バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

浜田温泉@亀川温泉(別府八湯)

2019-08-19 22:38:39 | 温泉(大分県)
日豊本線・亀川駅近くの海沿い、別府八湯のひとつの亀川温泉は、大正時代に開院した海軍病院(現・国立病院機構別府医療センター)を中心に発展した温泉街です。

亀川駅からすぐのところの旧街道沿い、数軒の旅館が無ければのごく普通の住宅街と思うようなところの真ん中に、市営の共同浴場・浜田温泉があります。

唐破風の立派な建物は新しく再建されたもので、エントランスのところにはスロープが設けられ、公立の温泉らしくバリアフリー化されています。

入浴料はここも100円。例によって脱衣所と一体の温泉には僅かに褐色のお湯が満たされています。ほのかに塩味が感じられる塩化物泉なので、冬場にはよく温まりそうだが、温泉をハシゴしている身にはガンガン堪えます。

新しい施設の割には浴室がそれほど広く作られておらず、コンパクトにまとまっているので、空いている時間帯なら実に落ち着くいい温泉です。

この施設の向かいに、旧の浜田温泉をリノベーションした浜田温泉資料館があって、施設内に昔の浴場を再現していて興味深いのだが、この日は休館日でした。次回訪れたときにはぜひとも入館してみたいところです。

・場所:JR亀川駅 大分交通バス、亀の井バス・亀川駅前BS
・泉質:塩化物泉 55.3℃
・訪問日:2008年5月12日

浜脇温泉@浜脇温泉(別府八湯)

2019-08-18 23:14:37 | 温泉(大分県)
JR東別府駅からすぐ近く、別府八湯のひとつの浜脇温泉は、今は再開発で団地然としたところとなっているものの、じつは別府八湯の中でも最も古い温泉地です。

1928年(昭和3年)に鉄筋コンクリートの洋風建築、浜脇温泉・浜脇高等温泉が建てられ、賑わいを見せていたが、老朽化により取り壊され、旧浜脇温泉跡地とその周辺を再開発した一画に、近代的な施設として再生されています。

現在の温泉前の広場には、タイルで建物の間取りが再現され、広場の入り口には旧浜脇温泉の建物入り口のアーチが復元されるなど、旧温泉の面影を残しているが、現温泉の入口はいかにも地域のコミュニティーセンターで、殺風景なことこの上ない。

ここも別府のスタンダード、脱衣所と浴室の仕切りがないタイプで、竹瓦温泉と同様、温泉が半地下構造になっています。そして、手入れの行き届いたこの広い浴槽の中に、ほのかな香りが漂う、澄明な温泉が満たされています。

温泉の利用者は観光客らしく姿は見えず、地域の銭湯と雰囲気。旅行者のワタシにとってはかなり熱いお湯だが、これが地元では当たり前なんでしょう。

場所:JR東別府駅 大分交通バス・浜脇BS
泉質:単純温泉 62℃
訪問日:2008年5月12日

別府温泉@別府八湯

2019-08-15 22:48:28 | 温泉(大分県)
別府温泉は、広義では別府市内にあるそれぞれ特徴を持ついわゆる別府八湯とされる温泉群をいいます。しかしそれとは別に、海に近い平地の部分、JR別府駅周辺の賑やかで数多くの旅館や飲食店が立ち並び市街地にある温泉に限定される場合があります。ここでいう別府温泉は、その狭義の温泉街です。

ここは、江戸時代の温泉番付にも登場する古く名泉とされてきた温泉地で、市内中心部を流れる流川の川沿いにいくつもの温泉が湧き出し、狭い地域に単純泉、食塩泉、重曹泉、重炭酸土類泉など多数の温泉が湧いています。

ここには旅館だけでなく、住民のための共同温泉も多数存在し、ここは観光客にも廉価で開放されています。その代表格が入母屋破風の外観を持つ別府市営の「竹瓦温泉」です。

この竹瓦温泉と、その間近の商店街にあるアーケードは、「別府温泉関連遺産」として、2009年に近代化産業遺産に認定されているとのこと。しかし、シャッターの閉まった店も多く、どう見ても寂れた地方都市にしか見えません。

