HIROの のはらうた

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25/2/5 翔ぶが如く【三】📕司馬遼太郎

2025-02-05 | 本・映画・能楽・美術館など
明治六年の廟議は、征韓論をめぐって激しく火花を散らした。そして西郷は敗れた。薩摩へ帰る彼を慕い、薩摩系の士官たちは陸続として東京を去ってゆく。
内戦の不安は、いまや現実となった。

右大臣
西郷の考えが正論ならば熟するまで待つはずであり、かれがそれをせずにあくまでも息せき切るようにして事を急いでいるのは、公人としての理性ではなく、私人としての事情や感情によるとみた。

西郷はじつはこの玄関を出たとき、自分の政治的敗北を心中認め、すべてをすてて故郷に帰ることを決意していたのである。その決意の中で岩倉の踏ン張りを劇中の人のように鑑賞してほめあげたという点はいかにも西郷の香気がある。西郷はその香気でもってその追随者を魅了してきた人である。