会いたいんだろうなあと思っていたのでビックリ。惣助が奉公に行ってる質屋に顔を出した帰りに浅草を歩いていると吉原帰りの浦田にばったり出会います。すると浦田は「ここで会ったことは他言無用に」というではありませんか。長五郎は思わず「このことが浦田様の御屋敷で広まると厄介ですよ。それより御国許の奥様が」というと浦田の目に涙が・・・という「秋の花」。

長五郎が仕入れから帰ってくると見世の前に惣助が立っています。奉公先からお裾分けを持ってきたそうで、中に入れて茶を出すと、質屋の若お内儀は長五郎の父の音松と惣助はよく似てるとよく話すそうで、惣助はもしかして長五郎が自分の父親なのではないかと思っています。ところが長五郎はどうしていいかわからず完全否定。それから次の日、質屋の手代がやって来て「惣助が戻ってこない」というので、みさ吉のところへ行ってみると・・・という「鐘が鳴る」。

主人公の長五郎は料理好きでもなくちゃんと修行をしたわけでもなく、あと食い道楽でもない、つまり「あまりやる気がない」ので、飲食店がメインの舞台の話ですから料理のシーンは多く出てきますが「わあ美味しそう」とはあまりなりませんが、酒や料理をきっかけに繰り広げられる人間模様がいいですね。

江戸時代の食事スタイルは「少ないおかずで米をたくさん食う」が主流でして、つまり梅干しも漬物も魚の干物も味噌も現代のものよりも塩分がかなり多めでだいぶしょっぱかったそうですね。冷蔵庫なんてなかったので日持ちさせる(腐敗防止)ためなのですが、塩分過多でタンパク質の摂取は少ないわけですから栄養バランスは良くないです。時代小説ではよく「ご隠居が中風(脳卒中)になって・・・」とあるように生活習慣病も多かったんでしょう。

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ブログのタイトルが変わりました

2022-03-07 | Weblog

突然ですが、ブログのタイトルが変わりました。以前当ブログで「自転車でも買おうかなー」なんて書き込んで、とうとう買いました。あ、でもまだ自転車保険の加入、ヘルメット、パンク修理キットその他サイクリングに必要なものの購入といったもろもろが済んでおりませんで、自転車に関する投稿はもうちょい後。

とりあえず新タイトルは「晴乗雨読な休日」です。

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宮部みゆき  『きたきた捕物帖』

2022-03-05 | 日本人作家 ま

去年まで朝食は基本的にパンでしたが、今年に入ってからパンと米飯を交互に食べています。別にこれといって大した理由などないのですが、朝食はパン、昼食は麺類が多く、一日のうちで米飯を食べるのが夕食のときぐらいで、お米をあまり食べていません。世の中的には深刻なコメ余りの状況とのことですから少しでも貢献しないと。ほんとに少しですが。

お箸の国の人だもの。

さて、宮部みゆきさん。本の帯には「新シリーズ始動!」と書いてありましたが、現在シリーズものは「三島屋変調百物語」がありますよね。あ、そういえば「杉村三郎シリーズ」もまだ完結してないんでしたっけ。

深川元町の岡っ引き、文庫屋の千吉親分が、ふぐの毒に当たって死にます。というスタート。これは別に事件性があるわけではありません。ここで「岡っ引き」の説明。江戸は時代が経つにつれて人口が増えてピーク時には百万人を超えるまでになりますが、当時の警察機能である「町奉行」は増員されませんでした。この役職は表向き一代限りとされてはいましたが、実際は世襲。そこで町奉行が(警視庁)とするなら、現場で捜索などをやる(所轄署の警官)あるいは(派出所のお巡りさん)的な働きをするのがこの岡っ引き。目明しともいいます。どういう人かというと、もとはアウトローだった人が更生して町奉行側に協力する側になるというパターン、あるいは「江戸の治安を守る」というボランティア精神の強い一般市民。与力や同心は汚れ仕事を専門とすることで「不浄役人」と蔑まれてはいましたが、れっきとした直参(徳川将軍家直属)の武士。ですが岡っ引きは非公認。奉行所から正式に十手を授けられたいわゆる「十手持ち」はいましたが、幕府から俸給が出ていたわけではないので彼らはあくまで町奉行の協力者。当然「本業」ではないので他に仕事を持ったり女房に仕事をさせていたり。この岡っ引きにはそれぞれ(下っ引)と呼ばれる子分がいました。よく岡っ引きが「親分」と敬称されるのはこの(下っ引の)という意味ですね。