なんだかなあ…っと思っていたんだが、夜になると激変、ネオン眩しい盛り場の顔を見せました。スナックやらラウンジやら…しかも、少し裏通りに入ればあらゆる種類の風俗店も林立しています。

おっさん一人がこんなとこをウロウロしてたら、まさしく鴨がネギを背負って歩いているようなもので、あちこちからお声がかかります。こんな清濁あわせ持つ姿こそ、成熟した温泉街の情緒ですね。

別府温泉がここまで発展したのは、その豊富な湯量にあるだけでなく、港があることに重要な要素です。今でも定期航路が大阪港と直結しているが、新幹線のない昭和初期には、阪神・別府間の航路は日本を代表する花形航路でした。

こがね丸(1936年) 商船三井ホームページより
「くれなゐ丸」「こがね丸」「にしき丸」といった豪華な新鋭船が京阪神からの観光客を送り込んでいました。織田作之助の代表作『夫婦善哉』の続編(『続夫婦善哉』)の原稿が2007年(平成19年)に発見され、話題になったが、この続編の後半は別府が舞台で、大阪・天保山から別府までの船旅の様子が詳細に描かれています。

帝国海軍重巡洋艦「鳥海」
また、時には水兵さんの保養のために海軍の軍艦が横付けすることもあったとか。「鳥海」「摩耶」「高雄」「愛宕」など最新鋭重巡洋艦を擁する第二艦隊29隻や、船艦「陸奥」などが別府湾に停泊し、温泉街を賑わしたとの記録が残っています。若い兵隊さんが少々羽目を外したこともあったのかもしれませんね。

現在の別府における交通の拠点・別府駅の近くに、非常に便利のいい場所にも温泉があります。「駅前高等温泉」は温泉だけでなく、バックパッカーにありがたいドミトリーでもあります。

駅前から繁華街を海の方に進めば別府のシンボル「別府タワー」が屹立するとともに、規模の大きなホテルが建ち並びます。ホテルでは温泉情緒は味わえないが、一人旅にはドライなホテルも気楽でいい。こんなホテルでも大浴場があって、もちろん掛け流しの温泉が楽しめます。

今でこそ別府駅周辺が繁華街だが、その昔はもう少し南側の流川通りが最も栄えた繁華街でした。織田作之助の作品『湯の町』にも“流川通りは別府温泉場の道頓堀だ”と描写されています。『夫婦善哉』のモデルといわれる織田の実姉の山市千代夫妻が別府に移り住んでから、織田もたびたび別府を訪れていて、別府の持つ街の息吹が大阪の市井に通じるものがあり、親近感を持ったからだと言われています。

この流川通りの路地裏に、いかにも織田が好みそうな旅館があります。そして流川通りの「どんつき」(大阪弁で言う突き当たり)には、なんともレトロな遊園地があり、なんとその遊園地内にも名泉があるのです。

12万人近い人口を持つ大分県第2の都市・別府市。その市民生活のなかに温泉がいかに密着していることがよく解るのが「別府市民憲章」です。そこで謳われているのが以下の通り。

・美しい町をつくりましょう。
・温泉を大切にしましょう。
・お客さまをあたたかくむかえましょう。

これぞまさしく日本一の温泉都市。われわれ旅行者は別府市民の思いを胸に温泉を楽しむべきかもしれません。

ホテルニューツルタ@別府温泉(別府八湯)

2019-08-15 20:26:10 | 温泉(大分県)
亀の井バス、大分交通バス・別府北浜BS近くにあるホテルです。温泉巡りで別府を訪れた際、朝食付き洋室のプランで宿泊利用しました。温泉旅らしくはないが、一人旅には気兼ねが要らないので丁度いい。

