「賢治とモリスの館」の館主さん大内氏から「館だより」が届いた。
季刊でお出しになされる由、私にとっては最近にない嬉しい便りであった。
私は工芸には関係ない仕事では有ったが、工業製品を作る仕事に小僧時代と晩年の四十数年間携わってきたせいか、少しばかりモリスに興味があった。勿論モリスを勉強した事はないが、曾って眺めた本がある。
そのなかでもモリスの岩波文庫の「ユートピアだより」は、こんな世の中になったならいいだろうな~と思ったのである。モリスの著書は、最近良い翻訳書が出ている。区立の図書館などにも何冊かが揃っている。
岩波新書の「現代の工芸」からの写真は、「賢治とモリスの館」にいちばん似ているので載せたが、レッドハウスとは違い、「賢治とモリスの館」は白亜の殿堂のようであった。
小野二郎著『ウイリアム・モリス』(中公新書)は、モリスを知るうえで私には大変参考になった本であった。「世界の名著」41 ラスキン・モリス(中央公論社)のこの二冊の中の参考文献は、モリスに興味のある方には一見をお薦めしたいと、門外漢の私である。山本正三著「ウイリアム・モリスのこと」(相模選書)は、写真も豊富で大変読みやすい。柳宗悦の民芸運動に関連しての解説は素晴らしいと思った。残念な事はラスキンに付いて「戦後の若い世代はその名前さえしらないのではないかと思う。岩波文庫にもラスキンは一冊も入っていない。」(15頁)とある。西本正美訳「芸術経済論」を初め「この後の者にも」や「胡麻と百合」「建築の七灯」が戦前戦後に出ている。モリスとラスキンは一緒に眼に入ってくる時代の人であろう。
池上惇著「生活の芸術化ーラスキン・モリストと現代ー」(丸善ライブラリー)は大内氏の解説をお願いしたい所です。「固有価値」の事になると難しすぎて解らないのです。物を作る・使用する立場や使い易さ、それにみばが良い品。消耗品でも愛着が残る製品はそんなに多くは一度に出来なかった時代があった。