発行所 大日本文明協会事務所 大正三年六月十日発行 翻訳担当者 後藤 格次
賢治とオストワルドについて栗原敦氏は次のようにふれられています。大変参考になりますので學燈社 国文学 第37巻10号から一部のコピーを紹介いたします。
國文学 平成四年九月号 二宮沢賢治の表現者たち
夏目漱石ー浩々洞、オストワルド、ジエイムズなど (67~68頁のコピーです)
栗原さんのご論考に出ている池田菊苗は、明治三十七年にオストワルドの近世無機化学を開成館から翻訳して出しています。この本は、本文だけでも1592頁もある大冊です。池田は鈴木梅太郎や寺田寅彦等の理研のメンバーであった。賢治は大正七年(22歳)6月9日仙台で「オスワルド無機化学原理」等を買っています。近世無機化学は明治37年9月に初版が出版されていますからこの本は賢治も当然見ていると推察されます。
さて 写真の本の翻訳者後藤格次についですが、盛岡高等農林学校でも教鞭をとられていました鈴木梅太郎の門下生で、戦後農芸化学会の会長を務められた方です。シノメニンの研究で学士院恩賜賞を受賞しています。
大正三年に同じ大日本文明協会からヘッケルの生命の不可思議二巻を翻訳出版されました。これがのちに岩波文庫から、1928年(昭和3年)に出版されたのが広く知られています。
価値の哲学は本文は504頁ですが153頁以降382頁には興味を引く以下のような目次記述が見られます。「第二篇 応用 第九章 精神科学との決算」以下のところです。こちらもコピーで目次をご覧戴く事にしましょう。
後藤は、大日本文明協会から生物学的人生観も出されています。こちらの本はオストワルドとは関連はありませんので、興味を魅かれる本ですがこの事に付いては別の機会に触れようと思いす。
追記
(岩波文庫 オスロワルド著 エネルギー 山県春次訳 「訳者の序」も参考になると思います。)