このホテルを選んだのは、ウェブサイトに温泉カルテを掲示していたからです。このカルテ、泉源だけでなく、浴槽の泉質データをも表記していて、かなり明瞭な情報開示で、よほど温泉に自信があるのだと推察できたからです。

ホテルの大浴場「二條泉」は最上階にあります。他のホテルに邪魔されているものの微妙にオーシャンビューです。ただし、聞こえてくるのは潮騒ではなく、ホテルと海との間を遮る国道10号線の車の騒音です。

一般的にホテルの最上階にある展望温泉は、ポンプで温泉をくみ上げる必要があるので、管理が容易な循環濾過式を行っているのが大多数なので注意が必要です。
しかしここでは無粋な塩素の臭いはなく、芳しい温泉の匂いのみが漂っています。

大窓に沿った大きな浴槽には、ホテル敷地内にある2ヵ所の源泉から湧き出す澄明な炭酸水素塩泉・塩化物泉が掛け流されています。

しかもさすが別府。湯量が豊富なためか、掛け流しの量も不足はない。650円の入浴料で立寄湯としての利用も可能とのこと。これは利用価値がありますね。

・場所:亀の井バス、大分交通バス・別府北浜BS
・泉質:塩化物泉/炭酸水素塩泉 56℃
・訪問日:2008年5月11日

駅前高等温泉@別府温泉(別府八湯)

2019-08-14 23:13:51 | 温泉(大分県)
JR日豊線・別府駅からすぐ近く、その名のとおり駅前にある「駅前高等温泉」は地域の人達が管理する町営の温泉で、大正13年建造の洋館建てが印象的な共同湯です。

で、なにが高等かというと、ここでは入浴料が100円の並湯と300円(当時)の高等湯があるとのこと。300円で高いとは…別府では100円のところが多いので300円は高い部類になります。それにしても別府では温泉のインフレで感覚がマヒしてしまいます。

せっかくなので高等湯を選びました。脱衣所から掘り下げ式の浴室へ階段で降りていくと、それほど大きくない浴槽に清澄なお湯が満たされています。泉質は単純泉なので柔らかくてあっさりした肌触りです。

この浴槽の手前、脱衣所の真下にももうひとつの浴槽があり、こちらはぬる湯になっていています。別府の温泉巡りをして少々湯あたり気味の体にはすこぶる快適、料理で例えるならデザートです。

図らずも上がり湯としても適しているこの温泉、格安の素泊まり宿が併設されているのもユニークです。海にも山にも繁華街にもアクセス抜群な駅前の立地で、簡易宿泊所としても利用できるため別府観光の拠点としてもぴったりです。

※現在、料金体系が変更され、並湯が「あつ湯」、高等湯が「ぬる湯」として、ともに200円となっています。

・場所:JR別府駅 大分交通バス、亀の井バス・別府駅前BS
・泉質1:並湯:弱アルカリ単純泉
・泉質2:高等湯:中性単純泉
・訪問日:2008年5月12日

竹瓦温泉@別府温泉(別府温泉郷)

2019-08-13 09:44:10 | 温泉(大分県)
別府温泉は、広義では別府市内にあるそれぞれ特徴を持ついわゆる別府八湯とされる温泉群をいいます。しかしそれとは別に、海に近い平地の部分、JR別府駅周辺の賑やかで数多くの旅館や飲食店が立ち並び市街地にある温泉に限定される場合があります。ここでいう別府温泉は、その狭義の温泉街です。

ここは、江戸時代の温泉番付にも登場する古く名泉とされてきた温泉地で、市内中心部を流れる流川の川沿いにいくつもの温泉が湧き出し、狭い地域に単純泉、食塩泉、重曹泉、重炭酸土類泉など多数の温泉が湧いています。

