星さんぞう異文化きまぐれ雑記帳

異文化に接しての雑感を気ままに、気まぐれに

ケロウナ便り(67) 体験入園

2007年08月06日 03時56分33秒 | Weblog

バーノンで日系三世Sさんが営むリンゴ園に体験入園してきました。10月末の収穫に備えて、この時期はリンゴの間引きをするのだが、人手が足りなくて遅れ勝ちとの話を聞きつけ、猫の手よりマシかもしれないからと、間引きの手伝いを志願したのです。

BCデイ(BC州の創立記念日)のからむ三連休(Long Weekend)初日の今日は、バンクーバーに住む息子さんも帰省するが、農作業は休まず平常どおりとのことで、9時集合を約束して出かけました。途中で朝食を済ませ、手土産代わりのドーナツをぶらさげて呑気に出かけたら、道順を間違えて約15分遅れてSさん宅に到着。

「まあコーヒー一杯飲んでから」と、作業前にお茶に呼ばれ、「これじゃ何しに来たのか分からない」と肩身の狭い恐縮のスタートです。近所に住む、ワーホリで滞在中の娘さんも加わって3人の臨時作業員はSさんから間引きのワンポイントレッスンです。

一つの枝先にたわわに実るリンゴ集団の中から、お互いに接することなく適度な間隔を保ち健やかに育つように、余計なものを取り除く作業ですが、これがなかなか難しい。育ち具合、色づき加減、虫食いの有無などなどをチェックしながら取り除くものを判断しながらどんどん進めるのですが、ゆっくり手を休めて熟考なんかしていたら時間がいくらあっても足りません。「本当にこれ落としちゃってで良いんだろうか?」と迷い、「あっ、ゴメン!お前を落とすつもりじゃなかったんだ!」と、間違って落としてしまったリンゴに謝りながら、Sさんの今年の収穫に悪影響の出ないことだけをひたすら念じながら、一時間強の朝の実習を終了しました。

息子さんのガールフレンドも交えて親子水入らずであったはずのランチに、我々二人の臨時作業員もお邪魔虫で参加。本当に「何しに来たんだろう?!」

これだけご馳走になっては手抜きは許されません。午前中の薄曇に比べて午後のセッションは27~8度の炎天下での作業です。午後二時からの一時間はSさんの奥さんを交えて4人での作業。午前中の経験で要領を飲み込んだ臨時作業員二人は、Sさんの口から飛び出す朴訥な東北訛りに耳を傾けるゆとりも出来ました。新潟から嫁いだ奥さんの思い出話を聞いたり、お互いの家族のことをペチャクチャと雑談しながら、あっという間に二畝の間引き作業終了です。

ご馳走になったランチもこれあり、臨時作業員としてはもっと続けようと本気で提案したのですが、「今日はロングウイークエンドの初日、この辺で切り上げないと周りの日系人仲間から『働きすぎ』と後ろ指差されてしまうから」と流暢な東北弁で冗談交じりの閉会宣言です。「毎日やるんだから、休みの今日はこのくらいにしておこうや」の一言は説得力に富んでいて、納得でした。

またまたお茶に呼ばれ、眼下のオカナガン湖を眺めながらベランダでおしゃべりの続きです。同世代の4人ですから話が合い、話が尽きません。

カナダ生まれのSさんは、戦後16歳まで宮城県ですごしてカナダに戻り、目の前に広がる18エーカーのリンゴ園を今日の姿に育てるまでの紆余曲折を、肩に力入れるでもなく、淡々と訥々と語ってくれました。各種農機具が目の前の広い農地に、一箇所に纏めることなく、ほうぼうに点在しているのを見て不思議に思っていましたが、「農機具に放火された時のリスク分散のため」と聞いて、農園経営の厳しさの側面を思い知らされました。

眼下の湖に生じる波の姿形から風の動きを予見し、遠くの山の上の雲から天候を予測するんだと言いながら、遠くに投じたSさんの穏やかな視線の裏に隠されている、我々には計り知れない苦労と努力の積み重ねの数々を想像したら、Sさんの顔がずいぶんと輝いて見えました。

呑気な臨時作業員は、庭で作った野菜をお土産にもらい帰路につきましたが、リンゴ一つあだやおろそかに扱うまいと肝に銘じたことでした。

それにしても、この秋の収穫時期が待ち遠しいような、怖いような・・・。
我々の「お手伝い」が「足手まとい」であっただけであれば許されもしましょうが、間引きが間違っていたら・・・・。

祈、大収穫!!!