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2004年/ドイツ/121分
監督:ファティ・アキン
出演:ビロル・ユーネル/シベル・ケキリ/カトリン・シュトリーベック/グーヴェン・キラック/メルテム・クンブル
原題:HEAD-ON/GEGEN DIE WAND
とどのつまり人が生きてゆくエネルギーの源泉は「愛」なんだと思う。偽装結婚から始まったトルコ系ドイツ人のジャイトとシベルは傷つけ合い、さ迷い続けた末に愛を見出す。が、その後に待ち受ける辛すぎる運命。
観ている時よりその後のほうがじわじわと心に沁みてくる。辛くて切なく・・苦い。
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そして同時に、シベルが偽装結婚をしてまで手に入れたかった「自由」とは何だったんだろう?そして「家族」とは?
愛を知ることで初めてシベルは痛みを知り苦しむ。が、彼女は目の前の現実を受け容れることで、その痛みを乗り越える「強さ」を手に入れる。
けれど、その現実はジャイトの一途な思いとは決して交わる事がない。うぅぅ・・・
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監督のファティ・アキンをはじめ主演のビロル・ユーネル、シベル・ケキリもトルコ系ドイツ人で、ドイツに暮らすトルコ系の人々の文化と民族、宗教が根底に流れている。透けて見えるどこにももっていきようがない閉塞感に息苦しくなる。
音楽が全編通じて重要で、節目節目にトルコの伝統的な音楽が海を背に(それはドイツとトルコを決定的に隔てているっていう象徴なのだろうか?)奏され、それが印象的でしかも効果的。映画の終わりで彼らが立ち上がり一斉にお辞儀をした時には思わず拍手しそうになった。(あぶない!あぶない!
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トルコはスペインと並び一度行ってみたいと思い続けている国なのだが、この映画の中で「ピーマンの肉詰め」を作るところ、そして蒸留酒ラクなどの食べ物が出てきたのも興味深かった。
しかし、この邦題は何とかならんのだろうか?「愛より強い旅」と混同しちゃうよ!!