ここには旅館だけでなく、住民のための共同温泉も多数存在し、ここは観光客にも廉価で開放されています。その代表格が入母屋破風の外観を持つ別府市営の「竹瓦温泉」です。

別府を訪れたからにはここは外せない。初めてここを訪れたとき、写真のイメージからの想像よりずいぶん立派な建物で、矍鑠とした威厳に圧倒されました。

現在の建物は1938年(昭和13年)に完成したとのこと。中は1階中央に天井の高いホールが設けられ、西側に寄棟造平屋の砂湯、東側に平屋の男湯・女湯が配されています。お寺の講堂の様な立派さで、これから入るお湯への期待が高まります。

入浴料はたったの100円、驚くほど安いと感じるが、別府の市営温泉ではこれで普通だそうです。また、脱衣所と温泉とを仕切る壁はない、いけいけ状態。脱衣所で服を脱いだ後、掘り下げ式の浴室へ直接階段で降りていきます。

地元の人には無用だが、荷物のある旅行者には100円の鍵のかかるロッカーを使わざるを得ません。リュックを収め、鍵を廻すと100円がころーんと落ちていく…あ!…リュックにタオルを入れたままや!なにをやってんねやろ、興奮しすぎや…落ち着け・落ち着け!

さっきの100円はお布施と思って諦めて鍵を開け、タオルを取り出す。再び100円を投入して鍵を廻す…ふと左手を見たらしっかり財布を握っている……あぁぁぁぁ!!!

建物が立派なだけに、浴場も負けず劣らずかなり広く造られています。中央の浴槽には鶯色にくすんだお湯が掛け流されています。泉質は炭酸水素塩泉。やや熱めになっていてガツンときます。

舐めただけでは味や匂いは感じられないが、もちろん無粋な塩素臭もない。さすが別府、豊富な湧出量のおかげで、多くの人たちに供する共同湯でも天然の温泉が楽しめるのですね。

この竹瓦温泉のもうひとつの名物は砂湯で、浴衣を着て砂の上に横たわると砂かけさんが温泉で暖められた砂をかけてくれるとのこと。残念ながらこちらは未体験です。

驚くべきことに、ここでは男湯・女湯・砂湯のそれぞれの泉質が異なっていることです。さすが「おんせん県」を代表する温泉施設です。ただ、砂湯はともかく、女湯の泉質を体験することができないのが残念です。

100円では入れる温泉に、不覚にも400円も使ってしまったが、その分の元は余裕で取れる値打ちある温泉体験です。

・場所:JR別府駅 大分交通バス・別府北浜BS
・泉質1:男湯:塩化物泉(ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-塩化物・炭酸水素塩泉) 53.8°C
・泉質2:女湯:炭酸水素塩泉(ナトリウム-炭酸水素塩泉) 源泉温度:52.0°C
・泉質3:砂湯:炭酸水素塩泉(ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉・塩化物泉) 源泉温度:52.5°C
・訪問日:2008年5月11日

くじゅう飯田高原BOSCO@大分(九重)

2015-10-01 23:02:23 | 温泉(大分県)

大分県の西部、熊本県との県境が複雑に入り組む久住山北麓一帯は、阿蘇くじゅう国立公園の一部、標高が800~1,200mの飯田高原と呼ばれる高地です。

ゆるやかな起伏をもって草原のうねりをみせる風光明媚な高原として、別府・由布院と阿蘇とを結ぶやまなみハイウェイ開通を嚆矢として、九酔峡、九重夢大吊橋などの観光開発により、夏は避暑地として人気のエリアとして知られています。

この飯田高原の一角、湯坪温泉にほど近い森の中に佇むオーベルジュを今年の夏休みのお宿にすることにしました。本来、路線バスで旅をする主義を持っているのだが、どうしても路線が繋がらないため、趣旨にはそぐわないが今回はレンタカー。

前日宿泊した壁湯温泉方面からガードレールもない人気のない峠道をカーナビを頼りに進むこと30分、それまでの山道から一転、のどかな高原が広がったところに、見過ごしてしまいそうな小さな標識を発見。

