宝鐘マリンが同人誌を読んで笑ったことで、その作者が反応し、宝鐘マリンが謝罪するという事態が起きている。
経緯を知らずにその映像部分だけを見ると、作品をバカにして笑っているという構図に怒りを覚える部分はわかる。
ここに至る経緯が存在していて、その部分を知らずに批判すると的が外れてしまう。
宝鐘マリンはBL好きのキャラクターを確立させていた。
その中でさくらみこの家に泊まり込んで二人で配信を行うことになった。
さくらみこは事前に視聴者と作戦会議を開き、冷蔵庫にBL同人誌を置いて見つけさせるというドッキリを企画した。
視聴者の需要と供給がマッチして実現した企画であったということ。
当日、その作戦は実行された。
同人誌を見つけた宝鐘マリンは、視聴者の期待したとおりの反応を表現した。
さくらみこはBL同人誌のジャンルや内容を理解しているわけではなく、いわば適当に買ってきたものだった。
宝鐘マリンはいわゆる成人向け同人誌を期待していたけれど、買ってきた同人誌はそうではなかった。
かといって、全く内容に触れずにスルーしたのでは、ドッキリ企画が成り立たない。
中を読んでその内容をイジって面白おかしくするのを期待されているのだから、そのとおりに振舞った。
問題は同人作家の感情。
その同人誌の内容に興味を持った視聴者が買い求めたという事情もあっただろう。
いきなり需要が高まった原因を、動画のアーカイブから探し出すのは非常に簡単なこと。
非常に多くの視聴者の前で自分の作品がいわゆるコケにされたという事実を目の当たりにする。
そしてSNSで反応する。
自分のアイデンティティを壊されたも同然なのだから、屈辱と侮辱に対して抗議する必要がある。
ところがこれもまたSNS上で物議を醸す。
そもそも、元ネタありきの同人誌であって、それをBLにして収入を得ることは、そもそも版元に対して失礼で著作権侵害なのではないか?
しかし宝鐘マリンも二次創作を行うのだし、そういった同人作家の心情もわかる。
しかし、キャラクターと配信内容と視聴者が求めている内容に応えようとするなら、内容に触れる必要があった。
ではこれを事前に防ぐことができたか?
流石に私もそれを事前に予測はできなかった。
配信内容は期待通りのものだったし、それはやはり非常に面白いコンテンツだった。
もし事前にやれることがあるとすれば、
・事前にドッキリとして置いておくBL本を調べておき、作者と打ち合わせをしておく
・ドッキリ企画の際、視聴者に「それはいけない」と自制を促す
・配信で同人誌の内容は伝えるが、タイトルは伝えない
・ドッキリを受けても、ドッキリの内容に触れない
・ドッキリをしない
そもそもで言えば、ドッキリ企画そのものが内容を知らない相手からのリアクションが面白いコンテンツなのであって、先にネタバラシをして、
「こういった内容をやるので、こういったことに気をつけて、大げさにリアクションしてください」
なんてやったら、まったくもって面白くない。
それでも実際のテレビ番組のドッキリでは、事前にドッキリの内容が知らされていたり、途中でドッキリと気づいてびっくりしたリアクションを続けたり、個人の所有物に対しての破壊に対する補償や代替品が用意されていたり、綿密な企画が練られているわけです。
個人的にはドッキリは悪趣味だし、テレビ構成のそういった裏事情もわかってきてしまうので、かなり興ざめなのだけれど。
ドッキリの内容に配慮がかけていたと謝罪するのは根底からおかしいし、それを企画した視聴者も、それを見た視聴者も、そもそも同人誌を描いた作者も、関わったすべてが悪いという結論もできる。
触れて批判するすべての人が、手痛いしっぺ返しを受けるという内容。
しかしながら職業配信者として、仕事として求められる反応をしたとも言えるし、同人誌作者としてもその内容に対して反論もしなければいけない。
どっちが悪いとか、何が悪いとか、そんなことを突き詰めれば、いやそもそもエンターテインメントなんていらないとか、情報発信なんていらないとか、相互コミュニケーションなんていらないとか、極論も出るわな。
人間文化はコミュニケーションで成り立っているのよ?
バラエティやお笑いなどのエンターテインメントが、誰かしかの何らかの個体や行為を馬鹿にして笑うものであれば、必ずそのような事態が起こる。
だったらそんなことしなければいい。
見なければいい。
しかし、そういうムダが存在することも、長く生きると知ってしまうわけさ。