長くなりましたが、死んだ千吉親分には五人の子分がいました。しかし、生前「うちの子分のだれにも跡目を継がせない」と言い残してあって、子分の中で一番若い北一はショック。北一の歳は十六で、三つのときに迷子だった北一を千吉が拾ってくれます。最年長の子分は千吉の本業の文庫屋を継ぐことに。あとの子分たちは他の岡っ引きの世話に。ところで「文庫屋」の文庫とは現在でいうポケットに入るサイズの本ではなく、ここでは本を入れる紙の箱。千吉の文庫は十手に付いている朱房にちなんで「朱房の文庫」という名で定評。北一は生計の道が無いので、当面は文庫の振り売り(天秤棒を担いで流し売り)をすることに。さらに住む場所も富勘という差配人に長屋を紹介してもらうことに。

千吉には(松葉)という目の不自由な妻がいて、北一はまともに話をしたことがありませんでしたが、側を通って「北一かい」と呼び止められます。足音と雰囲気だけで判別できてすげえなあと感心していると「あんた、商売道具をどこかに忘れてきてないかい」と。北一が千吉の訃報を知ったのは、とあるお武家の下屋敷の前を通っていたら中から侍に「岡っ引きの千吉の子分だろう、はやく戻れ」と呼び止められ、天秤棒を預かってもらっていたのです。

松葉がどうしてわかったのかはさておき、その下屋敷は生垣の向こうに大きな欅の木がよく見えて、北一は「欅屋敷」と名前をつけています。で、天秤棒を取りに欅屋敷に行って声をかけてくれた侍に会います。もともと千吉と碁仲間だった青梅新兵衛という侍はこの屋敷の留守居で、北一のよき相談相手となってくれます。

そんなことがあって、ある日のこと。差配人の富勘が面妖な話を持ってきます。知人の家に「呪いの福笑い」というのがあって、それで遊ぶとなぜか家族の誰かが怪我や病になると気持ち悪がられて奥にしまってあったのを今年の正月にそれを知らない子どもが福笑いを出して遊んでしまい、三日後にその子どもが火傷し、お婆さんが眼病に、お父さんが歯痛に。なんでも三代前の嫁の祟りだそうで、解決方法は福笑いの目鼻口を正確な位置に置いて「いやあ美人ですね」と褒めるんだそうですが・・・という「ふぐと福笑い」。

さらに、近くの手習い所に通う男の子が突然消えた「双六神隠し」、有名な菓子屋の次男坊という道楽息子と小さな糸屋の娘の別れ話の「だんまり用心棒」、味噌問屋の跡取りが祝言をキャンセルし、突然あらわれた死んだ元妻の生まれ変わりという女と暮らし始める「冥土の花嫁」という四話仕立て。

「だんまり用心棒」の中で、湯屋の釜焚きをしている喜多次という男が登場します。無口で髪はボサボサ。なぜか肩に烏天狗の入れ墨があり、湯屋の前で倒れていたそうで、氏素性は不明。北一に恩義を感じて北一の手助けをすることに。(北一)と(喜多次)のふたりの「きたさん」で(きたきた)ですね。

北一の住む富勘長屋は「桜ほうさら」に出てきた長屋で、謎の稲荷寿司屋というのも出てくるのですが、こちらは「初ものがたり」に出てきて謎のまま。欅屋敷の新兵衛の屋敷の主の正体や、喜多次のバックグラウンドなどなどこれからわかってくるのでしょう。喜多次、松葉、富勘、新兵衛たちの助けを借りて(岡っ引き見習い)の北一の今後が楽しみ。

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