中に進入すると、駐車場の奥に欧州にワープしたかと錯覚するような建物が現れました。ここが2泊3日でお世話になるオーベルジュのエントランスです。車を停めるとすぐに若い男性スタッフが「お待ちしておりました…」っと飛び出てきて、チェックインをする間に、荷物を部屋まで運んでおいてくれました。

本館を入ると実に上品なインテリアに囲まれたレセプションデスクがあり、ここで手続きを済ませて、その横のリビングのような場所でしばしの休憩。冷たいおしぼりとともにハーブティー、そしてポルヴォローネというスペイン菓子を出してくださいました。

今回、ちょっと贅沢をして宿泊棟の一般客室ではなく、「Casa Suite Room」に宿泊です。長期の滞在にも向いているという、文字通り「家」として各棟が独立している言わばヴィラ。天井の高い広さ49m2の開放的な部屋にセミダブルのベッドがふたつ、さらに昼寝用のデイベッドが備わっています。

テラスに出ると、鳥の鳴き声をBGMに美しい山容の涌蓋山が眺められる。ときおり牛の鳴き声が聞こえるので近くに牧場があるんでしょう。アメニティーも充実していて不足はない。またDVDが備わっているとともに、Wi-Fi環境も整えられています。

このCasaの白眉はもちろんお風呂。かなり広いバスルームの一角にシャワーブースと、タイル張りのハート型になった大きな浴槽。思いっきり足を延ばしてもまだ余裕のあるこの浴槽には、かけ流しのお湯が絶え間なく流れ込んでいます。

専用のお風呂があるといっても大浴場は温泉好きの日本人には必須。このオーベルジュの宿泊棟には男女別の大浴場と家族風呂が設置されています。大浴場は内湯と露天からなり、湯坪温泉から引いたお湯が満たされています。

湯坪温泉は九重九湯のひとつで45~70℃の単純温泉。ここから少し離れたところにある温泉街には約20軒の民宿が並び、民宿が多いことから「湯坪民宿村」とも呼ばれているとのこと。この大浴場は源泉からやや遠いので、温度管理の意味から半循環としているようだが、かなりオーバーフローさせていて、塩素臭もなく、掛け流しに近いお湯の質を保っているようです。

露天は白い漆喰に明るい色調のタイルが埋め込まれていてやわらかい肌触り。澄明のお湯は無味無臭ではあるが、浴槽の底には酸化鉄やカルシウムの沈着が見られるので、単純泉ながら温泉の成分は豊富な様子。湯温がやや低いので、長時間ゆったりと浸かることができます。

大浴場は草花の花壇に囲まれ、その奥にそびえる涌蓋山の眺めと相まって、見目にも癒されるが、泉質でいえばやはり掛け流しのCasaのお湯に軍配が上がります。浴感に優れるとともに、湯上りの湯切れは抜群。バスタオルは必要なく、フェイスタオルで充分です。

美食と美湯を兼ね備えたこのオーベルジュ、その料理も圧巻です。料理の詳細が食べログで。

実に充実した夏休みを堪能することができました。さぞ高くついたかと思いきや、意外に安いのにも驚きます。年に1回だけの細やかな贅沢、今年も充分味わい尽くすことができました。

・訪問日:2015年9月10日

壁湯天然洞窟温泉 旅館 福元屋@壁湯温泉 

2015-09-23 20:54:05 | 温泉(大分県)
壁湯温泉は宝泉寺温泉郷のはずれ、その先は筑後川となって有明海に流れ至る玖珠川の支流、町田川沿いの渓流にある温泉で、その名前の通り川縁の岩壁をそのまま湯船にした温泉としてつとに知られています。

JR久大本線・豊後森駅から玖珠観光バスの宝泉寺行きに乗って約30分、壁湯BSを降りたところの宿への細い道を下ると旅館・福元屋が現れます。この旅館こそ明治の初めから湯治客や旅の商人を相手にこの名湯を守ってきた一軒宿です。

