昨日はタワーレコード渋谷店B1のライブスペースにて行われた、ひめキュンフルーツ缶のフリーライブに行ってきました。会場を埋めた200人以上のお客さんを五人の少女たちは魅了した。そう、ひめキュンは五人…。
ひめキュンは元々は℃-uteのインディーズデビュー時と同じ人数で構成されていました。色々あって今は五人。その成り立ち、四国(愛媛県)で活動するアイドルというスタイル、私の琴線に触れるパーソナルデータがいくつもある。そして、この日初めてひめキュンを生で観て、もうひとつ私の探していた場所がそこにあるのではないか?という事にも気づいた。
低いステージに立ち、一曲目から激しく踊る五人。私はキレのあるステージングを見せるアイドルに弱い。どちらかと言えば小柄なメンバー達が、顔に汗を滲ませながら踊るステージ。そして、二曲目の「恋のプリズン」からはビートがタテを刻み始めた。ああ、私はアイドル音楽が好きで、ロックが好きだという事を思い出した。
ひめキュンフルーツ缶『恋のプリズン』
アイドルグループには当然付き物なメンバー挨拶はアイドル業界で流行りのお約束的なものはなく、一人ずつが今日の意気込みなどを爽やかに語っていく。ヲタのリアクションもひたすら温かい。私はまだ完全にメンバーを覚えきれていないのだけれど、五人それぞれに魅力を感じます。そこは重要。
ライブはひたすらビート強めなナンバーが続く。前方のヲタを見ると、みんなノリながら頭を動かしている。頭と拳を動かしつつ、アイドル的なノリも取り入れつつ楽しむ。
アンコール一曲目は最新シングル「例えばのモンスター」。ニッポリヒトというロックバンドの曲をカバーしたものだ。MVはライブ風景をモチーフしたものになっている。そのMVで観客が行なっているノリを今私も行なっている。大サビの左右手振りでステージとヲタと私が一体になれたような気がして、不思議な熱さが胸を込み上げる。
彼女達は日頃はここから何百キロも離れた地で、学校に行ったり、レッスンをしたり、ライブをしたり、メディア活動をしたりしている。今ここで、ほんの数m目の前にいるけれど、ラストに歌ったナンバー(ひめキュン参上)の歌詞にあるように彼女達は「地元のアイドル」なのだなと、そのフレーズが耳に刺さりながらも私は優しい拳を振り上げているのでした。天井の上に続く空は遠い町にも続いている。
可愛らしい風貌の女の子達がタテノリなロックを歌うという事は違和感があるかもしれないけれど、ライブ後に街を歩きながら「それもアリだな」と私は思うのでした。先日、愛媛で行われたロックフェスに出演し、アイドルソングには興味がないロックファン達も熱狂させたというひめキュン。ニッポリヒトのファンの子がひめキュンの歌う「例えばのモンスター」を聴きながら感極まり泣いたという話も聞きました。
愛媛では知名度が高く、ファン層が幅広いというひめキュン。可愛い子達が可愛い歌を歌うだけでは幅広い支持は得られなかったのではないか?ロックという尖った道具を手にした彼女達は、その道具を振り向いてもらうための優しい凶器に昇華させたのではないか? Rの法則で流れた「町中で歌う姿。いろんな人達がそれを観ている様子」の理由がなんとなくわかったのでありました。
アイドルという儚く優しい存在が儚さと優しさを現実を憂いながら歌う。私は帰りに購入した「例えばのモンスター」を聴きながら、次はいつ彼女達の歌を観られるのだろうかと、距離という現実を噛みしめながら歩くのでした。それは、アイドルとヲタという精神的な距離感とは違う、物理的な距離感。でも、不思議と寂しさはない温かなものである事にも気づいている。
ひめキュンフルーツ缶 例えばのモンスター