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日本ユーラシア協会愛知県連ブログ

第30回ロシア語特別講座報告 その1

2022年09月13日 | ロシア語特別講座
9月11日(日)午後1時から愛知民主会館2階のホールで第30回ロシア語特別講座が開かれました。

参加者は17名、現役の受講生、リモート授業を受けている受講生(先生に実際に会うのはこれが初めて!)、
独学で勉強している方、ロシア語を学ぶのは初めてという方などバラエティに富んだメンバーが集まりました。


まず最初は山崎タチアナ先生の講演「ロシアの詩について」です。「人はなぜ
詩を書くのか」という質問で始まり、小さい子供は
手遊びの歌や短い詩を覚えそれによって自分の回りの世界を認識していくこと、
詩を書くのは自然や物事に対しての自分の態度や認識を表すためだということ、
というお話の後で、いろいろな詩の一節を繰り返し朗読しながらの詩の説明がありました。

最初に取り上げられたのはロシア文学の金の時代(19世紀の初めからチュッチェフまで)の
天才詩人プーシキンです。まず例に挙げられたのは「青銅の騎士」ですが、彼は豊かな語彙と
卓越した詩作のテクニックを駆使して 音や情景を詩に描き出しました。例えばグラスに注が
れる泡立つスパークリングワインの音はп やш を含む言葉で 水が流れる音はлで表され、
ペテルブルクの街路を重い騎士を乗せた馬が疾走し、石畳の道が揺れる様子も選ばれた「重い
言葉」で表され、読者にはその音が聞こえ情景が目に浮かんできます。

こういう「詩作のバトン」を受け取って彼に続いた詩人はレールモントフでした。

Когда волнуется желтеющая нива,
И свежий лес шумит при звуке ветерка,
(黄色く色づき始めた麦は波打ち
みずみずしい森はそよ風の音に騒ぐ)

と山崎先生が朗読されると それはまるで歌のようです。
残念ながら参加者全員が耳で聞いてすぐ内容を把握することは難しいので
手元の資料で
ロシア語の詩と和訳を見ながら聞いたのですが、、

レールモントフは軍人としてカフカスに行き、実際の戦闘に参加しました。血みどろの戦いの
後で、雪をいただくカフカスの5000メートル級の山々を見て自然への畏敬の念に打たれ、
気高く静かな自然に対してあまりにも哀れな人間たちの様子に「この青空の下にみんなの場所は
十分にあるのになぜ人間は敵対しあうのだろう」と嘆きます。

特別有名なこの二人の詩人の他に「金の時代」の優れた詩人として日本ではよく知られていない
バラティンスキー(1800-1844)の紹介もありました。彼の残したアフォリズムは
Лица необщим  Выраженьем.
(人の顔にはそれぞれ違う表情がある)
これはつまり、人はそれぞれに違っていて個性がある、ということです。人はすべて均等と考え、
ある一つのスタンダードを押しつけようとする人たちには気に入らないことです。詩はなによりも
まず 個人の自由の表明なのです。

この先にまだ面白いお話があるはずだったのですが、、先生が初心者のために特別ゆっくり話し
てくださったり、詩の一節を繰り返して読んでくださったりされたこともあり、また通訳にも
時間がかかって 予定の時間を過ぎてしまい、講演はここで終わりになってしまいました。
(続く)


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