平成13年、若い館主が自分の好みの田舎屋風に仕上げるべく、僅か8室、20人ほどが宿泊したら満杯になるような小宿に全面改装した母屋は、どこか郷愁をそそる落ち着いた風情で、田舎の家に里帰りしたような気分にさせてくれます。

温泉 は享保年間(1716?1735年)、猟師が渓谷の中に湯浴みしている鹿を見たことから温泉を発見し、険しい岸壁に道を作って半洞窟の温泉を開いたと伝えられており、その場所にちなんで「壁湯」と名付けられたとのこと。

母屋の玄関から渓流の小道を恐る恐る進んだところにこの壁湯があり、その先の岩のくぼみに小さな脱衣所が設置されています。男女混浴ながら、女性は湯浴み着の着用が許されているのとのこと。

湯底まで透みきった澄明のお湯には、僅かに白い湯の花が舞っていて、長く浸かっているうちに体に細かい気泡が付着してくる。泉質は弱アルカリ性の単純温泉。岩の奥から自然湧出する源泉は毎分1300リットルと湯量にも恵まれ、岩に囲まれた険しい空間にもかかわらず、絹のようなや わらかな浴感はいたって女性的。ほんの僅かに硫黄の香りが感じられ、舐めてみると少し甘く感じます。

岩肌がむき出しになった洞窟の奥に進むと、次第に狭く深くなっていて、湯底は小石と砂になってくる。この岩の隙間から自噴しているようだが、気泡が上がって来る訳でもなく水流も感じられない。それにも拘らず、掛け流されていく排水は大量。湧出箇所が一点ではなく、多面的に湧出しているのかもしれません。

湯温は低めで38℃ぐらいでしょうか。
━半刻入らずして壁湯を語るべからず 一刻入って身體に問うべし━
この壁湯を味わうには半刻(1時間)では足りない。一刻(2時間)ゆっくり入って体に聞きなさい…と表現されるとおり、長時間浸かることによって、心も身体も癒されるのだということが実感できます。

混浴に二の足を踏む女性には、この壁湯の入口近くに女性専用の浴場があり、そこで安心して柔らかな温泉に浸ることもできます。とろんとしてしっとりとした浴感は、むしろ女性に向いているのかもしれません。

この福元屋には宿泊者専用の家族風呂もあって、母屋にある切石のお風呂、「隠り国の湯(こもりくのゆ)」や、別棟のでで、館主自ら切り出した石を「三和土」で固めて造ったという「切り出しの湯」があり、適温で入浴できるようにもなっているが、やはり「壁湯」のイン パクトにはかなわない。

初夏になるとホタルの乱舞を見ることができるというこの「壁湯」、浸かっている間は寒いようにも感じるが、湯あがりこそ真骨頂。次第にホカホカと温かくなってくるし、しかもなかなか冷めてこない不思議な感覚が訪れます。

川のせせらぎをBGMに、ぬるめのお湯にゆったりと身を委ねる至福…日頃の細事などすっかり忘れ去ることができるようです。九州の名湯たる底力を感じずにはいられません。

  • 場所:大分交通・壁湯BS
  • 泉質:単純温泉 39℃
  • 訪問日:2015年9月9日

ゆのつぼ共同温泉@由布院温泉

2013-10-07 09:34:41 | 温泉(大分県)

大分空港からリムジンバスで1時間足らず、別府駅から路線バスで1時間ほど。由布岳の麓、JR久大本線・由布院駅の一帯にある由布院温泉は、温泉湧出量、源泉数ともに全国2位の豊富な湯量を誇る温泉地です。


開発規制により高層の巨大旅館・ホテルはなく、また、ネオンサインの煌く歓楽街も存在させないまちづくりを行ってきたため、玉の湯、亀の井別荘をはじめとして高級旅館が数多く立地しています。


温泉のみならず、由布院駅から温泉街の方向に延びる「由布見通り」や、そこから金鱗湖に続く「湯の坪街道」には、しゃれた雑貨屋やレストランが並び、周辺には各種の美術館が点在するなど、人気の観光地でもあります。


