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[東京 14日 ロイター] 日銀が14日公表した10日時点の営業毎旬報告によると、日銀が保有する長期国債の残高が10日時点で約80兆9700億円と、紙幣(銀行券)の発行残高約80兆7900億円を上回った。
うち約14兆5000億円は資産買い入れ基金で別枠管理しているため、日銀は保有国債を銀行券の発行額以内に収める自主ルールには抵触していないとの立場。金融市場も特段の反応を見せていない。一方で日銀は、国債買い増しの副作用にたびたび警告を発している。
中央銀行が巨額の国債を保有すると、政府の財政赤字を財布代わりに引き受けているというマネタイゼーション(財政支援)懸念を呼ぶとして、日銀は自主的に銀行券ルールを定めている。
しかし日銀は、経済の成長ペースに合わせてお金の量を増やす通常の国債の買い入れとは別に、国債や不動産投資信託(REIT)などの資産を買い入れる「基金」を2010年10月に設立。基金による国債の買い入れは、「意味が違う」と説明している。
ただ、基金は別枠との建前にも関わらず、日銀関係者は国債の買い入れ拡大に神経を尖らせている。日銀は今年2月、4月と立て続けに追加緩和を行った結果、基金を含めた国債の年間買い入れ額が43兆円と2012年度の新規国債発行額44.2兆円に匹敵する水準に増加した。更なる増額は、マネタイゼーション懸念を招きかねないとの声が聞かれ始めた。
さらに5月のリポートで、基金を含めた国債買い入れ額が年末にも92兆円まで膨らみ、銀行券の発行残高を上回るとの見通しを示した。「基金は別枠としながらも、国債の残高が増えることに対して自らアラームを出した」と、SMBC日興証券の岩下真理・債券ストラテジストは指摘する。
実際、白川方明総裁は5月以降、金融緩和の効果を測るのは「量でなく金利」とのメッセージを盛んに発信。基金の残高目標を現行の70兆円から積み増す追加緩和には消極的な姿勢をみせている。
14日公表した7月の議事要旨によると、複数の委員が米国やドイツの長期金利が名目成長率を下回る水準となっていると指摘し、海外発の長期金利反転が国内に波及するリスクに目配りしている。日銀が国債買い入れ増額による金融緩和をさらに進めれば、金利が反転上昇するリスクも大きくなる点を懸念しつつある可能性がある。
もっとも、今回国債残高が銀行券を上回ったことに対し、市場は特段の反応を示していない。東短リサーチの飯田潔・上席研究員は「日銀の緩和姿勢を示す象徴的な出来事だが、長期金利など市場にすぐ影響が出ることはない」と話す。
(ロイターニュース 竹本能文:編集 久保信博)