特に女性に好まれるリゾートであるこの由布院にも、昔ながらの共同浴場が存在しています。湯の坪街道からほんの少し脇に入ったところ、あの有名な玉の湯のすぐそばにある共同湯です。


木材と石畳で造られた浴室は落ち着いた空間となっており、高級共同湯といった感じです。


ここは地元の人たちが共同管理する浴場のひとつで、ここは外来の客に一般開放しているものの、時間帯によっては地元の人のみの利用となります。料金は200円を賽銭箱に入れる方式。


お風呂は男女別で脱衣所もある。上部は木質、下部は石張りの浴室に、長方形、浴槽がある以外なにもありません。掛け流しのお湯は臭いもなく澄明。クリアーな浴感の単純泉だが、満たされたお湯はやや青みを帯びているように感じます。


熱すぎず温すぎずの適温に保たれているのは、地元の方がこまめに管理されているからなんでしょう。実に旅行者に優しい共同温泉ですね。

・場所:久大本線・由布院駅
・泉質:単純温泉 64℃
・訪問日:2013年9月25日


界 阿蘇@瀬の本高原

2013-10-04 00:04:30 | 温泉(大分県)

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由布院からは九州横断バスで1時間10分ほどの筋湯入口BSが最寄り。熊本空港からレンタカーなら「やまなみハイウェイ」を1時間半ほどのところ。九重の山裾に広がり、阿蘇の雄大な景色を一望できる瀬の本高原にある温泉リゾートホテルです。

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この辺りはあの有名な黒川温泉にも近く、大分県と熊本県の県境近くに広がる「COCO VILLAGE(ココヴィラージュ)」と称する高原リゾートで、フレンチレストランやスパ、ギャラリーなど、安らぎと癒しを与えてくれる個性あふれる施設が集積した、ちょっとリッチなエリアです。その中で最大の8000坪もの敷地を擁しているのがこの「界 阿蘇」なんですね。

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このホテルで特筆されるのが、敷地内に点在する12の客室はすべて離れで、しかも全客室に源泉かけ流しの露天風呂がついていること。宿泊費もそれなりに高いが、それ以上の価値を与えてくれるホテルだといえます。

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若いスタッフに案内されて離れに入ると、実に広々とした空間。リビングには並んで5人は座れようかとの長いソファと、一人用の深いソファとオットマン。巨大な掃き出し窓の外はテラスになっていて、その向こう側は奥行きの見えない深い森が…

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寝室には琉球畳の上にダブルサイズのベッドが並んでいて、白いふかふかの羽毛布団がふわっと掛かっています。寝室横のクローゼットには外着用の浴衣と、作務衣のような部屋着が用意されています。

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内風呂はジャグジーです。普通の家の居間ほどはあろうかという広さのバスルームには、ふたつの洗面もあり、豊富なアメニティー並んでいます。備えられていうバスローブもふんわり柔らか、一刻のセレブリティー気分。

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バスルームから屋外に出たところに肝心の温泉がある。4人は入れそうなぐらいの正方形の浴槽に、湯口から滔々とお湯が掛け流されています。お湯は無味無臭ながら、ほんの少し白濁しているようにも見える。

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加温しているとのことだが、「ほんまもん」の温泉であることは確かです。肌触りはキリッとした感。ワインに例えるとシャブリのような切れ味のいいお湯ですね。

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朝は鳥の鳴き声とともに、昼は森を吹き抜ける風と共に、夜には篝火の幻想的な明かりの中で…何度も何度もこのお湯を堪能させてもらいました。

界 阿蘇の料理はこちら

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結局、2泊もしたのにジャグジーは一度も使いませんでした。だって、掛け流しの温泉を眼前にしては、水道水のジャグジーなど、子供だましに感じてしまうからね。

  • 泉質:単純温泉 30.9度
  • 場所:九州横断バス・筋湯入口BS
  • 訪問日:2013年9月23日